「で、2人はどう思う?」泣きそうな俺の頭を撫でながら大我がヒロさんとこうちゃんに聞いた。大我は自分たちだけじゃ決められないって言ったもんな。大人の意見も必要になるし…。「熨斗付けて返せばいいだろ。二度と関わるなって言葉と共にな」「そうだねぇ、本当に自分勝手な夫婦だね」2人の言葉にぞくりと背筋が凍った。いつになく2人が怖い。これってもしかしなくてもメチャクチャ怒ってるんだろうか?「やっぱり考えることは一緒か」大我はあっさりと言う。そうでしたこの男もそんなことを言ってた気がします。「ただ…少しだけ問題がな…」「そうだねぇ…」ヒロさんとこうちゃんの言葉に大我も難しそうな顔をする。そうだよね、支援金の一括返金だって言ってたもん。大金が動くもんね…。「ごめん…俺のせいで…」俺がポツリと謝れば「ん?あぁ、違う違うゆいのことじゃない」大我が慌ててそんなことをいう。「問題なのはゆいのことじゃないんだ」「ゆいちゃん…4人の両親っていえば想像できるでしょ?」ヒロさんとこうちゃんにまでそんなことを言われて「4人の両親??」って考えてから「あっ」小さく声を上げた。それって間違いなく大我の2人の母親と2人の父親のことだ。「あの人たちが今回のこの話を聞いてどう出るか想像できない」「本当にな」「ゆいちゃんかなり気に入られてるからね…」3人がゲッソリとした表情を浮かべる。「もしかして…暴走する的な?」確認の意味を込めて聞けば3人がうんうんと何度も頷く。それこそ首を振りすぎて気持ち悪くならないだろうか?ってぐらいには。「怒るのはわかるんだ。その後でどう動くかが想像できないんだよ」「間違いなく、怒りまくるな。あの人たちなら」「4人とも子供が好きだからね。子供を捨てるなんてもってのほかだよ」3人の顔がだんだん疲れた顔になっていく。「なんか…俺のせいでごめん…」それがなんだか申し訳なく思う。「ゆいが悪いわけじゃない。悪いのはあの夫婦だ」「そうだな。契約を無視してるわけだしな」「むしろ、ゆいちゃんが捨ててやればいんだよ」3人の言葉に笑ってしまう。だって、それは大我が言った言葉そのものだもん。「なんか3人とも同じこと言ってる。それだけ俺ってみんなに大事にされてるってことなんだな」うん、これは多分間違いじゃない。ヒロさんやこうちゃん
大我にキレイにしてもらってベッドの上でボーッとしてたらうとうとし始めちゃった。俺をベッドの上に置いたまま大我はどっかに行って戻ってこないんだもん。ゴロンっと寝返りを打って扉が見えるように横になってボーッとしてたらやっぱり眠気が襲ってきて、俺はまたうとうとっとし始めた。だから、大我が2人を連れてきたのにも気付かなかったんだ。「あー、やっぱり寝てるよ」なんて大我の声が遠くの方で聞こえる。「らしいっちゃらしんだけどな」「大ちゃんがちゃんといわないからじゃないの?」なんて、ヒロさんやこうちゃんの声も聞こえてきて「…なんれ?」寝惚け眼で聞いたらしたったらずになった。「今回のこと、唯斗だけじゃなくて、2人にも説明しないといけないだろ?この2人は一応は家族だし、この学園の校医だからな」大我の説明にあぁ、って納得した。俺の変わりに大我が三枝さんから全部、事情を聴いたんだった。俺よりも大我の方が状況が詳しいのと、三枝さんに何と答えたのか聞いてなかったやって思った。「んー、じゃぁ起きる。自分の事だからちゃんと知っとかないと…」ふぁふぅって欠伸をしながら身体を起こして立ち上がろうとして失敗した。脚に力が入りません。そんな意味も込めてジーッと大我を見れば「半分は唯斗にも責任があるんだからな」溜め息をつきながら、大我は俺を抱き上げて寝室を出た。で、いつものソファに座らされた。いつの間に準備したのかテーブルの上には軽めのご飯が置いてあった。「ゆいは、それを食べながら聞いてればいいから。ただし、それだけはちゃんと食べるように!」って大我に言われちゃった。うん、それにはちゃんと理由があるから仕方がない。「ん、わかった。ガンバって食べる」大我が用意してくれたのはサラダとヨーグルトと小さめのクロワッサンが2つ。俺が精神的にダメージを喰らうと急激に食欲がなくなるのをわかっているからのチョイスだ。ヒロさんとこうちゃんにはコーヒーを出してた。「それじゃぁ、今回ゆいの身に何が起きたのかと言
「ぅん、ぁ」 寝返りを打ってコツリと当たる感触に気が付き寝惚けたままで、それがなにかを確認すれば大我だった。 「まだ少し早いから、寝てていいぞ」 なんて、言いながら抱き寄せられた。 「ん、たい、が、ぬくい、ねぇ」 寝惚けたままの頭でそんなことを言えば 「寒くないか?」 なんて反対に聞き返された。それになんで?って思ったけど、珍しく俺たち服着てない。やったまま寝ちゃったらしい。 「んっ、らいじょう~ぶ、ぬくぬく」 ふにゃんって笑いながら大我に抱き着いたら 「寝起きの顔でそれは反則だろクソが、」 なんて言いながら盛大に溜め息をつかれちゃったよ。なんでだよ。って思ったけど、多分悪いのは俺なんだろう。 「んー、たい、がぁ」 俺はそんなことも気にせずに大我により一層抱き着いた。寝惚けてたんだよ本当に。 「お前…襲われても文句、言えないからな」 なんて言葉と共に強く抱き締められて肩口に唇を寄せられてキツク吸われた。いつも大我が付けるその場所により一層濃い痕を残す。そこからはもう、あれよあれよという間にいつものパターンに突入した。「ぁっ、ぁっ、ぁぁ、やぁ、ぁ、ん、らめ、ぁ、んぁ」 自分の中で蠢く指、身体中に落とされるキス。胸と一緒に自身のモノを弄られて身体の至る所が性感帯になった感覚に陥る。 「やぁ、ぁ、らめっ、ぁ、ぁぁ、ぁ、やぁ、いっちゃ、ぁ、ぁぁ、」 大我の与える熱が熱い。触れられる部分が熱い。大我の肩に捕まる指に力が入りガリガリと傷をつけてしまう。 「イケ、我慢しなくていい」 首筋にキスをされて舐められる。 「やぁ、ぁぁ、だめ、ぁ、いくっ、ぁ、ぁぁ」 自分の中で蠢く指や自分のモノを弄られてあっけなくいった。 「んっ、ぁ」 ずるりと抜けていく指の感覚にぶるりと身体が揺れた。 「っ、たい、がぁ、きて、ほしい」 指だけじゃ足りないって身体の奥から訴えてくる。大我とひとつになりたいって… 「待ったはなしだからな」 そういいながら前髪をかき上げる大我にドキリと心臓が飛び跳ねる。ドキドキと早鐘を打つ心臓が痛い。前髪をかき上げた大我の仕草がカッコよすぎて困った。 「やめるか?」 固まったまま動かない俺にニヤリと笑いながら聞いてくる。固まって理由がわかったんだろうな。
「んっ、ふっ、ぁ」 触れ合った唇はいつの間か深いキスに代わり、舌を絡め合う。キスだけで頭がボーっとしてくるぐらい気持ちがいい。 あぁ、やっぱり俺は大我が好きなんだ…なんて、大我からのキスを受け止めながらボンヤリと考えていたら大我の眉間に皺が寄った。 「んっ、ぁ、はぁ、たい、がぁ」 皺が寄った原因は間違いなく俺自身。発情してるわけじゃないけど、俺のフェロモンが溢れた。 「まったく、ゆいの感情の起伏はどこにスイッチがあるんだか…」 なんて、苦笑を浮かべながら大我は言うけど、大我の瞳はすでに色が変化してた。俺はそれが嬉しくて笑ったら、盛大に溜め息をつかれちゃったよ。 「ホントに、後で文句は言うなよ」 大我の言葉に何度もコクコクと頷けばもう一度、俺の唇は大我のそれに塞がれた。 「んっ、ぁ、ふぅ、ぁ」 何度もキスを繰り返しながら、気が付いたら俺は上半身裸だった。うん、大我とのキスが気持ちよくて、キスに気を取られてたら脱がされてた。いや、脱がされていいんだけどさ。だって、俺自身がそれを望んだんだもん。 大我の少し熱い手が背中に添えられて、あいてるもう片方の手は俺の身体を這いまわっていた。しかも、触れるか触れないかの優しいタッチで… 「んっ、ぁ、やぁ、ん、ぁ、ぁ」 それがくすぐったいようで、それでいて甘い痺れをうむ。 「やじゃなくて、イイの間違いだろ?」 なんて意地悪な言葉を言いながら肩口を吸われる。ピリリとする小さな痛み。それは大我が俺に残す印。記憶を飛ばす俺が見てわかるように残された印。神尾大我が俺を欲したという証。 「ぁ、ん、ぁ、たい、がぁ、ぁ、」 意地悪な指が俺の身体を這いまわり、俺の性感帯を暴いていく。身体中に落とされるキスは甘い痺れを残していく。俺が余計なことを考えられなくなるほど、大我は俺に途轍もない愛情をくれる。 「ひゃぁ、ぁ、ん、ぁぁ」 指だけだと思ったら急に胸を舐められてビックリした。 「ぁ、ぁぁ、たい、がぁ、ぁ、ん、ぁぁ」 素肌に触れたくて大我の服に手を掛けたら 「脱ぐのか?」 ジッと俺を見て聞いてくるからコクコクと何度も頷いた。俺の返事を見て大我は俺の額に小さなキスを落とすと服を脱いでくれた。大我に触れたくて、手を伸ばせばその手を取られ、反対に抱き寄せられた。 「唯斗、好きだ」 俺の顔を
Side 唯斗 「んっ、こ、ここは…」 目が覚めて自分がどこにいるのかわからなかった。 「気が付いたか」 その声に反応して声の主を見た瞬間、自分の意思とは関係なしに涙が溢れた。 「っ、たい、大我ぁ」 俺は飛びつかん勢いで大我に抱き着いた。 「大丈夫だ、どこにもいかないから、だから泣け」 飛びついた俺を抱きしめながら告げられる言葉は、俺自身に何が起きたのかを知っていると告げている。 「っ、たい、大我、大我、俺、俺、」 俺は大我に抱き着きバカみたいに大泣きをした。大我の顔を見たら本当にダメだった。自分で処理しきれない感情がグルグルと渦巻いていて、どうしていいのかわからなくて、俺は大我の前で大泣きをしたのだ。 「少しは落ち着いたか?」 涙が止まったけど、離れたくなくて、抱き着いたままの俺に静かに大我が聞いてくるから、小さく頷いた。 「唯斗には悪いとは思ったけど、三枝さんと話をして、現状をすべて聞いた」 俺を抱きしめたままで、大我がゆっくりと話す。 「…ごめん…」 また、俺は大我に迷惑をかけたんだ… 「謝らなくていい。唯斗に聞きたいことがある」 「な、に?」 本当は大我の言葉が怖い。 「聖唯斗の気持ちが知りたい」 「お、れの、きも、ち?」 大我の言葉の意味が分からない。 「あぁ、今回のこと。自分勝手なあの2人のこと聞いて、唯斗はどうしたい?唯斗自身の気持ちが知りたい」 俺を抱きしめてくる大我の腕に少しだけ力が入る。 「俺は…もぉ…嫌だ…もう、俺をほっといてほしい、俺に関わらないで欲しい、俺を捨てたんだったらそのままほっといてほしい」 もぉやだ。本当にほっておいて欲しい。里親になって、また俺を捨てたんだ、これ以上俺に関わってほしくない。捨てたんだったらほっといてほしい。今更俺に踏み込んでこないでくれ… 「唯斗これは俺たちだけで解決できる問題じゃない。それは唯斗もわかるよな?」 大我の言葉にコクリと頷けば 「週末、俺の実家に行こう。今後のことも含めて家族会議をしよう」 「い、いいの?」 大我の言葉についそう聞いてしまった。俺のことで大我の家族にまで迷惑をかけてもいいのかと… 「俺個人の気持ちを言ってもいいか?」 俺の言葉に大我が聞いてくるから小さく頷けば 「唯斗が捨てられるんじゃない、今度は唯斗が
寮の自室に戻り、ベッドの上に聖を寝せてから、兄である拓輝に一報を入れた。 『面倒なことが起きたかもしれない』 と、 約束通り、30分後にかけ直してくれ、話を聞いて怒りが込み上げてきた。一とならず二度も聖唯斗を捨てようとする2人が許せなかった。内容が内容だけに俺たちが決めていい話じゃなかった。「すみません、2週間待ってもらえますか?今回の件で相談したい人たちがいるので、その人たちと話し合いをしてからそちらに返事をしたいと思います」 これは聖唯斗の今後を決める話だ。俺と聖が話し合って決めていい話じゃない。 『えぇ、それは大丈夫です。先方にもそのように伝えますので』 「ありがとうございます。そうしていただけると助かります。聖と話し合って聖から返事を入れますのでもう少しだけ待ってください」 きっと、聖は今回の件で俺に迷惑がいくと考えるだろうな。 『わかりました、聖くんからの返事をお待ちしてます』 そういって電話は切れた。俺は切れた電話を見て溜め息をついた。聖の携帯を机の上に置き、今度は自分の携帯を取り出しアドレスを探し出しボタンを押した。 『どうした』 数回のコールの後で繋がり静かに問われた。 「頼みがるんだけど」 聖の閉じられた瞳から零れ落ちた雫をそっと拭いながら声をかければ 『内容にもよる』 そんな返事が返ってきた。 「週末に家族会議がしたい」 『その内容は?』 俺の言葉にすぐ返事が返るのは流石だなとか感心する。 「聖唯斗の今後のことについて」 『面倒なことが起きたってことだな?』 溜め息交じりに言われた言葉に 「少しどころじゃない、大いに面倒なことが起きた」 ついムキになった俺に 『俺たちも含めて全員でいいのか?』 静かに聞いてくる。 「あぁ、兄貴や煌太さんもいないと意味がない。だから全員での家族会議がしたい」 そう、これは聖唯斗だけの問題じゃない。神尾家の問題でもある。俺の嫁になる唯斗の問題は俺の問題でもあるからな。 『わかった、外出届と外泊届けもプラスしといてやる。明日とりに来いよ』 俺がちゃんとした理由を話さなくても兄貴である拓輝には伝わるのだ。俺が動くのは聖唯斗のためだと知っているから