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第 297 話

作者: 一笠
どちらにしても、あまり良い状況ではない。

聖天が凛の後をついて家の中に入っていくのを見て、輝はため息をついた。聖天の恋の道のりは、まだまだ長そうだ。

久しぶりに二人揃ったので、凛は腕によりをかけて、豪華な料理を作った。

凛がキッチンにいる間、輝は聖天に近づき、「叔父さん、こんな大胆な行動に出て、おじいさんにバレないか心配じゃないのか?」と尋ねた。

「いずれわかることだ」

聖天は気にした様子もなく答えた。

輝は聖天に対し「霧島家で、おじいさんに逆らえるのは叔父さんだけだよ」と親指を立て感心を表した。

「今日、彼女は墓地に行ったのか?」聖天は突然尋ねた。

「ああ、今日は夏目家の人間が姉さんの墓参り
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