Chapter: 66「あいつは…お前がGoldWolfの前頭だったって知らねぇよ。俺も話してねぇし、そんな情報は今のあいつには必要ねぇからな。今のあいつに欲しいのは金城の愛だけだから…金城の気持ちだけだからさ」 これも事実。蒼樹が一番欲しいのは…一番手に入れたいのは金城自身。金城から与えられる愛情。あいつはそれを今、必死になって欲しがってる。でも本当の自分を曝け出す勇気がなくて身動きが取れなくなってる。 「あいつ…俺が本当のあいつの姿を知ってるのまだ知らないんだろ?」 金城が思い出したように聞いて来る。 「あぁ、知らねぇよ。俺が教えることでもねぇし。あいつが自分でお前に見せなきゃ意味がねぇだろ?」 肩を竦め俺は答える。あいつのことを他人の俺が口に出すことじゃない。あいつ自身が進まなきゃならねぇんだ。特に今回のことは…。「金城は蒼樹をどうしてぇの?」 俺は金城があいつに付き合ってやってる気がしなくもねぇ。あいつのモタモタした自分で解決できない現状に…。 「俺は…今は蒼樹の傍にいられればそれでいい。あいつがいつか俺の気持ちをちゃんと受け止めてくれるまで…俺の気持ちがどれだけ本気か気付いてくれるまで俺は蒼樹の傍にいたい。あいつに伝えたいんだ。俺がどれだけ本気で好きか、どれだけ傍にいたくて、この腕で抱きしめていたいか、あいつをどれだけ必要としているか…」 悲痛な叫びとも思える金城の言葉。あぁ、そうか。金城は金城で臆病なあいつに想いの全てを伝えることができず苦しんでるのか。ほんと不器用なやつら。お互いがお互いのことを気にしすぎて、思いすぎて身動きとれねぇんだから…ほんと不器用だな。それでいて羨ましいとさえ思う。こいつらの純粋な気持ちが…。俺は…自分から手に入れるのを諦めたからな。ふと、視線を窓の外に向ければ彷徨ってる最中の蒼樹と目が合った。あいつも俺と一緒で視力は凄くいい。「なぁ、金城。お前に面白いもん見せてやるよ」 ふと思いついた悪戯。俺は一人笑いながら金城に近づく。 「はぁ?なに言ってんだ?」 いきなりの俺の言葉に金城の眉間に皺が寄る。 「だから面白いもん見せてやるって。滅多に見れねぇぜ。あいつの怒った顔なんてな」だからちょっと俺のすることは目を瞑れ。「あくどい顔だなオイ。まぁ、いい。乗ってやる」 金城は俺の言葉に納得したのか諦めたのか溜め息をつく。
Last Updated: 2026-02-22
Chapter: 65 翔太の想いと拓真の気持ちside翔太「はぁ」 蒼樹が教室を出ていって一人溜め息をつく。なんか色々と問題があるんだが、あいつ自身が身動きが取れねぇ状態にある以上、俺はどうしようもない。金城はお前のこと全部知ってんだぜ?この言葉があいつに告げられたら…あいつがその言葉を聞いたら…あいつは少しは楽になるんだろうか?蒼樹がサボるために校内を彷徨い出したのをいいことに、俺は席を立ち隣のクラスへと向かった。特Aクラスの中を覗き 「なぁ、金城いるか?」 扉の近くにいたやつに声をかけてみる。 「金城くん?あぁ、いるよ。金城くん、お呼びだよ」 そいつはすぐに金城を探し出し呼んでくれる。その声にザワッと室内が騒がしくなり、一気に視線が俺に向けられる。まぁ、俺と金城に特に接点なんてないと思われてるだろうしな。最近は蒼樹が金城にかまい倒してるから、それでかもとは思われてるだろうけどな。 「珍しいな。なにかあったのか?」 少し驚いた顔して金城が扉まで来た。 「ちょっと話がしてぇんだけど大丈夫か?」 俺はこいつの気持ちをもう一度ちゃんと聞いておかなければならねぇから… 「織田は大丈夫なのか?」 少し困った顔になる。 「今サボりに行ったからよ。だから大丈夫だ」 苦笑を浮かべて答えれば 「相変わらずだな。生徒会室に行こう。ここで話す内容じゃないんだろ?」 同じように苦笑を浮かべた金城が言う。やっぱりわかってたんだな。いつか俺が話しに来ることを… 「あぁ、できればその方がいい」 こんな話、誰かに聞かれても困るしな。 「だろうな、行こう」 金城に促される形で俺は生徒会室へと向かった。「どうして黙ってたんだ?」 生徒会室に入るなり聞いてみた。 「すまない」 あまりにもすんなりと金城が謝る。それには驚いた。こんなにもあっさり謝るとは思ってもみなかったから。 「怒っちゃいねぇよ。ただ、なんで金狼だって教えてくれなかったのかって思っただけだ」 俺が初めて金城と接触したとき、まだ金狼という名を名乗ってなかった。だから調べたのだ。あらゆる手を使って…蒼樹のために… 「お前ならその手の情報はすでに持ってるんだろ?俺があいつに接触した時点で…それに金狼といわれるようになったのはGoldWolfを辞めてからだ。…俺はお前たちZEAに…お前に金城拓真として認めてもらいたかったんだよ」
Last Updated: 2026-02-21
Chapter: 64「でも…それで本当によかったの?」 雅が困った顔しながら聞いてくる。そんな顔しなくてもいいのに。 「なにが?恋愛は個人の自由でしょ?俺はそれに関してはなにも言わないよ?真樹だって拓海と付き合ってるし、直海だって晃司と付き合ってるんだし。メンバー同士で付き合ってるやつ他にもいるよ?それってさ本当に自由じゃないのかな?俺が止めることじゃないもん。俺はそこまで口出さないよ?俺が口出す問題じゃないしね。俺がZEAのルールを決めてるわけじゃない」 俺は守られてはいるけどZEAのルールを決めるつもりはない。ZEAのトップは翔太なのだから…翔太が決めることだから…俺は口を出さない。恋愛は自由だから気にしない。でも…でも俺は…俺は…そんな自由な恋愛にすら恐怖している…俺には壊せない壁があるから…過去のトラウマが俺を自由にはさせてくれない…「帰るぞ。お前、疲れてるだろ?」 急に拓ちゃんが言い出す。 「ほえ?別に大丈夫だけど?」 最近の拓ちゃんって翔太並みかも… 「いいから帰るぞ。苗代もういいだろ?」 なんて勝手に翔太に聞いてるし 「あぁ、わりぃ。強引にでも連れて帰ってくれ」 翔太までも言う。はぁ、バレてるのね。俺がまだ引きずってること…しょうがないかぁ相手は翔太だもんね。 「ほいじゃまたね翔太。みんなもまた遊んでねぇ」 俺はメンバーに声をかけてから拓ちゃんと一緒に店を出た。 並んで帰る道。やっぱり会話らしい会話はない。でもさ…それでもすごく落ち着くんだ。拓真が傍にいてくれるからだよね。「あ…あのさ…拓ちゃん」 俺は躊躇いながら声をかけた。 「ん?どうした?」 すぐに返事が返ってきた。 「あのさ…甘えても…甘えてもいいって…言ったよね?」 俺は立ち止り訊いてみる。同じように立ち止まった拓ちゃんがゆっくり振り返る。 「言ったな。どうしたい?どうしてほしい?」 漆黒の瞳が俺を捕らえ訊いてくる。少しの沈黙。そして俺は… 「もう少し…もう少し拓真の傍にいたい…傍にいて欲しい…ダメかな?」 精一杯の勇気を振り絞り思っていたことを口にする。 「なら一つ聞いてもいいか?」 フッと微笑み聞いてくる。 「なに?」 「今夜、蒼樹の家に泊まってもいいか?」 その言葉に涙が出そうになった。あなたはいつもそう…俺の心を見透かしたように…俺の欲し
Last Updated: 2026-02-20
Chapter: 63俺と拓ちゃんはなんの会話もなく正輝さんの店に向かった。こうやって一緒に歩けるだけで俺は嬉しいよ。 店に入ればみんなが来てて騒いでた。まぁ相手はバイクなんだから当たり前なんだけどね。 「そーちゃん!」 なんて抱きついてくるから 「まーくん!」 とまぁいつもの挨拶を例の如く30人分やってのけた。その挨拶を終えてから俺は拓ちゃんを連れて翔太が座ってるボックス席のソファに座った。なんだかんだで雅たちも一緒に来たんだね。 「おまたせぇん」 そう声をかけて拓ちゃんが隣に座ったのを見計らってゴロッと膝枕をする。いつものことだから拓ちゃんはなんにも言わない。 「お前さ、いっつもこんななのか?」 翔ちゃんは驚き半分、呆れ半分って顔で聞いてくる。ん、なんとなく翔太の考えてることわかる。 「うん、だって拓ちゃんの膝って気持ちいいんだもん」 俺は素直に答えた。拓ちゃんの手はゆっくりと俺の頭を撫でてくれる。それがほんと気持ちいい。 「ねぇ翔太…掟…金狼さんも入れてもいいよね?」 俺は戸惑いながら聞いてみる。 「そんな顔すんなって。蒼華の決めたことだ俺は反対しねぇ。それにお前がそんだけ懐いてんだから無碍にはできねぇだろが、金城もお前に対して本気みてぇだし…携帯のデータをくれればそれでいい。なんかあったときに連絡が取れればそれでいいからな」 翔太はクシャッて俺の頭を撫でて答えてくれる。ほんと優しいね。 「だって、拓ちゃんそれでいい?」 今度は拓ちゃんを見上げて聞いてみる。 「あぁ、それでいいなら俺はかまわない」 拓ちゃんはそういって携帯を取りだす。その携帯にメンバー全員のデータが書き込まれた。 「ところで蒼樹。一言言ってもいいか?」 翔太が突然そんなことを言うから 「ん?なぁにぃ?」 不思議に思いながら訊き返せば 「はっきり言ってさ見た目カップルじゃねぇかお前ら。ってか昼間、授業サボって学校でやったんだって?」 なんて言われた。んなぁ!!なんで学校でやったのバレてんの!!雅たちだな、もう。 「いやぁ~ん。えっちぃ~!翔ちゃんともいっぱいしたじゃない!」 なんてお道化てみせる。 「はいはい。確かにいっぱいしましたね。あの頃は若かったなぁ~」 なんて軽く翔太にあしらわれちゃった。つまんなぁ~い! 「なぁ翔太。いつになったら俺に彼女を紹
Last Updated: 2026-02-19
Chapter: 62俺はタバコを吸い煙を肺の中に吸い込み吐き出す。何日ぶりだっけ?タバコ吸ったの?拓ちゃんに会ってからしばらく止めてたんだけどな…「そうだ蒼樹お前の携帯は…ってお前はぁ~!!」 ヤベぇ。翔太に見つかった。 「1本だけだから心配するなよ」 自分の携帯を翔太に投げつけ短くなっていくタバコを吸いながら答える。 「それで止めとけよ」 翔太は諦めたのか俺の携帯を受け取りデータを入れてくれている。俺はギリギリまで吸って小さくなったタバコを捨て踵で踏みつけ火を消す。 潰したタバコを拾いポッケの中にしまい、ゆっくりとみんなの方に戻る。そろそろ終わりそうだったからさ… 「終わった?」 俺は翔太の傍に立ち聞いてみる。 「おう。お前はどうする?」 俺に携帯を返しながら聞いてくる。俺は小さく首を振り笑う。あっ、翔ちゃんの眉間に皺が寄った。きっと下手くそな顔してたんだろうね。 「待ってるからさ…拓ちゃんが…行くわ…ほいじゃねぇ」 離れようとした俺の腕を翔ちゃんが掴み抱きしめられた。あぁ、もう、ほんとに。このお節介。こんな時はなにも言わずに行かせてくれればいいのに…。 「…自分の言った言葉に後悔するな。俺はお前の言った言葉だから聞き入れたんだ…下手くそな顔して無理に笑うんじゃねぇよ…俺の前でそんな顔しなくてもいいつっただろうが…金城に甘えてこい」 俺にしか聞こえない声で言われる。あぁ、もう翔太のバカ。 「んっ、ごめんね…ありがと…」 俺が呟きのように言えば 「気を付けていけよ」 抱きしめていた腕を放し頭を撫でて言ってくる。 「ふざけんなバーカ」 俺はべーっと舌を出しその場を離れた。ほんと、ありがと…翔太がいなかったら俺もっと荒れてたよ…あぁ…染まる…黒く…闇に…染まっていく…黒く黒く… 俺の意思とは関係なく…染まっていく…抜け出せなくなるぐらい…黒く染まっていく… お願い…助けて…拓真…俺は急ぎ足で公園に向かう。公園に入っていつもの場所に見慣れた姿を発見。その姿を見てホッと息を吐く。ちゃんと待っててくれたんだ。「お待たせ」 ちょこんと彼の前にしゃがみ顔を覗き込む。 「終わったのか?」 静かに聞いてくる。 「うん。掟に加えてきちゃった。拓ちゃんもね。ごめんね勝手なことして」 俺はそのままの体勢で答える。眉間に皺。ずっとついてる。
Last Updated: 2026-02-18
Chapter: 61翔太の優しい声に反応するように顔を上げると額に目元に頬に優しいキスが降りてくる。そして最後に唇に…。 触れるだけの、子供がじゃれ合うような軽いキスを繰り返す。もう一度、額に唇を寄せ 「もう大丈夫か?」 優しい声で静かに聞いてくる。俺はそんな声を聞きながらそっと目を閉じ息を吐く。 「ありがと翔太。もう大丈夫」 翔太のこの行為のおかげで俺はいつも落ち着ける。そしていつもの偽りの俺へと戻れるんだ。 「ねぇ」 躊躇いがちに声をかけられ 「ん?」 二人して声のした方を見る。 「二人とも付き合ってないんだよね?」 雅がそんなことを聞いてくる。 「そうだけど?どうして?」 なんでそんなこと聞くかなぁ? 「あ…うん…織田くんは苗代くんのこと好きなのかなって…だって傍から見たら二人とも恋人みたいだったから…」 雅が少し焦りながらいう。榊や佐紀も頷いている。んー説明するのめんどぉ。そんな気持ちを含めて翔太を見てみる。翔太は少し困った顔をして溜め息をつき 「俺たちはお互い好きだぜ。ただ恋人になるぐらいの好きじゃない。好きって気持ちも色々あるだろ?蒼樹は金城のことが好きでしょうがない。蒼華の名を捨ててもいいぐらいに…。俺だって彼女のことが好きでしょうがない。俺たちのお互いを好きって気持ちはそんなもんだよ」 俺を撫でて答える。俺はそんな翔太の撫でる手を甘受しながら翔太の服を掴んでいた手に少しだけ力を込める。 「それに…さっきのあれはこいつにとってとても大事な儀式だ」 俺をもう一度その腕に抱き締め翔太が続ける。 「儀式?」 雅たちの頭に疑問符が浮かんでるね。ん、ほんと面倒。 「本来の姿に戻ったこいつを落ち着かせるためだけの行為。それ以上でもそれ以下でもない。あれはこいつにとっても俺たち…俺にとっても必要な儀式なんだよ」 翔太の言葉に溜め息をつく。こんな面倒なこと聞かれるのなら見せるんじゃなかったなぁ。ほんと… 「大丈夫だ。だから落ち着け」 俺にだけにしか聞こえないように優しい音色が耳に滑り込んでくる。ほんと、翔太ってばよく気が付くなぁ。俺がイラつきだしてるって…。 「俺たちにとって蒼華は絶対だ。お前たちを掟の中に入れるのも蒼華が決めたからだ。そこだけは勘違いするな。お前たち四天王は俺たちに守られる必要なんてない。それだけの実力があるんだから
Last Updated: 2026-02-17
Chapter: 第42話「んっ、あ、れ?」 目が覚めて、変な声が出た。ベッドの上でちゃんと服を着て寝てた。寝落ちする前の記憶がある分だけまたやっちゃったと思う。 「たい、が?」 身体を起こして、大我の姿を探せば、机に向かって作業をしてるのを見つけた。 「起きたか、身体は辛くないか?」 俺の嗄れた声で名前を呼んだけど、ちゃんと大我は拾ってくれたらしい。 「ん、だい、じょぉ、ぶ、ちょっと、声、出にくい、けど」 身体はそんなに辛くない。ちょっと、声が嗄れて出にくいだけだ。だからそれを俺は素直に伝えた。 「あー、まぁ、それは仕方がないな。ほら、これ飲んで少しは喉を潤せ」 大我は水の入ったペットボトルを渡してくれた。俺はそれを受け取り飲んだら、半分ぐらい飲んじゃった。 「お腹は空いてるのか?」 そう聞かれて「う~ん」って考え込んだ。空いてるような空いてないような?そんな微妙な感じだったんだ。 「その顔は微妙な感じなんだな」 考え込んでる俺の顔を見て大我が聞いてくるから俺は素直に頷いた。 「食パンがあるからそれでも食べるか?」 なんて聞いてくるけど、大我がただ食パンだけを出すはずがない。きっと軽く食べれるものを作るはずだ。だけど、俺は素直に頷いた。食パンだけでもいいから食べた方がいいかなって自分で思ったんだ。 「なら、トーストでも作るか。自分で動けるか?」 大我が立ちあがり聞いてくる。 「わかんない」 俺は返事をしてからベッドから立ち上がろうとして失敗した。足腰が笑ってる。 「自業自得だからなそれ」 半ば呆れながら大我は俺を抱き上げてリビングまで連れて行ってくれた。そしていつも座ってる場所に座らせてから、キッチンへと行った。うん、俺ってやっぱり大我に迷惑ばっかりかけてるな。なんて思いながらキッチンでゴソゴソ動く大我の背を眺めていた。「お待たせ。熱いから気をつけろよ」 そういいながら大我が俺の前にアツアツのピザトーストとコーヒーを置いてくれた。でも、トースト1枚分だけ。大我さんよくわかってますね。俺が本当に微妙だって。しかもちゃんと切れ目が入ってて残しても大丈夫なようにしてくれてある。 「いただきます」 俺は手を合わせてそれを食べることに専念した。「御馳走様でした」 俺は出してもらったトーストを全部食べ終えて溜め息をついた。全部は食べられないかもって
Last Updated: 2026-02-12
Chapter: 第41話「うっ、ふぅ、ぁ、ん、ぁ、やぁ、ん、ぁ」キスだけで、記憶がどっかに飛んじゃってた俺は気が付けば己の中に大我の熱い塊を招き入れていた。「や、なのか?」なんて言いながら意地悪く動く腰。「やぁ、ぁ、ダメっ、ぁ、ダメっ、ぁ」大我の背にしがみつき爪を立てる。「なら、やめる?」なんて、意地悪く耳元で囁かれる。熱い吐息交じりの声にぶるりと身体が震えた。ぞくりと腰にクル。だからギュって締め付けちゃったよ。「ん?ゆい、やめる?」なんて、また聞かれた。「やぁ、ぁ、ん、ぁ、やめちゃ、やぁ、ん、たい、がぁ、ぁ、」やめてほしいわけじゃない。嫌がってるわけじゃないってわかってるくせに意地悪だ。だから俺は腹いせに大我の背に爪を立てて肩に噛みついた。「っ、じゃぁ、このまま続ける?」噛みついた俺の頭を撫でながら聞いてくるから噛みついたままコクコクと何度も頷けば「じゃぁ、ちゃんと捕まってるんだぞ」なんて言いながら腰を掴まれるとズンッと勢いよく奥まで突き上げられた。「ぁ、ぁ、っ、ぁ、ぁぁ、たい、がぁ、ぁぁ」目の前がチカチカする。俺が一番感じるその場所を狙って大我が何度も突き上げてくるせいだ。「ぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、ダメっ、ぁ、ぁぁ、ん」いつも以上に感じるその行為。心の奥底から神尾大我を欲してる自分がいる。もっと、もっと、もっと、もっと、欲しい、大我が、もっと欲しい「っ、クソッ」そんな呟きと共に唇が奪われた。繰り返すキスが気持ちよくて、絡め合う舌が熱くて、それでももっとして欲しくて俺は何度もキスを求めた。「んっ、ふぅ、ぁ、ん、ふぅ、ぁ、んん」止まらないんだ。自分で止められない。もっと、欲しい。「んっ、ふぅぁ、はっ、ぁ、はぁ」必要以上に大我を求めていたらバリってはがされた。「酸欠、キスはお預け」「ん、やぁ、もっと、ぁ」大我の言葉にイヤイヤと首を振り訴えれば「ダーメ。変わりにこっちで感じて」なんて、また最奥めがけてズンと突き上げられ首筋に吸い付かれた。「ぅぁ、ぁぁ、ん、ぁ、やぁ、らめ、それ、ダメ、ぁ、」イヤイヤと首を振れば「なんで?」首筋を舐めながら聞かれた。「やぁ、それ、ぁ、ん、ぁ、感じ、ぁ、すぎ、て、ぁ、波、きちゃ、ぁ、ぁ」さっきからお腹がキュンキュンしてるんだ。このままいいとこばっかり攻められたら波が来ちゃう。俺はもっと大我
Last Updated: 2026-01-12
Chapter: 第40話「んっ、ふぅ、ぁ、ん」繰り返すキスはいつにも増して甘くて気持ちがいい。「ゆい、と…好きだ」わざととぎって呼ばれる名がぞくりと腰にクル。「ん、ぁ、たい、がぁ、キスぅ、もっと、して」気持ちが高ぶったままの状態で、溢れたフェロモンはいつも以上に濃く強くなる。大我の眉間に皺が寄り、その双眸はとっくに色を変え、澄んだ碧色を煌めかせていた。俺が好きな色。この瞳の大我になら骨の髄まで喰らいつくされたいと思う。普段の大我でもいいんだけど、この色の大我の方がより一層強くそう思う。「キス、だけ?」頬にキスを落とし、耳元で囁かれる。それだけでゾクゾクしてくる。もう、すでに俺は腰砕け状態。ホントに、この男はなんでこんなにもカッコいんだ。「ん、ぁ、やぁ、キス、だけじゃ、足り、ない、ぁ」イヤイヤと首を振ればクスリと笑われる。「じゃぁ、気持ちいいこと一杯する?」なんて、笑いながら聞いてくる。「ん、ぁ、する、ぁ、たい、がぁ、キス、以外、もぉ、して、ぁ」大我に触れたい、触れられたい。キスがしたい。そんな欲求がフェロモンとして溢れかえる。部屋の中に広がる俺の濃くなったフェロモン。「あー、でも、その前にたんま」急に大我が冷静になる。「ぁ、なんで?」不満げに呟けば「なんでって…もしもの保険が必要だから」大我はそういうと俺の頭を撫でて部屋を出ていった。本当はわかってる。俺のために薬を取りに行ったんだってこと。大我は過ちを起こさないために必ず俺の事を考えて行動してくれる。自分がどれだけ大変な状況だとしても…。ここまで濃くなったフェロモンは、確実に発情へと変化する。だってさっきから俺、大我が欲しくてウズウズしてるんだ。それもひどく欲してる。だから、このまま先に進めば確実に発情する。神尾大我という男に発情するのだ。「っ、また酷くなってるな」俺の薬の瓶を持って戻ってきた大我の言葉が詰まる。「んっ、たい、がぁ、欲しぃ、たい、が、が」戻ってきた大我に両手を差し出して訴える。今すぐにでも欲しい。喰らいつくされたい。「わかったから、これだけは飲んでくれ」さっきよりも眉間に酷く皺を寄せながら俺の口元に薬の入った小瓶をもってくる。俺は大我の手を借りてそれを飲み干した。大我は瓶が落ちて、割れない場所に置いて、俺を抱きしめて「ゆい、好きだ」そう告げて唇を塞いだ。触れ合う唇を
Last Updated: 2025-12-19
Chapter: 第39話「劉を送らななきゃいけないからもう行くけど一人で大丈夫?」こうちゃんが俺を心配して聞いてくる。「はい、大丈夫です。今、すごく落ち着てるから一人で大我を待ってられるんで」うん、これは嘘じゃない。昨日までは酷い状態だったけど、今の俺はすごく落ち着ている。「わかった、ゆいちゃんのその言葉を信じるよ。でも、何かあったらちゃんと大ちゃんに連絡するんだよ」少しだけ心配性なこうちゃん。まぁ、俺が酷い状態になるの知ってるからなんだけどね。「うん、大丈夫。劉くん行ってらっしゃい、頑張ってね」俺は劉くんと同じ目線になって声を掛けた。「うん、また今度、大ちゃんと一緒に遊びに来てね」劉くんは大きく頷く。「勿論、大我にお願いして一緒に遊びに行くよ」俺が劉くんの言葉に返事をするとこうちゃんは劉くんを学校に送って行くために帰っていった。シンとなる部屋の中。不思議と落ち着いていた。この場所に来た時は酷い状態で、涙腺だって壊れてたのに、昨夜、夢を見て、朝起きてこうちゃんたちと一緒にいただけで、不思議と落ち着いている。「こうちゃんが片付けもやってくれたからすることないんだよな」そう、こうちゃんがご飯の準備も片付けも全部やってくれたからすることがない。しかも丁寧にお昼のご飯まで作っていってくれたのだ。俺も大我も自分でできるの知ってるはずなのにね。でも、ありがたい。「うん、することないし、大我が帰ってくるまでベッドでゴロゴロしてよう」そう思いながら俺はまたベッドに逆戻り。ベッドのサイドボードに大我が読んでる本が置いてあった。「これ、俺が読んでみたかったやつじゃん」本の題名が俺が読んでみたいと思っていたやつだった。それを手に取りしおりの場所を確認したら、一番最後に挟まっていて、そこは筆者のあとがきの場所だった。「あれ?」そのあとがきを読んで顔が熱くなった。「…これ…ダメだろ…」あとがきはまるで恋文のようなもの。読んだ読者がどう感じるかはその人にもよるが…。俺にはそれが盛大に愛の告白に感じた。「よし、最初から読もう」あとがきにしおりが挟んであるってことは大我は読み終えてるはずだからと、俺は解釈してその本をはじめから読むことにした。そうしてる間に大我が帰ってくるだろうなって思ったんだ。「…はぁ…」集中して、本を全部読み終えてしまった。本を抱きしめ天井を見上
Last Updated: 2025-12-04
Chapter: 第38話「っ、たい、が、っ、」俺は大我に抱き着きまたしても大泣きをし始めた。泣き始めたら止まらない。本当に今の俺は涙腺がぶっ壊れすぎてるらしい。「ホントに涙腺ぶっ壊れてるな。あんまり泣くと目が腫れるんだけどな後でちゃんと冷やすか」俺の頭を撫でながら大我がいうけど、本当に止まらないんだ涙が。「っ、だって、とま、ん、ない」大我の服を掴み訴えてみる。「唯斗には悲しいことも嬉しいことも両方一度に起きて、頭ん中がキャパオーバーしてんだろうな」なんて言いながら撫でられていく頭は気持ちがいい。「んっ、もぉ、考え、らんない、」今の俺は本当に何も考えられない状態だったりする。「今は考えなくてもいい。だけど、また、実家にはいかないといけないから、そん時はしっかりしないとな」小さく笑いながら額にキスをくれる。まるでそれが、何かの呪文のようになって泣いてるにもかかわらず俺は眠たくなってくる。「もう少し、寝ればいい」大我のそんな優しい言葉に俺は頷き、誘われるままに泣きながら再び眠りの中へと誘われていった。夢を見た。大我と俺と…そして、まだ見ぬ大我と俺の子供。それだけじゃない、両親たちと、ヒロさんたち。家族で楽しく過ごしている夢を見た。笑いあって、時にはケンカして、涙を流し、そしてまた笑い合う。そんな優しい夢を見た。凄く心満たされた優しい夢だった。「んっ」ふわふわと夢の中に堕ちていた意識が戻ってきた。ボーっとする頭のまま周りを見渡せば大我の姿はなかった。自分の隣の温もりはなく、布団も冷たくなっている。いつ抜け出したのだろうか?ボーっとしたまま身体を起こし、部屋の中を見渡すが、やっぱり大我はいない。俺は溜め息をつきベッドから降りて部屋を出た。「あっ、ゆいちゃんおはよー」そんな言葉と共に足に抱き着かれた。「へっ?なんで、劉くんが?」ビックリした。この場所にいるはずのない劉くんがいることに。「おはよう、起きたゆいちゃん」そう声を掛けられた方を見ればこうちゃんがお皿をテーブルに置いてる所だった。「おはようございます。なんで2人がここに?」劉くんを抱き上げながら聞いてれば「大ちゃんね、お仕事行っちゃったのー。だからね僕が来たんだよぉ」ニコニコと笑いながら劉くんが教えてくれた。「そっかぁ、ありがとう劉くん」「ごめんね、本当はゆいちゃんとゆっくり話し
Last Updated: 2025-11-24
Chapter: 第37話「んっ」ふわふわと闇の中に堕ちていた意識がゆっくりと浮上してきた。薄っすらと片目だけを開けて部屋の中を確認すればまだ暗かった。この部屋ってこんなに暗かったっけ?なんて思いながら時間を確認しようとゴロって横を向いたら、隣に大我の姿はなかった。いつもだったら、一人で寂しいとか、置いていかれたのかなとか、不安な気持ちが湧くんだけど不思議と今の俺は落ち着いていた。とりあえずベッドから降りようかと思い身体を起こして気が付いた。最小限の明るさにしながら机で何かをやってる大我の後ろ姿を見つけた。極力音をたてないようにと気を使いながら作業をしてるのかもしれない。「たい、が」その背に声を掛けたけど、思ってる以上に自分の声は掠れて小さかった。集中して作業してる大我には届かないかもしれない。そう思い、俺はベッドから降りて傍に行こうと動いた。「起きたのか、悪い起こしたか?」俺が動いたことで、ギシリとベッドが軋み、その音に気が付いた大我が振り返った。「だい、じょぉ、ぶ、目が、覚めた、から」ベッドに座り答えれば、「取り合えず、唯斗はこれを飲んでくれ」そういいながら差し出されたのはスポーツドリンクと水のペットボトルだった。その理由は考えなくてもわかる。さっきまでバカみたいに大泣きしてたからだ。俺はそれを受け取り飲んだ。スポーツドリンクは全部飲み、水は半分残した。「今何時なんだ?」水分を補給した分だけ咽喉が潤って普通に話せるようになった。「今か、今は午前3時を少し回ったところだな」俺の問いに大我が机の上にある携帯を見て教えてくれた。「大我は寝てないのか?」もしそうなら、悪いことをしたなって思う。「いや、ちゃんと寝た。さっきまで一緒に寝てたんだ。で、目が覚めたらちょっと描きたいって思う絵が浮かんできたから、それを描いてた。完成したら唯斗にも見せるからな」小さく笑いながら言われた言葉に俺は大きく頷いた。「起きるにはまだ早い時間だし、もう少し寝るか?」大我の言葉に考えこむ。確かに起きるにはまだ早い時間だ。だけど、泣き疲れて寝てた分だけ眠気がない。さて、どうしたものか?って考えこんでたら「ゴロゴロしながら話でもするか?」って聞かれて「うん、話がしたい」俺は大きく頷いた。「わかった。なら布団の中に入ってゴロゴロしながら話そう」大我は俺の頭を撫でてから布
Last Updated: 2025-11-23
Chapter: 13絶賛、僕は正座をして智さんに怒られ中。原因は…聞かないでください…「お前、いくら何でもありえないだろ!」 智さんの怒鳴り声が部屋中に響き渡る。 「ごめんなさい」 僕は小さくなりながら何度目かの謝罪を口にする。 「一体どうやって生活してきたんだお前は!ここまで何もできないなんて俺は思わなかったぞ」 智さんが呆れた顔をする。 「洗濯と掃除は出来ますけど……」 僕はさらに小さな声で付け加えた。はぁって智さんが大げさにため息をついた。 「確かに、洗濯と掃除は出来てるな」 洗濯と掃除だけは強調されて言われる。 「うぅぅ…」 そう、今、まさに僕が怒られているのはそれ以外のことだったりする。 「食生活が全滅って…お前は今までどうやって生活してきたんだ!」 またしても智さんの怒号が響く。 「ごめんなさぁ~い!!」 僕は半泣きになりながら謝った。ことの発端は、数日前、智さんたちAGIAのメンバーは仕事の為に遠征していった。その間、僕たちダンサー組はスタジオでデビューに向けての練習をしていた。智さんの家で下宿させてもらってる僕は、智さんが遠征に行く前日に、キッチンの使い方とかをあれこれ教わってから留守番を頼まれていた。留守番は特に問題はなかったんだ。そう、問題はない。じゃぁ、何が問題だったのかというと…「どう考えても、お前はまともに食べてないよな?」 そう、僕がちゃんとした食事をとってないことに智さんが激怒しているのだ。 「えっと、ゼリーとかは食べてますけど…」 僕はおどおどと答えた。 「それは食事とはいえないだろが!!」 智さんの声がさらに大きくなった。 「ごめんなさい!!」 反射的に僕はまた謝ってしまう。 「夏葵、お前ずっと一人暮らしだったよな?まさかとは思うけど、ずっとこんな生活をしてたとか言わないだろうな?」 智さんの鋭い視線が僕を射抜く。 「ひっ」 智さんの顔が怖い。本当のことを言ったらますます怒られそうな雰囲気だ。 「どうなんだ?」 少しだけトーンが低くなる智さんの声。 「えっと…こんな感じ…です…」 智さんが怖くて、最後は消えそうなほど小さくなった。 「このバカやろ!」 智さんの拳骨が容赦なく頭に振り下ろされた。 「いった~い!!」 頭を抱えてうずくまる僕の前で、智さんは腕を組んで溜息をついた。
Last Updated: 2026-02-02
Chapter: 12ー次の日ー練習が終わった後で、智さんたちAGIAのメンバーと、事務所の男の人、畠山さんと一緒に僕が借りているアパートに来ていた。智さんが気を利かせて、畠山さんに頼んで、事務所の車を出してもらったんだ。「てか、夏葵お前、荷物少なくないか?」 僕の部屋に入って開口一番に言われた言葉。 「えっと、多分、少ないと思います。荷物を持ってきてないんで…」 そう、僕の荷物はもともと他の場所にあるのだ。ここに引っ越ししてくる前のアパートって意味じゃなくて、元々の僕の住んでいる実家にという意味だ。実家といっても海外なので、すぐに取りに行くということは無理だけどさ。 「はっ? 持ってきてないって?」 「引っ越す前の家にってこと?」 僕の言葉に竜生さんたちが驚いた顔をする。 「あーっ、違います。前に住んでた場所の荷物は全部ここにありますよ。それ以外の荷物はここには置いてないってだけです」 自分のことを誰かに話してるわけじゃないので、ここ以外の場所に荷物があると言えばますます驚いた顔になる。 「やっぱり、業者を呼ぶ必要はなかったみたいだな。なら、さっさと運んでここを片付けて引き渡せるようにしよう」 なんて、智さんが言うから 「りょうか~い」 「だな」 なんてみんなが返事をして、さっさと数少ない僕の荷物を運び出していった。えっと、僕がやらなきゃいけないのに、僕が手を出す前にAGIAのみんなが動いちゃって僕はただそこにいるだけの人状態だった。「よし、荷物は出したから掃除するぞ」 総指揮官になってる智さんの掛け声でまたしてもみんなが動いちゃって僕が手を出す暇がない。でもただ突っ立てるわけじゃないよ僕も。ちゃんと掃除はしましたよ。智さんたちが来て、僕の家の荷物を出して、掃除が終わったの時間は2時間半ぐらいだった。あれ? もっとかかると思ったのに? 早いよみんな。「じゃぁ、この部屋の手続きは責任もって事務所の方でやってもらうってことで、ヤマさん、鍵は預けとくから事務所に戻ったらよろしく」 いつの間にか家の鍵を持っていた智さんが畠山さんと話してた。 「了解。樋口主任に渡してやってもらうよ」 「あの、すみません。僕の事なのにお願いしちゃって」 僕はそんな2人に謝った。だって悪いから…。 「いいってことよ。元をただせば事務所の責任なんだからな。よし、このま
Last Updated: 2025-10-10
Chapter: 11ダンスレッスンをしながら部屋探しって本当に大変だと思う。特に僕の場合は土地勘が全くないから、どこをどう探せばいいのか見当もつかない。だけど、探さないと困るからチラシとか雑誌とかを見ながらめぼしい場所を探してたんだ。自分なりに一生懸命探してたんだよ本当に。 「みんな集まれ、話がある」 ダンスレッスン中に先生がみんなを呼ぶ。僕たちは個人練習をしてる最中だったのをやめて先生の元へと集まればAGIAのみんなが来ていた。 「よし、集まったな。みんなに発表することがあるそうだ」 先生が言えば、智さんと竜生さんが前に出てくる。 「お前たちバックダンサーの発表兼お披露目の日程が決まったぞ」 智さんのその言葉に僕たちがざわつく。ついに決まったんだと…。 「バックダンサーをファンの子たちに紹介するのは3ヶ月後から始まる俺たちのコンサートになった」 竜生さんの言葉にますます騒がしくなる僕たち。 「静かに! まだ、コンサートの内容が決まってないから、ちゃんと決まるまではみんなは今まで通り練習に励んで欲しい」 「はい!」 智さんの言葉に僕たちは返事をした。 「よし、5分後にまた練習始めるからな」 「はい!」 先生の言葉に返事をして、僕たちはまた個人レッスンへと別れた。といっても、さっきの発表の後だからみんなで雑談をしていた。うん、みんな緊張してたんだよね。ついにAGIAのバックダンサーとして発表してもらえるんだって少しだけ騒いでた。この後、普通に練習が再開されて、僕たちはそっちに集中したんだ。だって、本番で失敗したら意味がないからさ。 僕は休憩中、一人で雑誌を見ながら部屋探しをしてた。だって、急いで探さないと時間がないんだ。期限は着々と迫って来てるんだ。だから、休憩中の間もこうして雑誌を見てめぼしいところを探してるんだ。以前の僕だったら住めればいいって感じで探してたけど、今はちょっと、やっぱりね、バックダンサーになるわけだから適当じゃダメかなって思ったんだ。 でも、この周辺の地理がわからないから中々決められないんだ。だからと言って他の人に相談っていうのもできなくて、結局ずっと一人で雑誌と睨めっこしてるんだよね。 無情にも退去期日が近づいてきた。そろそろ本当にどうにかしないとヤバいのに僕はまだ決められずにいた。 「夏葵?」 集中して雑誌を見ていた
Last Updated: 2025-08-17
Chapter: 10結局、この日の僕はせっかく熱が下がったのにもかかわらず、智さんたちAGIAの前で大泣きをしてしまい、また熱がぶり返したということで、退院は許可してもらったけど、これ以上無理はさせれないということで、自宅待機ということになった。勿論、ずっと付き添ってくれていたAGIAのみんなは仕事があるので、僕を家まで送ってから各々の仕事へと向かった。僕は次の日からまたダンスレッスンに参加することになった。「おっ、ちゃんと出てこれたな」 ダンススタジオに入ってきたAGIAのメンバーが僕の姿を見つけてホッとした表情を浮かべ、智さんが安心したようにいった。 「はい、ご心配とご迷惑をおかけしました。昨日1日ゆっくりと休んだんですっかり良くなりました。皆さんありがとうございました」 僕はAGIAのみんなに頭を下げた。勿論、ダンスメンバーや先生たちにはAGIAのみんなが来る前に謝っておいたんだ。 「俺は自分でやりたいように動いただけだから迷惑だとは思ってない」 って、智さんにはまた言われちゃったけどね。この日から僕の練習は本格的に開始された。AGIAのメンバーを交えて、他のメンバーとのフォーメーションとかも練習して、すべての動作を頭と身体に叩き込んだ。大丈夫、まだ鈍ってはないし、記憶力もあの日のままだ。まだ僕は大丈夫、ちゃんと踊れる。僕は智さんたちAGIAのメンバーに必要だといわれたダンスをもっと磨くために、彼らの後ろでサイコーのパフォーマンスができるように一人での練習も本格的に開始した。 僕たちのお披露目会はまだまだ先だから、今は練習をして、AGIAの曲とダンスを覚えるんだ。 AGIAの曲とダンスは覚えてるけど、あれはAGIAのメンバーだけのダンスだから、ダンスメンバーが入ったダンスはまだまだ練習しないとダメなんだ。ダンスメンバーたちとの練習と個人練習を繰り返す日々を1ヶ月ぐらい過ごしたころ、とある連絡が来て僕は愕然としてしまった。それはアパートの退去連絡。行き成りすぎるし、意味が分からなくて、慌てて事務所に問い合わせた。今住んでるアパートはこっちに来るときに事務所の人が手続してくれたやつだもん。「ごめんなさい、夏葵くん。確認をしたら、事務処理をした子のミスで2ヶ月での契約になってたみたいなの。急いで再契約ができないか問い合わせてみたんだけど、ダメだったの。で
Last Updated: 2025-08-05
Chapter: 09このまま幸せに浸っていたいとか、ずっと握ってたいとか思ったけど、僕は起きたとアピールするように、そっと弱い力で握られている手を握り返してみた。「んっ」ピクリと動きゆっくりと顔を上げて僕を見た。そして 「おはよう、気分はどうだ?」 小さく笑った。テレビで見ていたような笑みじゃない笑みに僕の心臓がドキリとはねた。 「おはようございます。大分、落ち着いてます」 うん、これは嘘じゃない。 「熱はどうだ?」 「えっ? ちょっ」 そんなこと言いながら智さんの額が僕の額に当てられた。 目の前に智さんのカッコいい顔があって…。心臓が止まっちゃう…。 「うん、熱も大丈夫そうだな」 クシャリと僕の髪を撫でて笑う。 「ご心配とご迷惑をおかけしました。ホントに…最初から僕は智さんに迷惑ばっかりかけてますね」 自分で言って自分の胸にグサリと言葉が突き刺さる。 「俺は別に迷惑だとか思ってない。そもそも、俺は自分がしたいと思ったことをそのまま実行してるだけだ。こうやってお前の傍にいて世話をするのもな」 まるで余計なことは考えるなと言わんばかりにまた頭を撫でられる。 「でも…僕は…」 僕は自分が思っている以上に過去のことを拘ってるみたいだ。 「なぁ、夏葵。お前が子供の頃に負った傷はお前にしかその傷の痛みはわからない。だから残念だが俺にはお前のその傷の痛みを知ることができない。だけど、そんなお前にハッキリと言えることがある」 智さんが静かにいう言葉を聞き頷く。 「俺はお前のダンスが好きだ。あのオーディションの時の踊りを見て、お前のダンスに惚れた。だから俺はお前にこのままダンスを続けてほしい。俺たちの、イヤ、俺の後ろで踊ってほしい。早瀬夏葵の本当のダンスをもっと見せてほしい。ってまぁ、これは俺のわがままだけどな」 ハッキリと言い切る智さんの言葉に自然と涙が零れ落ちた。ダンスが好きだと言われたこと、自分が必要だと言われたこと、その言葉が僕の中に溶けていく。 「泣くなよ。俺、お前を泣かせてばっかじゃん」 なんて言いながら涙を流す僕を抱きしめてくれる。まるであやすようにポンポンと背中を叩かれ、それが余計に涙を誘う。 「…っ…ごめ…僕…うれ…しぃ…ダン…ス…好き…で…」 「あぁ、もう我慢しなくていい。お前の実力を隠さずに見せつけてやればいい。それを誰も責めな
Last Updated: 2025-08-02
Chapter: 08真夜中、ふと目を覚ませばそこにはいるはずのない人物がいた。「なんで?」だってここは病院で、今夜、僕は入院だって…「事務所にも病院にもちゃんと許可は取ってある。心配だったんだよ。熱を出した原因は俺にもあるからな」 渋い顔をして答える智さんに 「違うよ。熱を出したのは僕自身のせいだから、智さんがせいじゃないよ」 雨の中に飛び出したのは僕だし、熱を出したのも僕のせい。 「本当は弱ってる今のお前に聞くのは反則だってわかってるんだが、お前はジュニア時代にダンスに関することで何かあって、それが原因で頑なに実力を出そうとしない。違うか?」 智さんの言葉が胸に突き刺さる。やっぱり気づかれてたんだって… 「これを話せばあなたはどう思うんでしょうね…僕は…」一番知られたくない人に知られてしまう。こんな辛い思いをするなら初めっからオーディションなんて受けなければよかった… 僕はずっと隠していたことをすべて話した。子供の頃に何があったのかを、なぜ本当の実力を出さないのか。否、出せないのか…。出せない理由もすべて正直に話した。今も自分の中に燻ぶってる思い、恐怖、不安も…知られることの恐怖、非難されることの恐怖を… 「ちょ…おい…夏葵!」 隠してきたこと、過去に起こったことをすべて智さんに話した直後、僕はまた意識を手放した。それだけ僕にとって過去の出来事は精神的にストレスになっているのだと思う。自分を追い込むぐらいには… 「智どうするんだ?」 「なっちゃん大丈夫かな?」 「夏葵のダンス好きなんだけどな」 「でも、これ完全にトラウマになってるだろ」 「だとしても今のAGIAのバックダンサーには夏葵が必要だ。夏葵のあのダンスが…」夢うつつで聞こえてきたのは智さんたちAGIAの人たちの声。きっとこれは夢なんだ…僕の都合のいい夢なんだ…次に目が覚めるときには冷たい現実が待ってるんだ…あの時と同じ現実が… 朝、目を覚まして僕は固まった。それはもう見事に固まった。 なっ、なんで?なっ、なんで、僕の手を? 自分の手にありえない温もりを感じて、そっちに視線を向ければ僕の手を握った状態でベッドにうつ伏して寝ている智さんがいた。これはどうしたらいいんだろうか?動けないし…ぼ…僕の心臓が爆発しそう…ヤバいんですけど…本当にヤバいって…この間か
Last Updated: 2025-08-01