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15.ジョージはどのような下心があって、私に近づいたのですか?

last update 最終更新日: 2025-06-09 16:52:13

 皇宮に戻る為に馬車に乗ろうとすると、早い足音が風を鋭く切って近づいてくる。

「モニカ、お願いです。少しだけでも話させてください」

 私を追ってきたのは、ジョージだった。

 汗を流し、必死に私に纏わりつくような子犬のような目をしている。

 このような状態の彼の申し出を断れるわけもなかった。

「分かりました⋯⋯」

 私は彼と馬車の中で話すことにした。

 誰かに見られたら誤解されるかもしれないので、カーテンを閉めた。

「まず、姉上の無礼をお詫びさせてください。それから、僕が父を切ります。僕も来月には成人します。僕が公爵になる形で、どうか許しては頂けませんか?」

 わざと私は「断頭台」という言葉を使って聞き耳を立てているジョージを刺激した。

 状況証拠だけで自信はなかったが、やはりレイモンド・プルメル公爵は先皇陛下を暗殺している。

 皇族殺しなのだから、当然一族もろとも断頭台行きだ。

 先皇陛下を心不全と診断した皇宮医はプルメル公爵家と長い間、癒着していた。

 該当皇宮医にプルメル公爵家から金の流れがある。

 皇宮医は皇族の健康状態をプルメル公爵家に流していた可能性が高い。

 そして、おそらく今度はその状況をネタに、先皇陛下の死因を心不全だと偽装させられた可能性がある。

 そして、先皇陛下が亡くなったとされる日の翌日にメイドをはじめ15人の皇宮に勤務する職員が入れかわっている。

 暗殺を目撃した可能性のあるものを、始末したか、莫大な退職金を払い故郷に帰したのだろう。

 該当月に曖昧品目の支出の計上があった。

 アレキサンダー皇帝が、レイモンド・プルメル公爵の罪に気がついていないとは思えない。

 陛下は気がつきながらも、決定打がなく処分できていない可能性が高い。

「まず、レイモンド・プルメル公爵とマリリンは南部の領地から今後一切出てくることのないようにしてください」

「もちろんです」

「ジョージは、これからは陛下とバラルデール帝国の為に尽くすと誓ってください。私もただでさえ少ない貴族
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     皇宮に戻る為に馬車に乗ろうとすると、早い足音が風を鋭く切って近づいてくる。「モニカ、お願いです。少しだけでも話させてください」 私を追ってきたのは、ジョージだった。 汗を流し、必死に私に纏わりつくような子犬のような目をしている。 このような状態の彼の申し出を断れるわけもなかった。「分かりました⋯⋯」 私は彼と馬車の中で話すことにした。 誰かに見られたら誤解されるかもしれないので、カーテンを閉めた。「まず、姉上の無礼をお詫びさせてください。それから、僕が父を切ります。僕も来月には成人します。僕が公爵になる形で、どうか許しては頂けませんか?」 わざと私は「断頭台」という言葉を使って聞き耳を立てているジョージを刺激した。 状況証拠だけで自信はなかったが、やはりレイモンド・プルメル公爵は先皇陛下を暗殺している。 皇族殺しなのだから、当然一族もろとも断頭台行きだ。 先皇陛下を心不全と診断した皇宮医はプルメル公爵家と長い間、癒着していた。 該当皇宮医にプルメル公爵家から金の流れがある。 皇宮医は皇族の健康状態をプルメル公爵家に流していた可能性が高い。 そして、おそらく今度はその状況をネタに、先皇陛下の死因を心不全だと偽装させられた可能性がある。 そして、先皇陛下が亡くなったとされる日の翌日にメイドをはじめ15人の皇宮に勤務する職員が入れかわっている。 暗殺を目撃した可能性のあるものを、始末したか、莫大な退職金を払い故郷に帰したのだろう。 該当月に曖昧品目の支出の計上があった。 アレキサンダー皇帝が、レイモンド・プルメル公爵の罪に気がついていないとは思えない。 陛下は気がつきながらも、決定打がなく処分できていない可能性が高い。「まず、レイモンド・プルメル公爵とマリリンは南部の領地から今後一切出てくることのないようにしてください」「もちろんです」「ジョージは、これからは陛下とバラルデール帝国の為に尽くすと誓ってください。私もただでさえ少ない貴族

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   14.貴方が愚かで陛下の足を引っ張る馬鹿女だからです。

    「待ってください。私は関係ありません」  立ち上がって無罪を主張するカリーナ・ミレーぜ子爵令嬢は、権力のあるマリリンの近くにいることで自分も強くなったと感じる典型的な取り巻きだ。 どうやら、そういった人間は寄生している相手を切り捨てるのも早いらしい。(寄生するにしても、もっと相手を選ばなきゃね⋯⋯) 「そうですか。でも、そもそもミレーぜ子爵家はこのような罪を犯す以前に問題のある貴族家ですね。皇家の資金を横領しているので、すぐにでも爵位剥奪されるでしょう。私との関係はなくなりそうですね」 私の言葉に驚いた顔をしている彼女は自分の家の行っている悪事も知らないらしい。 これ程までに無知でお茶をして人を笑って生きられた今までに感謝して、彼女には消えて欲しい。「あら、ご自分の家のことなのにご存知なかったの? 本当に優雅な貴族令嬢ですこと」 俯いたマリリンとカリーナ以外の2人の貴族令嬢は自分の家のやっている後ろめたいことに気がついているのだろう。 彼女たちは私に指摘されるのが怖くて目を逸らしている。 着飾って身分の高さで人を見下している彼女たちの家も、皇家の財産を掠め取っている。 きっと、前世は泥棒一家だったのだろう。 毎月、少しずつ掠め取って罪悪感も感じていないだろうが、10年単位にすると罰則を与えられるレベルになる。  そのような事は割とどこの貴族家でもやっていたりする。 だから、貴族を陥れるのは簡単だ。 泥棒の汚名で、領民の不満を煽る。 領民は今まで口を閉ざしていた、言えなかった領主の罪を皇家に密告する。 1割の貴族よりも9割の平民を大切にするポーズを見せた方が上手くいくという考え方は父のものだった。 マルテキーズ王国の平民たちは父が徴兵を科しても、当然ランサルト・マルキテーズの為に命をかけて戦うようになった。 実際は平民の暮らしはなんら変わっていない。 徴兵の義務ができただけで、窮屈になったとも言える。 しかし、偉そうにしていた貴族を

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   13.皇妃に毒を盛った貴方のことを陛下に報告しなきゃね。

     私はアレキサンダー皇帝に幻滅されてしまったのだろう。 陛下はあれから一度も私と食事をしてくれない。 会いたくて謁見要請をしても断られている。 日課で陛下が通るだろう道で待ち伏せしても、会うことができない。 私は完璧に避けられていた。 男性に追いかけられる事はあっても、避けられる事は初めてだった。 それだけ私が陛下にとって、無理な存在になってしまったと言う事だろう。 何がいけなかったかは分かっている。 帝国の皇帝の妻であるのに、花嫁修行の基本である刺繍をろくに習得していなかったのを見られてしまったこと。 自分が役に立つことを陛下にアピールしたいがあまり、彼の母君の国葬で政治的な行動をしようとしたことだ。 結局、陛下はカイゼル・レンダース伯爵を切った。 私は自分の母親の葬儀で誰も母に想いを寄せていない事を寂しく思った。 それなのに、陛下の母君の葬儀を利用するような事を言ってしまった。 国葬は滞りなく済ませることができたが、私は冷たい人間だ。 陛下に寄せる言葉も見つからない程に、夫の母親に対する感情がない。  最近、全く眠れなくなった。 また、捨てられる恐怖が私を襲う。 陛下の役に立ち、彼の家族として愛されたいと思ったのに失敗した。  私は人間になれても、全然賢くなれなかったのかもしれない。 私は万全の準備をして、マリリン・プルメル公女とのお茶会に向かった。 本当は準備したものを使わず、プルメル公女が私と友人になりたいだけでお茶会に誘ってくれていたら良いと期待している でも、そんな可能性は極めて低い。 私はマルテキーズ王国でも常に戦っていた。 同年代の人たちと意味もない話をする仲になりたかった。 しかし、皆、私を陥れようとする人ばかりで私は自衛の為に攻撃に転ずるしかなかった。 私はアレキサンダー皇帝から送られた緑色のドレスにエメラルドのネックレスと、イヤリングのセットを身につけた

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