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十九話 はじまりの地

Penulis: 空蝉ゆあん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-30 18:10:50

 何事もなかったように

 日常は同じ時間を繰り返していく

 心に負った傷は

 少しずつ修復されていく

 全てを受け入れる事が

 僕達を強くする

 十九話 はじまりの地

 なんとなく過ごしてきた当たり前の景色がある。その中で変わったのは、僕とライアの秘密の場所。行こうかどうしようか迷ったが、心の折り合いをつける為にいる。

 僕が来るタイミングを知っているかのように佇んでいた彼女がいたはずなのに、目の前に存在しているのは、広い景色と切なさを漂わす空気だけだった。

 彼女が全ての空間を支配していた事に気付くと、くしゃりと顔を崩しながら笑うしかなかった。

 彼女と出会う前の自分は、この景色にそぐわない。ライアがいたから、自分の居場所にする事が出来ていた。

 景色に身を預け、力を抜く。そうすると、微かに小鳥の囀ずりが鼓膜を揺らした。全ての感覚をリセットするかのように、ゆっくり視界を広げていく。

「ライアは来ないと言ったでしょう?」

「君は……」

 誰もいなかったはずの空間にヒョンと現れたのはあの少女だった。彼女は僕へと一歩、一歩近づいてくる。

「この空間は君の居場所じゃないよ。本当は何処に向かうのがいいか、分かっている癖に」

 何を隠しているのかを把握している彼女は、僕の心の内部まで干渉していく。一つ一つの断片的な記憶が、一つの物語として纏められていく。

 触れられている感触を感じながら、覚悟を決めた。妹からあの話を聞いて、僕の考えは少しずつ違う道に傾いていく。

 それは少女が求める、本当の僕のストーリーなのかもしれない。

 奇跡が起こるかどうかなんて、決めれない。何もせずに指を咥えている自分よりも、行動を言葉を引き金にして、自分の一部へと侵食させた。

「私の名前を知らないヒズミには知っていて欲しい」

 自分の要望を初めて伝えてくる彼女は、まるで別人のような表情を見せてきた。真っ黒な髪が本来の色へと塗り替えられ、僕の前に姿を見せた。

 僕は彼女の正体を知っている。

 ずっと昔から見ていた君の顔を忘れる事なんて無理だったんだ。

「ヒズミには会いに来てほしい。私は彼女の代わりにはなれない。それでもいつも貴方を見ていたの、その気持ちは負けない」

 少女は急激な成長をする。それはまるで殻を破って生まれてくるヒナのようだった。僕の希望となりうる彼女の言葉に引き寄せられると、僕の傷
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