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槇瀬光琉
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Novels by 槇瀬光琉

会長様は別れたい

会長様は別れたい

大我と恋人同士になり、発情の暴走も何とか収まった唯斗。ある日、唯斗の元に子供の頃にお世話になっていた養護施設から電話がかかってきて…。まるでそれが火種になったかのように起こる出来事。いつも以上に落ち込む唯斗。そんな唯斗に手を差し伸べたのは恋人である大我だった。
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Chapter: 第43話
「んっ」 闇の中に落ちていた意識が戻ってきて、抱きしめられているのに気付いて俺はもっと自分から抱き着いた。その途端にもっと強い力で抱き寄せられた。 それが嬉しくて、もっと強く抱き着いた。そしたらクスって笑われちゃったよ。 「うーっ」 なんだかそれが悔しくて、一人でうなってたら、ますます笑われて、思わず顔を上げて睨んでやった。 「不細工になってる」 なんて言いながら、額に小さなキスが落とされた。 「なっ、なっ」 それがあまりにも突然で、自然な流れで行われてびっくりして変な声が出た。 「ゆいの目が腫れて不細工になってる。ちゃんと冷やしたんだけど、まだ腫れてるな」 そっと、大我の親指が目元を撫でる。 「んー、今回は本当に自分でもびっくりするぐらい涙腺崩壊して、大泣きしてたからなぁ」 「それだけ、唯斗の中では大きな傷になってたってことだからな」 大我の言葉に自然と苦笑が浮かぶ。だって、それは否定できない。中学から今まで大我に支えられてきたのは紛れもない事実だから。 それでも、不思議なことにあれだけ嫌な感情に包まれて、大泣きしたけれど、いつも以上にすっきりしてるし、気持ちが軽くなっている自分がいる。 いつもならもっと、落ちてるはずなのに…。 「唯斗の心のよりどころがちゃんとできたからだろ。もう一人じゃないっていう安心がゆいの心を軽くしてるんだよ。きっとな」 大我の言葉に「あー、そうかも」って納得しちゃった。今まで、大我が傍にいてくれるって、言葉や態度で示してくれてたけど、心のどこかで疑ってたんだ。大我も、大我の家族も、俺のことを捨てるかもしれないって…。疑心暗鬼になってる部分が心のどこかにあったんだ。 でも、それは俺の思い過ごしで…。大我の言葉も行動も全部、嘘偽りがなくて、大我は俺のことを常に優先に考えて、行動してくれていた。今回のことに関しても、今までのことにしても、俺が考えるよりも先に先にと手を打っていった。 俺よりも俺のことを知ってるこの男が常に傍にいてくれたから、俺はここまでこれたんだ。 「うん、やっぱり、俺は大我の愛情がなかったら死ぬ。大我に捨てられたら廃人になって死ぬな」 自分でブツブツ言いながら確信した。それだけ俺は大我に支えてもらってきたのだ。それこそ依存してると言われてもおかしくないぐらいには…。 「心配しなくて
Last Updated: 2026-04-05
Chapter: 第42話
「んっ、あ、れ?」 目が覚めて、変な声が出た。ベッドの上でちゃんと服を着て寝てた。寝落ちする前の記憶がある分だけまたやっちゃったと思う。 「たい、が?」 身体を起こして、大我の姿を探せば、机に向かって作業をしてるのを見つけた。 「起きたか、身体は辛くないか?」 俺の嗄れた声で名前を呼んだけど、ちゃんと大我は拾ってくれたらしい。 「ん、だい、じょぉ、ぶ、ちょっと、声、出にくい、けど」 身体はそんなに辛くない。ちょっと、声が嗄れて出にくいだけだ。だからそれを俺は素直に伝えた。 「あー、まぁ、それは仕方がないな。ほら、これ飲んで少しは喉を潤せ」 大我は水の入ったペットボトルを渡してくれた。俺はそれを受け取り飲んだら、半分ぐらい飲んじゃった。 「お腹は空いてるのか?」 そう聞かれて「う~ん」って考え込んだ。空いてるような空いてないような?そんな微妙な感じだったんだ。 「その顔は微妙な感じなんだな」 考え込んでる俺の顔を見て大我が聞いてくるから俺は素直に頷いた。 「食パンがあるからそれでも食べるか?」 なんて聞いてくるけど、大我がただ食パンだけを出すはずがない。きっと軽く食べれるものを作るはずだ。だけど、俺は素直に頷いた。食パンだけでもいいから食べた方がいいかなって自分で思ったんだ。 「なら、トーストでも作るか。自分で動けるか?」 大我が立ちあがり聞いてくる。 「わかんない」 俺は返事をしてからベッドから立ち上がろうとして失敗した。足腰が笑ってる。 「自業自得だからなそれ」 半ば呆れながら大我は俺を抱き上げてリビングまで連れて行ってくれた。そしていつも座ってる場所に座らせてから、キッチンへと行った。うん、俺ってやっぱり大我に迷惑ばっかりかけてるな。なんて思いながらキッチンでゴソゴソ動く大我の背を眺めていた。「お待たせ。熱いから気をつけろよ」 そういいながら大我が俺の前にアツアツのピザトーストとコーヒーを置いてくれた。でも、トースト1枚分だけ。大我さんよくわかってますね。俺が本当に微妙だって。しかもちゃんと切れ目が入ってて残しても大丈夫なようにしてくれてある。 「いただきます」 俺は手を合わせてそれを食べることに専念した。「御馳走様でした」 俺は出してもらったトーストを全部食べ終えて溜め息をついた。全部は食べられないかもって
Last Updated: 2026-02-12
Chapter: 第41話
「うっ、ふぅ、ぁ、ん、ぁ、やぁ、ん、ぁ」キスだけで、記憶がどっかに飛んじゃってた俺は気が付けば己の中に大我の熱い塊を招き入れていた。「や、なのか?」なんて言いながら意地悪く動く腰。「やぁ、ぁ、ダメっ、ぁ、ダメっ、ぁ」大我の背にしがみつき爪を立てる。「なら、やめる?」なんて、意地悪く耳元で囁かれる。熱い吐息交じりの声にぶるりと身体が震えた。ぞくりと腰にクル。だからギュって締め付けちゃったよ。「ん?ゆい、やめる?」なんて、また聞かれた。「やぁ、ぁ、ん、ぁ、やめちゃ、やぁ、ん、たい、がぁ、ぁ、」やめてほしいわけじゃない。嫌がってるわけじゃないってわかってるくせに意地悪だ。だから俺は腹いせに大我の背に爪を立てて肩に噛みついた。「っ、じゃぁ、このまま続ける?」噛みついた俺の頭を撫でながら聞いてくるから噛みついたままコクコクと何度も頷けば「じゃぁ、ちゃんと捕まってるんだぞ」なんて言いながら腰を掴まれるとズンッと勢いよく奥まで突き上げられた。「ぁ、ぁ、っ、ぁ、ぁぁ、たい、がぁ、ぁぁ」目の前がチカチカする。俺が一番感じるその場所を狙って大我が何度も突き上げてくるせいだ。「ぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、ダメっ、ぁ、ぁぁ、ん」いつも以上に感じるその行為。心の奥底から神尾大我を欲してる自分がいる。もっと、もっと、もっと、もっと、欲しい、大我が、もっと欲しい「っ、クソッ」そんな呟きと共に唇が奪われた。繰り返すキスが気持ちよくて、絡め合う舌が熱くて、それでももっとして欲しくて俺は何度もキスを求めた。「んっ、ふぅ、ぁ、ん、ふぅ、ぁ、んん」止まらないんだ。自分で止められない。もっと、欲しい。「んっ、ふぅぁ、はっ、ぁ、はぁ」必要以上に大我を求めていたらバリってはがされた。「酸欠、キスはお預け」「ん、やぁ、もっと、ぁ」大我の言葉にイヤイヤと首を振り訴えれば「ダーメ。変わりにこっちで感じて」なんて、また最奥めがけてズンと突き上げられ首筋に吸い付かれた。「ぅぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、らめ、それ、ダメ、ぁ、」イヤイヤと首を振れば「なんで?」首筋を舐めながら聞かれた。「やぁ、それ、ぁ、ん、ぁ、感じ、ぁ、すぎ、て、ぁ、波、きちゃ、ぁ、ぁ」さっきからお腹がキュンキュンしてるんだ。このままいいとこばっかり攻められたら波が来ちゃう。俺はもっと大我
Last Updated: 2026-01-12
Chapter: 第40話
「んっ、ふぅ、ぁ、ん」繰り返すキスはいつにも増して甘くて気持ちがいい。「ゆい、と…好きだ」わざととぎって呼ばれる名がぞくりと腰にクル。「ん、ぁ、たい、がぁ、キスぅ、もっと、して」気持ちが高ぶったままの状態で、溢れたフェロモンはいつも以上に濃く強くなる。大我の眉間に皺が寄り、その双眸はとっくに色を変え、澄んだ碧色を煌めかせていた。俺が好きな色。この瞳の大我になら骨の髄まで喰らいつくされたいと思う。普段の大我でもいいんだけど、この色の大我の方がより一層強くそう思う。「キス、だけ?」頬にキスを落とし、耳元で囁かれる。それだけでゾクゾクしてくる。もう、すでに俺は腰砕け状態。ホントに、この男はなんでこんなにもカッコいんだ。「ん、ぁ、やぁ、キス、だけじゃ、足り、ない、ぁ」イヤイヤと首を振ればクスリと笑われる。「じゃぁ、気持ちいいこと一杯する?」なんて、笑いながら聞いてくる。「ん、ぁ、する、ぁ、たい、がぁ、キス、以外、もぉ、して、ぁ」大我に触れたい、触れられたい。キスがしたい。そんな欲求がフェロモンとして溢れかえる。部屋の中に広がる俺の濃くなったフェロモン。「あー、でも、その前にたんま」急に大我が冷静になる。「ぁ、なんで?」不満げに呟けば「なんでって…もしもの保険が必要だから」大我はそういうと俺の頭を撫でて部屋を出ていった。本当はわかってる。俺のために薬を取りに行ったんだってこと。大我は過ちを起こさないために必ず俺の事を考えて行動してくれる。自分がどれだけ大変な状況だとしても…。ここまで濃くなったフェロモンは、確実に発情へと変化する。だってさっきから俺、大我が欲しくてウズウズしてるんだ。それもひどく欲してる。だから、このまま先に進めば確実に発情する。神尾大我という男に発情するのだ。「っ、また酷くなってるな」俺の薬の瓶を持って戻ってきた大我の言葉が詰まる。「んっ、たい、がぁ、欲しぃ、たい、が、が」戻ってきた大我に両手を差し出して訴える。今すぐにでも欲しい。喰らいつくされたい。「わかったから、これだけは飲んでくれ」さっきよりも眉間に酷く皺を寄せながら俺の口元に薬の入った小瓶をもってくる。俺は大我の手を借りてそれを飲み干した。大我は瓶が落ちて、割れない場所に置いて、俺を抱きしめて「ゆい、好きだ」そう告げて唇を塞いだ。触れ合う唇を
Last Updated: 2025-12-19
Chapter: 第39話
「劉を送らななきゃいけないからもう行くけど一人で大丈夫?」こうちゃんが俺を心配して聞いてくる。「はい、大丈夫です。今、すごく落ち着てるから一人で大我を待ってられるんで」うん、これは嘘じゃない。昨日までは酷い状態だったけど、今の俺はすごく落ち着ている。「わかった、ゆいちゃんのその言葉を信じるよ。でも、何かあったらちゃんと大ちゃんに連絡するんだよ」少しだけ心配性なこうちゃん。まぁ、俺が酷い状態になるの知ってるからなんだけどね。「うん、大丈夫。劉くん行ってらっしゃい、頑張ってね」俺は劉くんと同じ目線になって声を掛けた。「うん、また今度、大ちゃんと一緒に遊びに来てね」劉くんは大きく頷く。「勿論、大我にお願いして一緒に遊びに行くよ」俺が劉くんの言葉に返事をするとこうちゃんは劉くんを学校に送って行くために帰っていった。シンとなる部屋の中。不思議と落ち着いていた。この場所に来た時は酷い状態で、涙腺だって壊れてたのに、昨夜、夢を見て、朝起きてこうちゃんたちと一緒にいただけで、不思議と落ち着いている。「こうちゃんが片付けもやってくれたからすることないんだよな」そう、こうちゃんがご飯の準備も片付けも全部やってくれたからすることがない。しかも丁寧にお昼のご飯まで作っていってくれたのだ。俺も大我も自分でできるの知ってるはずなのにね。でも、ありがたい。「うん、することないし、大我が帰ってくるまでベッドでゴロゴロしてよう」そう思いながら俺はまたベッドに逆戻り。ベッドのサイドボードに大我が読んでる本が置いてあった。「これ、俺が読んでみたかったやつじゃん」本の題名が俺が読んでみたいと思っていたやつだった。それを手に取りしおりの場所を確認したら、一番最後に挟まっていて、そこは筆者のあとがきの場所だった。「あれ?」そのあとがきを読んで顔が熱くなった。「…これ…ダメだろ…」あとがきはまるで恋文のようなもの。読んだ読者がどう感じるかはその人にもよるが…。俺にはそれが盛大に愛の告白に感じた。「よし、最初から読もう」あとがきにしおりが挟んであるってことは大我は読み終えてるはずだからと、俺は解釈してその本をはじめから読むことにした。そうしてる間に大我が帰ってくるだろうなって思ったんだ。「…はぁ…」集中して、本を全部読み終えてしまった。本を抱きしめ天井を見上
Last Updated: 2025-12-04
Chapter: 第38話
「っ、たい、が、っ、」俺は大我に抱き着きまたしても大泣きをし始めた。泣き始めたら止まらない。本当に今の俺は涙腺がぶっ壊れすぎてるらしい。「ホントに涙腺ぶっ壊れてるな。あんまり泣くと目が腫れるんだけどな後でちゃんと冷やすか」俺の頭を撫でながら大我がいうけど、本当に止まらないんだ涙が。「っ、だって、とま、ん、ない」大我の服を掴み訴えてみる。「唯斗には悲しいことも嬉しいことも両方一度に起きて、頭ん中がキャパオーバーしてんだろうな」なんて言いながら撫でられていく頭は気持ちがいい。「んっ、もぉ、考え、らんない、」今の俺は本当に何も考えられない状態だったりする。「今は考えなくてもいい。だけど、また、実家にはいかないといけないから、そん時はしっかりしないとな」小さく笑いながら額にキスをくれる。まるでそれが、何かの呪文のようになって泣いてるにもかかわらず俺は眠たくなってくる。「もう少し、寝ればいい」大我のそんな優しい言葉に俺は頷き、誘われるままに泣きながら再び眠りの中へと誘われていった。夢を見た。大我と俺と…そして、まだ見ぬ大我と俺の子供。それだけじゃない、両親たちと、ヒロさんたち。家族で楽しく過ごしている夢を見た。笑いあって、時にはケンカして、涙を流し、そしてまた笑い合う。そんな優しい夢を見た。凄く心満たされた優しい夢だった。「んっ」ふわふわと夢の中に堕ちていた意識が戻ってきた。ボーっとする頭のまま周りを見渡せば大我の姿はなかった。自分の隣の温もりはなく、布団も冷たくなっている。いつ抜け出したのだろうか?ボーっとしたまま身体を起こし、部屋の中を見渡すが、やっぱり大我はいない。俺は溜め息をつきベッドから降りて部屋を出た。「あっ、ゆいちゃんおはよー」そんな言葉と共に足に抱き着かれた。「へっ?なんで、劉くんが?」ビックリした。この場所にいるはずのない劉くんがいることに。「おはよう、起きたゆいちゃん」そう声を掛けられた方を見ればこうちゃんがお皿をテーブルに置いてる所だった。「おはようございます。なんで2人がここに?」劉くんを抱き上げながら聞いてれば「大ちゃんね、お仕事行っちゃったのー。だからね僕が来たんだよぉ」ニコニコと笑いながら劉くんが教えてくれた。「そっかぁ、ありがとう劉くん」「ごめんね、本当はゆいちゃんとゆっくり話し
Last Updated: 2025-11-24
蒼い華が咲く

蒼い華が咲く

小学校6年生の頃から両親はお互いに不倫をして俺を残しそれぞれの相手の所に行ってしまった。どんなに勉強を頑張ってみても見向きもしてもらえなかった。そして行き着いた場所が夜の街だった。気が付いたら蒼い華とあだ名を付けられていた。心にぽっかりと穴が開いている俺の前に現れたのは金色の狼でした。
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Chapter: 96
自分の格好なんて構わずに自分のクラスに戻り一目散に翔太に駆け寄り抱きついた。「蒼樹?おまっ…」 翔太は一瞬驚いた声を出したけどすぐに俺の異変に気付いた。 「山根悪い。俺と蒼樹ちょっと生徒会室に行く。事件だ」 翔太は抱き着いたままの俺を軽々抱き上げて山根に告げる。 「わかった」 山根の返事を聞くと翔太は足早に教室を出た。 「殺したのか?」 生徒会室に向かう途中に翔太が聞いてくる。 「殺してない…けど…危なかった…」 俺の言葉にホッと息を吐く。俺は翔太に抱きつく腕に力をこめた。「生徒会に行く前にちょっと寄り道するぞ」 翔太はそういいながら行き先を変える。翔太が来たのは誰も使ってない教室。ここは西棟でも誰も来ない場所。扉に凭れながら床に座り込んで優しく俺を抱きしめてくれる。わかってる俺を落ち着かせるためだって…「やったやつの目的は?」 俺の背中を優しくあやすように叩きながら静かに聞いてくる。わかってるよ。言わなきゃいけないの… 「…拓真絡み…でも…」 翔太のシャツをギュッて握りしめる。 「大丈夫だ。金城にはなんもしねぇよ」 そんな言葉と共に優しく頭を撫でられ額に目元に頬に優しいキスが降りてくる。いつも翔太が俺を落ち着かせてくれる行為。それでも今日の俺には効果がない。翔太もそれをわかってる。それでもそれを今この場所でやるのはこれ以上俺が酷くならないため。 「蒼樹。あいつは今日のことを知れば自分で動く。金城はそういうやつだ。だから俺は動かない。動く必要がない」 優しい音色が耳の奥に流れ込む。少しだけ和らいでいく俺の気分。それでも今の俺には意味がない。翔太もそれをわかってる。だから生徒会に行く前にここに来たんだ。 「あんまり長くここにいるわけにはいかねぇからもう行くぞ」 「…ん…」 判ってる。報告しないといけないもんね。 「大丈夫だ」 翔太の優しい声がもう一度、耳の奥に吹き込まれて額に目元に頬に優しいキスを落され最後に唇に落されるもの凄く優しいキス。子供がじゃれ合うようなキス。俺と翔太の儀式。「おし、行く」 翔太はそう宣言して俺を抱き上げたまま立ち上がり生徒会室に向かうために教室を出た。あぁ、これで全部あの人に知られちゃうんだね…俺の大切な恋は終わっちゃうんだね…あの人にサヨナラしなきゃいけないんだね…やっぱり俺は
Last Updated: 2026-04-10
Chapter: 95
「差し入れ」眼の前にオレンジジュースが差し出されて驚いて見れば美咲ちゃんだった。俺はそれを受け取り「ありがとう。みんな、なんか言ってた?」聞いてみる。「働き過ぎだって」美咲ちゃんはそれだけ言うと戻っていった。俺は壁に凭れオレンジジュースを見つめる。「って」突然の痛みに声を上げる。「眉間に皺。なに考えてんだ」翔太が聞いてくる。「オレンジジュース苦手だなぁ~っと…」小さく笑い答える。実際本当のことだし…。ジュースはダメだけどお酒は平気って俺も変だよね。「あぁ、そういえばジュースはダメだったな。変えてやろうか?」翔太も納得して聞き返す。「いいよ。このままで。みんなに悪いからね」俺は一気にそれを飲み干した。「無理しやがって…」翔太は俺の手からコップを取って頭を撫でて戻っていった。「織田、写真いいか?」佐伯が訊いてくる。「ほいほ~い」俺は呼ばれて海馬の方へと戻っていく。どれだけこなしたのかなぁ~??気が遠くなるほど写真を撮りまくってたよ俺?「織田、休憩にいってこい」なんて言われる。「は~い。じゃぁちょっと行ってくる~」俺はそう返事をして教室を出ていく。俺は特に行く場所がないからボーっと歩いてた。ホント俺は別に行く場所がないからダラダラと歩いてた。「先輩ちょっと付き合ってよ」不意に声をかけられて振り返れば見覚えのある顔。拓ちゃん絡みか…。「はいはい。いいけど…」俺はそう返事をして後輩の後についていった。俺が連れてこられたのは誰もいない東棟の教室。ドンっていきなり後ろから押されて勢い余って教室の中に倒れ込む。教室の中には数人の男。あぁ、そういうこと。「男のわりにはキレイじゃん」「上玉じゃん」「だよな」なんて言葉が交わされ押さえ込まれる。はぁ~。俺ってつくづくこういうパターンが多いな。ビリビリと破られていく服。はぁ~めんどくせぇ~「なんか言えよ」「つまんねぇジャン」「怖がってみろよ」あ~あ。今ので完全に変なスイッチ入っちゃったよ俺。「てめぇら邪魔」思いっきり相手を振り解く。「なっ」「てめぇ」「なにしやがる」お決まりのセリフ。俺はゆっくりと立ち上がり「こいよ。相手してやるから」冷たく言い放つ。「貴様!」「舐めんなや!」「くらいやがれ!」男たちは俺に殴りかかってく
Last Updated: 2026-04-09
Chapter: 94 始まりました文化祭
本日は晴天。気分は土砂降り。やってられっかぁ~!!!とか思うものの文化祭が始まってしまったわけです。みんな楽しみにしてたね…。 俺はというと…白いセーラー服に身を包み背中まであるストレートのカツラに淡いピンク色のリップ付。 しかもクラス看板にはしっかりと織田蒼樹と写真撮影。1回200円。なんて文字が…逃げてぇ~!マジで逃げてぇ~!!!でもさ、条件反射というものは恐ろしいもので…気づいたときにはもう 「あの…写真いいですか?」 なんて聞かれれば 「は~い。大丈夫だよ~」 なんてニッコリスマイルで答えちゃうわけで…これで何人目よ?海馬が写真部員だからせっせと撮ってるんだけどね。 あぁ、勿論インスタントカメラだからすぐに写真は出来上がるんだよ。だから撮ったらすぐにお客さんにあげられるんだ。 「あの…ついでにオーダーもお願いしてもいいですか?」 なんて聞かれればにっこりスマイルで 「どうぞ~♪」 なんて答えてクラスのやつに受け渡してしまう自分が怖い。いやさ、俺の瞳って蒼じゃない?だからどんなカッコをしてもわかっちゃうわけよ。 それに今日はメガネしてないし。みんなに取られちゃったんだもん。 しかもさ誰が選んだのかこのカツラって蒼色なわけよ。 だから俺だってバレバレじゃん!「あ~!織田せんぱ~い!キレイ!」 「ほんとだぁ~!」 「せんぱ~い。写真いいですかぁ~!」 なんて団体でこられたりね… 「はいはい。一人で?それともみんなで?」 一応聞いてみる。聞かなくてもわかってるけど… 「みんなのとも欲しいけど一人のも欲しぃ!」 「だよねぇ~」 「だよなぁ~」 なんてね。これお決まりのパタ~ン。 「ほいじゃぁ、団体は一人100円で一人は200円で~す」 なんて軽く説明をしてお金を入れるための小さな箱を差し出す。 「はい!了解です!」 なんて返事が返ってきてお金を入れてくれる
Last Updated: 2026-04-08
Chapter: 93
「じゃぁ、悪いがまた放課後に頼む」拓ちゃんは俺の頭を撫でて自分のクラスに入っていった。俺たちも自分たちのクラスに入って自分の席に着く。「メガネ変えたのか?」いきなり翔ちゃんに聞かれちゃった。「拓ちゃんがね、俺のヤツつけてんだ。拓ちゃんが俺のためにって拓ちゃんなりのアピール」カバンを置いて椅子に座ってメガネを外してそれを見て答えた。「なるほどな。わかるやつにはわかるからな。それでいいんじゃねぇ?」翔ちゃんが優しく俺を撫でてくれる。「あっ…翔太お前、拓ちゃんになんてメールしたんだよ」ふと思い出して聞けば「ん?いや別に?ただお前が落ち込んでるってメールしただけだぜ」この人はほんとに…きっと俺の状態を全部伝えてんだろうな。「頼むからあんま変なメールするなよ」強くは言わずただ呟いただけ。「言わなきゃ伝わらないことだってあるだろうが。特にお前は隠すんだから。それに言っただろ?あいつは今までのやつらとは違うって…信じろって」翔太は俺の頭を何度も撫でてくれる。翔太の言ってることはわかるんだ。「そうだけどさ…でもさ…やっぱり怖いんだ…」一度味わった恐怖は拭いきれないんだ…「そんなのわかってる。でもあいつは違うそれは信じろ。だからな?少しは素直になってみな?っというか十分素直だよな最近。ただ本当の自分が曝け出せないだけで…」うぅ。痛いところをついてくる。さすが翔太だ。「これでも努力してるんだもん。でもやっぱりストッパーがかかっちゃう。どうしても最後の一歩が踏み出せない。もう少し時間がかかりそう」努力はしてるんだ。本当の自分を見せようって。本当の自分を知ってもらおうって。でも最後の一歩が踏み出せない。怖くて…あの人を失うのが怖くて…「あんま無理すんな。あいつはお前のことホントに待っててくれるから」翔太はそう言ってくれる。翔太じゃなきゃわからない俺。翔太に
Last Updated: 2026-04-07
Chapter: 92
pipipipipiいつものように携帯のアラームで目を覚ます。ゴソッと動いて違和感に気付く。あるはずのない温もり。 俺は目を開けてその存在を確かめる。あぁ…やっぱり拓ちゃんだ…俺はその胸にすり寄った。この場所にいるときだけ俺だけのもの…俺だけのものでいられる瞬間…すり寄ったらギュッと抱きしめられた。 「おはよ」 俺は拓ちゃんの胸に顔を埋めたままいえば 「おはよう」 拓ちゃんは抱きしめる腕に少しだけ力を込める。俺…やっぱり拓ちゃんが好き…誰よりも…拓ちゃんが好き…「朝飯、作るか」 拓ちゃんは携帯で時間を確認して言う。 「ん」 俺は小さく頷いた。本当はもっとこうしてたい。でも学校だしね。 拓ちゃんは俺を離すとベッドから降り部屋を出て行った。ほんと…俺が好きでいいのかな?闇を纏う俺が好きでいていいのかな…あなたは太陽のような人なのに…俺は…俺は闇そのもの。ねぇ拓ちゃん…あなたは俺の何を知っているの?あなたは俺のどこまでを知っているの?全部知ってるの?あなたは本当の俺を知っても傍にいてくれるの?俺は拓ちゃんの作ってくれたご飯を食べて二人で一緒に学校に行くために家を出た。いつもなら一人なのに今日は拓ちゃんと一緒…なんか不思議…「バスだけどいい?」 俺は拓ちゃんに聞いてみた。 「あぁ、それでいい」 拓ちゃんはそう返事をしてくれる。 俺たちはバスに乗り込み学校へと向かった。もっと…もっと拓ちゃんの傍にいたい…もっと…傍に…バスに揺られ俺は隣に立ってる拓ちゃんを盗み見る。信じていいのかな…拓ちゃんの言葉…「どうした?」 俺の視線に気が付いた拓ちゃんが訊いてくる。 「ううん、なんでもないよ」 俺はそう誤魔化した。実はさ今、拓ちゃんがつけてるメガネね俺のやつなんだ。俺がつける前に拓ちゃんに取られて掛けられちゃった。 で、俺の方が拓ちゃんのやつ。これさ、拓ちゃんの心遣い。気付くやつは気付くんじゃないのかな?俺と拓ちゃんのメガネが違うの。ホントはすごく嬉しいんだ…たったこれだけのことだけど俺にはすごく嬉しいこと…これだけで幸せを感じられるんだ…バスを降りて溜め息をつく。俺が俺じゃなくなる瞬間。 「行くぞ」 拓ちゃんが声をかけてくるから 「あっ…うん」 俺は返事をして拓ちゃんの後をついていく。門を入っ
Last Updated: 2026-04-05
Chapter: 91
「疲れたか?」 不意に訊かれた。 「えっ?ううん。全然。俺が本当に役立ってるのかが疑問なんだけどね」 俺が素直に言えば 「あぁ、あいつらは必要なこと以外は聞かないからな。あいつらが聞くってことはそれで役立ってるんだよ」 拓ちゃんが言う。拓ちゃんもだよね。拓ちゃんも必要なこと以外言わないのは…「そうなんだ」 う~ん、納得いくようないかないような…俺が考え込んでいたらぐしゃぐしゃっと頭を撫でられた。 見上げればすっごく優しい顔で拓ちゃんが微笑んでた。不覚にもドキッと胸が跳ねる。 「苗代からメールもらった。お前が悩んでるって」 ちょっと、翔太!なに余計なことしてんだよ! 「お前はお前のままでいればいい。俺と距離なんか開けなくていい。そんなことされれば俺のがへこむ。それにあいつらの言葉なんか気にするな。俺が本気で傍にいてほしいと思うのは蒼樹、お前だから…」 拓ちゃんがまた頭を撫でる。 「俺でいいの?俺って隠し事してるよ?そんな俺でもいいの?」 不安を胸に聞いてみる。拒まれるのが怖い。 「いつか話してくれるんだろ?だったらそれでいい。俺は蒼樹がいいんだよ。織田蒼樹がな」 拓ちゃんが笑う。ホントこの人どれだけ俺を喜ばすの?どんだけ俺を喜ばす呪文を知ってるの?俺…拓ちゃんの傍にいたい。このままずっと傍にいたい…「ほら、帰るぞ」 そう言って差し出されたのは拓ちゃんの手。俺はいつものようにその手を握りしめる。伝わる温もりが俺を安心させてくれる。それを合図にするようにゆっくりと手を繋いだまま歩き出す。俺たちは手を繋いだまま俺の家まで帰ってきた。「泊まろうかな」 ポツリと拓ちゃんが言い出す。 「えぇ?俺はいいけど大丈夫なの?」 俺が驚いて聞けば拓ちゃんが少し考え 「決めた。泊まる。明日、教科書を貸してくれ」 はっきり言いきった。そりゃさ、もっと拓ちゃんと一緒にいたいって思ったけどさ驚きですよ。 「それぐらいいいけどさ…まぁいいや…」 俺は玄関の鍵を開る。なんだか拓ちゃんが家に泊まるのが違和感なくなってきた気がする。俺が扉を開ければ拓ちゃんはいつものようにあがって俺の部屋へと向かう。 俺も玄関の鍵を閉めて拓ちゃんの後を追う様に自分の部屋に向かった。部屋に入れば拓ちゃんがブレザーを脱ぎネクタイを外してた。ついでにメガネ
Last Updated: 2026-04-04
アイドルに恋をした僕

アイドルに恋をした僕

子供のころからずっとダンスをしてきた僕。でも僕には誰にも言えないトラウマがあった。そんな僕がアイドルオタクになった。ある日、大好きなアイドルのダンスメンバーのオーディションが開かれることになった。僕は意を決してそれに応募することにした。結果がこわいけどね…
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Chapter: 13
絶賛、僕は正座をして智さんに怒られ中。原因は…聞かないでください…「お前、いくら何でもありえないだろ!」 智さんの怒鳴り声が部屋中に響き渡る。 「ごめんなさい」 僕は小さくなりながら何度目かの謝罪を口にする。 「一体どうやって生活してきたんだお前は!ここまで何もできないなんて俺は思わなかったぞ」 智さんが呆れた顔をする。 「洗濯と掃除は出来ますけど……」 僕はさらに小さな声で付け加えた。はぁって智さんが大げさにため息をついた。 「確かに、洗濯と掃除は出来てるな」 洗濯と掃除だけは強調されて言われる。 「うぅぅ…」 そう、今、まさに僕が怒られているのはそれ以外のことだったりする。 「食生活が全滅って…お前は今までどうやって生活してきたんだ!」 またしても智さんの怒号が響く。 「ごめんなさぁ~い!!」 僕は半泣きになりながら謝った。ことの発端は、数日前、智さんたちAGIAのメンバーは仕事の為に遠征していった。その間、僕たちダンサー組はスタジオでデビューに向けての練習をしていた。智さんの家で下宿させてもらってる僕は、智さんが遠征に行く前日に、キッチンの使い方とかをあれこれ教わってから留守番を頼まれていた。留守番は特に問題はなかったんだ。そう、問題はない。じゃぁ、何が問題だったのかというと…「どう考えても、お前はまともに食べてないよな?」 そう、僕がちゃんとした食事をとってないことに智さんが激怒しているのだ。 「えっと、ゼリーとかは食べてますけど…」 僕はおどおどと答えた。 「それは食事とはいえないだろが!!」 智さんの声がさらに大きくなった。 「ごめんなさい!!」 反射的に僕はまた謝ってしまう。 「夏葵、お前ずっと一人暮らしだったよな?まさかとは思うけど、ずっとこんな生活をしてたとか言わないだろうな?」 智さんの鋭い視線が僕を射抜く。 「ひっ」 智さんの顔が怖い。本当のことを言ったらますます怒られそうな雰囲気だ。 「どうなんだ?」 少しだけトーンが低くなる智さんの声。 「えっと…こんな感じ…です…」 智さんが怖くて、最後は消えそうなほど小さくなった。 「このバカやろ!」 智さんの拳骨が容赦なく頭に振り下ろされた。 「いった~い!!」 頭を抱えてうずくまる僕の前で、智さんは腕を組んで溜息をついた。
Last Updated: 2026-02-02
Chapter: 12
ー次の日ー練習が終わった後で、智さんたちAGIAのメンバーと、事務所の男の人、畠山さんと一緒に僕が借りているアパートに来ていた。智さんが気を利かせて、畠山さんに頼んで、事務所の車を出してもらったんだ。「てか、夏葵お前、荷物少なくないか?」 僕の部屋に入って開口一番に言われた言葉。 「えっと、多分、少ないと思います。荷物を持ってきてないんで…」 そう、僕の荷物はもともと他の場所にあるのだ。ここに引っ越ししてくる前のアパートって意味じゃなくて、元々の僕の住んでいる実家にという意味だ。実家といっても海外なので、すぐに取りに行くということは無理だけどさ。 「はっ? 持ってきてないって?」 「引っ越す前の家にってこと?」 僕の言葉に竜生さんたちが驚いた顔をする。 「あーっ、違います。前に住んでた場所の荷物は全部ここにありますよ。それ以外の荷物はここには置いてないってだけです」 自分のことを誰かに話してるわけじゃないので、ここ以外の場所に荷物があると言えばますます驚いた顔になる。 「やっぱり、業者を呼ぶ必要はなかったみたいだな。なら、さっさと運んでここを片付けて引き渡せるようにしよう」 なんて、智さんが言うから 「りょうか~い」 「だな」 なんてみんなが返事をして、さっさと数少ない僕の荷物を運び出していった。えっと、僕がやらなきゃいけないのに、僕が手を出す前にAGIAのみんなが動いちゃって僕はただそこにいるだけの人状態だった。「よし、荷物は出したから掃除するぞ」 総指揮官になってる智さんの掛け声でまたしてもみんなが動いちゃって僕が手を出す暇がない。でもただ突っ立てるわけじゃないよ僕も。ちゃんと掃除はしましたよ。智さんたちが来て、僕の家の荷物を出して、掃除が終わったの時間は2時間半ぐらいだった。あれ? もっとかかると思ったのに? 早いよみんな。「じゃぁ、この部屋の手続きは責任もって事務所の方でやってもらうってことで、ヤマさん、鍵は預けとくから事務所に戻ったらよろしく」 いつの間にか家の鍵を持っていた智さんが畠山さんと話してた。 「了解。樋口主任に渡してやってもらうよ」 「あの、すみません。僕の事なのにお願いしちゃって」 僕はそんな2人に謝った。だって悪いから…。 「いいってことよ。元をただせば事務所の責任なんだからな。よし、このま
Last Updated: 2025-10-10
Chapter: 11
ダンスレッスンをしながら部屋探しって本当に大変だと思う。特に僕の場合は土地勘が全くないから、どこをどう探せばいいのか見当もつかない。だけど、探さないと困るからチラシとか雑誌とかを見ながらめぼしい場所を探してたんだ。自分なりに一生懸命探してたんだよ本当に。 「みんな集まれ、話がある」 ダンスレッスン中に先生がみんなを呼ぶ。僕たちは個人練習をしてる最中だったのをやめて先生の元へと集まればAGIAのみんなが来ていた。 「よし、集まったな。みんなに発表することがあるそうだ」 先生が言えば、智さんと竜生さんが前に出てくる。 「お前たちバックダンサーの発表兼お披露目の日程が決まったぞ」 智さんのその言葉に僕たちがざわつく。ついに決まったんだと…。 「バックダンサーをファンの子たちに紹介するのは3ヶ月後から始まる俺たちのコンサートになった」 竜生さんの言葉にますます騒がしくなる僕たち。 「静かに! まだ、コンサートの内容が決まってないから、ちゃんと決まるまではみんなは今まで通り練習に励んで欲しい」 「はい!」 智さんの言葉に僕たちは返事をした。 「よし、5分後にまた練習始めるからな」 「はい!」 先生の言葉に返事をして、僕たちはまた個人レッスンへと別れた。といっても、さっきの発表の後だからみんなで雑談をしていた。うん、みんな緊張してたんだよね。ついにAGIAのバックダンサーとして発表してもらえるんだって少しだけ騒いでた。この後、普通に練習が再開されて、僕たちはそっちに集中したんだ。だって、本番で失敗したら意味がないからさ。 僕は休憩中、一人で雑誌を見ながら部屋探しをしてた。だって、急いで探さないと時間がないんだ。期限は着々と迫って来てるんだ。だから、休憩中の間もこうして雑誌を見てめぼしいところを探してるんだ。以前の僕だったら住めればいいって感じで探してたけど、今はちょっと、やっぱりね、バックダンサーになるわけだから適当じゃダメかなって思ったんだ。 でも、この周辺の地理がわからないから中々決められないんだ。だからと言って他の人に相談っていうのもできなくて、結局ずっと一人で雑誌と睨めっこしてるんだよね。 無情にも退去期日が近づいてきた。そろそろ本当にどうにかしないとヤバいのに僕はまだ決められずにいた。 「夏葵?」 集中して雑誌を見ていた
Last Updated: 2025-08-17
Chapter: 10
結局、この日の僕はせっかく熱が下がったのにもかかわらず、智さんたちAGIAの前で大泣きをしてしまい、また熱がぶり返したということで、退院は許可してもらったけど、これ以上無理はさせれないということで、自宅待機ということになった。勿論、ずっと付き添ってくれていたAGIAのみんなは仕事があるので、僕を家まで送ってから各々の仕事へと向かった。僕は次の日からまたダンスレッスンに参加することになった。「おっ、ちゃんと出てこれたな」 ダンススタジオに入ってきたAGIAのメンバーが僕の姿を見つけてホッとした表情を浮かべ、智さんが安心したようにいった。 「はい、ご心配とご迷惑をおかけしました。昨日1日ゆっくりと休んだんですっかり良くなりました。皆さんありがとうございました」 僕はAGIAのみんなに頭を下げた。勿論、ダンスメンバーや先生たちにはAGIAのみんなが来る前に謝っておいたんだ。 「俺は自分でやりたいように動いただけだから迷惑だとは思ってない」 って、智さんにはまた言われちゃったけどね。この日から僕の練習は本格的に開始された。AGIAのメンバーを交えて、他のメンバーとのフォーメーションとかも練習して、すべての動作を頭と身体に叩き込んだ。大丈夫、まだ鈍ってはないし、記憶力もあの日のままだ。まだ僕は大丈夫、ちゃんと踊れる。僕は智さんたちAGIAのメンバーに必要だといわれたダンスをもっと磨くために、彼らの後ろでサイコーのパフォーマンスができるように一人での練習も本格的に開始した。 僕たちのお披露目会はまだまだ先だから、今は練習をして、AGIAの曲とダンスを覚えるんだ。 AGIAの曲とダンスは覚えてるけど、あれはAGIAのメンバーだけのダンスだから、ダンスメンバーが入ったダンスはまだまだ練習しないとダメなんだ。ダンスメンバーたちとの練習と個人練習を繰り返す日々を1ヶ月ぐらい過ごしたころ、とある連絡が来て僕は愕然としてしまった。それはアパートの退去連絡。行き成りすぎるし、意味が分からなくて、慌てて事務所に問い合わせた。今住んでるアパートはこっちに来るときに事務所の人が手続してくれたやつだもん。「ごめんなさい、夏葵くん。確認をしたら、事務処理をした子のミスで2ヶ月での契約になってたみたいなの。急いで再契約ができないか問い合わせてみたんだけど、ダメだったの。で
Last Updated: 2025-08-05
Chapter: 09
このまま幸せに浸っていたいとか、ずっと握ってたいとか思ったけど、僕は起きたとアピールするように、そっと弱い力で握られている手を握り返してみた。「んっ」ピクリと動きゆっくりと顔を上げて僕を見た。そして 「おはよう、気分はどうだ?」 小さく笑った。テレビで見ていたような笑みじゃない笑みに僕の心臓がドキリとはねた。 「おはようございます。大分、落ち着いてます」 うん、これは嘘じゃない。 「熱はどうだ?」 「えっ? ちょっ」 そんなこと言いながら智さんの額が僕の額に当てられた。 目の前に智さんのカッコいい顔があって…。心臓が止まっちゃう…。 「うん、熱も大丈夫そうだな」 クシャリと僕の髪を撫でて笑う。 「ご心配とご迷惑をおかけしました。ホントに…最初から僕は智さんに迷惑ばっかりかけてますね」 自分で言って自分の胸にグサリと言葉が突き刺さる。 「俺は別に迷惑だとか思ってない。そもそも、俺は自分がしたいと思ったことをそのまま実行してるだけだ。こうやってお前の傍にいて世話をするのもな」 まるで余計なことは考えるなと言わんばかりにまた頭を撫でられる。 「でも…僕は…」 僕は自分が思っている以上に過去のことを拘ってるみたいだ。 「なぁ、夏葵。お前が子供の頃に負った傷はお前にしかその傷の痛みはわからない。だから残念だが俺にはお前のその傷の痛みを知ることができない。だけど、そんなお前にハッキリと言えることがある」 智さんが静かにいう言葉を聞き頷く。 「俺はお前のダンスが好きだ。あのオーディションの時の踊りを見て、お前のダンスに惚れた。だから俺はお前にこのままダンスを続けてほしい。俺たちの、イヤ、俺の後ろで踊ってほしい。早瀬夏葵の本当のダンスをもっと見せてほしい。ってまぁ、これは俺のわがままだけどな」 ハッキリと言い切る智さんの言葉に自然と涙が零れ落ちた。ダンスが好きだと言われたこと、自分が必要だと言われたこと、その言葉が僕の中に溶けていく。 「泣くなよ。俺、お前を泣かせてばっかじゃん」 なんて言いながら涙を流す僕を抱きしめてくれる。まるであやすようにポンポンと背中を叩かれ、それが余計に涙を誘う。 「…っ…ごめ…僕…うれ…しぃ…ダン…ス…好き…で…」 「あぁ、もう我慢しなくていい。お前の実力を隠さずに見せつけてやればいい。それを誰も責めな
Last Updated: 2025-08-02
Chapter: 08
真夜中、ふと目を覚ませばそこにはいるはずのない人物がいた。「なんで?」だってここは病院で、今夜、僕は入院だって…「事務所にも病院にもちゃんと許可は取ってある。心配だったんだよ。熱を出した原因は俺にもあるからな」 渋い顔をして答える智さんに 「違うよ。熱を出したのは僕自身のせいだから、智さんがせいじゃないよ」 雨の中に飛び出したのは僕だし、熱を出したのも僕のせい。 「本当は弱ってる今のお前に聞くのは反則だってわかってるんだが、お前はジュニア時代にダンスに関することで何かあって、それが原因で頑なに実力を出そうとしない。違うか?」 智さんの言葉が胸に突き刺さる。やっぱり気づかれてたんだって… 「これを話せばあなたはどう思うんでしょうね…僕は…」一番知られたくない人に知られてしまう。こんな辛い思いをするなら初めっからオーディションなんて受けなければよかった… 僕はずっと隠していたことをすべて話した。子供の頃に何があったのかを、なぜ本当の実力を出さないのか。否、出せないのか…。出せない理由もすべて正直に話した。今も自分の中に燻ぶってる思い、恐怖、不安も…知られることの恐怖、非難されることの恐怖を… 「ちょ…おい…夏葵!」 隠してきたこと、過去に起こったことをすべて智さんに話した直後、僕はまた意識を手放した。それだけ僕にとって過去の出来事は精神的にストレスになっているのだと思う。自分を追い込むぐらいには… 「智どうするんだ?」 「なっちゃん大丈夫かな?」 「夏葵のダンス好きなんだけどな」 「でも、これ完全にトラウマになってるだろ」 「だとしても今のAGIAのバックダンサーには夏葵が必要だ。夏葵のあのダンスが…」夢うつつで聞こえてきたのは智さんたちAGIAの人たちの声。きっとこれは夢なんだ…僕の都合のいい夢なんだ…次に目が覚めるときには冷たい現実が待ってるんだ…あの時と同じ現実が… 朝、目を覚まして僕は固まった。それはもう見事に固まった。 なっ、なんで?なっ、なんで、僕の手を? 自分の手にありえない温もりを感じて、そっちに視線を向ければ僕の手を握った状態でベッドにうつ伏して寝ている智さんがいた。これはどうしたらいいんだろうか?動けないし…ぼ…僕の心臓が爆発しそう…ヤバいんですけど…本当にヤバいって…この間か
Last Updated: 2025-08-01
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