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第27話

last update Data de publicação: 2026-10-09 01:14:40

 パリ・シャルル・ド・ゴール空港のVIPゲートを抜けると、あらかじめ待機していたヨーロッパ支社の専任儀典スタッフが慇懃に一礼し、荷物を受け取った。

 パリの空気はソウルとはまるで異なっていた。鼻先をかすめるほろ苦い晩秋の夜風と、遥か遠くで輝くオレンジ色の街灯の明かりが、この都市がロマンスの心臓部であることを全身で証明していた。

 最高級セダンの後部座席に並んで乗り込んだ二人は、やがてパリ市内へと滑り出すように出発した。車窓の外を古風な建築物とセーヌ川の波の煌めきがかすめて流れていったが、ドヒョンの視線は外ではなく、もっぱら隣の席のソユルにだけ固定されていた。ドヒョンは車に乗るや否やソユルの手を恋人繋ぎにし、自らの太ももの上に置いたまま離そうとしなかった。

「ドヒョンさん。私たちの荷物はどうしましょう? 私の宿所の住所を、先に運転手さんにお伝えしなければならないと思うのですが……」

 ソユルが会社から支給されることになっていた法人宿舎を思い浮かべて尋ねると、ドヒョンは平然とした様子でソユルの手の甲に口づけを落としながら答えた。

「その必要はない。荷物はすでに、私たちの家へと直接運ぶよう
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    「プレステージ・ラグジュアリーとは、アンケート調査などで創り出すものではありませんわ」 イザベルは指先でマホガニーのテーブルを軽く、リズミカルに叩いた。「消費者が自ら望んでいると気づいてすらいない潜在的欲望を、先に提示して見せることこそが芸術であり、その欲望に天文学的な値札をつけることこそがラグジュアリーです。無機質な数字が、創作者の至高の直観に取って代わることなどできまして?」「同感いたします。しかしながら、直観が市場の誇りを侮辱してもよい、という意味にはなりません」 ソユルは一歩たりとも退かなかった。「ゆえに私どもは原案を破棄する代わりに、メゾン・ベルロワの類まれなる美学を完璧に生かした代替案をご用意いたしました」 大型スクリーンの画面が切り替わった。 異なる肌の色、そして異なる年代の女性たちが、朝霧に煙るパリの夜明け、煌びやかなソウルの夜景、そして柔らかな京都の木漏れ日の中で、それぞれのありのままの素顔を誇らしげに覗かせていた。光の色彩はすべて異なっていたが、最後にはひとつの優美な香水瓶のようなガラスの器の中へと集約されていく。[それぞれの光は、それぞれの流儀によって完成する。]「『病的な白さという純粋性』ではなく、『それぞれの光』でございます。製品の中核成分が、肌を人工的に漂白するのではなく、肌本来のバリア機能と内側からの輝きを再生させることにあるという点も、より正確に消費者に届きます。先行調査を行った三カ国における購買意向は、既存の試案よりも平均で二十四・二パーセント高く計測されました」 メゾン・ベルロワ側のマーケティングディレクターが、興味深そうに上体を乗り出した。「その映像のマスターデータと詳細なブレークダウン数値を共有していただけますか?」「アジア全域における最終権限の配分に合意いただき次第、直ちに開示いたします」 ソユルの返答は柔らかく、それでいて鉄壁のように堅固だった。 イザベルの口元にかかっていた余裕の笑みが、わずかに色を失った。 その時、沈黙を守っていたドヒョンが口を開いた。「テソン側の公式な立場は、ハンチーム長の提案と完全に一致しております。アジア地域におけるキャンペーンの最終承認権はテソンが専管し、ブランド固有の無形資産を変更する際はメゾン・ベルロワの同意を必須とする相互承認の方式で整理いたしましょう」

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     イ・ヘミン会長がハン・ソユルの襟元へと、テソン家代々のルビーブローチを手ずから留めつけてくれたあの日から、早くも二ヶ月という月日が流れていた。 パリでの生活も、いつの間にか九ヶ月目を迎えていた。 チャ・ドヒョンとハン・ソユルは今や、テソングループヨーロッパ総括支社において何人も否定することのできない公式の公認カップルであり、誰よりも強固なビジネスパートナーとして確固たる地位を築いていた。 出勤した瞬間から、二人は冷徹な総括本部長と極めて有能な企画チーム長へと戻る。会議の席で私的な呼称を用いることなど断じて慎み、たとえ相手の起案書であっても微細な欠陥が見つかれば容赦なく鋭利に指摘した。その代わり、退勤後にペントハウスの玄関扉が閉ざされれば、一日中押し殺していた情熱的な愛情と切なさを寸分も隠そうとはしなかった。 公と私の境界は、誰よりも明白だった。 少なくとも二人自身は、そう信じて疑っていなかった。 午前九時五十分。 ラ・デファンス(La Défense)に聳え立つテソングループヨーロッパ支社の大会議室には、ピンと張り詰めた鋭い緊張感が漂っていた。 本日は、フランスの由緒ある名門ラグジュアリービューティーブランド「メゾン・ベルロワ(Maison Belloy)」との合弁事業の最終条件を確定させる決戦の日だった。テソングループが誇る最先端のバイオテクノロジーおよびアジア全域の流通網に、メゾン・ベルロワのブランド価値と門外不出の調香技術を融合させ、世界最高峰のプレミアムスキンケアラインを立ち上げるという超大型プロジェクト。 想定される年間売上だけでも、実に三億ユーロ(約四百五十億円)規模に達する。 すでに基本合意は取り付けていたものの、ブランドコンセプトの方向性とアジア地域におけるマーケティング専管権を巡り、双方の意見は一歩も譲らず真っ向から衝突していた。本日中に結論を導き出せなければ、年末の生産ラインの立ち上げはもちろんのこと、来春のグローバル同時ローンチにまで決定的な遅延が生じることは火を見るより明らかだった。 ソユルは会議資料の最終ページを入念に点検した後、ノートパソコンを静かに閉じた。 ディープネイビーの仕立てスーツに、一分の乱れもなく整然と束ね上げられた黒髪。そして彼女の左の襟元には、イ会長から直々に授けられたあの深紅のルビーブローチが

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