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3 絵の中の私

Penulis: けいこ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-19 11:48:50

「私は座ってるだけだから大丈夫だよ。でも……ありがとう。そんな風に言ってもらえて、ほんの少しだけでも颯君の役に立ててると思うと、やっぱり嬉しい」

「ほんの少しだけなんて、とんでもない。めちゃくちゃありがたい。本当に……結姉を描きたいって思うから。完成まで嫌にならないでね」

「嫌になんて……ならないよ」

颯君の優しい言葉が、私の心を温かくする。

こんなにも胸が熱い。

旦那を見て沈み込みそうになる気持ちに、3人の青年はいつも明るい光を照らしてくれる。

だから私は、毎日笑顔でいられる。

「じゃあ、始めるよ」

「お願いします」

颯君はキャンバスに向かった。

その姿は、あまりにも美しくて、颯君がキラキラ輝いて見えた。

ゆったりした白いシャツは胸元が少しあいていて、細身の黒いパンツのせいで足の長さが際立っている。

真剣な表情で、絵の具を使って細かなところまで塗り込んでいく颯君は、唯一無二の「画家」だと思えた。

「あと少しだね。もう少しで完成かな?」

「……」

颯君は急に筆を止め、何も言わないで黙ってしまった。

「颯君?どうしたの?」

それでも黙っている颯君のことが心配になる。

「……大丈夫?」

「……完成……させたくない」

「えっ……」

「俺、もちろん結姉の絵を完成させたい。でも、完成したら……結姉との2人だけの時間が無くなってしまう」

「……な、何言ってるの。ずっと同じ家にいるんだから、いつも一緒にいるじゃない」

「結姉は……結姉はさ、全然わかってないよ」

颯君は急に立ち上がり、私の肩をつかんでそのまま立たせ、部屋の壁にそっと押し付けた。

「ちょっ、ちょっと」

嘘……

颯君の顔がすぐ目の前にある。

距離が近過ぎて心臓が飛び出しそうになる。

「結姉……」

突き刺さりそうなくらい真っ直ぐに見つめられ、少しずつ颯君の唇が近づいてきた。

「結姉、キスしたい」

一瞬、何が起こったかわからなかった。

颯君の体が私を包み込みそうになった時、私は我に返った。

「ダメっ!」

その場から離れようとした瞬間、颯君は私の腕を掴んだ。

「逃げないで。俺の側にいて」

せつないほどの甘い囁きに、心拍数が急激に上がった。

「颯君、ダメだよ。そんなこと言わないで。あなたは大事な同居人なの」

「同居人でも何でも、俺は1人の男だよ。俺は……結姉が好きなんだ。好きで好きでたまらない、ずっと……結姉のことばかり考え
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    「結姉……好きだよ」颯君は私をぎゅっと抱きしめた。とろけそうになるそのセリフが、何度も頭の中を駆け巡る。それ以上何かするわけでもなく、ただずっとお互いの温度を感じている時間。ただ、時計の秒針が動く音と、2人の吐く息の音だけがかすかに響いていた。私は思った。今の私にとって、颯君のこのピュアで真っ直ぐな気持ちはすごく新鮮で、大人のドロドロした醜くて汚い部分を綺麗に洗い流してくれる。このまま、ずっとこうしていたい。颯君の腕に包まれていたい――と。だけれど……そんなことが許されるわけもなく……「あっ、ご、ごめんね、颯君。あの、うん。私は……これでも一応、人妻なの。いろいろなことがあって、まだ頭の中が整理できないの。今日のことは……少し考えさせて」上手く言えない、だけれど、今の私にはそれしか言えなかった。颯君は、下を向いたままうなづいた。「結姉、困らせてごめん。でも、結姉を苦しめたくて言ってるんじゃないんだ」「もちろん、わかってるよ。ありがとう。じゃ、じゃあ、降りるね。完成させてもらえたら嬉しいし、また絵の続き描いてね」「……うん。絵は……必ず完成させる」***私の絵が完成したのは、それから数日後のことだった。「ありがとう、結姉。最後まで付き合ってくれて本当に……ありがとう。おかげで良い絵が描けた」颯君が見せてくれた「私の絵」。あまりにも素敵で体が震える。「……素敵……」完成前から最終工程は見ないようにしていた。私の心が感動に包まれた瞬間だった。「これが私?信じられない……」「綺麗でしょ?」「……私じゃないみたい」「結姉だよ、そっくり」「……だけど、こんなに綺麗で透明感があって……やっぱり私とは違うような……」「結姉を見たまま描いた。何も違わない。あなたはこういう風に見られてる。とっても綺麗で、素敵な女性。もちろん、気持ちも込めた。結姉のみんなを包む優しさ、みんなを元気づけようとする明るさ、そして……時々見せる寂しさも。全部、ここに込めたから」「颯君……」あまりにも優しいセリフに涙が頬をつたった。「結姉を描くことができて、本当に幸せだった。ありがとう」そう言って、颯君は私の涙を指で拭った。「こんなに素敵に描いてもらえるなんて、私こそ幸せだよ。でも、この絵はどうするの?」「この部屋に飾っておく。イーゼルに

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