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11-2.レイカはメンバのためにヒビキカリンと共闘する

last update Last Updated: 2025-05-06 06:00:17

 ミワちゃんとナナミは、またまた用事があるって先に帰っちゃった。取り残されたウチらはカラオケ行ったけど、すぐ飽きちゃって『この花』の主題歌みんなで歌ってお開きにした。泣けた。

「レイカ。あのね」

「セイラ。ゲームなら」

 そんなだから、ミワちゃんたちも。

「分かってる、でも」

 カリンがセイラを制して、

「レイカ、今日、車あるから送るよ」

 ありゃりゃ、まだ9時じゃん。ニーニーのいるあそこに戻るの、やだな。

「ゴメン。カリンち、泊めてくれないかな」

「え? いいけど。汚いよ」

「それなら、セイラも行く」

「PK?」

「なに?」

「PKってく?」

「パンツ買って行くでPKは無理あるよ」

 うわー。ムラサキの軽自動車だ。これがカリンの車? ウチ、後ろ乗るー。おっと、横に開くのね、このドア。バスケのボール置いてある。わかるよ。女バス出身者の心のよりどころだもんね。ガーーバン。ふーん、中こんななんだ。わりと広いね。天井も高いよ。アタマ、ほれ、ほれ。届かない。座席もっふもふのふっかふか。気持ちいー。

「ナニあばれてんのよ。レイカ」

「ごめん。つい」

 カリンが運転してる。コーコーの同級生が運転する車に乗るのって変な感じする。ってか、カリンの運転アライ。酔った、テキメンニ。

途中一回エチケットタイム設けてもらったけど、何とかたどり着いた。カリンの家は、東揚屋団地。お母さんと二人暮らし。

「入りなよ」

「おじゃましまーす」

「おじゃましまーす」(小声)。

「おかーさん、ただいま」

「夜分にすみません。お邪魔します」

「あら、カリン。おかえ……。ひいーーーーーーーー!」

 おかーさん、奥に行ってドア閉めちゃた。

「あ、やっば。このかっこ」

 そっか、「血塗られたJK」じゃやばいよね。

ゴリゴリゴリゴリ。

「すぎこぎごりごりもうすぐあさがごりごり……」

 カリンのおかーさんてば台所の隅ですり鉢抱えて、

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     湧き出た男が言う。 「必須グッズに山椒のスギコギがあるけど、辻沢のヴァンパイアがなんでも山椒に弱いってのは、半分本当で半分うそ」  こういうマンスプレイニング男には教えてちゃんになるのが一番。 「ど、どういうことですか? だって、山椒の木にはヴァンパイアは寄り付かないって」  辻沢の常識だ、そんなことは。 「マニュアルどおりにやってちゃ、命幾つあっても足りないってこと。ヤツラには刀とかの金属製の武器は首以外効かないから、みんな山椒で作ったスリコギを持つんだけど、向うさんは怯む程度。でも山椒の古木の武器は一突き出来れば麻痺させられる。そうしておいて首を刈る」 「え! 首を刈る?」  オーゲサなリアクション。 「あ、今のは言葉のあやだよ。首が弱点だからそこを狙うって意味」  なるほど。 「僕たちさ、ついこの間、返り討ちに遭ってね」  あ、後ろの方たちお仲間さんですか? こんばんわ(無声)。まー、Tシャツお揃いで。ウニクロで作ったのかな? 左奥の人、腕に包帯してる。 「いないはずのツレに不意を突かれてさ。けど、この古木の木刀のおかげで死なずに済んだ。これ僕の佩刀」  なに? 先っちょ見ろって? 赤黒い染みがついてる。なるほどあんたの勲章ってことか。 「死地からの生還デスカー。すごいですねー。それでツレっていうのは?」 「ヴァンパイアはシンとツレでセットなんだよね。辻沢のヴァンパイアは女だけだからヴァンパイアの女をシン、他は眷属でツレ。つまり手下の人間。こいつは男女分けず複数いる場合があるから厄介」  ふーん、どっからの情報なんだろ。そういうルールってことかな。 「ツレの方も殲滅するんですか?」 「まさか。僕たちは殺人鬼じゃないよ。あくまでもヴァンパイアスレイヤーだからね」  そうだよね。いくら裏ゲームだって殺人はないよな。あれ、上の方にある黒い木刀、同じやつ町長室にあった。 「こっちの黒い木刀は? 他の3倍の値段しますけど」 「それ? 黒古木刀。樹齢を重ねた山椒の木は稀に芯が黒くなることがあってそれは超堅い。その芯だ

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   10-1.ヒビキは会社の裏を知る

     とは言うものの。何から手を付ければいいか? 位置情報が駄々洩れになってるのは最近になって会長に気付かれて行動追えなくなったらしいし。会長の案件は、町長と繋がってる。町長の案件は、お師匠さんの案件に繋がってるっポイ。どれも闇の匂いプンプンさせて。どうしよ。とりあえず、子ネコちゃんにミルクあげに行こ。 仕事のこと考えながらミルクあげてたら、子ネコちゃんにミルクたんまりこぼされた。ミルク飲みながらげっぷするから着てるものドロドロになった。 セイラから電話だ。「はい。いいよ。大通りのヤオマンに行くところ。うん、行けそうにない。え、そうなんだ。『出会い系蛭人間祭』? エンカウント率がいつもの3倍。わかった。女子会終わった頃合流しよう。うん。じゃ」合流するにしても、この格好はちょっとまずいな。 着替え買うつもりで遅くまで開いてるカイシャの系列ショップ来てみたら、なんなのこのコーナー。コスプレ充実度の異常さ。カイシャもいろいろ手出してるんだな。どれがいいかな。おっと、セーラー服だ。たまにこんなの着るのもいいか。辻女っぽいのはないかな。あった、まんま辻女の夏服じゃん。あれ? 何これ、血がプリントされてる、べっとりと。ま、いっか。今着てるのよりはちょっとはましだし。「これください」「『血塗られたJK』ですね。サイズはMでいいですか? 3400円になります。お支払いは?」「これで、お願いします」 ゴリゴリーン。さすがプラチナカード。店員さん受け取るとき一瞬のけぞった。 えっと、どこで着替えようか。トイレはあっちか。「お客さん。スレーヤさんですよね」(ささやき声)「え? あ、はい。そーです」(ささやき声) うそこいた。細かいこと言って悪いが、スレーヤでなくスレイヤーな。大丈夫か? この店員。「なら、奥の別室に専用のショップありますから、見て行かれませんか?」(ささやき声)「そうなんですか? 行ってみたいです」(ささやき声)「ではお連れします。あの、スレーヤカードを一応」(ささやき声) 財布探すふり。「忘れました。また出直します」(大

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   9-3.レイカ、夜間窓口業務を勉強しなおす

     窓口業務って、人がいなくなればネイルとかしててもゼンゼン平気な感じ。ウチのスマフォおかしーから、前使ってたガラケー持ってきた。ひさしぶりにワンセグ。『モールス』やっててラッキー。クロエちゃんやばーい。かわいー。今度『キャリー』も観てみよ。 10時か。いつもながら誰も来ない夜間窓口。あれ? 今、窓の外を誰か通ったよ。ちょっと見て来よ。ってのは死亡フラグだから。ミワちゃんにキツク言われてるし。一つ、窓口から離れません。二つ、話しかけられても答えません。三つ、誰が来てもビビりません。でも、これはないよ。うそっしょ? 無理無理無理無理無理。まじでウチ腰抜けそ。「レイカ、ココロだよ」(知ってる。知ってるから。逆に、お口のまわりべっとり血ィついてるし。制服のどす黒いのも血?)「ウチら友だちだよね」(その制服、辻女の夏服だよね。しかも、なんか、くっさ。かと思ったら、日向のニオイする。なんでゾンビがほっこりしたニオイさせてんの?)「レイカは返事してくれないんだ」(それに、その爪伸びすぎだから。女の子なんだから、ちゃんとお手入れしよ。机の上のネイル。それ新作の御影石ラメ。それあげっからさ。もう、帰って。お願いだから)やっと帰ってくれた。なんか言いたそうだったけど、何なの? もう。ココロがゾンビになって戻って来たって、みんなに言うべき?

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   9-2.レイカ、夜間窓口業務を勉強しなおす

     エレベーター走んなくても普通に乗れたんだけど、何なの? 〈ゴリゴリーン。8階です〉 え? ナニナニ。なんのモヨーシ? ドヤドヤドヤって、人がいっぱい。押すなって、潰れるっての。レディーが一人乗ってますよー(無声)。  マジ? ホントにモー無理。またセーヘキ軍団と一緒になった。こいつらとエレベーターでギューギューって最悪。ショーンが言ってた変なのってのはこいつらのことか。分かってて避けやがったな、ショーンのやつ。  押すな。いてーよ。無理して乗ろうとするなよ。諦めて階段使えや。だからさ、後ろのヤツ。人の髪、クンカクンカしてんなっつーの。ミラーに映ってるからな。わかるの。それから誰だ? ボタン押しまくった奴。 〈締まります。ゴリゴリーン〉 「なんと、制服聖女エリ様がエレベーターホールでお見送りしてくれた」 「これはありえん現象のようだぞ」 「あー、そのようだな」 「しかし、エリ様はお美しかった」 「この世のものとは思えなかった」 〈7階です。ゴリゴリーン〉「……」〈締まります。ゴリゴリーン〉 「ラスボス倒してエリ様を助けたら、この記念にもらった制服、着てもらえるって言ってな」 「血の団結式前にゴリゴリカードのコンプしといてよかったということか」 「だが、すでに制服着ているエリ様がどうやって着るんだ」 〈6階です。ゴリゴリーン〉「……」〈締まります。ゴリゴリーン〉 「……生着替え」 「重ね着はちょっとな」 「ないだろう、それは」 「待て。入り口のヒト、今なんと?」 「生着替え」 〈5階です。ゴリゴリーン〉「「「ホントーか!」」」〈締まります。ゴリゴリーン〉 「やばい、今ホールに声が駄々洩れだった」 「守秘義務、守秘義務」 「秘匿事項、秘匿事項」 「幹事の義務と責任、幹事の義務と責任」 「アカウント・バン、アカウント・バン」 「強制退会、強制退会」 「情報源は?」 「妓鬼討伐ステージの友だちから」 「そんなレベルチのお知り合いが?」 「一応」 〈3階で

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   9-1.レイカ、夜間窓口業務を勉強しなおす

     眠い。分かってたことだけど、やっぱりあんなことあると昼でも安心して寝てられないよ。これからどうしよう。みんなの所、泊まり歩くってのもな。あーあ。   バス来た。 「役場まで」 ゴリゴリーン。 バスの中、むさ苦しいのが充満してんですけど。宮木野神社前から大量に乗ってきた。例のセーヘキ持ちの同族なのはよっく分かるんだけど、どこ行くの? このバス役場行きだよ。 「血の団結式に呼ばれた我々は」 「課金レベルαのハイエリート」 「つまり上カモの集団」 「『V』まではな。『R』からは幹事だ」 「PT作れるのは幹事だけ」 「PTの人選も、武器の配置も」 「カメラの独占権はでかい」 「ミッションの成否は幹事にありってか」 「幹事でない奴らって」 「土地を持たない農民、網のない漁師」 「あわれだな」  ぐわー。結局役場まで一緒だったよ。3か月じっくりとろ火で煮込んだ汗臭に、シトラス系の消臭スプレーぶっかけたみたいなニオイが体にこびりついちゃった。 お風呂でゴッシゴシ洗ったけど、こびりついたセーヘキ臭は取れてない感じ。ズズー、ズズース。なになに、この書類を9階に届けよと。ごほーびはミワちゃん特製ヘビイチゴミルクセーキ。すでにいただいておりますが。ズズース。  西棟のエレベーター動いてるから、まだ上に人がいるってことだよね。じゃ、今のうちに行って来よ。 はじめて来たけど、フツーに役場してるんだね。ワンフロア全部が厚生課か。食餌係ってどっちかな。あっちの方か。でも、もう人がいない。お、奥の方だけ灯りついてる。人がいる。ひょっとして、ウチとおんなじ夜間窓口な人? 「あのー。特殊戸籍課の者ですが、この書類届けに来ました」 「あー、ありがとうございます。そこ置いといてください」 「遅くまで大変ですね。夜間窓口の方ですか?」 「まさか。頼まれてもそんな仕事しない……。あれ? ネズタロー? もとい、レイカ」 「そういうあなたは、ショーンくん?」  中学の同窓会以来だ。何年ぶりだろ。なんかちょっとイケメンになってない? ようやく外見もショーンって名前に追い付いてきたね、そうでないのにハーフみたいなその名前に。まあ、中身のチャラさはもともとショーン級だったけど。 帰り支度のショーンとちょっと立ち話。辻沢を見晴らすラウンジ。夕闇がせまって来てる。

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