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20話 国王の無理難題と婚約者の反撃

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-01 07:00:31

 そんな感じで数日間も移動をし、ついに王都の入り口へとたどり着いた。辺りは賑やかな声に包まれ、石畳の道を行き交う人々の姿が見える。やがて馬車は、堂々とした王城の前に着き、ゆっくりと止まった。長旅の終わりを告げるように、微かな振動が伝わってくる。

「はぁ……長かった。」

 俺は思わず息を吐いた。ここ数日間の馬車での移動は、快適な膝枕こそあったものの、検問や盗賊の襲撃といった不安要素も多く、常に気が抜けなかった。 ……とはいえ、心臓が一番跳ねたのは、ミリアのふとした仕草や言動だったかもしれない。

 馬車が止まったからといって、それが目的地に着いた合図とは限らない。王都に入る時の検問や、ひどい時には盗賊の襲撃などで止められることもあると、窓の外を眺めていたミリアが教えてくれた。

「ユウヤ様、王城の前に着きましたよ」

 ミリアの声が、耳に心地よく響く。平民の服を着たメイドと護衛が馬車のドアを開けてくれて、ミリアの降りる手伝いをしてくれていた。その優雅な所作に、へぇ~俺もミリアと付き合うなら覚えないとだよなぁ……なんて、ぼんやり考えていた。

 馬車から降りると、王城の兵士が恭しく応接室に案内をしてくれた。広々とした応接室で待っていると、すぐに声が掛かり、王の間へと案内をされた。

「俺、初めてだから分からないんだけど……」

 俺はミリアに小声で尋ねた。格式ばった場所に慣れていない俺は、どう振る舞えばいいか見当もつかない。

「平民なのですから分からなくて当たり前ですよ」

 ミリアはにこやかに答えた。その笑顔は、俺の不安を少しだけ和らげてくれる。

「いや……王様だし。無礼だって言われて牢屋行きになるんじゃない?」

 冗談めかして言ってみたが、心のどこかで本当にそうなる可能性も考えていた。前回の逮捕の件もあるし、貴族の常識は俺には理解できない部分が多い。

「他の者と同じ様にしてれば良いと思いますよ」

 ミリアはそう言って、俺の腕をそっと握りしめた。その温かい感触が、俺に少しばかりの安心感を与えてくれる。

「そうだな……そうするか」

 俺は深呼吸をして、王の間へと足を踏み入れた。重厚な扉が開かれ、広大な空間と、その奥に座る王の姿が視界に飛び込んできた。

王の間の大扉の前まで案内されると、兵士がすぐにその扉を開いた。 広々とした部屋の奥、ひときわ高い場所にある玉座には、王様と王女様が並んで座って待っている。 贅を尽くした装飾が施された室内には、圧倒的な威厳が満ちていた。

俺は緊張しながら玉座の方へと歩みを進め、周囲の者たちが跪くのを見て、慌てて自分もそれにならう。  頭を下げたまま静かに待っていると、心臓の鼓動だけがやけに大きく聞こえてきた。

「薬屋は誰だ?」

王様の低く響く声が、しんと静まり返った王の間にただ一つ響き渡る。  ――この問い、俺が答えていいんだよな?

「あっ、はい。私です」

恐る恐る答えると、王様はすぐに本題に入った。

「そうか。挨拶は省こう。早速だが、城で薬を作ってもらえないか?」

いきなりの依頼に、一瞬頭が真っ白になる。

「……申し訳ありません。今の場所が気に入っておりまして」

俺は丁重に、けれどはっきりと断った。

「ただとは言わぬ。毎月、金貨二十枚でどうだ?」

――は? 二十枚?  いやいや……うちの店なら二十日も開ければ、金貨六百枚は軽く超える。

「それでも、今の暮らしが気に入っておりますので」

再び頭を下げて、俺はきっぱりと断った。

「そうか……では、うちの末娘を嫁にやろう」

――は?  いや、まあ……確かに可愛いけどさ。それで、ここに王女様がいたってことか。それにしても、平民の俺に王女を嫁がせるなんて……本気か? つまり、それだけの価値が俺にあると、王様は考えているということか。

「それは光栄な申し出ですが……申し訳ありません」

「それでも断るというのか? 無礼だぞっ! うちの娘を――要らぬと申すか!」

王様の声が少し荒々しくなる。

「婚約者がいるので……」

「なんだと? あの小娘か?」

王様はミリアの方にちらりと視線を向けた。

「はい」

「そこの平民の娘より、うちの娘の方が美しく、頭も良いぞ。それに娘を娶れば、お前を貴族にしてやってもいい」

王様はなおも言葉を畳み掛けてくる。

「それでも、婚約していますので――お受けできません」

俺は一歩も引かず、毅然と答えた。

「それでは、仕方あるまい……少し痛い目に遭わねば分からぬようだな」

王様が手を上げて合図を送ると、槍を構えた兵士たちがこちらに近づいてくる。  ――はぁ……やっぱりこうなるか。さて、どうする? バリアで防いで逃げるか……?

そう思案していたところで、跪いていたミリアが突然立ち上がり、王様を真っすぐに睨みつけた。

――え? ちょっ、何やってるんだよ……また大騒ぎになるんじゃ……ここ、王城だぞ? 兵の詰所じゃないんだからな?

「わたくしの婚約者を、どうなさるおつもりかしら? ラウム国王」

ミリアは氷のように冷たい声音で問いかけた。

「貴様! 無礼だぞ! 誰が発言を許したというのだ!」

王様は激高し、声を荒げる。

「わたくしも――貴方に発言の許可をした覚えはございませんわよ?」

ミリアの声はさらに冷たく鋭く、威圧感すら帯びていた。そこには一切の畏敬も遠慮もなく、まるで対等以上の者へ向けるまなざしだった。

「何を言っている、この女は……! 牢屋に放り込め! 国王に対する侮辱罪だ!」

王は怒りを露わにし、兵たちに命じた。

「よろしいのですか? わたくしに、そんなご命令をなさって……。  ――それ、自体が重罪になりますわよ?」

ミリアは口元に薄く笑みを浮かべながら、静かに言い放つ。

「……頭がどうかしているのか、コイツは! もう何を言っても聞くな!」

王は苛立ちに声を震わせ、怒鳴りつけた。

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    続きは書けていますが、ただいま調整中です( ̄▽ ̄;)仕事が忙しくてぇ……編集する気力が。放置しているわけではありませんので、しばらくお待ちください✨ミリアさんのツンデレは、いかがでしょうか?たぶんツンデレさんを扱うのは初めてでして……しんぱい。お読みいただきありがとうございます(●'◡'●)

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