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25.奏芽の覚悟⑥

Penulis: 鷹槻れん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-03 05:36:00

 出会った時から男性にしては長めの髪を、キラキラと光を跳ね返すような鮮やかな金色に染めていた奏芽かなめさんが……。

 今は濃いめのブルー系統の、パッと見は黒にしか見えない落ち着いた髪色にしていらして、いわゆる〝黒染め〟をしたんだと一目で分かった。

 そればかりか……。

「……」

 奏芽かなめさんのあまりの激変ぶりに、何て言ったらいいのか分からなくてただただ戸惑って固まってしまった私の反応に、四季しきちゃんが奏芽さんの変化、私も今まさに初見なのだと思い至ったみたい。

 何も言わずに彼が私に話しかけるのを見守ってくれている。

***

「ごめんな、片山さん。凜子りんこ見んの、初めてなんだ」

 奏芽さんがそんな四季ちゃんを気遣って、自分の横髪に触れながらそう言って――。

 奏芽さん、髪色だけじゃなくてかなり大胆にカットもしてらして……後ろの方なんて結べそうなほど長かったのに、今は到底そんなことできそうにないの。

 ともすると奏芽さんの親友の霧島きりしまさんに近い長さで。

 私立の小学校で教師をしていらっしゃる霧島きりしまさんと同じくらい――それこそ襟足が生え際あたりまで短くなった奏芽さんを、私は今まで見たことがない。

 奏芽さん、急にどうしちゃったの?

***

「あ、私は大丈夫です。あの、車、見せてもらってても構いませんか?」

 四季ちゃんもそれを察したみたいに奏芽さんの愛車を指さすの。

 奏芽さんはそれにホッとしたみたいに「もちろん。何なら先に乗っててくれても構わねぇよ」って四季ちゃんに鍵を手渡した。

 四季しきちゃんが奏芽かなめさんの車の方へ歩き去っていくのをぼんやりと見つめながら、私は未だに奏芽さんを真っ直ぐ見返すことができなくて視線を彷徨さまよわせる。

凜子りんこ、こっち向けよ」

 それに気づいていらっしゃるんだろうな。

 奏芽さんがそう言って
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