Chapter: 127いつものようにドラッガーの宴が終われば俺は服を着て歩き出す。 「お前本当に変ったな。こんなお遊びに付き合うなんてな。そんなにあいつらが大切かよ」 渡が俺に言ってくる。 「お前にはわからねぇだろうな…。まぁこんなお遊び何時までも付き合う気はねぇけど?」 俺はタバコを取り出し火をつける。 「ハッ。結局お前も自分が大事じゃねぇかよ。お前が抵抗すればあいつらを潰すぜ?」 渡はナイフで遊びながら言う。 「それはどうかな。お前は知らなすぎる。俺のことをな…。そしてこの街のことを…。まぁ俺は暫くお前に付き合ってやるけどな」 俺はそうとだけ言い残し店を後にした。この街の掟を知らないと火傷するぜ渡。 お前もお前の仲間もな……。そして誰を敵に回すと一番怖いのかもな……。俺は小さくなっていくタバコを揉み消しその場に捨て家に帰るべく歩き出す。 家に帰ればそのまま風呂場に直行。身体に纏わり付く他人の精液と愛液。 どれだけ洗い流してもキレイにはならない……俺は汚れすぎてしまっている…… この手が血で染まっているのと同じように……闇が纏わり付くのと同じように……だから俺は……俺は?俺は何?俺は何なんだ?俺は…偽り…総てが偽り……闇を隠す為の偽り……もっとももう闇は隠しきれないけどな……あいつのせいで……それならそれでいいかもな……どうせ俺はもう戻れないのだから……戻る場所もないのだから…… 俺はタオルを腰に巻き、風呂場から出てキッチンに行き、冷蔵庫の中からビールを取り出し、一気に飲み干す。 空になった缶をゴミ箱に捨て、自分の部屋に向かう。 そのままベッドに倒れこむ。ギシリと軋むが関係ない。 俺はあの金色の髪に会った事がある気がする……何処でだろう?あのきれいな金色の髪…俺は何処かで見た気がする…でも…思い出せない…俺の失くした大切な記憶って一体何?俺にそんなに必要なのか?「考えててもしかたねぇか…。思い出せないものは思い出せねぇんだし…。でも…会えてラッキーだよな。しかも約束までしちゃったし…。無理だろうと思ったんだけどねぇ~…。意外に金狼さんは優しいんだ」 俺はゴロッと身体の向きを変え呟く。同じ金色の髪と漆黒の瞳…もしかして…な~んてまさかね。 生徒会長様が夜の街になんか出歩かないよな。 何考えてるんだか俺って…。 アホら
Última actualización: 2026-05-25
Chapter: 126俺は暫く着歴を見て考えていたがその番号に電話を掛けた。数回のコールの後で 『もしもし?』 そう返事が返ってきた。 「あ…俺…織田だけど…」 そこまで言いかけて言葉が出ない。 『何かあったか?』 落ち着いた返事が返ってくる。 「あのさ…俺とあんたって親しかったのか? …俺…親しい奴以外には番号教えないんだけど…」 俺は躊躇いながら聞いてみる。 『…それを聞いてどうするんだ?』 そんな返事が返ってきた。俺はこいつと親しくなかったのか? 「え…あ…いや…その…」 じゃぁ何故こんなに着歴が残ってるんだ? 『他人に聞いた記憶を知っても仕方ないだろう』 もしかして怒ってる? 「あ…ごめん…」 俺はとっさに謝ってしまった。なんで? 『…電話するぐらいだから仲は悪くなかった。…それ以上は特になにもない』 言葉に棘がある。そう感じるのは何故? 俺が記憶を失くしたから? 「…そ…そうなんだ…ありがと…ごめん…じゃぁ…」 俺はそう言って電話を切った。掛けなければよかった。 何故だかそう感じてしまった。 明らかに彼は怒っていた。なんに対して? 俺に対して?俺が記憶を失くしたから? だから怒ってるのか?どうして?俺と彼との間に何があったんだ?俺は一体何を忘れてしまったんだ?俺の失くした記憶はそんなにも大切なものだったのか?俺に対して? それとも他の人に対して?判らない……何も思い出せない……思い出せないのがこんなにも悔しいなんて……初めて知ったよ……俺の記憶はどこに行ったんだ? もう戻らないのか? 俺は私服に着替えいつものように家を出た。 行く場所はいつもの公園。噴水の側のベンチに膝を抱え座る。いつしかこの格好で座るのが決まりになっていた。 そしていつも空を見上げ、冷たく輝く月を眺めていた。今夜もそう。空を見上げていた。 たった一人。此処で何時も一人で…。「隣いいか?」 そう声を掛けられるまでは…… 「どうぞ」 俺は彼を見て答える。月に照らされる金髪が綺麗だった。夜を思わせるような漆黒の瞳も……。 彼は隣に座るとタバコを取り出し吸い始めた。 思わず見惚れるぐらいかっこいい仕草だった。 「何か付いてるか?」 そう聞かれ俺は 「あ…仕草がカッコいいなぁ~って思って…」 ついそんなことを口にしてい
Última actualización: 2026-05-24
Chapter: 125俺はいつものように学校に行き、いつものように靴を履き替え、階段を上っていた。突然、めまいを感じ手すりに掴まろうとしたその瞬間、 俺はそのまま階段から落ちていった。「織田!」 「しっかりしろ!」 「先生早く!」周りでそう叫んでいる。それを聞きながら俺は意識を手放した。 目を覚ませばそこは病院だった。腕には点滴。 先生と翔太と吉田と…誰?… 「軽い貧血と栄養失調。ちゃんとご飯食べてる?」 そう聞かれ 「食べてません。全部、戻しちゃうんで」 俺は正直に言う。 「やっぱりか。水分だけ?」 そう聞かれ俺は頷く。 「明日から毎日この点滴を受けに来て。じゃなきゃ入院だからね」 先生はそういう。 「はぁ…。入院は勘弁したいですね」 俺はそう答える。 「じゃぁ。毎日、点滴に来ること」 はっきりと言われる。 「はぁ。わかりました」 俺は諦め言う事を聞いた。 「あのさ…さっきから気になってたんだけど…この人、誰?」 俺は金髪でメガネをかけてる人物を指差し聞いてみる。 その途端部屋の中の空気が変わった。 あれ?なんか変なこと言ったか俺?「なぁ蒼樹。お前の両親どうしてる?」 翔太が急にそんなことを聞いてくる。って俺の質問はスルーかよ。 「さぁ?今日も愛人の家じゃねぇの?翔ちゃん聞かなくても知ってるでしょ?」 俺はそう答える。 「じゃぁもう一つZEAって知ってるか?」 翔太はそんなことを聞いてくる。 「この街を仕切ってる暴走族の一つでしょ?ってかこの人、誰?」 俺はそういう。 「生徒会長の金城拓真だ」 そう彼、本人から言われた。 「へぇ~生徒会長さんなんだ。初めて顔見た。あ~当たり前か俺いつも朝会に出てねぇから…」 俺はそういう。でもなんだろう。心に引っかかるこのモヤモヤしたものは? 「蒼樹お前さここ数ヶ月の記憶あるか?」 翔太が真面目な顔をして聞いてくる。 ここ数ヶ月? 「何で?ん~…なんだっけ?いつもと一緒だろ?」 俺はそう答えると行き成り翔太が 「吉さん。こいつ今すぐ頭の検査してやってくれよ」 吉田に向かって言う。 「はぁ?翔太何言ってんのお前?」 俺は訳がわからず言うと 「お前は一番大事な記憶を失くしちまってんだよ!」 翔太が怒鳴りながら言う。 「は?何それ?別に記憶なんて失くしてな
Última actualización: 2026-05-23
Chapter: 124それでも俺達は学校で話すことはない。俺が別れを告げたのだから。 そういう所は徹底してるのよ。お互いにね。俺は一人、教室を出ると東棟へと向かう。 そして2階のある教室に入る。西棟からは死角になって絶対に見つかることのない場所。 お昼休みの時間はちょうど、太陽の日差しが差し込んで昼寝するのには絶好の場所なのだ。俺はそのまま机にうつ伏し目を閉じた。しばしの休憩。 チャイムの鳴る数分前に目を覚まし自分の肩に掛けられているブレザーに驚く。 ふわりと香るコロンの香り。忘れることのできない香り。拓ちゃんのもの。「優しいねぇ~相変わらず」俺は席を立ち拓ちゃんのブレザーを持ち教室を後にした。 特Aクラスを覗き 「雅」 雅を見つけ呼ぶ。 「織田くん。どうしたの?」 俺の傍に来て聞いてくる。 「これ金城に返しといて。後こんなことしないでくれって伝えといて」 雅に拓ちゃんのブレザーを渡し言う。 「え? 拓真となんかあったの?」 雅は驚き聞き返してくる。 「別に。じゃぁ渡しといて」 それだけ言うと自分の教室に入り自分の席に向かう。クラスの連中の視線なんて何とも思いやしない。 今更好奇心の目で見られたって何とも思いやしない。 黒く染まっていく……心が黒く染まっていく……皹が入り血が流れ出す……心が壊れていく……闇に呑まれていく…… 俺は学校から帰るとベッドに倒れた。「はぁ~」溜め息だけが出る。顔を動かし机に視線をやると灰皿の存在に気づく。「あ~…そっか。荷造り荷造り…」 ふと拓ちゃんの服が置きっぱなしになってるのを思い出し、俺は1階に行き手ごろな大きさのダンボールを探し出しそこに拓ちゃんの荷物を入れ、机の上に置いてあるタバコの束も一緒に入れ封をして荷物を持ってコンビニに向かった。コンビニで宅配の伝票を書き、レジで会計を済ませ家に戻った。また自分の部屋に行きベッドの上に倒れこむ。 なんもする気が起きない。1カートンだけ残しておいたタバコを取り、封を開けるとその中からタバコを出し、机の引き出しからライターを取り火を付けた。久し振りに吸うタバコ。 「知ったら怒られるんだろうけどなぁ~」 なんて呟きながらも紫煙を吐き出す。 どうせ闇に染まっていくのなら……こうやって染まっていっても同じだよ……今更何も変わらない…
Última actualización: 2026-05-22
Chapter: 123公園を出てすぐ俺の携帯が鳴った。相手は渡だ。「なんか用かよ?」俺は溜め息混じりに聞く。『暇だろ? 今から来いよ。あ…これ命令だから』 渡はそれだけ言って一方的に切った。 俺は溜め息をつき行き先を変更した。 俺は目的の場所に着き扉を開けると異様な光景が広がっていた。 いわゆるドラッグパーティ。薬でみんながハイになって騒いでる。「よう。マジで来たな。お前もこれ飲めよ」 渡がそう言って差し出したのは黒と白のカプセル。 「なにこれ?」 俺はそれを受け取り聞いて見る。 「合成ドラッグ『ダークエンジェル』俺たちが改良に改良を重ねたやつだ」 あぁ。やっぱりね。俺にドラッグを初めて教えたのがこの男だ。 俺の場合は身体が拒絶してドラッグを受け付けなかったが…それは今でも同じだ。「悪いけど俺には飲めねぇよ」 そう告げる。 「んだよ。あの頃のままかよ。それじゃぁ違うことしてもらおうかなぁ~」 なんていって渡は俺の腕を掴むとドラッグでハイになってる連中の所に俺を連れて行き 「好きなように犯しちゃって。こいつ慣れてるから。そこら辺の女よりいい身体してるぜ」 ぶん投げる。やっぱりね。こいつにとって俺はいつまで経っても唯の道具にしかないんだ。「へぇ~。上玉じゃぁ~ん」 「楽しませてもらおうぜ」なんて言いながら幾つもの手が俺に伸びて来る。 床に押さえ込まれ衣服は剥ぎ取られていく。「なぁなぁ俺一番!」 何とか言いながら俺の中に勢いよく突っ込んでくる。 「…っ…」 いくら慣れてるとはいえいきなりの行為に冷や汗が浮かぶ。 「すっげぇ~。こいつ最高じゃん!」 なんて言いながら動き始める。 気がつけばそこにいるのは男だけじゃない。女もだ。 「じゃぁこっちは私に頂戴」 なんて言いながら俺の上に跨り俺のものを自らの中に入れていく。 「…ん…ぁ…この子最高」 なんて言って動き始める。ドラッガー達の宴が今始まった。 飽きることなく続いたドラッガー達の行為。薬が切れ眠った頃を見計らい俺は自分の服を纏いその場所を後にした。 気だるい身体で家に帰りシャワーを浴び制服に着替えキッチンに行き朝食を作り出して手が止まった。急に襲い来る吐き気。俺は急いでトイレに駆け込んだ。 「…っ…うっ…げぇ…」 吐くものなんかないのに吐き気だけが起こる。
Última actualización: 2026-05-21
Chapter: 122午後の授業なんて殆どまともに聞いてなかった。ただダラダラとノートを書き写していっただけ。授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。俺はそれと同時にカバンを持ち教室を後にした。あいつのいる場所に長く居たくなかったから。俺は足早に階段を下り下駄箱で靴を履き替えると急いでバス停に向かった。この時間なら丁度来るのだ。俺はそれに乗り込むと小さく息を吐いた……。流れていく景色。この景色でさえ今の俺には色褪せて見える。二人を失くしたら俺はきっと……きっと……闇に飲まれていくんだろな……バスを下り家に向かって歩いていく。誰もいない家。もう誰も来なくなるんだね。俺は鍵を開け家の中に入る。し-んと静まり返る室内。あの頃に逆戻りするんだな。誰もいないあの頃に……たった一人で過ごすあの頃に……一人寂しいあの頃に……でもそれは俺が望んだこと。みんなを守るためなら俺は……俺は孤独を選ぶよ。喜んで孤独の中に身を置くよ。皆が守れるのなら……。皆大好きだから……だから一人に戻ろう……いつもの時間。俺はZEAのメンバーが集まる溜まり場に来ていた。「蒼華。話ってなんだよ?」俺が来たことに気付いた翔太が声を掛けてくる。俺は小さく息を吐き「今日でお別れだ。もうZEAに護ってもらう必要はない」はっきりと言い切る。「なっ」「ちょ…」「何で」メンバーからそんな声が
Última actualización: 2026-05-20
Chapter: 14「みんな集まれ、これからお前たちのデビューの話をするぞ」ダンスレッスンをしてる最中に智さんと竜生さんがやって来て、練習は中断された。「これが、今後の日程だよ」竜生さんが僕たち全員に資料を手渡してくれる。「そこに書いてある通り、バックダンサーの正式なデビューは来月から始まる俺たちAGIAのツアー初日に決まった」智さんが僕たち全員を見てハッキリと告げる。「コンサートの最中にお前たちを紹介する時間も作ってあるからな」資料を見ればコンサートの大体のタイムスケジュールが書いてあり、その中にバックダンサーである僕たちの時間もちゃんと作られていた。「お前たちバックダンサーは飾りじゃない。お前たちがいるから俺たちがもっと輝くことができる。お前たちは後ろで俺たちを支えてくれる存在だ」「そうだね、君たちはもうAGIAの仲間だからね」智さんと竜生さんの言葉についにこの時が来たのかって思った。「何か質問はあるか?」「これからもっと練習に時間を取られるから今のうちだよ」2人が質問するなら今のうちだと言ってくれる。不安がないわけじゃないけど……これは僕個人の問題だからここで聞くわけにはいかないよね。僕の中にある一つの懸念。「あー、そうだ。夏葵、お前に後で説明したいことがあるから帰ったら起きてろよ」なんて、智さんに名指しされちゃった。「はい、わかりました」何を言われるのかすっごく不安だけど、今はこっちの事に集中しなきゃね。「あの、俺たちの紹介のときは何かやるんですか?」バックダンサーのリーダーである山瀬さんが声を上げた。「それをバックダンサー同士で考えてほしい。名前の紹介はする、そこで得意技を披露してもいいし…」「個人がわかるように派手に演出してもいいし」智さんと竜生さんがそう、提案をしてくれる。「まぁ、約一名それに抵抗があるやつもいるけどな」なんて、僕の方を見てニヤリと笑う意地悪な智さんがいた。「そうだね、夏葵は抵抗ありそうだね」なんて竜生さんまでも言う。でもそれは否定できない。幼い頃のトラウマがあるから…「それって、俺たちが好きなようにやっていいってことですか?」早川さんが聞いている。他の2人も興味津々に智さんたちを見ていた。「おう、それはお前たちの自由だ。お前たちのための時間だからな」「その時間はバックダンサーである君たち
Última actualización: 2026-05-15
Chapter: 13絶賛、僕は正座をして智さんに怒られ中。原因は…聞かないでください…「お前、いくら何でもありえないだろ!」 智さんの怒鳴り声が部屋中に響き渡る。 「ごめんなさい」 僕は小さくなりながら何度目かの謝罪を口にする。 「一体どうやって生活してきたんだお前は!ここまで何もできないなんて俺は思わなかったぞ」 智さんが呆れた顔をする。 「洗濯と掃除は出来ますけど……」 僕はさらに小さな声で付け加えた。はぁって智さんが大げさにため息をついた。 「確かに、洗濯と掃除は出来てるな」 洗濯と掃除だけは強調されて言われる。 「うぅぅ…」 そう、今、まさに僕が怒られているのはそれ以外のことだったりする。 「食生活が全滅って…お前は今までどうやって生活してきたんだ!」 またしても智さんの怒号が響く。 「ごめんなさぁ~い!!」 僕は半泣きになりながら謝った。ことの発端は、数日前、智さんたちAGIAのメンバーは仕事の為に遠征していった。その間、僕たちダンサー組はスタジオでデビューに向けての練習をしていた。智さんの家で下宿させてもらってる僕は、智さんが遠征に行く前日に、キッチンの使い方とかをあれこれ教わってから留守番を頼まれていた。留守番は特に問題はなかったんだ。そう、問題はない。じゃぁ、何が問題だったのかというと…「どう考えても、お前はまともに食べてないよな?」 そう、僕がちゃんとした食事をとってないことに智さんが激怒しているのだ。 「えっと、ゼリーとかは食べてますけど…」 僕はおどおどと答えた。 「それは食事とはいえないだろが!!」 智さんの声がさらに大きくなった。 「ごめんなさい!!」 反射的に僕はまた謝ってしまう。 「夏葵、お前ずっと一人暮らしだったよな?まさかとは思うけど、ずっとこんな生活をしてたとか言わないだろうな?」 智さんの鋭い視線が僕を射抜く。 「ひっ」 智さんの顔が怖い。本当のことを言ったらますます怒られそうな雰囲気だ。 「どうなんだ?」 少しだけトーンが低くなる智さんの声。 「えっと…こんな感じ…です…」 智さんが怖くて、最後は消えそうなほど小さくなった。 「このバカやろ!」 智さんの拳骨が容赦なく頭に振り下ろされた。 「いった~い!!」 頭を抱えてうずくまる僕の前で、智さんは腕を組んで溜息をついた。
Última actualización: 2026-02-02
Chapter: 12ー次の日ー練習が終わった後で、智さんたちAGIAのメンバーと、事務所の男の人、畠山さんと一緒に僕が借りているアパートに来ていた。智さんが気を利かせて、畠山さんに頼んで、事務所の車を出してもらったんだ。「てか、夏葵お前、荷物少なくないか?」 僕の部屋に入って開口一番に言われた言葉。 「えっと、多分、少ないと思います。荷物を持ってきてないんで…」 そう、僕の荷物はもともと他の場所にあるのだ。ここに引っ越ししてくる前のアパートって意味じゃなくて、元々の僕の住んでいる実家にという意味だ。実家といっても海外なので、すぐに取りに行くということは無理だけどさ。 「はっ? 持ってきてないって?」 「引っ越す前の家にってこと?」 僕の言葉に竜生さんたちが驚いた顔をする。 「あーっ、違います。前に住んでた場所の荷物は全部ここにありますよ。それ以外の荷物はここには置いてないってだけです」 自分のことを誰かに話してるわけじゃないので、ここ以外の場所に荷物があると言えばますます驚いた顔になる。 「やっぱり、業者を呼ぶ必要はなかったみたいだな。なら、さっさと運んでここを片付けて引き渡せるようにしよう」 なんて、智さんが言うから 「りょうか~い」 「だな」 なんてみんなが返事をして、さっさと数少ない僕の荷物を運び出していった。えっと、僕がやらなきゃいけないのに、僕が手を出す前にAGIAのみんなが動いちゃって僕はただそこにいるだけの人状態だった。「よし、荷物は出したから掃除するぞ」 総指揮官になってる智さんの掛け声でまたしてもみんなが動いちゃって僕が手を出す暇がない。でもただ突っ立てるわけじゃないよ僕も。ちゃんと掃除はしましたよ。智さんたちが来て、僕の家の荷物を出して、掃除が終わったの時間は2時間半ぐらいだった。あれ? もっとかかると思ったのに? 早いよみんな。「じゃぁ、この部屋の手続きは責任もって事務所の方でやってもらうってことで、ヤマさん、鍵は預けとくから事務所に戻ったらよろしく」 いつの間にか家の鍵を持っていた智さんが畠山さんと話してた。 「了解。樋口主任に渡してやってもらうよ」 「あの、すみません。僕の事なのにお願いしちゃって」 僕はそんな2人に謝った。だって悪いから…。 「いいってことよ。元をただせば事務所の責任なんだからな。よし、このま
Última actualización: 2025-10-10
Chapter: 11ダンスレッスンをしながら部屋探しって本当に大変だと思う。特に僕の場合は土地勘が全くないから、どこをどう探せばいいのか見当もつかない。だけど、探さないと困るからチラシとか雑誌とかを見ながらめぼしい場所を探してたんだ。自分なりに一生懸命探してたんだよ本当に。 「みんな集まれ、話がある」 ダンスレッスン中に先生がみんなを呼ぶ。僕たちは個人練習をしてる最中だったのをやめて先生の元へと集まればAGIAのみんなが来ていた。 「よし、集まったな。みんなに発表することがあるそうだ」 先生が言えば、智さんと竜生さんが前に出てくる。 「お前たちバックダンサーの発表兼お披露目の日程が決まったぞ」 智さんのその言葉に僕たちがざわつく。ついに決まったんだと…。 「バックダンサーをファンの子たちに紹介するのは3ヶ月後から始まる俺たちのコンサートになった」 竜生さんの言葉にますます騒がしくなる僕たち。 「静かに! まだ、コンサートの内容が決まってないから、ちゃんと決まるまではみんなは今まで通り練習に励んで欲しい」 「はい!」 智さんの言葉に僕たちは返事をした。 「よし、5分後にまた練習始めるからな」 「はい!」 先生の言葉に返事をして、僕たちはまた個人レッスンへと別れた。といっても、さっきの発表の後だからみんなで雑談をしていた。うん、みんな緊張してたんだよね。ついにAGIAのバックダンサーとして発表してもらえるんだって少しだけ騒いでた。この後、普通に練習が再開されて、僕たちはそっちに集中したんだ。だって、本番で失敗したら意味がないからさ。 僕は休憩中、一人で雑誌を見ながら部屋探しをしてた。だって、急いで探さないと時間がないんだ。期限は着々と迫って来てるんだ。だから、休憩中の間もこうして雑誌を見てめぼしいところを探してるんだ。以前の僕だったら住めればいいって感じで探してたけど、今はちょっと、やっぱりね、バックダンサーになるわけだから適当じゃダメかなって思ったんだ。 でも、この周辺の地理がわからないから中々決められないんだ。だからと言って他の人に相談っていうのもできなくて、結局ずっと一人で雑誌と睨めっこしてるんだよね。 無情にも退去期日が近づいてきた。そろそろ本当にどうにかしないとヤバいのに僕はまだ決められずにいた。 「夏葵?」 集中して雑誌を見ていた
Última actualización: 2025-08-17
Chapter: 10結局、この日の僕はせっかく熱が下がったのにもかかわらず、智さんたちAGIAの前で大泣きをしてしまい、また熱がぶり返したということで、退院は許可してもらったけど、これ以上無理はさせれないということで、自宅待機ということになった。勿論、ずっと付き添ってくれていたAGIAのみんなは仕事があるので、僕を家まで送ってから各々の仕事へと向かった。僕は次の日からまたダンスレッスンに参加することになった。「おっ、ちゃんと出てこれたな」 ダンススタジオに入ってきたAGIAのメンバーが僕の姿を見つけてホッとした表情を浮かべ、智さんが安心したようにいった。 「はい、ご心配とご迷惑をおかけしました。昨日1日ゆっくりと休んだんですっかり良くなりました。皆さんありがとうございました」 僕はAGIAのみんなに頭を下げた。勿論、ダンスメンバーや先生たちにはAGIAのみんなが来る前に謝っておいたんだ。 「俺は自分でやりたいように動いただけだから迷惑だとは思ってない」 って、智さんにはまた言われちゃったけどね。この日から僕の練習は本格的に開始された。AGIAのメンバーを交えて、他のメンバーとのフォーメーションとかも練習して、すべての動作を頭と身体に叩き込んだ。大丈夫、まだ鈍ってはないし、記憶力もあの日のままだ。まだ僕は大丈夫、ちゃんと踊れる。僕は智さんたちAGIAのメンバーに必要だといわれたダンスをもっと磨くために、彼らの後ろでサイコーのパフォーマンスができるように一人での練習も本格的に開始した。 僕たちのお披露目会はまだまだ先だから、今は練習をして、AGIAの曲とダンスを覚えるんだ。 AGIAの曲とダンスは覚えてるけど、あれはAGIAのメンバーだけのダンスだから、ダンスメンバーが入ったダンスはまだまだ練習しないとダメなんだ。ダンスメンバーたちとの練習と個人練習を繰り返す日々を1ヶ月ぐらい過ごしたころ、とある連絡が来て僕は愕然としてしまった。それはアパートの退去連絡。行き成りすぎるし、意味が分からなくて、慌てて事務所に問い合わせた。今住んでるアパートはこっちに来るときに事務所の人が手続してくれたやつだもん。「ごめんなさい、夏葵くん。確認をしたら、事務処理をした子のミスで2ヶ月での契約になってたみたいなの。急いで再契約ができないか問い合わせてみたんだけど、ダメだったの。で
Última actualización: 2025-08-05
Chapter: 09このまま幸せに浸っていたいとか、ずっと握ってたいとか思ったけど、僕は起きたとアピールするように、そっと弱い力で握られている手を握り返してみた。「んっ」ピクリと動きゆっくりと顔を上げて僕を見た。そして 「おはよう、気分はどうだ?」 小さく笑った。テレビで見ていたような笑みじゃない笑みに僕の心臓がドキリとはねた。 「おはようございます。大分、落ち着いてます」 うん、これは嘘じゃない。 「熱はどうだ?」 「えっ? ちょっ」 そんなこと言いながら智さんの額が僕の額に当てられた。 目の前に智さんのカッコいい顔があって…。心臓が止まっちゃう…。 「うん、熱も大丈夫そうだな」 クシャリと僕の髪を撫でて笑う。 「ご心配とご迷惑をおかけしました。ホントに…最初から僕は智さんに迷惑ばっかりかけてますね」 自分で言って自分の胸にグサリと言葉が突き刺さる。 「俺は別に迷惑だとか思ってない。そもそも、俺は自分がしたいと思ったことをそのまま実行してるだけだ。こうやってお前の傍にいて世話をするのもな」 まるで余計なことは考えるなと言わんばかりにまた頭を撫でられる。 「でも…僕は…」 僕は自分が思っている以上に過去のことを拘ってるみたいだ。 「なぁ、夏葵。お前が子供の頃に負った傷はお前にしかその傷の痛みはわからない。だから残念だが俺にはお前のその傷の痛みを知ることができない。だけど、そんなお前にハッキリと言えることがある」 智さんが静かにいう言葉を聞き頷く。 「俺はお前のダンスが好きだ。あのオーディションの時の踊りを見て、お前のダンスに惚れた。だから俺はお前にこのままダンスを続けてほしい。俺たちの、イヤ、俺の後ろで踊ってほしい。早瀬夏葵の本当のダンスをもっと見せてほしい。ってまぁ、これは俺のわがままだけどな」 ハッキリと言い切る智さんの言葉に自然と涙が零れ落ちた。ダンスが好きだと言われたこと、自分が必要だと言われたこと、その言葉が僕の中に溶けていく。 「泣くなよ。俺、お前を泣かせてばっかじゃん」 なんて言いながら涙を流す僕を抱きしめてくれる。まるであやすようにポンポンと背中を叩かれ、それが余計に涙を誘う。 「…っ…ごめ…僕…うれ…しぃ…ダン…ス…好き…で…」 「あぁ、もう我慢しなくていい。お前の実力を隠さずに見せつけてやればいい。それを誰も責めな
Última actualización: 2025-08-02
Chapter: 第44話「んっ、んん、んーっ!」 なんて言いながら布団の中で伸び―って伸びたら笑われた。 「なんだよぉ」 文句を言いつつ声がした方を見たら大我じゃなくて、こうちゃんとヒロさんがいた。あれ?デジャブ?これ、前にもあった気が…なんて思いながらジッと二人を見てたら 「おはよう、ゆいちゃん」 「もう、夕方だけどな」 なんて、2人に言われてびっくりして飛び起きた。 「嘘!マジで?」 本当に自分でもびっくりだよ。 「ほら、見てごらん」 飛び起きた俺にこうちゃんが時計を見せてくれた。そこにはハッキリと午後4時の文字が浮かび上がってました。「うわぁ~!俺って寝すぎじゃん。あれ?大我は?」 自分が寝すぎてるのもビックリだけど、大我がいないことに気が付いた。 「委員長様は忙しくて…」 「取り締まりに、保護に…。相変わらず多忙だなあいつは…」 2人はそう説明してくれた。ってことは… 「大我が俺のために?」 この2人がここにいるってことはそういうことなんだろうな。 「うん、それもある」 「ゆいの体調も気になるから見てほしいって言われたから来た」 って苦笑気味に二人がいうから、あぁ、って自分で納得しちゃった。 「朝と夜が逆転してるって大我が言ってたから…」 自分ではそんなつもりなかったんだけどな。 「それだけ、ゆいちゃんにとってあれはショックだったんだよ」 「あの大我が怒るぐらいだからな」 2人の言葉に俺は苦笑を浮かべた。だって、大我がメチャメチャ怒ってるの気付いてたもん。表に出さないようにしてるけど、大我が怒ってるって傍にいてすっごくわかった。でも、嬉しかった。俺の為に行動してくれる大我には感謝しかない。本当に何時も助けられてるもん。「大我ってどれだけいないの?」 俺が気付かないうちに出ていったってことだから… 「お昼からずっと」 「4時間ぐらいはいない。それだけ、仕事が溜まってるってことだな」 2人が教えてくれて、また俺はビックリ。 「えっ…3時前に一回目が覚めて…そのまま寝ちゃって…今16時でしょ…一体俺ってどんだけ寝てんの???」 指折り数えながら思わず叫んじゃった。 「12時間ぐらいは寝てるね」 「それじゃぁ、朝と夜が逆転してもおかしくないな」 2人が呆れたように言ってくるから俺はますます苦笑することになった
Última actualización: 2026-05-15
Chapter: 第43話「んっ」 闇の中に落ちていた意識が戻ってきて、抱きしめられているのに気付いて俺はもっと自分から抱き着いた。その途端にもっと強い力で抱き寄せられた。 それが嬉しくて、もっと強く抱き着いた。そしたらクスって笑われちゃったよ。 「うーっ」 なんだかそれが悔しくて、一人でうなってたら、ますます笑われて、思わず顔を上げて睨んでやった。 「不細工になってる」 なんて言いながら、額に小さなキスが落とされた。 「なっ、なっ」 それがあまりにも突然で、自然な流れで行われてびっくりして変な声が出た。 「ゆいの目が腫れて不細工になってる。ちゃんと冷やしたんだけど、まだ腫れてるな」 そっと、大我の親指が目元を撫でる。 「んー、今回は本当に自分でもびっくりするぐらい涙腺崩壊して、大泣きしてたからなぁ」 「それだけ、唯斗の中では大きな傷になってたってことだからな」 大我の言葉に自然と苦笑が浮かぶ。だって、それは否定できない。中学から今まで大我に支えられてきたのは紛れもない事実だから。 それでも、不思議なことにあれだけ嫌な感情に包まれて、大泣きしたけれど、いつも以上にすっきりしてるし、気持ちが軽くなっている自分がいる。 いつもならもっと、落ちてるはずなのに…。 「唯斗の心のよりどころがちゃんとできたからだろ。もう一人じゃないっていう安心がゆいの心を軽くしてるんだよ。きっとな」 大我の言葉に「あー、そうかも」って納得しちゃった。今まで、大我が傍にいてくれるって、言葉や態度で示してくれてたけど、心のどこかで疑ってたんだ。大我も、大我の家族も、俺のことを捨てるかもしれないって…。疑心暗鬼になってる部分が心のどこかにあったんだ。 でも、それは俺の思い過ごしで…。大我の言葉も行動も全部、嘘偽りがなくて、大我は俺のことを常に優先に考えて、行動してくれていた。今回のことに関しても、今までのことにしても、俺が考えるよりも先に先にと手を打っていった。 俺よりも俺のことを知ってるこの男が常に傍にいてくれたから、俺はここまでこれたんだ。 「うん、やっぱり、俺は大我の愛情がなかったら死ぬ。大我に捨てられたら廃人になって死ぬな」 自分でブツブツ言いながら確信した。それだけ俺は大我に支えてもらってきたのだ。それこそ依存してると言われてもおかしくないぐらいには…。 「心配しなくて
Última actualización: 2026-04-05
Chapter: 第42話「んっ、あ、れ?」 目が覚めて、変な声が出た。ベッドの上でちゃんと服を着て寝てた。寝落ちする前の記憶がある分だけまたやっちゃったと思う。 「たい、が?」 身体を起こして、大我の姿を探せば、机に向かって作業をしてるのを見つけた。 「起きたか、身体は辛くないか?」 俺の嗄れた声で名前を呼んだけど、ちゃんと大我は拾ってくれたらしい。 「ん、だい、じょぉ、ぶ、ちょっと、声、出にくい、けど」 身体はそんなに辛くない。ちょっと、声が嗄れて出にくいだけだ。だからそれを俺は素直に伝えた。 「あー、まぁ、それは仕方がないな。ほら、これ飲んで少しは喉を潤せ」 大我は水の入ったペットボトルを渡してくれた。俺はそれを受け取り飲んだら、半分ぐらい飲んじゃった。 「お腹は空いてるのか?」 そう聞かれて「う~ん」って考え込んだ。空いてるような空いてないような?そんな微妙な感じだったんだ。 「その顔は微妙な感じなんだな」 考え込んでる俺の顔を見て大我が聞いてくるから俺は素直に頷いた。 「食パンがあるからそれでも食べるか?」 なんて聞いてくるけど、大我がただ食パンだけを出すはずがない。きっと軽く食べれるものを作るはずだ。だけど、俺は素直に頷いた。食パンだけでもいいから食べた方がいいかなって自分で思ったんだ。 「なら、トーストでも作るか。自分で動けるか?」 大我が立ちあがり聞いてくる。 「わかんない」 俺は返事をしてからベッドから立ち上がろうとして失敗した。足腰が笑ってる。 「自業自得だからなそれ」 半ば呆れながら大我は俺を抱き上げてリビングまで連れて行ってくれた。そしていつも座ってる場所に座らせてから、キッチンへと行った。うん、俺ってやっぱり大我に迷惑ばっかりかけてるな。なんて思いながらキッチンでゴソゴソ動く大我の背を眺めていた。「お待たせ。熱いから気をつけろよ」 そういいながら大我が俺の前にアツアツのピザトーストとコーヒーを置いてくれた。でも、トースト1枚分だけ。大我さんよくわかってますね。俺が本当に微妙だって。しかもちゃんと切れ目が入ってて残しても大丈夫なようにしてくれてある。 「いただきます」 俺は手を合わせてそれを食べることに専念した。「御馳走様でした」 俺は出してもらったトーストを全部食べ終えて溜め息をついた。全部は食べられないかもって
Última actualización: 2026-02-12
Chapter: 第41話「うっ、ふぅ、ぁ、ん、ぁ、やぁ、ん、ぁ」キスだけで、記憶がどっかに飛んじゃってた俺は気が付けば己の中に大我の熱い塊を招き入れていた。「や、なのか?」なんて言いながら意地悪く動く腰。「やぁ、ぁ、ダメっ、ぁ、ダメっ、ぁ」大我の背にしがみつき爪を立てる。「なら、やめる?」なんて、意地悪く耳元で囁かれる。熱い吐息交じりの声にぶるりと身体が震えた。ぞくりと腰にクル。だからギュって締め付けちゃったよ。「ん?ゆい、やめる?」なんて、また聞かれた。「やぁ、ぁ、ん、ぁ、やめちゃ、やぁ、ん、たい、がぁ、ぁ、」やめてほしいわけじゃない。嫌がってるわけじゃないってわかってるくせに意地悪だ。だから俺は腹いせに大我の背に爪を立てて肩に噛みついた。「っ、じゃぁ、このまま続ける?」噛みついた俺の頭を撫でながら聞いてくるから噛みついたままコクコクと何度も頷けば「じゃぁ、ちゃんと捕まってるんだぞ」なんて言いながら腰を掴まれるとズンッと勢いよく奥まで突き上げられた。「ぁ、ぁ、っ、ぁ、ぁぁ、たい、がぁ、ぁぁ」目の前がチカチカする。俺が一番感じるその場所を狙って大我が何度も突き上げてくるせいだ。「ぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、ダメっ、ぁ、ぁぁ、ん」いつも以上に感じるその行為。心の奥底から神尾大我を欲してる自分がいる。もっと、もっと、もっと、もっと、欲しい、大我が、もっと欲しい「っ、クソッ」そんな呟きと共に唇が奪われた。繰り返すキスが気持ちよくて、絡め合う舌が熱くて、それでももっとして欲しくて俺は何度もキスを求めた。「んっ、ふぅ、ぁ、ん、ふぅ、ぁ、んん」止まらないんだ。自分で止められない。もっと、欲しい。「んっ、ふぅぁ、はっ、ぁ、はぁ」必要以上に大我を求めていたらバリってはがされた。「酸欠、キスはお預け」「ん、やぁ、もっと、ぁ」大我の言葉にイヤイヤと首を振り訴えれば「ダーメ。変わりにこっちで感じて」なんて、また最奥めがけてズンと突き上げられ首筋に吸い付かれた。「ぅぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、らめ、それ、ダメ、ぁ、」イヤイヤと首を振れば「なんで?」首筋を舐めながら聞かれた。「やぁ、それ、ぁ、ん、ぁ、感じ、ぁ、すぎ、て、ぁ、波、きちゃ、ぁ、ぁ」さっきからお腹がキュンキュンしてるんだ。このままいいとこばっかり攻められたら波が来ちゃう。俺はもっと大我
Última actualización: 2026-01-12
Chapter: 第40話「んっ、ふぅ、ぁ、ん」繰り返すキスはいつにも増して甘くて気持ちがいい。「ゆい、と…好きだ」わざととぎって呼ばれる名がぞくりと腰にクル。「ん、ぁ、たい、がぁ、キスぅ、もっと、して」気持ちが高ぶったままの状態で、溢れたフェロモンはいつも以上に濃く強くなる。大我の眉間に皺が寄り、その双眸はとっくに色を変え、澄んだ碧色を煌めかせていた。俺が好きな色。この瞳の大我になら骨の髄まで喰らいつくされたいと思う。普段の大我でもいいんだけど、この色の大我の方がより一層強くそう思う。「キス、だけ?」頬にキスを落とし、耳元で囁かれる。それだけでゾクゾクしてくる。もう、すでに俺は腰砕け状態。ホントに、この男はなんでこんなにもカッコいんだ。「ん、ぁ、やぁ、キス、だけじゃ、足り、ない、ぁ」イヤイヤと首を振ればクスリと笑われる。「じゃぁ、気持ちいいこと一杯する?」なんて、笑いながら聞いてくる。「ん、ぁ、する、ぁ、たい、がぁ、キス、以外、もぉ、して、ぁ」大我に触れたい、触れられたい。キスがしたい。そんな欲求がフェロモンとして溢れかえる。部屋の中に広がる俺の濃くなったフェロモン。「あー、でも、その前にたんま」急に大我が冷静になる。「ぁ、なんで?」不満げに呟けば「なんでって…もしもの保険が必要だから」大我はそういうと俺の頭を撫でて部屋を出ていった。本当はわかってる。俺のために薬を取りに行ったんだってこと。大我は過ちを起こさないために必ず俺の事を考えて行動してくれる。自分がどれだけ大変な状況だとしても…。ここまで濃くなったフェロモンは、確実に発情へと変化する。だってさっきから俺、大我が欲しくてウズウズしてるんだ。それもひどく欲してる。だから、このまま先に進めば確実に発情する。神尾大我という男に発情するのだ。「っ、また酷くなってるな」俺の薬の瓶を持って戻ってきた大我の言葉が詰まる。「んっ、たい、がぁ、欲しぃ、たい、が、が」戻ってきた大我に両手を差し出して訴える。今すぐにでも欲しい。喰らいつくされたい。「わかったから、これだけは飲んでくれ」さっきよりも眉間に酷く皺を寄せながら俺の口元に薬の入った小瓶をもってくる。俺は大我の手を借りてそれを飲み干した。大我は瓶が落ちて、割れない場所に置いて、俺を抱きしめて「ゆい、好きだ」そう告げて唇を塞いだ。触れ合う唇を
Última actualización: 2025-12-19
Chapter: 第39話「劉を送らななきゃいけないからもう行くけど一人で大丈夫?」こうちゃんが俺を心配して聞いてくる。「はい、大丈夫です。今、すごく落ち着てるから一人で大我を待ってられるんで」うん、これは嘘じゃない。昨日までは酷い状態だったけど、今の俺はすごく落ち着ている。「わかった、ゆいちゃんのその言葉を信じるよ。でも、何かあったらちゃんと大ちゃんに連絡するんだよ」少しだけ心配性なこうちゃん。まぁ、俺が酷い状態になるの知ってるからなんだけどね。「うん、大丈夫。劉くん行ってらっしゃい、頑張ってね」俺は劉くんと同じ目線になって声を掛けた。「うん、また今度、大ちゃんと一緒に遊びに来てね」劉くんは大きく頷く。「勿論、大我にお願いして一緒に遊びに行くよ」俺が劉くんの言葉に返事をするとこうちゃんは劉くんを学校に送って行くために帰っていった。シンとなる部屋の中。不思議と落ち着いていた。この場所に来た時は酷い状態で、涙腺だって壊れてたのに、昨夜、夢を見て、朝起きてこうちゃんたちと一緒にいただけで、不思議と落ち着いている。「こうちゃんが片付けもやってくれたからすることないんだよな」そう、こうちゃんがご飯の準備も片付けも全部やってくれたからすることがない。しかも丁寧にお昼のご飯まで作っていってくれたのだ。俺も大我も自分でできるの知ってるはずなのにね。でも、ありがたい。「うん、することないし、大我が帰ってくるまでベッドでゴロゴロしてよう」そう思いながら俺はまたベッドに逆戻り。ベッドのサイドボードに大我が読んでる本が置いてあった。「これ、俺が読んでみたかったやつじゃん」本の題名が俺が読んでみたいと思っていたやつだった。それを手に取りしおりの場所を確認したら、一番最後に挟まっていて、そこは筆者のあとがきの場所だった。「あれ?」そのあとがきを読んで顔が熱くなった。「…これ…ダメだろ…」あとがきはまるで恋文のようなもの。読んだ読者がどう感じるかはその人にもよるが…。俺にはそれが盛大に愛の告白に感じた。「よし、最初から読もう」あとがきにしおりが挟んであるってことは大我は読み終えてるはずだからと、俺は解釈してその本をはじめから読むことにした。そうしてる間に大我が帰ってくるだろうなって思ったんだ。「…はぁ…」集中して、本を全部読み終えてしまった。本を抱きしめ天井を見上
Última actualización: 2025-12-04