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act:痺れ薬・略奪

Aвтор: 相沢蒼依
last update Последнее обновление: 2025-07-10 16:40:07

 探偵が入念に調べてくれたリコちゃんの行動履歴をもとに、仕事が終わった彼女が彼氏と待ち合わせしている場所――リコちゃんが勤めている会社前にあるカフェに向かうと、店先でスマホを眺める姿が目に留まった。

 大事な彼女を心配した彼氏が、なにかあったときにすぐに対処できるところを待ち合わせ場所にしたのだろう。

 適度に人が行き交う歩道から、理子ちゃんの背後にうまいこと回り込む。熱心にスマホの画面に視線を注ぐ彼女の文面を覗き見たあとに、形のいい耳元に顔を寄せて口を開く。

「ラブラブなメッセージを、これから送信しちゃうのかな?」

 耳元にふわりとかかる吐息に感じたのか、リコちゃんは体をビクつかせながら振り返った。大きな瞳が俺を認識した瞬間に、頬が真っ赤に染まる。

「あはは、リコちゃんってば驚きすぎだよ。てか、俺にドキドキしてくれたとか?」

 この間と同じようにサングラスをかけて、白いシャツにジーンズというラフな格好で現れた俺にときめいてくれるなんて、リコちゃんってば純情だな。

 見入っていたスマホを胸に抱えながら、じりじりと俺から後退りしていく。

「やだなぁ、リコちゃん。そんな顔してたら、彼氏に嫌われちゃうって」

 かけていたサングラスを外してワザとらしく肩を揺すり、通りの向こう側を指差した。それに従うようにリコちゃんが振り返ってそこを見ると、信号待ちをしている恋人が心配そうな表情で、こっちをじっと見つめる。

「大好きな彼女の一大事に、必死になって走ってきました! ぎりぎりセーフで、息を切らしながらご到着♪」

 楽しげに実況中継をした俺の前に、仲良さそうに並んで立ったふたりに向かって拍手をしてやる。

「葩御さんっ――」

「稜って呼んでください、相田克巳さん。俺よりも年上なんですから、どうぞ遠慮せずに」

「どうして名前を知って……」

 眉根を寄せた恋人が顔色を青ざめさせながら、リコちゃんを大きな背中に隠した。今頃リコちゃんを隠す遅すぎる対応があまりに滑稽で、笑いだしたくなる。それを隠すべく肩にかかる黒髪を格好よくなびかせて、返事をしてあげた。

「だって敵のことを知っておかないと、戦略が立てられないじゃないですか。恋は戦争なんですよ。攻め落とした方が勝ちなんだから、ね。守ってばかりいると、その鉄壁をぶっ壊して、リコちゃんをさらいますけど」

 恋人の相田さんよりも俺のほうが背が低かったが、リコちゃんにいいところを見せなければと、彼に顔を寄せて睨みを利かせた。

 するとリコちゃんは、相田さんが着ているスーツの袖をぎゅっと握りしめると、それに呼応する感じで相田さんがリコちゃんの手を掴み、しっかり握ってあげる姿が目に留まる。

(ふーん、見せつけてくれるじゃないか。苛立ってしまいたくなるけど、ここは感情を抑えなきゃ)

 寄せていた顔を一歩だけ退くことで距離をあけ、ジーンズのポケットに手を突っ込む。距離をとった俺に、相田さんはこの間逢ったときとは違い、彼氏らしい態度を貫こうとしたのか、毅然としたまま口を開く。

「悪いけど君に、理子さんを渡すつもりはない。諦めてくれないか?」

「はい、そーですかと簡単に諦めるワケないでしょ。あのさ、なんだか雲行きが怪しくなってきたから、場所を変えてもいーい?」

 手にしていたサングラスをかけて、顎で原因を指し示した。ふたりが息を揃えたようにそこを見たら、通りすがりの女子高生がこっちを見て、ヒソヒソとなにか喋っているのを確認してくれた。

「駆け出しだけど一応、芸能人だからさ。外でトンパチしたら、目立っちゃうでしょ。相田さんと一対一の男の話し合いをしたいんだけど、リコちゃん彼氏をお借りしてもいいかな?」

 流れるように彼氏との話し合いを提案した途端に、リコちゃんは顔色を曇らせて相田さんに寄り添った。

「克巳さん、大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。しっかり話し合いをして、なんとかしてあげるから」

「じゃあ話は決まりだね。相田さん、俺ンちに行こう。リコちゃんバイバイ、気をつけて帰ってね」

 その場に立ちすくむリコちゃんを残したまま、俺たちは並んで通りの向こう側に向かった。

 遠くなっていく恋人の背中を、リコちゃんがいつまでも見つめていたのがわかり、イライラが自然と募っていったが、自宅マンションでおこなう作戦を実行するための原動力にしたのだった。

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