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108.パーティー当日、啓介の不安①

Aвтор: 中道 舞夜
last update Последнее обновление: 2025-07-13 19:03:57

「なんかあっという間にパーティーの日が来ちゃったわね。」

パーティー当日の朝、俺のベッドで目を覚ました佳奈が、枕元に置かれたスマートフォンを見ながら呟いた。

「ああ、なんか当日になると不思議な感じだな。」

俺もそう言いながら佳奈の白い肌をそっと撫でた。華やかな創立パーティーの準備を二人で進めてきたが、いざ当日となるとどこか現実味がない。

佳奈は俺の胸に頭を乗せ、少しだけ不安そうな声で言った。

「万全は尽くしたつもりだけれど、お母様、喜んでくれるかしら」

「きっと大丈夫。お世辞とかじゃなくて佳奈のプランは本当にいいと思ったよ。聞いていてワクワクしたし、今も楽しみだ。もし、万が一母さんが何か言ってくるようであっても俺が佳奈を守るし、次を考えよう。」

そう言って佳奈を抱き寄せ髪を優しく撫でた。そのまま指をずらし頬を撫でていく。佳奈はそっと目を閉じて口を少しだけ開けて、次のアクションを待っているようだった。その愛おしい表情を見つめていたが、ふと、ある不安が頭をよぎり手が止まってしまった。

「……その前に、佳奈が愛想つかして嫌になったりしない?」

俺から出た思わぬ言葉に、佳奈は目を開け虚を突かれたように小さく笑った。

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