会長周辺を探ろうって思って、本社の威光を傘に子会社のYSS(ヤオマン・システム・ソフトウエア)にアポとった。そしたらここから青物市場ぐらいの距離、自分の車で行くってのに会長みずから迎えに来るって。だからこうやってカイシャの玄関でお待ち申し上げてるんだけど。
来たみたい、スポーツカーグリーンのジャガー。驚いた4時ピッタリだよ。 「お待たせ。乗って」 この車、後ろに乗るのは初めて。いちいちシガーソケットにスマフォ繋げんのは変わってないね、会長。 「こうやって、ヒビキちゃんのことお迎えに上がるのは3年ぶりかな」 あたしがヤオマングループに入社してから今の部署に異動になるまでの半年、会長と秘書待遇のあたしと二人しかいない、めっちゃくちゃ暇な部署にいた。それでか、いらないってのに毎日このジャガーで送り迎えされてた。 「すみません、わざわざジャガーでお出迎え頂かなくても、私の軽自動車で伺いましたのに」 「いやいや、本社の方が、うちなんぞのプロダクトにご興味を持ってもらえたんだから、こっちからお出迎えするのはあたりまえの……」 ちょっとややこしいけど、このカスはヤオマン本社の会長と子会社のYSS社長を兼任してる。ちなみに女傑の社長は本社社長でヤオマングループの総帥。 「……ヒビキ、さん」 で、ユサ。どうしてお前が助手席座ってんの? 「ユサちゃんね、ヒビキくんと知り合いだって言うからさ、付いてきてもらったのよ」 「女バスで、ね」 ね、じゃねーよ。どうして床にバスケのボールケース転がしてあるんだって思ったら、お前か。 「睨まないでよー。ヒビキくんは相変わらず怖い怖い」 なに薬指立ててやがる。こんどは食いちぎってやろうか? このセクハラおやじ。 「カイチョ」 「めんご、めんご。今日はユサちゃんに任せるんだった、ヒビキくんの運転は」 あんだと? こら。しばくぞ二人まとめて。今はYSSの青物市場の旧本社ビル、3ヵ月ぶりだな。駐車場せっま。もともと狭い駐車場だったけど仮設の物置小屋に占領されて、社長のジャガーともう一台のマイバッハは伊礼バイプレのか、の専用駐車
ここ、あたしが最初に配属された部屋だ。今は会議室になってるのか。ちょうど駅がよく見える場所なんだよね。このカイシャ入ったばっかのころ、ホントにこれでよかったのかなって、発着する汽車みながら思ったもんだった。 「ねえ、カリン」 会社では名前で呼ばないしようって約束しなかった? 「あ、ヒビキ、さん」 「さんはいいよ、二人の時は」 「ヒビキ。今日はなんで来たの? 仕事じゃないよね」 「仕事だよ。社長に勉強して来いって」 「そうなんだ」 「なに?」 「カイチョー、ヒビキが来るって聞いて、すっごい警戒しててね。社員に箝口令しいてるの。だから……」 「お待たせしました」 「「「「失礼します」」」」 ぞろぞろと。どうして技術ってのはどこ行っても大勢出てくんだ。お前らのうち何人発言するんだっての。どうせ一人だけなんだろ、しゃベんのは。こんなに名刺いらねーよ。おまえらとは今後も接点ないから。アプリ担当だの、データベース担当だの、ネットワーク担当だの、セキュリティー担当だのって、ユサは広報担当なのね。で、今しゃべってるのが? プロマネか。お前一人でオケ。 なるほどね。のらりくらりと。肝心の会長の悪事が見えてこない。これじゃ、物見遊山専任役員の吉田ディレクタが来ても一緒だな。 1時間半。がっつり『スレイヤー・V』の仕様説明されたけど収穫なしか。社長の言う「やばいこと」と、『スレーヤー・V』は関係ないってこと? そもそも、会長は社業にノータッチだもんな。しかし、結局しゃべったのプロマネとユサだけだったじゃねーか。他の開発の連中、無言でずーっと虚空を見つめてて、マジ晒し首だったぞ。 送ってくれるってから遠慮なくジャガーに乗せてもらったけど、どうしてユサまで一緒なんだ? 「どうだった? ヒビキくん。僕も真面目に勤めてるでしょ。こう見えても、ヤリガイ持ってコトに当たってるからね」 何がヤリガイだっての。お前はYSSの社長SNSに釣りの記事書いてるだけじゃねーか。ちょっと続いたなって思ったら、僕にはもうムリですって終了宣言しやがって。再開すると、ヘラ釣り、ルアー、フライフィッシング、アユ釣りってどんどん
外は雨。夜にめずらしく家にいたらやっぱりおかーさんとぶつかった。泣きわめけばこっちが言うことを聞くと思ってる。中学生の頃から全然変わらない。そういうのが嫌だ。しまいにどうでもよくなってくる。 部屋に戻って電気を消してベットに入ったはいいけど眼が冴えて眠れない。おかーさんは疾うに寝たみたいだけど。 雨の音に耳を澄ませて心を落ち着かせる。テラスの手すりに雨水がしたたる金属的な音。雨どいを伝わって水が流れ落ちる音。風向きが変わって雨が窓をたたく音。風に揺れた木々の葉が立てる音。誰かが外の廊下を歩く音。玄関先であたしを呼ぶかすかな声。 ベッドをぬけて玄関を開けると、目の前に子ネコが立っていた。全身雨でびしょ濡れで彼女独特のお日様の匂いはしなかった。 これまでこんなことなかったから、嬉しいやら驚いたやらでどうしていいかわからなかった。とりあえずミルクをあげようと、いつものように襟を広げて名前を呼んだけれど、子ネコは動かず金色の目であたしを見つめるばかり。放って置くこともできず、家にも入れられないから、あたしは外で子ネコと一緒にいることにした。 切れかけの電灯と雨の音だけの静かな玄関前の廊下。子ネコは何も話さないし、あたしも言う言葉がない。時間はゆっくり過ぎて行くけど、全然変化がないからどれだけ経ったか分からない。 遠くで犬が鳴くのが聞こえた。すると、子ネコはあたしに背中を向け帰って行ってしまった。いつの間にか、雨も上がり東の空がほんのり赤くなっていた。 次の夜、また来てくれるかと思って待ったけれど子ネコは来なかった。もしかしてどこかに行ってしまったかと心配になって見に行ったら、子ネコは何も変わりない様子でいつもの地下室にいた。それから夜、家に居るときは待つとはなしに過ごすようになったけれど、結局それ一度きりだった。
いくら寝てないって言ったって寝れんわ、こんな朝から。でも寝とかないと仕事中やっちゃうからね。 爆睡中……。 あっつー。マジ死ぬ。クーラー誰とめた? 自分でタイマーかけたんだった。何時? スマフォ反応悪いな。エイ! っとね。まだ昼の1時かよ。汗でべっとべとしてるからかな。シャワー浴びてこよ。 さっぱりしたー。お風呂上りには冷たい飲み物ね。冷蔵庫にまたまたミワちゃんにもらったドクダミミルクコーヒー入れておいたんだ。いくら雑草ジュースブームだからって毎回雑草でなくっても。うっへ、これすっごい味なんだけど。ははーん。ミワちゃん少しS入ってるからね。きっと面白がってやってる。でも、もったいないから全部飲んじゃう。でも、おえー。 全然お腹すかないな。眠くないし。トーチョーするにはまだ早いし。トーチョーって言い方、お侍さんみたいでカッコいいんだよね。殿! トーチョーでございまする。ってな感じで。早いけど町でもプラプラしながら行こうかな。 やけにまっぶしーね。お日様。ふれあい公園だ。なつかしいね。高校の帰り、よく女バスの子とここで井戸端したな。 あれ? 誰とだっけ。思い出せないな。まいっか。 お、あれはサッカー少女リンちゃん。相変わらずボールはトモダチだね。でも、リンちゃん小学二年生だったから、ウチのこと覚えてないだろうな。あたしトカイセーカツで垢ぬけちゃってるから、なおさら。 「あ、レイちゃんだ。あそぼー」 覚えててくれたー。 「リンちゃん久しぶりー。帰って来たよ。またよろしくねー。リンちゃん、サッカーますます上手になったねー」 「うん」 お、急にしゃがんだ。分かりやすい、かまってチャンポーズ。 「どした? 元気ないじゃん」 「リンカね、クラブやめたんだ」 「えー、マジで? なんで?」 「クラブにね、リンカしか女の子がいなくなっちゃった」 「それはやだね。他にクラブないの?」 「あるけど、そこも女の子いなさそーなんだ」 「そっかー。でも、なんとかなるっしょ」 もちっとオトナな対応できんかね、ウチは。 「あ、クオレちゃん来た。レイちゃん一緒に
通学路、全然変わってないね。ついつい角のパン屋さんで女バスセット(アンドーナツと三角牛乳ね)買っちゃったよ。 「うん、これは。昔とまったく変わらぬぃ味ですぬぇ」(前の海サン) うま。しかし、お散歩番組って、仕込みって分かってもずっと観ちゃう。フシギ。 きゃー、かわいいー。ぶちヌコ様だー。ヌコはいいね。ワンコは大概ほえられてツライけど。チッチッチッ。ほれ、ごろごろごろごろ。珍しいね、ノラヌコ。ウチらがコーコーに入ったころはここらはノラヌコだらけだった。ヌコ様の保護活動、女バスのココロが始めてそれをカリンが手伝ってたんだけど、保健所に持ってかれないよーに、病院つれてったり、飼ってくれる人探したりして、面倒見始めてさ。結局50匹近くのヌコ救ったって。みんなドギモだったよ。いまはどーなってるのかな。引き継ぎとかできなかったみたいだからね。ヌコ様、ばいばーい。ミルクのんでくれた。ほっこり。 見えてきたよ。ボコーの体育館。ちょっとちっさくなった? お、この感覚。大人になっちゃった体験ってやつだ。『スタンド・バイ・ミー』みたいなこと、ホントにあるんだね。冒険して帰ってきたら町が小さく見えたってやつ。ウチの冒険はトカイセーカツのことだけど。 おー、いるいる。女バスだ。体育館の出入り口にたむろってる。駅で会った子たちいるかな。深呼吸してー、戻る。ほら、違う子が顔出した。深呼吸でー、また戻る。やってるね、あの出入り口。夏場の練習の時、体育館の中が酸欠で苦しくなって、めっちゃ熱くて堪んなくて、女バスのみんなちょくちょく出てきては、あーやって涼しい風に当たって一息ついてた。それをコーチョーに、ドジョウが息吸いに上がってくるみたいだって言われて、キャプテンのヒマワリが 「うっせーマダラハゲ! こっちは死ぬ気でやってんだ!」 ってぶち切れたの。そしたらマダラハゲのやつ、川田せんせーにチクりやがって、罰として 「校長先生はマダラハゲではありません」 ってノート10ページ分書かされた上、 全員外周り二十周走らさせられた。 連帯責任でマネージャーのウチまで走らされたかんね。炎天下の中走ったもんだから、あんときは全員死んだ。熱中症にならなかったのが不思議なくらい。セイラは途
女バスの部室、ドア開いてる。ブヨージンだわ。中に入ったらニオウね相変わらず。バッシュが98パーセントを占めるのね、このニオイは。 2年の夏、あんまりニオウから、誰のバッシュが一番ニオウかコンテストした。バッシュって洗えないから誰のでもすぐ臭くなるんだよね。プシュプシュかけても気休めっての? みんなして、めっちゃクッセーとか言いながら、人のバッシュの臭いかいで、臭(シュー)ケーとってさ。結果、 シオネのが最有臭除臭ズ賞 とって、そのバッシュさ、金ラベル張られて、外周引き回しの上、ハリツケゴクモンの刑に処された。一か月雨ざらし。で、シオネにはそれに代わる新しいバッシュ、みんなでお金出しあって買ってあげたんだ。 ナイキのレブロンスペシャル。 シオネは最初、 「オレ、イラネーヨ」 って言ってた。こんな不名誉なことはないって。でも、結局受け取ってくれたよね。 「あんがとナ。感謝するゼ」 って。男前かっての。 シオネの名誉のために言っておくけど、シオネのが臭かったのは、誰よりも動いてバッシュがすぐにぼろぼろになるから。うちの点取り屋だったからね。相手のマークが厳しくって怪我もよくしてた、ウチが手当てしてあげたんだよ。すごかったのが相手のディフェンス一人で潜り抜けてリーチバック決めた時。どよめきが起きたあと大歓声で体育館が揺れたもんね。 でも、仲が良いことばっかりじゃなかった。ウチらが三年生になってから、女バスが二つに分かれていがみ合うようになって、練習の後とか、しょっちゅうケンカしてた。コートでは川田せんせーがいるからって、ブシツまで我慢して、ここで爆発させてたんだよね。そのころは、みんな家でもいろいろあって、ミワちゃんは二人暮らしのオジーちゃん体調悪くしてずっと心配してたし、ヒマワリはママが死んですぐだった。ウチは毎日ママとケンカばっかしてた。 家飛び出して夜の街を裸足で徘徊したこともあったよ。 今から思うとバッカみたいだけど。 家のことが学校生活にニジミ出ちゃうことって、ある。だから、他のみんなもそれぞれあってギスギスだったんだろうな。あの事件があって結局それどころじゃなくなっちゃったけど。
空気入れ変えよ。バスケのユニホーム干してあるや。こーやって並んでるのを見るのはやっぱツライな。欠番があるのなんて、ウチのコーコーぐらいじゃないかな。バスケのゼッケンなんて野球とかと意味違うのにね。 4番と7番と9番ない。ヒマワリ。 シオネ。 ココロ。三人があのシーズンに付けてたゼッケン。忘れらんないよ。 これ見るとあの事件のこと思い出しちゃうね。ウチらが高校三年の一学期、梅雨が始まったばっかのころ起こった女バス連続失踪事件のこと。 一番最初は、ヒマワリがいなくなった。 地区大会の練習でいつもより帰りが遅くなって、六道辻で一緒に帰った子とバイバイしたあと、いなくなっちゃった。ヒマワリのパパから捜索願いが出て、近くの池とか森の中とかも町の人総出で探したけど、見つかんなかった。 それからすぐに続けてシオネが、 梅雨が明けるころココロが行方不明になった。 あたしは、女バスのマネージャーってこともあったけど、 ヒマワリは、ミワちゃんもだけど、ちっさいころから家を行き来してよく遊んだ幼馴染だった。 ココロは家が近所だったからよく一緒に帰ってた。 シオネにはみんなには内緒の練習手伝ってもらってた。 だから、みんながいなくなって本当につらかった。 事件の後、ヘンタイに攫われたとか、カミカクシだとか、悪霊の仕業とかいろいろ言われたけど、結局誰一人見つからなかったから、いつの間にか事件はうやむやになってって、なんでかヒマワリのパパ達も捜索願い取り下げちゃてて。しまいには三人一緒に都会に家出したんだとか、そんな子は初めからいなかったとかいう大人まで現れたりして。そういうことにもウチらみんながキズついた。 ウチはこの町が超嫌いになってたから、高校卒業するとすぐに都会に出ようって、実はミワちゃん誘ったんだけど、ミワちゃん卒業式の時に言ったんだ、 「ヒマワリを待ってる」 って。ミワちゃんすごい強いと思った。でもウチはダメだった。はやく忘れたかったもん。
「あなた、何してるんですか? そこで」 ドッキー! やっば。ウチ、どー見ても変質者かドロボーじゃん(冷汗)。 「あっれー? レイカ? レイカでしょ?」 よかったー、川田せんせーだ。 そうですー。レイカですー(安堵)。 「やっぱりそうだ。社会人の格好しててもレイカはすぐ分かるよ。そのスーツ似合ってるよ」 先生こそ。ブルズのタンクトップにホットパンツって、相変わらずデンジャラスですね。 「こっちに戻ったんだって?」 「はい。挨拶も来ないで、すいません」 「いいって。それより、お母様のこと聞いたよ。残念だったね」 「……」(こういう時の返事の仕方、ワカラナイ) 事件のあと、先生とよくここで話し合った。てか、いっぱいウチの話聞いてもらった。 「そっか、ユニホーム見てたのか」 「欠番のままなんですね」 「そうだね。それについては、つい最近も議論されたんだけど」 「ウチはやめた方がいいって思います。後輩には関係ないことだし。残すならもっと違う方法があると思います」 「うん。先生はちょっと違うけれど、大方はそんな意見なんだよ。でも」 「でも?」 「欠番継続を強く望む人がいるんだ」 「誰ですか?」 「ヒマワリのお父様。今の町長さんだよ」 ヒマワリのお父さんって、今、町長やってんのか。ウチの上長の上長の上長の上長くらい上長じゃね。 「被害者の方の意見は、なにより優先されるからね」 先生。被害者はヒマワリたちです。ヒマワリたち望んでますかね。 「大変ですね」 「うん。でも、これは先生たちのトール道だから」 懐かしー。 川田せんせーの口癖。何かってーと、「それはあなたのトール道よ!」。 そーだ、昨日の子のことそれとなく聞いてみよ。 「どうですか? 後輩たちは?」 「あー、レイカたちの頃に比べれば、やっぱね」 「そうですか」 「ヒマワリにはなんでも任せられた。あの子、頭よかったからね。シオネは天才。WNBAでも行けたレベル。ミワとナナミのゴール下は安心して
役場に着いたら、ミワちゃんから、 「こんど、みんなで集まろうってなって。レイカも帰って来たしって」 そう言われた。みんなっていうのは、女バスの仲間のことだけど、ドージにあの事件の当事者のことでもあるんだよね。だからアンマ気が進まない。会ったらきっと嫌なこと思い出してみんなどうにかなっちゃう。 役場のお風呂、いいお湯だった。ちょっと髪の毛まだ濡れてるっぽいな。夜、冷房効きすぎて寒いから、風邪ひかないようにしなくちゃ。雑草ジュース置いてある。ミワちゃんまたくれたんだ。サー仕事、仕事。 しまった、家にスマフォ置いて来たった。ったく、どーやって長い夜を過ごせってユーのよ。 今夜は特に暇だなー。ちょっと探検しよっと。このフロアだけならいいよね。気になってんのがあるんだ。あれなんだろーってずっと思ってた。フロアの真ん中に山椒の大木が生えてんの。人工のだけど。その下に女の人が寝てる銅像があるんだよね。 『遊女 みやぎの像』 だって。遊女ってなに? 説明書き「わがちをふふめおにこらや」だけだし。どういう意味だろ。スマフォないからググれないや。この人、宮木野神社に祭られてる人だよね。 辻沢の古い言い伝えで 志野婦神社の志野婦さんと宮木野さんは双子のヴァンパイア っていうのある。この像、寝てるのかな? 死んでるのかな? あれ、この顔どっかで見たことある。っていうか、知り合いに一人はいる顔だ。なんか親しみがわくよ。て言ったからって、くわ!って、目を明けて起きてこないでね。あそぼーなんて言っても遊んであげない。ウチ、仕事中だから。やっば、窓口に誰か来てる。置いてったよ。 気付かれないようにやってきて(歪曲)、 無言で(脚色)、 「特殊縁故結縁届」を窓口に(現実)。 初めてのお客様です。これを、窓口付きのパソコンに打ち込めば。あれ? ボタン押したのにな。ブーンて起動してこない。フツー、マウスいじったら画面が明るくなってさ、登録画面が出て来て、そこに内容を打ち込んで終わりっていうのじゃないのかな。おかしいな。そう言えば、ミワちゃん何か言ってたな。「何かあったら引き出し見ろ」だった。引き出しの
台所からカリンの声は聞こえない。お母さんのすすり泣きの合間に聞こえてくる、 「……優良企業の正社員に……そろそろ、いい人見つけて……お付き合いしてる人は」 みたいなこと、ウチもママによく言われたよ。 セイラは、カリンのPC立ち上げて真っ赤な画面ずっと見てる。カリンの部屋初めて。壁に大きなお札貼ってある。霊媒師さんからもらったのかな。 他にすることなくて、カリンの本棚物色。『ネコの医学』、『動物学大全』、『動物医療の最前線』、『獣医のこころえ』。ずいぶん難しそーな本読んでる。ウチ、難しい本読むと頭の中でせせらぎの音がサラサラサラってずっとしてるから、頭に入ってこない。 『女バスな人にも分かる! 経営学入門』だって。 これなら読めそう。 あ、これはー、うしし。 『ココロとカリンの交換日記No.1』。 表紙、めっちゃデコってあってココロの字で「夢」。ココロ、こういうオトメ好きだった。何書いてあるんだろ。 カリンが部屋に入ってきた。やば。カリンは壁のお札を目にすると舌打ちして剥がし、ゴミ箱に放り込んだ。ナイスシュート。カリンこわい顔。 「麦茶しかなかった」 お盆にコップ3つ。ウチ、いらないです。 「レイカ。そのノート、見てもいいよ」 こういうのなんて言うんだっけ。ジゴショーダク? なんか、トーサツした気分。カリンたらウチの横来てノートを開いて。だから、ゴメンって。 「ちがうんだ。見て欲しかった。ココロが何をしたかったか。あんなにならなかったら、今頃、どんなになってたか」 わかった見るよ。そんなに急かさなくっても。 「ココロとウチの夢の実現ノート」 カリンがノートのページを指して、 「『No.1』の最初のページ。『カリンの夢、獣医さん。ココロの夢、ネコカフェ。二人の夢、ネコにゃんリゾート(仮称)の経営』。乙女でしょ、ココロ。ウチ、獣医さんなんて夢、持ってなかったんだ。でも、ココロと一緒だったらウチもやってみようって」 そうだったんだ。全然知らなかった。 ノートの内容、全然乙女じゃなかった。バスケノートみ
ミワちゃんとナナミは、またまた用事があるって先に帰っちゃった。取り残されたウチらはカラオケ行ったけど、すぐ飽きちゃって『この花』の主題歌みんなで歌ってお開きにした。泣けた。 「レイカ。あのね」 「セイラ。ゲームなら」 そんなだから、ミワちゃんたちも。 「分かってる、でも」 カリンがセイラを制して、 「レイカ、今日、車あるから送るよ」 ありゃりゃ、まだ9時じゃん。ニーニーのいるあそこに戻るの、やだな。 「ゴメン。カリンち、泊めてくれないかな」 「え? いいけど。汚いよ」 「それなら、セイラも行く」 「PK?」 「なに?」 「PKってく?」 「パンツ買って行くでPKは無理あるよ」 うわー。ムラサキの軽自動車だ。これがカリンの車? ウチ、後ろ乗るー。おっと、横に開くのね、このドア。バスケのボール置いてある。わかるよ。女バス出身者の心のよりどころだもんね。ガーーバン。ふーん、中こんななんだ。わりと広いね。天井も高いよ。アタマ、ほれ、ほれ。届かない。座席もっふもふのふっかふか。気持ちいー。 「ナニあばれてんのよ。レイカ」 「ごめん。つい」 カリンが運転してる。コーコーの同級生が運転する車に乗るのって変な感じする。ってか、カリンの運転アライ。酔った、テキメンニ。 途中一回エチケットタイム設けてもらったけど、何とかたどり着いた。カリンの家は、東揚屋団地。お母さんと二人暮らし。 「入りなよ」 「おじゃましまーす」 「おじゃましまーす」(小声)。 「おかーさん、ただいま」 「夜分にすみません。お邪魔します」 「あら、カリン。おかえ……。ひいーーーーーーーー!」 おかーさん、奥に行ってドア閉めちゃた。 「あ、やっば。このかっこ」 そっか、「血塗られたJK」じゃやばいよね。 ゴリゴリゴリゴリ。 「すぎこぎごりごりもうすぐあさがごりごり……」 カリンのおかーさんてば台所の隅ですり鉢抱えて、
第2回女子会のお知らせ。場所、ひさご。時間、6時から。参加者、ミワちゃん、ナナミ、セイラ、ウチ。カリンは行けたらいくって、99パー来ないセオリー。 ナナミがゴリゴリゴリ。(ゴリゴリ以下、略)。 「レイカ、ココロに会ったんだって?」 「ホント? セイラしばらく会ってない」 「夏の制服着てたよ」 「「「それみんな知ってるから」」」 ってどぃうこと? 「シオネはみんな会ってる。ココロは会ったり会わなかったり」 「ココロは人を見るからさ」 ココロは前は誰とも仲良かったはずだけど。 「シオネなんかユニフォーム姿だもん。感じてないんだろーけど、やっぱ寒そーなときある」 バスケのユニフォームは基本ノースリーブに短パンだからね。冬は堪らんね。ん? セイラの金髪って。 「いなくなったの夏前だったからね」 「セイラ、先週シオネに会った」 「どこでよ?」 「役場の駐車場」 やっぱりあのカップル……。 「シオネって青墓周辺じゃなかった?」 「役場と青墓とじゃ、かなりの距離だしょ」 「シオネなら」 「「ありえるか」」 「ウチはいつココロに会えるだろ」 ミワちゃんが、 「あたしはヒマワリに会いたい」 なんかやばい。あの子たち、みんなのところにショッチュー来てるって。んで、返事すっと襲って来るとか、マジ怖い。カリンが今日来てないの襲われたかもだって。マジで? 「カリン、ハズすから」 「それなー」 「しかも、カンジンなとき」 「それー」 「4ピリ残り三秒、逆転のスリーポイントとか」 「そうだったー」 「あれは誰でもシビレるよ」 なんでか、楽しそーだな。 「レイカ、さっきから何やってるの? セイラの髪の毛束ねて」 「うん、ちょっと」 やっぱ、こうやってポニーテールにすると、あの時の彼氏さんだよね。金髪男くん。 酔った。ワル酔いした。ミワちゃんが勧め
湧き出た男が言う。 「必須グッズに山椒のスギコギがあるけど、辻沢のヴァンパイアがなんでも山椒に弱いってのは、半分本当で半分うそ」 こういうマンスプレイニング男には教えてちゃんになるのが一番。 「ど、どういうことですか? だって、山椒の木にはヴァンパイアは寄り付かないって」 辻沢の常識だ、そんなことは。 「マニュアルどおりにやってちゃ、命幾つあっても足りないってこと。ヤツラには刀とかの金属製の武器は首以外効かないから、みんな山椒で作ったスリコギを持つんだけど、向うさんは怯む程度。でも山椒の古木の武器は一突き出来れば麻痺させられる。そうしておいて首を刈る」 「え! 首を刈る?」 オーゲサなリアクション。 「あ、今のは言葉のあやだよ。首が弱点だからそこを狙うって意味」 なるほど。 「僕たちさ、ついこの間、返り討ちに遭ってね」 あ、後ろの方たちお仲間さんですか? こんばんわ(無声)。まー、Tシャツお揃いで。ウニクロで作ったのかな? 左奥の人、腕に包帯してる。 「いないはずのツレに不意を突かれてさ。けど、この古木の木刀のおかげで死なずに済んだ。これ僕の佩刀」 なに? 先っちょ見ろって? 赤黒い染みがついてる。なるほどあんたの勲章ってことか。 「死地からの生還デスカー。すごいですねー。それでツレっていうのは?」 「ヴァンパイアはシンとツレでセットなんだよね。辻沢のヴァンパイアは女だけだからヴァンパイアの女をシン、他は眷属でツレ。つまり手下の人間。こいつは男女分けず複数いる場合があるから厄介」 ふーん、どっからの情報なんだろ。そういうルールってことかな。 「ツレの方も殲滅するんですか?」 「まさか。僕たちは殺人鬼じゃないよ。あくまでもヴァンパイアスレイヤーだからね」 そうだよね。いくら裏ゲームだって殺人はないよな。あれ、上の方にある黒い木刀、同じやつ町長室にあった。 「こっちの黒い木刀は? 他の3倍の値段しますけど」 「それ? 黒古木刀。樹齢を重ねた山椒の木は稀に芯が黒くなることがあってそれは超堅い。その芯だ
とは言うものの。何から手を付ければいいか? 位置情報が駄々洩れになってるのは最近になって会長に気付かれて行動追えなくなったらしいし。会長の案件は、町長と繋がってる。町長の案件は、お師匠さんの案件に繋がってるっポイ。どれも闇の匂いプンプンさせて。どうしよ。とりあえず、子ネコちゃんにミルクあげに行こ。 仕事のこと考えながらミルクあげてたら、子ネコちゃんにミルクたんまりこぼされた。ミルク飲みながらげっぷするから着てるものドロドロになった。 セイラから電話だ。「はい。いいよ。大通りのヤオマンに行くところ。うん、行けそうにない。え、そうなんだ。『出会い系蛭人間祭』? エンカウント率がいつもの3倍。わかった。女子会終わった頃合流しよう。うん。じゃ」合流するにしても、この格好はちょっとまずいな。 着替え買うつもりで遅くまで開いてるカイシャの系列ショップ来てみたら、なんなのこのコーナー。コスプレ充実度の異常さ。カイシャもいろいろ手出してるんだな。どれがいいかな。おっと、セーラー服だ。たまにこんなの着るのもいいか。辻女っぽいのはないかな。あった、まんま辻女の夏服じゃん。あれ? 何これ、血がプリントされてる、べっとりと。ま、いっか。今着てるのよりはちょっとはましだし。「これください」「『血塗られたJK』ですね。サイズはMでいいですか? 3400円になります。お支払いは?」「これで、お願いします」 ゴリゴリーン。さすがプラチナカード。店員さん受け取るとき一瞬のけぞった。 えっと、どこで着替えようか。トイレはあっちか。「お客さん。スレーヤさんですよね」(ささやき声)「え? あ、はい。そーです」(ささやき声) うそこいた。細かいこと言って悪いが、スレーヤでなくスレイヤーな。大丈夫か? この店員。「なら、奥の別室に専用のショップありますから、見て行かれませんか?」(ささやき声)「そうなんですか? 行ってみたいです」(ささやき声)「ではお連れします。あの、スレーヤカードを一応」(ささやき声) 財布探すふり。「忘れました。また出直します」(大
窓口業務って、人がいなくなればネイルとかしててもゼンゼン平気な感じ。ウチのスマフォおかしーから、前使ってたガラケー持ってきた。ひさしぶりにワンセグ。『モールス』やっててラッキー。クロエちゃんやばーい。かわいー。今度『キャリー』も観てみよ。 10時か。いつもながら誰も来ない夜間窓口。あれ? 今、窓の外を誰か通ったよ。ちょっと見て来よ。ってのは死亡フラグだから。ミワちゃんにキツク言われてるし。一つ、窓口から離れません。二つ、話しかけられても答えません。三つ、誰が来てもビビりません。でも、これはないよ。うそっしょ? 無理無理無理無理無理。まじでウチ腰抜けそ。「レイカ、ココロだよ」(知ってる。知ってるから。逆に、お口のまわりべっとり血ィついてるし。制服のどす黒いのも血?)「ウチら友だちだよね」(その制服、辻女の夏服だよね。しかも、なんか、くっさ。かと思ったら、日向のニオイする。なんでゾンビがほっこりしたニオイさせてんの?)「レイカは返事してくれないんだ」(それに、その爪伸びすぎだから。女の子なんだから、ちゃんとお手入れしよ。机の上のネイル。それ新作の御影石ラメ。それあげっからさ。もう、帰って。お願いだから)やっと帰ってくれた。なんか言いたそうだったけど、何なの? もう。ココロがゾンビになって戻って来たって、みんなに言うべき?
エレベーター走んなくても普通に乗れたんだけど、何なの? 〈ゴリゴリーン。8階です〉 え? ナニナニ。なんのモヨーシ? ドヤドヤドヤって、人がいっぱい。押すなって、潰れるっての。レディーが一人乗ってますよー(無声)。 マジ? ホントにモー無理。またセーヘキ軍団と一緒になった。こいつらとエレベーターでギューギューって最悪。ショーンが言ってた変なのってのはこいつらのことか。分かってて避けやがったな、ショーンのやつ。 押すな。いてーよ。無理して乗ろうとするなよ。諦めて階段使えや。だからさ、後ろのヤツ。人の髪、クンカクンカしてんなっつーの。ミラーに映ってるからな。わかるの。それから誰だ? ボタン押しまくった奴。 〈締まります。ゴリゴリーン〉 「なんと、制服聖女エリ様がエレベーターホールでお見送りしてくれた」 「これはありえん現象のようだぞ」 「あー、そのようだな」 「しかし、エリ様はお美しかった」 「この世のものとは思えなかった」 〈7階です。ゴリゴリーン〉「……」〈締まります。ゴリゴリーン〉 「ラスボス倒してエリ様を助けたら、この記念にもらった制服、着てもらえるって言ってな」 「血の団結式前にゴリゴリカードのコンプしといてよかったということか」 「だが、すでに制服着ているエリ様がどうやって着るんだ」 〈6階です。ゴリゴリーン〉「……」〈締まります。ゴリゴリーン〉 「……生着替え」 「重ね着はちょっとな」 「ないだろう、それは」 「待て。入り口のヒト、今なんと?」 「生着替え」 〈5階です。ゴリゴリーン〉「「「ホントーか!」」」〈締まります。ゴリゴリーン〉 「やばい、今ホールに声が駄々洩れだった」 「守秘義務、守秘義務」 「秘匿事項、秘匿事項」 「幹事の義務と責任、幹事の義務と責任」 「アカウント・バン、アカウント・バン」 「強制退会、強制退会」 「情報源は?」 「妓鬼討伐ステージの友だちから」 「そんなレベルチのお知り合いが?」 「一応」 〈3階で
眠い。分かってたことだけど、やっぱりあんなことあると昼でも安心して寝てられないよ。これからどうしよう。みんなの所、泊まり歩くってのもな。あーあ。 バス来た。 「役場まで」 ゴリゴリーン。 バスの中、むさ苦しいのが充満してんですけど。宮木野神社前から大量に乗ってきた。例のセーヘキ持ちの同族なのはよっく分かるんだけど、どこ行くの? このバス役場行きだよ。 「血の団結式に呼ばれた我々は」 「課金レベルαのハイエリート」 「つまり上カモの集団」 「『V』まではな。『R』からは幹事だ」 「PT作れるのは幹事だけ」 「PTの人選も、武器の配置も」 「カメラの独占権はでかい」 「ミッションの成否は幹事にありってか」 「幹事でない奴らって」 「土地を持たない農民、網のない漁師」 「あわれだな」 ぐわー。結局役場まで一緒だったよ。3か月じっくりとろ火で煮込んだ汗臭に、シトラス系の消臭スプレーぶっかけたみたいなニオイが体にこびりついちゃった。 お風呂でゴッシゴシ洗ったけど、こびりついたセーヘキ臭は取れてない感じ。ズズー、ズズース。なになに、この書類を9階に届けよと。ごほーびはミワちゃん特製ヘビイチゴミルクセーキ。すでにいただいておりますが。ズズース。 西棟のエレベーター動いてるから、まだ上に人がいるってことだよね。じゃ、今のうちに行って来よ。 はじめて来たけど、フツーに役場してるんだね。ワンフロア全部が厚生課か。食餌係ってどっちかな。あっちの方か。でも、もう人がいない。お、奥の方だけ灯りついてる。人がいる。ひょっとして、ウチとおんなじ夜間窓口な人? 「あのー。特殊戸籍課の者ですが、この書類届けに来ました」 「あー、ありがとうございます。そこ置いといてください」 「遅くまで大変ですね。夜間窓口の方ですか?」 「まさか。頼まれてもそんな仕事しない……。あれ? ネズタロー? もとい、レイカ」 「そういうあなたは、ショーンくん?」 中学の同窓会以来だ。何年ぶりだろ。なんかちょっとイケメンになってない? ようや
お偉い皆さん社長に尻を蹴られるように会議室出て行った。それから30分、まるで居残りシュート練習って感じだな。ずっと質問攻め。社長の聞きたいことは、それじゃないんじゃないですか?「あの社長。会長のことですけど」「そっちもあったね。どう?」「会長は町長と何かやってます」「何かって?」「まだ、はっきりとは分かりません」「分かりそう?」「会長の足取り追っていけば」「どうやって?」「会長は常時位置情報取られてて誰かに行動を監視されてるみたいで」「あー、それね。あいつにスマフォ当てがってやった時からずっとそうなんだけど、バカだから全部行動把握されてるのに気付いてなくてね」 だから会長って車乗るといっつもシガーソケットから電源とって繋いでたんだ。位置情報サービス使うせいで電源早くなくなって。「ヒビキんところに足しげく通ってたのも記録されてたな。3年前だけど」 いいえ、社長。通ってたんじゃないです。だって、あたしはですね、せっまい公団住宅に母親と同居ですから。「東京の本店がダメになって、カスをこっちに戻したけど置き所なくってね。新人のあんたを付けて閑職与えてやったら、あんたに手を出した」 社長、なんか誤解があるみたいです。「あんたには申し訳なかったね。すぐに引っ剥がしてあたしの手元にとりあえず置いたけど」 とりあえず? 聞いてない。「ところが、あんたは名前の通りよく響くっていうのか、勘所知ってるってのか、言われる前にいつの間にか結果出してる。気付けばなんでも頼めるようになってた」 で、そのなんでもというのは?「白いエクサス、欲しいだろ?」「はい」「夜勤の後、シャワー浴びたいだろ?」「もちろんです」「じゃあ、よろしくお願い」「期日は?」「変わらず」「7末と9末ですね」「報告は完了届だけでいいよ。しばらく会社出なくていい。専念して。で、これ持って行きな」 おー、プラチナゴリゴリカード。沿線8女高の夏服姿がプリントしてある。こ