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従者VS.従魔

Auteur: をち。
last update Dernière mise à jour: 2025-05-14 15:19:34

「では、場所のご移動を」

控えていたバードがスッと出てきて三人を練習場へ誘導する。

実は公爵家の練習場は、俺が好きなだけ新しい魔法を試せるようにと、強度な結界を張ってある。

折にふれ強化してきたから、三人が存分に戦っても十分耐えうるはずだ。

練習場に向かいながら、アスナが俺を振り返り、こう確認してきた。

「私はどこまでやってよろしいのでしょうか??」

「そうだな……。こちらの世界に渡った時点で、お前もかなりチートなんだよ。魔力は言うまでもないが、お前の身体能力も……恐らく従来の5倍から10倍くらいにはなっていると思うぞ?

アリアとセリアの能力は魔力ではなく純粋に身体能力に特化したものだ。だから、ここは公平に……魔法禁止な?

その身体を使いこなして見せろ」

アスカの片方の眉尻がくいっと上がった。

「それは、命令でしょうか?私の能力は主に魔力によるものなのですが……」

うん。だからこそだよ。魔力を使えば勝負にすらならないだろう?

だから俺は傲然と顎を上げ、ニヤリと笑ってこう言った。

「不利な状況で勝ってこそその価値を示せるというもの。

命令だ。アスナ、俺のためにその身体能力だけでこの二人を制してみろ!

ちなみに、この二人は俺の師匠だからな?強いぞ?」

声に出さずに口の動きだけでアスナが言う。「マジか……」

それに俺も口の動きだけで返してやる。「俺を守るんだろ?」

アリアがフン、と鼻を鳴らした。

「主人を守るのが下僕の務め。私たちにも負けるような従魔にいったい何の価値が?」

セリアがニコリとほほ笑む。

「我らは学園ヘはいけぬ。我々に勝って、己の価値を示せ。アスカ様をお守りできるのだと、証明してみろ」

アスナはスッと俺の前で片膝をつき、俺の手を恭しく持ち上げるとその甲にキスを落とした。

「我が主人に必ず勝利をささげます」

アスナが二人に向き直った途端、アリアとセリアが左右に分かれアスナに襲い掛かった。

ひとりは上段、一人は下段を狙い鋭い蹴りを放つ。

とっさに上段の蹴りをその腕で受け、後ろにバク転することでその反動を殺すとともに下段の蹴りを避けるアスナ。

「ふん、いい判断だ」

「ありがとうございます」

双方ともまだ余裕の表情。

ここから猛攻に次ぐ猛攻。

前後左右あらゆる方向から腕や足がアスナを襲う。

双子なだけあり打ち合わせてもいないのに、どちらかに目を向ければどちらかが必
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    とりあえず色々試した結果、レオンに付随するもの(衣服、小物など)は自由に生成可能だと分かった。イメージ次第で衣服を着替えることもできるが、脱いだ衣服をそのまま維持するには「レオンと別の個体として残す」イメージが必要。意識せずに脱ぐとレオンの身体から離れたとたん魔素に戻って霧散してしまう。ついつい面白くなっていろいろとさせたため、レオンはすっかり拗ねてしまった。子供の用に頬を膨らませて三角座りで部屋の隅に蹲っている。わかりやすい「拗ねました」「構ってください」ポーズ。「全く。今のお前は俺の従魔なんだぞ?主人の希望を叶えるのが仕事だろう?」ドカリとベッドに腰かけながら声だけかけてやる。放置してやってもいいが、まだまだやらせたいことがあるからな。早く立ち直らせねば。「でも、心は俺なんだぞ?ようやくアスカと共にいられるようになったのに……。これじゃあ俺、着せ替え人形?実験体?じゃん」「自己認識がきちんとしているようで何よりだ」「ひっでえ!!」「前世の自分のしでかしを思い出せ。側にいることを許してやっただけありがたいと思え」「またそれ!!……………そりゃちょっとばかし暴走したなって反省してるけどさ。アスカだって悪いんだぜ?」「はあ?俺の何が悪いっていうんだ?」アスナが切々と訴える。要は、「俺がアスナを受け入れすぎたから」独占欲が湧いたというのだ。「だってさ、俺んちの親は金はくれるけど愛情はくれなかったし。冷え切ってたんだよ。周りは俺をもてはやすか避けるかだし。対等に扱ってくれたのは飛鳥だけだったんだ。お前、俺が何しても『らしくない』とか言わなかったろ?そのままの俺を受け入れてくれたから。お前の傍でだけ息ができる気がした。本当の俺のままで居られ

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  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   レオンとアスナ2

    俺はぐいっとレオンを引き剥がした。パッパッとレオンが触れていた箇所をこれみよがしに払ってみせる。「ふう。つれないなあ、アスカは」「ふん!嫌ならさっさと婚約破棄すればいい。俺に必要以上に近づくな。俺を見るのもやめろ。背筋が寒くなる。助けてやった恩は忘れるなよ?そのうち帰して貰うから」レオンはおどけた仕草で「降参」と両手を上げて見せた。「君に嫌われなくないからね、了解。助けてくれたことには感謝しているんだよ?……ありがとう、アスカ。じゃあ、改めて今後の話し合いをしようか?そこの……アスナだったかな?……私と似すぎていて怖いね。まるで双子だ。彼と話をしてみていいかい?」「アスナ、話していいぞ」解禁したとたん、アスナが吠えた。「おい、お前!」一瞬で俺に駆け寄り俺をその腕に抱え込むと、レオンに向かってけんもほろろな態度で言い捨てる。「俺をアスナと呼んでいいのはアスカだけだ。分かってるよな?俺の力があればお前などどうとでもできるんだぜ?いいか、お前はアスナに近づくな。アスナは俺のものだ」「はあ?!俺が誰のものだって?」ギロリと睨んでやれば、焦ったように慌てて言いなおす。「……アスナは俺の主人だ。アスナに近づいていいのも触れていいのも俺だけだ。分かったか?」まあ、色々言ってやりたいことはあるが、レオンを牽制してくれることに関しては異論はないので大人しくしておく。一方、アスナに脅されたレオンはといえば、怯えるどころかなんとクスっと笑みを漏らした。「……うーん。なかなか好戦的だね?」そして真正面から、平然とレオンに反論したのである。「私に憑りついていた頃の君なら私をどうとでもできたかもしれない。でも、もう無理だよね?だって君はアスカの従魔なんだもの。立場上、アスカは君が私を傷つけることは許さないと思うよ?それにね、一応私はアスカの婚約者だ。従魔の君とは違う。アスカに触れる権利はあるんだよ?」「レオン、あくまでも『一応』の婚約者だ。俺に触れる権利なんぞ、俺は認めていない」「はいはい。じゃあ言い直すよ。少なくともそこの従魔君よりは。これでいい?」アスナと呼ぶなと言われたことを逆手に取り、しつこいほどにアスナは単に俺の「従魔」なのだと強調するレオン。案の定、アスナがムッとしたようにレオンに食って掛かる。「ふん!俺はアスカと一蓮托生

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