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第32話 あんた誰よ!?

last update 最終更新日: 2025-06-10 11:05:03

 三十分後。

 

 住宅街の中にある。普通の二階建ての一軒家がある。赤い屋根が目立つけど、割と親近感のわく造り。

俺達の目の前にある表札に日比野と書いてある。

 意外と早めについてしまった。

 そして隣には伊織も一緒だ。出かけようとしたらちょうど夕飯の支度を終えた伊織が俺の部屋に歩いて来て、廊下で会話する形になった。それでカレンの家に行くことを告げ夕飯も外で食べてくるからと伝えると、エプロン姿だった伊織は慌てて二階へ駆け上がり、また慌てて降りてきたかと思ったら、お出かけ用のショルダーバッグを下げてきた。そして「カレンさんが心配」とか「夜、男の人が行くなんて危険」とか「お義兄ちゃんが危ないから」とか理由をつけてついてきたのだ。

 ちなみに、夕飯は珍しく二人とも家にいた両親が食べるので心配はいらないらしい。父さんからは「あまり遅くなるなよ」って言われたけど、特に気にはしていないみたいだ。

「あの……ウチに何か用ですか?」

 家を見ていた俺たちに後ろから声を掛けられ、伊織と二人そろってビクッとなった。

 振り向くとそこには、肩からスポーツバッグをかけた伊織と同じくらいの歳の男の子が、俺達二人を怪しむような眼で見ながら立っていた。

「え、えとお家の方かな?」

「そうですけど何ですか?」

「あの、私たちカレンさんにお呼ばれしてして来たんですけど……」

「ああ、姉ちゃんの友達っスか。ちょっと待ててください、呼んできますから」

 そう言って男の子は乱暴な感じでドアを開け、「姉ちゃぁぁん、客きてるよぉ」って言いながら家の中へと消えていった。

 すぐにカレンが出て来て「どうぞ」って招きいれてくれた。

 そのまますぐに居間へと通されてソファーに伊織と座る。その対面に俺たちに飲み物の入ったグラスを用意してくれたカレンが座った。今日はお母さんは仕事に出かけているらしく、この時間はたいていが弟君と2人らしい。

「三つ違いの弟なのよ」

「へぇ~」

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