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第760話 子供たちを危険に晒す

Author: 花崎紬
「そんなに簡単にできるなら、なぜ静恵の頼みを受け入れる必要がある?」

晋太郎は冷笑した。

「どういう意味だ?」

翔太は理解できなかった。

「あの書斎は、彼と執事しか入れない。他の人が入る時は、必ず彼がその場にいなければならない。

さらに、書斎の扉には虹彩と顔認証が設置されていて、認証に失敗するとアラームが鳴る」

翔太は数秒黙ってから言った。

「言われた通りなら、彼は警戒心が強いな。証拠を手に入れるのは簡単じゃなさそうだ」

晋太郎はその言葉を聞いて、目を細めた。

「そうとも限らない」

「え?」

「後でまたかけなおす」

晋太郎は言った。

電話を切った後、晋太郎は階下に降りて、佑樹と念江を寝室に呼び入れた。

佑樹と念江は疑わしそうに彼を見つめ、佑樹が尋ねた。

「何か用事?」

晋太郎は二人をじっと見つめながら言った。

「顔認証と虹彩のデータを改ざんする方法はあるか?」

佑樹と念江は顔を見合わせた。

念江は少し考え込んで言った。

「まずは、爺さんが入力したデータを取り込んで、それを持ち帰って改ざんする必要があるね」

佑樹は頷いた。

「でも、その間彼が書斎に入れなくなるんじゃない?」

「確かに」

念江が続けた。

「彼がもう一度データを入力し直さないと、入れない」

「もし、現場で追加のデータを一つ入れるとどうなる?」

晋太郎が尋ねた。

「それなら問題はない」

念江が言った。

「一つ追加して、すぐに削除すればいい。ただし…」

晋太郎は眉をひそめた。

「ただし、何だ?」

念江は佑樹を見て言った。

「僕がファイアウォールを突破する瞬間、佑樹がすぐにデータを入力してくれないとダメだ。僕一人では二つのコンピューターを操作できないから」

要するに、この作業には佑樹の協力が必要だということだった。

佑樹が協力しなければ、できない。

今残った問題は佑樹がやりたくないかどうかだけだ。

「行きたくない!」

佑樹は不機嫌そうに眉をひそめて言った。

念江はため息をついた。

彼は佑樹がこう言うだろうと予想していた。

晋太郎は佑樹に向かって言った。

「君もわかっているだろう。これは俺のためにやるんじゃない」

「なら、これをやらなきゃいけない理由を言って」

佑樹はじっと彼を見つめて言った。

「君のお母さんとおじさんのた
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