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第467話

Author: 雪吹(ふぶき)ルリ
真夕は自分のマンションに戻った時、スマホが鳴った。電話がかかってきたのだ。

かけてきたのは逸夫だった。

真夕は通話ボタンを押して接続した。「もしもし、先輩?」

「真夕、起きたんだね。どう?昨夜は堀田社長のところでぐっすり眠れた?」と、逸夫は冗談っぽく言った。

真夕は眉をひそめた。「私、なんで彼のところで寝てたの?」

「昨夜、堀田社長が君を抱えて戻ってきて、そのまま自分の部屋に連れて行ったんだ。俺が受け取ろうとしたけど、彼は全然渡してくれなかった。俺じゃ到底敵わないよ」

真夕「……」

どうやら昨夜は車の中で寝てしまい、司が自分を連れて帰ったのか。

でもどうして、彼はわざわざ自分を彼の部屋に連れて来たの?

「真夕、君と堀田社長、何か新しい進展でもあったのか?」

「ないよ。私たちはもう離婚したし、今後こんなことは二度と起きない」

彼女と司はすでに離婚している。これからは彼とはちゃんと距離を置くつもりだ。

「わかった。じゃあ今夜はローヤルホテルで会おう。柳田院長と一緒に食事だ。君が昨夜いきなり養生薬局に現れたもんだから、柳田院長、びっくりしてたよ」

真夕はうなずいた。「うん、今夜ね」

一方、堀田グループ。

社長室では、司がデスクチェアに座っている。清が彼の傍らで報告している。「社長、調査を始めましたが、当時のあの山の洞窟はかなり人里離れた場所にあり、何の手がかりも見つかりませんでした。池本真夕さんと彩さん、どちらが社長を助けたのか、それは二人本人からしか探れないようです」

司はまったく驚いた様子はなかった。もし何か見つかるのであれば、自分はとっくに見つけていたはずだ。だからこそ、これまでは彩の言葉を信じ切っていた。

自分は彩を疑ったことなど一度もなかった。

でも今は違う。

司は立ち上がり、長身を落ち着かせてフロア一面の窓辺に立った。「池本彩に電話を。今夜、ローヤルホテルで俺が夕食をご馳走する」

清はうなずいた。「かしこまりました、社長。彩さんはこの二日、何度もお電話をかけてきています。今夜社長がディナーに誘ったと知ったら、きっと大喜びすると思います」

司の目は深く沈み、その口調は冷たく鋭くなった。「今は余計なことを言うな。誰が嘘をついてるのか、はっきりさせる必要がある。俺を騙した者は、絶対に後悔することになる!」

清は再びうなずい
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