Share

俺に従魔ができた件

Author: をち。
last update Last Updated: 2025-05-07 16:20:03

言いたいことを言ってしまえば、後は用はない。

「じゃあ、俺は失礼する。アスナ、あんまりレオンに絡むなよ。適当なところで切り上げて来い」

じゃあ、と手を上げ去ろうとすれば……

「えええ?!ちょっと!俺を置いていくつもり?俺、アスカの従魔なんだよね?!一緒に居なきゃでしょ!」

慌てたようにアスナが俺に手を伸ばしてきた。

「いや、いくら私から引きはがしたとはいえ、これまでこの従魔くん、私に憑りついていたんだよ?置いていくの?」

レオンの顔にも「信じられない」と書いてある。

「お前らさっきまで二人で盛り上がっていただろう?俺はもうお前らに伝えるべきことは伝えた。だから後はふたりで存分にやり合ってくれ」

「ただし後が面倒だから二人とも手は出すなよ?」と付け加えれば、金と黒が揃って呆れたような眼を俺に向けてきた。

「……なんだ?何か文句でもあるのか?」

憮然として告げれば、ふたりとも額に手をあて疲れたように首を振る。

「……いや、もう俺もこいつに用なんてねえよ。てか、アスカより優先することなんてないからな?!」

「私も従魔くんにはもうかかわりたくはないかな……。アスカとは話が別だけれどね?」

そっくりの仕草と表情。お前ら意外と気が合うんじゃないか?

チッ、と舌打ちを一つ。

しばらくレオンに任せてやろうと思ったのに、残念だ。

仕方なくアスナを連れて行くことにする。

「ほら、アスナ。行くぞ。

といっても、学園にまだお前の席はないから&

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Related chapters

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺に従魔ができた件2

    とりあえず色々試した結果、レオンに付随するもの(衣服、小物など)は自由に生成可能だと分かった。イメージ次第で衣服を着替えることもできるが、脱いだ衣服をそのまま維持するには「レオンと別の個体として残す」イメージが必要。意識せずに脱ぐとレオンの身体から離れたとたん魔素に戻って霧散してしまう。ついつい面白くなっていろいろとさせたため、レオンはすっかり拗ねてしまった。子供の用に頬を膨らませて三角座りで部屋の隅に蹲っている。わかりやすい「拗ねました」「構ってください」ポーズ。「全く。今のお前は俺の従魔なんだぞ?主人の希望を叶えるのが仕事だろう?」ドカリとベッドに腰かけながら声だけかけてやる。放置してやってもいいが、まだまだやらせたいことがあるからな。早く立ち直らせねば。「でも、心は俺なんだぞ?ようやくアスカと共にいられるようになったのに……。これじゃあ俺、着せ替え人形?実験体?じゃん」「自己認識がきちんとしているようで何よりだ」「ひっでえ!!」「前世の自分のしでかしを思い出せ。側にいることを許してやっただけありがたいと思え」「またそれ!!……………そりゃちょっとばかし暴走したなって反省してるけどさ。アスカだって悪いんだぜ?」「はあ?俺の何が悪いっていうんだ?」アスナが切々と訴える。要は、「俺がアスナを受け入れすぎたから」独占欲が湧いたというのだ。「だってさ、俺んちの親は金はくれるけど愛情はくれなかったし。冷え切ってたんだよ。周りは俺をもてはやすか避けるかだし。対等に扱ってくれたのは飛鳥だけだったんだ。お前、俺が何しても『らしくない』とか言わなかったろ?そのままの俺を受け入れてくれたから。お前の傍でだけ息ができる気がした。本当の俺のままで居られ

    Last Updated : 2025-05-08
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺に従魔ができた件3

    「ほら」腕を広げてやれば、戸惑ったような瞳が俺を見つめる。傍に行きたい気持ちと、行ってはダメだという気持ちがせめぎ合っているようだ。一瞬俺に手を伸ばしかけ、諦めたようにその手を引くアスナ。俺は首をかしげ、少しだけ笑って見せる。「来ないのか?ハグしてやると言っている」「アスカ!!」ドカン、と大きな犬が飛び込んできた。受け止めそこね、アスナごとベッドに倒れ込みながら俺は笑った。「アハハハ!なんだよ、クソイケメンが。お前、単なるガキじゃねーか。俺はお前の母親じゃねえんだぞ?」「うん。知ってる」くすん、と俺の胸元でアスナが鼻を鳴らす。……泣いてんのか?俺はそんなアスナの頭を黙って撫で続けた。……そうか。俺の15年とこいつの15年は違うのだ。俺はこっちに来て「悪役令息アスカ」に生まれ変わっていたのには驚いたが、すぐさま「好きに生きてやる」と決め、好き勝手に生きてきた。両親は2人とも俺に愛情をふんだんに与えてくれたし、好き勝手に生きることを許してくれる。だから……自分で言うとアレだが、前世でできなかったことを全部やって生きてきたんだ。でもこいつは唯一のよりどころを失い、絶望と後悔の中で生きてきた。俺に再開することだけをひたすらに願って、必死で世界を超え、俺を探し続けた。グッ、と喉が詰まった。熱い塊がこみあげてくる。愛おしい。ああ、なんて奴だ。ここまでされてほだされない奴がいるか?絶対にこいつから逃げると決めた前世の俺も、こいつを憎んだ俺も……それでもこい

    Last Updated : 2025-05-09
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   プロローグ

    悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く……はずだった。俺の名はアスカ・ゴールドウイン。帝国の筆頭公爵家の嫡男にして完全無欠の悪役令息、それが俺だ。自ら完全無欠というとまるで痛い男のようだが、単なる客観的事実なのだから仕方ない。そう、ここは乙女ゲームの世界。俺はそのラスボス悪役令息なのである。なぜそんなことが分かるのかって?実は俺には前世の記憶があるのだ。前世の俺は、いわゆる「真面目に頑張る」人間だった。そして自分の欲望に忠実な奴らにこき使われ搾取され、さんざん翻弄されたあげく、最後は過労による事故であっけなく死んだ。自由になる準備をしていた矢先だった。享年22歳。みじめで短い一生だ。死ぬときにこう思った。「真面目に善良に生きてきた俺がなんでこんな目に合うんだよ!神なんていない!神がいるんなら、うらんでやる!もし生まれ変われたら、今度は好き勝手に生きるぞ!俺が信じるのは俺だけだ!」………もしかしたら神はいたのかもしれない。だって俺は鬼畜のオタク姉がはまっていたBLゲーム「太陽と月のロンド」の登場人物、そう、最強にして最恐の悪役令息アスカ・ゴールドウィンに生まれ変わっていたのだから。……。俺が前世の記憶を取り戻したのは5歳の時だ。それまでは自分が人間嫌いな理由も分からなかったし、自分の異常なほどのハイスペックも意味が分からなかった。まあ訳は分からなくとも好き勝手やってはいたのだが。だがある日、退屈な授業から逃げ二階から飛び降りた俺は、着地に失敗して頭を打った。その時、走馬灯のように脳内を駆け巡ったのが、俺の前世の記憶だった。5歳の頭に25年分の記憶が流れ込んだんだ。どう考えても容量的に無理がある。そのせいで俺は1週間寝込み、目を覚ましたときには俺のおかれた状況全てを理解していたのだった。もう笑うしかない。俺が生まれ変わっていたのはハイスペックなラスボス、いわゆる死にキャラだったのだから。おいおい、悪役令息かよ!死ぬ前に神を罵ったせいか?これで俺が神童扱いされている理由も、明らかに異常なハイスペックであることにも納得がいった。全ては俺が「ラスボスだから」だ。敵が強大であれば強大であるほどクリアしたときの感動が大きいのもだからな。しかもこの乙女ゲームは単なる乙女ゲームではなかった。男と女だけでなく、男同士、女同士、あらゆる恋

    Last Updated : 2025-04-15
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺の前世

    俺は女が嫌いだ。ついでに言えば人間嫌いだし、友達面して近づいてくる奴らも大嫌いだ。要するに人間が嫌いなのだ。一人がいい。放っておいて欲しい。俺がこう思うようになったのには、俺の前世が関係していた。前世の俺は父と母、姉と俺という4人家族。お嬢様育ちで、親父が稼いだ金を湯水のように使うだけの母親。その母の影響で弟は好き勝手命令できる存在だと勘違いしているオタクの姉。俺は、そんな二人に「ねえ、洗濯はまだあ?」だの「コーヒー淹れてよ。熱いのにして!」「ケーキが食べたい。直ぐに買ってきて!」だのと、奴隷のようにこき使われて育った。断れば奴らは「男なんだからそれくらいして当たり前でしょう?男はね、女を守るものなんだから」と二人がかりで俺を責めるのだ。親父は「海外に単身赴任になった」とさっさと家を出てしまっていたから、俺は馬鹿みたいに「この家で男は俺だけなんだ。父さんの代わりに俺が二人を守らなきゃ」だなんて思って、必死に二人の世話をやいていたのだ。笑えるだろ?今思えば、女二人によってたかって洗脳された状態だったのかもしれない。学校でだけは母と姉から解放されて本当の自分でいられた。でも部活には入れず、学校が終わるとまっすぐ家に帰らなきゃいけなかった。だって、俺が夕飯を作ったり家事をしないと家が回らないのだ。洗濯しなきゃ服は勝手に綺麗にはならないし、食事を作らないとレトルトやカップヌードルばかり食べることになる。それが嫌なら、俺がやるしかなかった。だから放課後や休みに友人に遊びに誘われても、断るしかない。そんな俺はみんなからしたら少し距離があるように思えたんだろう。友達はたくさんいたが、心を許した親友はできなかった。そんな自分が寂しくてみじめだった。俺の唯一の楽しみは、夜ひとりで楽しめるゲームやアニメだけだったんだ。だが中学になると、俺に初めて親友ができた。そいつの名は阿須那レオン。中学生になるのを機に他の学区から引っ越してきたのだという。俺が明日香という苗字だから、アスカとアスナで名簿順の席が前後になった。彼は外国の地が入っているとかで、目が碧かった。おまけに田舎の中学では場違いなほどの美形で、そのせいで皆に少し遠巻きにされていた。みんなちょうど思春期だったから恥ずかしさもありどう接していいのか分からなかったのだろう。実は、俺も最初は少し苦手だ

    Last Updated : 2025-04-15
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺、転生する1

    新しい人生は、剣と魔法のある異世界で始まっていた。俺は王家に次ぐ権力を持つ筆頭公爵家、ゴールドウィン家の長男として生を受けたのだ。父は敏腕宰相で現王と幼馴染。黒髪にグレーの瞳というクールで知性的な容貌の美形だ。高位貴族で人物容姿にも優れた将来有望な父には、適齢期になったとたん釣書が殺到した。父はその頃のことを苦い表情でこう語る。「血で血を洗うような戦いが水面下で行われていた」。想像するだけで恐ろしい。そんな父が選んだのは公爵家でもなく、侯爵家ですらなかった。サーズ伯爵家の三女、マーゴット。俺の母だ。母は……こう言っては何だが、貴族社会には珍しい無邪気でおっとりとした女性だ。銀髪に金の瞳という薄い色彩もあり、まるで妖精のように見える。父によれば、母は当時「妖精姫」と呼ばれ、男性からは憧憬を集め女性からは守る対象として慈しみ可愛がられていたという。父はそんな母の浮世離れした様子に一目ぼれをし、姫を守る騎士となることを自らかってでた。誰よりも近くで母を守り、大切に慈しんだ。そうして母の信頼を得るやいなや、あっという間に婚約の了承を貰い、そのまますぐスピード婚に持ち込んだ。家格の差を気にする母に対し父はこう言い放ったのだそうだ。「この私に後ろ盾など必要だとでも?」わが父ながらなかなかのものだ。要するに父は母に惚れこんでいた。こうして貴族には珍しい恋愛結婚の末に生まれたのがこの俺、アスカ・ゴールドウィンだ。髪の色と知性を父から、珍しい金色の瞳と美しい容貌を母から受け継いだ。俺は生まれた時からどこか特別だったそうだ。赤子なら泣くのが仕事だというのに、よく見えぬ目でじいっと周りを観察していたという。そして妖精のように可憐な母の腕を拒絶し、父に向かって腕を伸ばした。父は驚き躊躇いながらもしっかりと俺を抱きしめた。ちなみにこれが父の俺への溺愛が決定した瞬間だ。拒絶された母はといえば、気にすることもなくおっとりとほほ笑んだという。「まあまあ。カイトちゃんはお父様が大好きなのねえ。お母様といっしょねえ」と。さすが妖精姫だ。たまたまかと思われたそれは、物心ついてからも続く。俺はどうしてだか女性が近づくと泣き、拒絶したのである。それでも拒絶してもそれをおっとりと躱し俺に関わり続けた母のことだけは、受け入れて甘えるようになった。赤子としてかなり異質だったと

    Last Updated : 2025-04-16
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺、転生する2

    そんな折俺にとんでもない話が持ち込まれた。なんと「第一王子の婚約者に」と王家に請われたのである。元々父は王と親しかった。宰相である父は、職場である王城で「自慢の息子の話」をたびたびしていたようで、王が俺に興味を持ってしまったのだ。俺が3歳にもならぬうちから「息子の婚約者に」と言い出していたそうなのである。父は「嫡男ですので」とそれをずっと断っていたようだが、ここにきて俺に弟が生まれてしまい「唯一の息子」ではなくなってしまった。弟というスペアができたことで、王家に請われたにもかかわらず断るほどの理由にはならなくなったのである。俺はその話を聞いて何の理由もなく「嫌だ」と思った。根拠などない。第一王子と聞き「嫌だ」と思い、レオンという名前を聞いて「絶対にダメ」だと思ったのである。「父上、嫌です!俺は筆頭公爵家嫡男。王家の嫁になど言語道断。無理を押し通すような王家などこちらから切ってしまえばいい。王家にこう言ってください。「カイトはゴールドウィン家の後継者です。それを挿げ替えろと?ご無理をおっしゃる。王家に我がゴールドウィン家を敵に回すおつもりがあるのならば、婚約をお受けいたしましょう』と。それでも婚約をと言われたら、王家を討ちましょう。それがいい。父上と私ならできます!」

    Last Updated : 2025-04-17
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   学園にて1

    入学から二か月。剣術の授業の後逃げ遅れた俺は、あっという間にクラスメートに囲まれてしまった。「アスカ様、今日も素晴らしかったです!」「流石ですわあ!希代の天才だというのは本当ですわね!!完璧ですわ!」「素晴らしい剣筋だ!あの域に達するにはどれほどの修練を積まれたのですか?!」全く、相も変わらずうるさいものだ。こうも目をハートにしてくる意味が分からない。俺は彼らに冷酷といっていいような対応しかしていないのに、こいつらはマゾなのか?「当然だ。貴様らごときが俺を称えるなど一万年早いぞ?」ニヤリと笑いながら軽く顎をしゃくってみせると、取り巻きどもは嬉しそうに顔を輝かせた。だから何故これで喜ぶ?こいつら、おかしすぎるだろう。俺が戸惑うのはこういうところだ。ここの女は俺が知る前世の女たちとは違いすぎる。なんというか……俺に対してあまりにも好意的すぎるのだ。俺のこの「美しい」と言われる容姿のせいか?いや、前世の俺だって容姿は悪くなかった。優しくしているわけでもないのに、いつまでも好意的なわけがわからない。男どもも俺を妬むどころか羨望の眼差しで褒

    Last Updated : 2025-04-18
  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   学園にて2

    なんとなく感傷に浸っていれば、そこに馬鹿みたいな声を上げながら、派手な女がやってきた。「アスカ様〜♡ 今日のお茶会、もちろん来てくださいますよね?うふふ。特別な趣向をご用意しておりますのよ?」こいつは確か家が商会をしているとかいう男爵令嬢だ。金にものを言わせて爵位を買ったという噂の成り上がり。豪華な衣装を着ているが、話し方も素振りも下品そのもの。権力にこびへつらい、下の者には辛く当たるタイプだ。実際、こいつが侍女を蹴倒しているのを見たことがある。まさに俺の大嫌いな「女」を具現化したような女。女は甘えたように鼻にかかった声でわめきたて、図々しくも俺の腕にしがみつこうとしてくる。せっかく少しいい気分だったのに、台無しだ。俺は軽く一歩引くことでしがみつこうとした女の手をさりげなくいなし、冷たく吐き捨てた。「ふん、貴様なんぞ知らん。この俺がなぜ貴様の下らぬ茶会になんぞ行かばならんのだ?女、不快だ。俺に触れる許可を出した覚えはないぞ。わきまえろ」容赦のない言葉含まれた明らかな侮蔑と拒絶。それを聞いて、居合わせた周りのやつらがきゃあきゃあと騒ぎ出した。&n

    Last Updated : 2025-04-19

Latest chapter

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺に従魔ができた件3

    「ほら」腕を広げてやれば、戸惑ったような瞳が俺を見つめる。傍に行きたい気持ちと、行ってはダメだという気持ちがせめぎ合っているようだ。一瞬俺に手を伸ばしかけ、諦めたようにその手を引くアスナ。俺は首をかしげ、少しだけ笑って見せる。「来ないのか?ハグしてやると言っている」「アスカ!!」ドカン、と大きな犬が飛び込んできた。受け止めそこね、アスナごとベッドに倒れ込みながら俺は笑った。「アハハハ!なんだよ、クソイケメンが。お前、単なるガキじゃねーか。俺はお前の母親じゃねえんだぞ?」「うん。知ってる」くすん、と俺の胸元でアスナが鼻を鳴らす。……泣いてんのか?俺はそんなアスナの頭を黙って撫で続けた。……そうか。俺の15年とこいつの15年は違うのだ。俺はこっちに来て「悪役令息アスカ」に生まれ変わっていたのには驚いたが、すぐさま「好きに生きてやる」と決め、好き勝手に生きてきた。両親は2人とも俺に愛情をふんだんに与えてくれたし、好き勝手に生きることを許してくれる。だから……自分で言うとアレだが、前世でできなかったことを全部やって生きてきたんだ。でもこいつは唯一のよりどころを失い、絶望と後悔の中で生きてきた。俺に再開することだけをひたすらに願って、必死で世界を超え、俺を探し続けた。グッ、と喉が詰まった。熱い塊がこみあげてくる。愛おしい。ああ、なんて奴だ。ここまでされてほだされない奴がいるか?絶対にこいつから逃げると決めた前世の俺も、こいつを憎んだ俺も……それでもこい

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺に従魔ができた件2

    とりあえず色々試した結果、レオンに付随するもの(衣服、小物など)は自由に生成可能だと分かった。イメージ次第で衣服を着替えることもできるが、脱いだ衣服をそのまま維持するには「レオンと別の個体として残す」イメージが必要。意識せずに脱ぐとレオンの身体から離れたとたん魔素に戻って霧散してしまう。ついつい面白くなっていろいろとさせたため、レオンはすっかり拗ねてしまった。子供の用に頬を膨らませて三角座りで部屋の隅に蹲っている。わかりやすい「拗ねました」「構ってください」ポーズ。「全く。今のお前は俺の従魔なんだぞ?主人の希望を叶えるのが仕事だろう?」ドカリとベッドに腰かけながら声だけかけてやる。放置してやってもいいが、まだまだやらせたいことがあるからな。早く立ち直らせねば。「でも、心は俺なんだぞ?ようやくアスカと共にいられるようになったのに……。これじゃあ俺、着せ替え人形?実験体?じゃん」「自己認識がきちんとしているようで何よりだ」「ひっでえ!!」「前世の自分のしでかしを思い出せ。側にいることを許してやっただけありがたいと思え」「またそれ!!……………そりゃちょっとばかし暴走したなって反省してるけどさ。アスカだって悪いんだぜ?」「はあ?俺の何が悪いっていうんだ?」アスナが切々と訴える。要は、「俺がアスナを受け入れすぎたから」独占欲が湧いたというのだ。「だってさ、俺んちの親は金はくれるけど愛情はくれなかったし。冷え切ってたんだよ。周りは俺をもてはやすか避けるかだし。対等に扱ってくれたのは飛鳥だけだったんだ。お前、俺が何しても『らしくない』とか言わなかったろ?そのままの俺を受け入れてくれたから。お前の傍でだけ息ができる気がした。本当の俺のままで居られ

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺に従魔ができた件

    言いたいことを言ってしまえば、後は用はない。「じゃあ、俺は失礼する。アスナ、あんまりレオンに絡むなよ。適当なところで切り上げて来い」じゃあ、と手を上げ去ろうとすれば……「えええ?!ちょっと!俺を置いていくつもり?俺、アスカの従魔なんだよね?!一緒に居なきゃでしょ!」慌てたようにアスナが俺に手を伸ばしてきた。「いや、いくら私から引きはがしたとはいえ、これまでこの従魔くん、私に憑りついていたんだよ?置いていくの?」レオンの顔にも「信じられない」と書いてある。「お前らさっきまで二人で盛り上がっていただろう?俺はもうお前らに伝えるべきことは伝えた。だから後はふたりで存分にやり合ってくれ」「ただし後が面倒だから二人とも手は出すなよ?」と付け加えれば、金と黒が揃って呆れたような眼を俺に向けてきた。「……なんだ?何か文句でもあるのか?」憮然として告げれば、ふたりとも額に手をあて疲れたように首を振る。「……いや、もう俺もこいつに用なんてねえよ。てか、アスカより優先することなんてないからな?!」「私も従魔くんにはもうかかわりたくはないかな……。アスカとは話が別だけれどね?」そっくりの仕草と表情。お前ら意外と気が合うんじゃないか?チッ、と舌打ちを一つ。しばらくレオンに任せてやろうと思ったのに、残念だ。仕方なくアスナを連れて行くことにする。「ほら、アスナ。行くぞ。といっても、学園にまだお前の席はないから&

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   レオンとアスナ2

    俺はぐいっとレオンを引き剥がした。パッパッとレオンが触れていた箇所をこれみよがしに払ってみせる。「ふう。つれないなあ、アスカは」「ふん!嫌ならさっさと婚約破棄すればいい。俺に必要以上に近づくな。俺を見るのもやめろ。背筋が寒くなる。助けてやった恩は忘れるなよ?そのうち帰して貰うから」レオンはおどけた仕草で「降参」と両手を上げて見せた。「君に嫌われなくないからね、了解。助けてくれたことには感謝しているんだよ?……ありがとう、アスカ。じゃあ、改めて今後の話し合いをしようか?そこの……アスナだったかな?……私と似すぎていて怖いね。まるで双子だ。彼と話をしてみていいかい?」「アスナ、話していいぞ」解禁したとたん、アスナが吠えた。「おい、お前!」一瞬で俺に駆け寄り俺をその腕に抱え込むと、レオンに向かってけんもほろろな態度で言い捨てる。「俺をアスナと呼んでいいのはアスカだけだ。分かってるよな?俺の力があればお前などどうとでもできるんだぜ?いいか、お前はアスナに近づくな。アスナは俺のものだ」「はあ?!俺が誰のものだって?」ギロリと睨んでやれば、焦ったように慌てて言いなおす。「……アスナは俺の主人だ。アスナに近づいていいのも触れていいのも俺だけだ。分かったか?」まあ、色々言ってやりたいことはあるが、レオンを牽制してくれることに関しては異論はないので大人しくしておく。一方、アスナに脅されたレオンはといえば、怯えるどころかなんとクスっと笑みを漏らした。「……うーん。なかなか好戦的だね?」そして真正面から、平然とレオンに反論したのである。「私に憑りついていた頃の君なら私をどうとでもできたかもしれない。でも、もう無理だよね?だって君はアスカの従魔なんだもの。立場上、アスカは君が私を傷つけることは許さないと思うよ?それにね、一応私はアスカの婚約者だ。従魔の君とは違う。アスカに触れる権利はあるんだよ?」「レオン、あくまでも『一応』の婚約者だ。俺に触れる権利なんぞ、俺は認めていない」「はいはい。じゃあ言い直すよ。少なくともそこの従魔君よりは。これでいい?」アスナと呼ぶなと言われたことを逆手に取り、しつこいほどにアスナは単に俺の「従魔」なのだと強調するレオン。案の定、アスナがムッとしたようにレオンに食って掛かる。「ふん!俺はアスカと一蓮托生

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   レオンとアスナ

    運命?!俺は思わず顔をしかめた。「どこの乙女だ?!勘弁しろよ。こんなクソみたいなもんは運命じゃねえ。悪縁っつーんだよ」切っても切れない縁。どこまでも俺を追ってきた執念深さは、まさに悪縁と呼ぶにふさわしい。悪役令息の俺と、俺に執着し、俺のためなら世界を超え誰を犠牲にしてもいいというお前。もつれにもつれ、拗れまくった俺たちだからこそ、運命だとかいうよりも悪縁というほうがしっくりくる。泥臭いそんな縁だからこそ、俺はそれが愛おしいと思ったんだ。お前を許し、受け入れてもいいと思えたんだぞ?なんてことは言ってはやらないけどな。「酷いなあ。でもいいよ。俺は運命だって思ってるから。これからずっと一緒ならなんだっていいんだ」「……うーん」そろそろレオンが目を覚ますか?俺はアスナに離れているよう指示し、レオンの横にしゃがみ込んだ。そっと肩に手をかけ揺すってみる。「おい、大丈夫か?」パチ……パチ……。数度の瞬きののちにレオンの碧い光彩が姿を見せた。「…………アスカ?私は……どうしたんだ?」額に手を当て、ぼんやりした目で頭を振るレオン。「……おかしな夢を見た」おぼつかない口調で言いながらゆっくりと起き上がるのに手を貸してやる。「ありがとう。ああ……なんだか頭がぼうっとする。何があった?何故私は倒れていたの?」うむ。どうやらアスナに乗っ取られ

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   レオン

    さて。どうしようか。アスナが抜けた衝撃で気を失い床に倒れているレオンハルトを眺める。起こしたほうがいいのだろうか。アスナに魔力をかなり使われたようだし、しばらくこのまま寝かせておく?いや、音声遮断を解いて護衛たちを呼び、連れ帰ってもらうべきか?しかし、こうして見てもアスナとレオンはよく似ている。髪色が違うから印象は違うが、基本的な顔の造りはほぼ同じだ。不思議なものだな。ちら、とアスナを見れば、俺が何を考えていたのか察したようだ。「なんか自分と同じ顔を見るって変な気分だな」と苦笑した。「お前が前世であれだけモテたのも納得だ。なにしろ異世界の王子様と同じ顔だったんだからな。元々こっちに生まれるはずだったんじゃねえの?レオンと双子とかでさ」適当に言った言葉だったが、ふと自分の言葉になにか引っかかりを覚えた。「…………いや、あり得るな。お前の異常なスペックってある種作り物めいてたし。お前は元来こっちに生まれるべき魂だった、なのに間違えてあっちに生まれちまった。だからみんな異様にお前に傾倒しやがったんじゃねえか?小学校んとき避けられてたのだって、嫌われてたっつーよりもどちらかというとカッコよすぎて遠巻きに崇められてた、に近かったし。そう考えると、レオンとの異常な親和性にも説明がつくんだよ。あんだけ馴染んでたのにも納得できる」「……それはわからないけど。確かに俺はどこか『違う』って思ってた。世界にとって俺は異質な存在なんじゃないか、って。漠然とした違和感っていったらいいのかな?飛鳥だけなんだよ。俺に普通に接してくれたの。飛鳥だけが特別だった。お前といる時だけは俺が世界に存在することを許さ

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   アスナと飛鳥とアスカ

    とりあえず、アスナの設定はこうだ。アスナは「高位精霊」実体のないアスナは、自分とそっくりの外見を持ち魔力の相性まで良いレオンハルトを見つけ、その身体を自分のものとしようとしていた。俺はアスナと交渉し、アスナの身体を魔力で実体化してやる代わりにアスナを俺の従魔にした。今後アスナは俺の従者として常に俺に付き従うことになる。元はと言えば、俺関連でこっちの世界に来てレオンに憑りついたともいえるのだが、そこは伏せておく。前世の云々、ゲームで云々と言ったところでどうせ理解できまい。アスナを高位精霊とした方が理解しやすいだろうし、レオンに恩も売れる。一石二鳥だ。アスナにもこの設定を言い聞かせ、余計なことは言わないよう念を押しておいた。「いいか?前世だとか俺を追ってきたとか言うなよ?言ったら即その身体を取り上げるからな。お前と俺は今日初めてここで会った。分かったな?」「えー?じゃあ、『アスカに手を出すな』って言っちゃダメ?」「手を出されるつもりはないが、お前にそれを言う権利はない。黙ってろ」「……仕方ない、分かったよ。俺は下僕だしな。アスカに全て従うよ。これでいいだろ?」肩を竦めて見せる姿は、前世のアスナそのもの。なんだか妙な気分だな。言っている内容は別として、まるで昔に戻ったみたいだ。ふと浮かんだ考えをブルブルと頭を振って吹き飛ばす。「あのな、確認しとくぞ?見ての通り、俺の外見も性格も前世の俺とは違う。お前とは違うんだよ。俺は飛鳥ってわけじゃない。前世の記憶があるだけだ。飛鳥は死んだんだ。分かってるよな?」「……うん。アスカが思う以上に分かってるよ。言われなくても俺が一番分かってる。…………俺がどれだけ後悔してどれだけ絶望したと思ってるの?」

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   俺の下僕、爆誕!

    「そうと決まればさっさとやるぞ!」襟首をつかんでアスナを立たせる。「……で、俺はどうしたらいい?」神妙な顔で俺に問うアスナに、胸を張って請け負ってやる。「お前はそこに立って俺の言う通りに繰り返せ。……正直に言えば、俺も従魔契約なんぞやったことがない。授業で習うのもこれからだ。だから、ぶっつけ本番という形になるが……大丈夫、お前も知っての通り、異世界ものに関しては前世でしっかり履修済みだ。同じようにやればいける!はずだ!任せておけ!まあ、最悪お前が消えるだけだ。問題ない!」とたんアスナが吠えた。「問題しかないよね?!俺、消えたくないんだって!せっかくアスカとまた会えたんだよ?!どんだけ苦労したと思ってんの?!」「しょうがねえだろ!前世のお前の行いのせいなんだ、我慢しろ!俺の傍に居させてやるだけありがたいと思え、このストーカー野郎が!!」ビシっと指を突き付けてやれば、分かりやすくショックを受けるアスナ。「ひ、酷え!俺、一応お前の親友だよな?そりゃ……ちょっとばかり行き過ぎちゃったけど……」「ほら、自覚あるんだろ?ちょっとばかり、じゃねえよな?行き過ぎもいいところだぜ。親友じゃねえ、親友だった、だ。高校では酷いもんだった。俺を支配しようとしやがったくせに!ちょっと消えるリスクがあるくらいいいだろうが。チャンスをやるだけ感謝しろ!」とにかく、これしか道はないのだ。やるしかない。それが嫌なら……消す。それが道理だからだ。本来ならばこの世界にあるべきではないのだ、アスナは。

  • 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈   アスカとアスナ3

    ズザザザーーーッツ!!受け身を取る間もなくいきなり俺に殴られたアスナが、ぶっ飛んでいく。ドガアッ!壁にぶつかったアスナが、真っ赤になった頬を抑えながら涙目で叫んだ。「い、いきなり何すんだアスカッ!」俺はそんなアスナの前に立ち、ジロリとアスナを睨む。「痛いか?」「はぁ?!痛いに決まってるだろ?!」「うむ。良かったぜ」そりゃそうだ。渾身の力で殴ったからな。前世とは違い、今生の俺は地道に身体を鍛えてきたのだ。威力には自信がある。「いいわけねえだろ!」「良いんだよ」よいしょ、とアスナの前にしゃがみ込み、ぶすくれるアスナの赤くはれた頬を遠慮なしに突いてやる。「こ、こら!痛いって!!やめろよアスカ!「安いもんだろ?それでチャラにしてやるって言ってんだよ」ニヤリを片方の唇を上げて見せれば、パカンとアスナの口が開いた。「聞こえなかったか?これで前世のことはチャラだ」アスナの顔が面白いくらいに真っ赤に染まっていく。「え?……は?あ、あの……え?」ぶすくれていたのが嘘のようにオロオロと慌てだすアスナ。こんな顔もするんだな、お前。余裕の顔してるより、この方がいいよ。「しょうがねーから、チャラにしてやるっつってんの!はは!おもしれー顔!ハンサムも形無しだな?」遠慮なくゲラゲラと笑ってやれば、眉尻を下げた情けない顔でへにょりと口を曲げた。口を開きかけてはまた引き結ぶアスナ。それを数回繰り返し、ようやく彼は言っ

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status