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9-1.レイカ、夜間窓口業務を勉強しなおす

last update Last Updated: 2025-05-03 06:00:38

 眠い。分かってたことだけど、やっぱりあんなことあると昼でも安心して寝てられないよ。これからどうしよう。みんなの所、泊まり歩くってのもな。あーあ。

バス来た。

「役場まで」

ゴリゴリーン。

バスの中、むさ苦しいのが充満してんですけど。宮木野神社前から大量に乗ってきた。例のセーヘキ持ちの同族なのはよっく分かるんだけど、どこ行くの? このバス役場行きだよ。

「血の団結式に呼ばれた我々は」

「課金レベルαのハイエリート」

「つまり上カモの集団」

「『V』まではな。『R』からは幹事だ」

「PT作れるのは幹事だけ」

「PTの人選も、武器の配置も」

「カメラの独占権はでかい」

「ミッションの成否は幹事にありってか」

「幹事でない奴らって」

「土地を持たない農民、網のない漁師」

「あわれだな」

 ぐわー。結局役場まで一緒だったよ。3か月じっくりとろ火で煮込んだ汗臭に、シトラス系の消臭スプレーぶっかけたみたいなニオイが体にこびりついちゃった。

 お風呂でゴッシゴシ洗ったけど、こびりついたセーヘキ臭は取れてない感じ。ズズー、ズズース。なになに、この書類を9階に届けよと。ごほーびはミワちゃん特製ヘビイチゴミルクセーキ。すでにいただいておりますが。ズズース。

 西棟のエレベーター動いてるから、まだ上に人がいるってことだよね。じゃ、今のうちに行って来よ。

 はじめて来たけど、フツーに役場してるんだね。ワンフロア全部が厚生課か。食餌係ってどっちかな。あっちの方か。でも、もう人がいない。お、奥の方だけ灯りついてる。人がいる。ひょっとして、ウチとおんなじ夜間窓口な人?

「あのー。特殊戸籍課の者ですが、この書類届けに来ました」

「あー、ありがとうございます。そこ置いといてください」

「遅くまで大変ですね。夜間窓口の方ですか?」

「まさか。頼まれてもそんな仕事しない……。あれ? ネズタロー? もとい、レイカ」

「そういうあなたは、ショーンくん?」

 中学の同窓会以来だ。何年ぶりだろ。なんかちょっとイケメンになってない? ようや
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     ミワちゃんにタクシーで家まで送ってもらった。セイラに借りたハンカチ血だらけだ。洗っても落ちなさそうだから、買って返さなきゃだよ。疲れた。お風呂入って寝よ。 傷小さいのに、なかなか血が止まんない。アタマやると血止まんないっていうよね。お風呂入るのやめとけばよかったかな。ん? ニーニーの部屋のほうで音がした。やだな。大急ぎで部屋に帰ろ。ふー、全部鍵かけた。やっべ、ドライヤー持って来るの忘れた。急いでドア開けたからチェーンを外すの忘れてた。で、一回閉めようとしたんだけど、そん時すっごい力でドア引っ張られて、ギリギリチェーンが引っかかって止まって、向うはドアを開こうと揺さぶるものだからウチは弾き飛ばされそうになったけど、必死でしがみついて、めっちゃ怖いの我慢して、無我夢中でドア閉めてもっかい全部鍵掛けたんだけど、どうやってそれができたのか分かんなかった。 ドアの隙間からちらっと見えたのは小さな子供だった。不吉な色の目をこちらに向けて、銀色の牙から涎を滴らせてた。あの子供はニーニーだ。ウチと2段ベッドで寝起きしてた頃のままのニーニーだ。ニーニーもしかしてヴァンパイアだったの? あれじゃ学校にも行けない。だからずっと引き籠ってた? ウチ、これからあんなのと二人で生活すんの? 超怖いって。痛! ズキって。血が止まらない。この傷のせいでニーニー出てきた? 血に誘われて?  夜じゅーずっと、ドアの向こうに何かがいる気配がしてた。ムチューで布団かぶってたら、パパに教わった呪文を思い出した。スギコギの唄。寝れない夜、パパが教えてくれたやつ。どこからあさがあけましょおすぎこぎもって ごりごりごり すぎこぎもって ごりごりごり もうすぐあさがあけますよすぎこぎけずって ぎりぎりぎり すぎこぎけずって ぎりぎりぎり そうらあさがあけました繰り返し、繰り返し、ずっと、ずっと、何回も、何回も、朝が来るまで布団の中で歌い続けた。((ここを開けろ、中に入れろ))って声が頭の中でウルサいから、ワーって聞こ

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   8-7.レイカとヒビキは祭りに酔う

    【レイカ】 そろそろ12時。宮木野神社と志野婦神社の御神輿がこのメヌキドーリの交差点に来合わせる時間。で、ケンカ神輿? しないよ。かわすの、お互いで。宮木野神社の御神輿は、どんだけ優雅に、志野婦神社の御神輿は、どんだけ勇壮にお互いの御神輿を交わしあうかが見せ場。ってパンフに。「おー、来たよ。志野婦のでっかいちん(ピー)だ」(ナナミ、ファール4) どよめき。歓声。また歓声。人垣で何も見えない。ナナミとミワちゃんは背か高いからいいけど、ウチとセイラは人並みだから、さっきからぴょんぴょんしつづけ。疲れるね、セイラ、大丈夫?(無声)。うん、メマイする(無声)。「やだ。アレに辻川雄太郎をよろしくって書いてある」「電飾でギラギラだぞ」「どんだけ名前売りたいんだ?」【ヒビキ】 来た。宮木野の神輿。大外から回って、優雅にかすめてー。で、志野婦の神輿が練りに練って勇壮に。……どうして突っ込んでいくんだよ。喧嘩じゃないんだよ。どこの祭りだと思ってんだ。危ないって! ぶつかったら衝撃に耐えられないんだって、寄せ木だから。あーーーーーーー。やった。爆裂した。派手に。【レイカ】 おー、どよめき。また、どよめき。きっと、ものすごい接近して、あやうくぶつかりそーになってるんだ。ジャンプ! ? 痛っ。なんか飛んで来た。頭に何か当たった。すごい悲鳴が上がってる。阿鼻叫喚? 【ヒビキ】 うわ、下がるな下がるな。後ろに人いるから。あ、すみません。後ろの人の足踏んじゃった。【レイカ】 いたたたた。足踏まれた。さがんなよ、後ろに人がいるっての。なんなの? その被り物。それはヴァンパイアじゃなくてカレー☆パンマンでしょ。【ヒビキ】 って、シラベじゃね。ユサまで。やっべー、逃げろ。じゃない。けが人助けなきゃ。【レイカ】「何があったの? ミワちゃん」「ぶつかった。志野婦のが宮木野のに。志野婦の神輿、

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   8-6.レイカとヒビキは祭りに酔う

    【レイカ】 駅前広場、すごい人だかり。なんだろ。〈本年度のヴァンパイアお揃いコーデコンテスト優勝者はーーー〉〈デゥルデゥルデゥルデゥルデゥルデゥルデゥルデゥル。ジャーーー〉 司会者、口で言ってる。予算のカンケーってやつ?〈天伴連町、ブラック・キャリエッタ姉妹の御二方でした〉 大歓声。あ、さっきの紫と赤のタイツの二人だ。まー順当だろーね、あの二人なら。〈それでは、記念品の授与と優勝イベントのほうを行いたいと思います〉 おー、金のすり鉢&スリコギ棒だ。高そー。大歓声と大拍手。パチパチパチっと。〈次はイベントのほうに移りたいと思います。あ、商品はこっちに預りますので。優勝者のお二人は、前の処刑台のほうにどうぞ。もちょっと前に。そう、そこです。用意があるので少々お待ちください。いいですか? 準備OK?〉「レイカ行くよ」「見て行かないの?」「ウチはいいわ」「あたしもいい」 なら、ウチもいいけど。すごい歓声。「ゴリゴリ! 殺せ! ゴリゴリ! 殺せ! ゴリゴリ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」 地面揺れてる? 【ヒビキ】 うわ、地響きしてる。周りの人たち殺気だってるよ。「ねーさん!」「なに?」「興奮するっすね!」 カワイ、お前も何気に辻っ子だな。【レイカ】 セイラは? 後ろ振り返ったら、舞台の上の二人が真っ赤な絵の具を浴びせかけられてた。セイラ、そんなところにしゃがんでると踏みつぶされちゃうよ。どうしたの? セイラ。息、上がっちゃってる。過呼吸? セイラ身体弱いのにあんな刺激の強いの見るから。大丈夫? 立てる? 行こ。キャリエッタ姉妹の念動力が地獄を呼ぶ前に。なんてね。……セイラ、なんで泣いてるの? うわ! 何あれ。ひどスギ。 【ヒビキ】 あと10分で12時か。あのイベント過激すぎだった。ペンキかけるだけでよくない? 斬首いらないよ。司会者が血まみれのマネキンの首を両脇に抱え

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   8-5.ヒビキも祭りに酔う

     で、いま冷たい手であたしの首ねっこ抑え込んでるのは誰かな?「ヒビキちゃん。人がワルイな。社長の差し金でいろいろ調べてるんだって? 予め言ってくれないと、こっちも準備あるからさ」 この声は町長。どうしてこんなところに?「言ったら極秘調査になりませんから」「おー、極秘調査ね。相変わらずヒビキちゃんは社長の裏仕事手伝ってるのね。でも、あんまりやりすぎると、この可愛い首どうかなっちゃうよ。ダメダメ、後ろ向くのはなし」 そーかよ、まずその手を放せよ。「おっと、どっかのバカみたく指へし折られるのは勘弁」 へし折る? ちょっとひねっただけじゃないの。会長が人のフトモモ触るから。「アタシのこの指はそう簡単には折れないけどね」 気味悪く節くれ立った指があたしの頬をなでた。長っが。触んな、きもい。爪伸びすぎだろ。(「町長? そうだよ。あいつもヴァンパイア。よそ者だけどね」) センプクさんの言ったことは本当だった。「こちとら辻っ子だ。お前らなんぞ怖くない」「あれ? なにいきってるの? 君の友だち殺したのアタシじゃないからね。恨み違いしないでよ」 何だと、ハナ毛。「あんたの指がきもいのはいいとして、腐った菜っ葉の匂いがしてるのはどうしてだ?」「おっと、いけない。ついつい本性出しちゃったよ。人に見られたら大変なことになる」 痛てて。押しやがった、転んじゃっただろ。ん? いない。町長が消えた。どこ行ったんだ? おおー、今頃震えが来た。止まんないよ。怖かった、すごく。 震えは止まったけど腰ぬけた。立ち上がれない。お、ちょうどいい。カワイだ。「おい、そこのセーネン」 そう、お前だよ、カワイ。ちょいちょい、こっちゃ来い。「カレー☆パンマンさんが何のご用でしょうか?」「ばか、あたしだよ。ヒビキ」「えー、ねーさんこんなところで何してるんすか?」「ちょっと転んで立てない。手を貸せ」 カワイに手を引いてもらってようやく立てた。立ち上がる時ふらついてカワイに寄り掛かったら、「ねーさん

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   8-4.ヒビキも祭りに酔う

     ヴァンパイア祭りになってから人の集まり増えたけど、こうやって人ごみの中に佇んでいると、ざわざわとした気持ちになって落ち着かなくなる。多分、この中にヴァンパイアが混じってるって知ってるからなんじゃないかな。さっきすれ違った紫と赤のペアーみたいなそれらしい格好じゃなくて、ごくあたり前の格好して。そいつが4年前にココロをあんな風にしちゃったんだ。 ココロが帰って来たってココロのパパから連絡もらった時は、本当にうれしくてココロんちに飛んで行った。帰ってきたのはずいぶん前だったって電話で言ってたのに、家に着いたら警察に連絡してないって言われて、初めてその時変だなって思った。 なぜかごめんなさい、ごめんなさいって言い続ける痩せ細ったココロのママに案内されて、台所の下の地下室に下りると、そこには猛獣を飼うような檻が設えられていて、中にうつろな目をした辻女の制服姿のココロが立ってた。 その時のココロを見て全て分かった。違うって。これはココロじゃないって。ココロは死んじゃったんだって。一時は、ココロをこんなにした奴が憎くて憎くて、怒りで狂い死にしそうになった。でも時間が過ぎると、やっぱりココロはそこにいて、あたしの名前を呼んでくれるし、黄色く濁った眼球、鋭い牙や爪、血管が赤黒く透けて見える白い肌をしていてもココロはココロだった。 あたしはどうしていいか分からなくなった。そして、毎日学校の帰りに冷たい地下室に籠ってココロと対面しているうちに、こうしてココロと一緒にいられることだけが大切なことに思えてきて、その他のことはウチらには関係ないって気持ちになった。 そうするうちにココロのママが2階のココロの部屋で首を吊って自殺して、ココロのパパがココロの食餌を調達しに出かけたまま帰ってこなくなり、最後はあたしがココロの面倒を見ることになったけど、それもこれも時間が過ぎただけのことで、あたしは何も感じなかった。 だって、死んでしまったココロが目の前にいるこの世界は、あたしにとっては、すべてが停止してしまったのと同じだったから。これからずっと何も変らない、そう思ってたから。

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