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第 787 話

Author: 一笠
礼は侮辱されたと感じ、「俺......俺の決意を甘く見ているのか」と言った。

「いい歳して何を言ってるの?あの人のことを何も知らないくせに......」

「知る必要はない」

礼は勢いよく立ち上がり、座っている梓の方を見て言った。「そもそも、何も知らないのはお前の方だろ。俺より年下なのに、大人ぶってんじゃないよ!

力不足かもしれないが、男として、ましてや年下の女の子が危険な目に遭うのを見過ごすわけにはいかないんだ!

全力で守る。信じようと信じまいと、俺は必ずそうする」

そう言うと、礼は再び梓からプライドを傷つけられるような言葉を聞きたくないとでもいうように、きびすを返した。

「黒木先生.....
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