Partager

第5話

Auteur: アカリ
深夜、店の個室。

梓は、楽しそうにスタッフの腹筋を触っていたが、ふと何かを思い出したようにスマホで時間を確認し、おずおずと私に尋ねてきた。

「凛菜、もう3時間近くも翼さんに連絡してないけど……平気なの?怒らないかな?」

梓の言いにくそうな様子に、私は思わず鼻で笑ってしまった。

翼と大学で付き合い始めたころ、彼にこう言われた。家庭の事情で、裏切りが何よりも怖いから、毎日どこで何をしてるか連絡して、安心させてほしいって。

翼の生い立ちが可哀想で、私はその通りにした。寮からスーパーに行くだけでも、必ず連絡してたんだ。

そうやって誠実に対応すれば、翼の傷ついた心も少しは癒えるんじゃないかって、そう思ってた。

でも、現実は違った。彼の疑い深さと支配欲はどんどんエスカレートしていった。特に入籍してからは、1時間おきに、何をしていても報告しろって言われるようになった。

次の日の予定も、どこで何をするか、どれくらい時間がかかるかまで、全部前の日に決めておかないといけなかった。

一度、急にお腹が痛くなってトイレに5分長くいただけで、大変なことになった。すぐに報告しなかったら、翼は私が嘘をついて裏切ってるんじゃないかって疑って。挙句の果てには、職場の監視カメラまでチェックした。

でも翼自身は、自分にはめちゃくちゃ甘かった。

どこで何をしようと、一切報告なんてしてこない。私がたまに「次は何するの?」って聞いただけでも、ものすごく怒るの。「俺の人生を支配するつもりか」とか「信頼してない証拠だ」とか言って。

本当にバカみたい。当時の私は、翼の心が傷つきすぎてるからだって、私の愛情や信頼が足りないからだって、本気で思い込んでた。

今になって思えば、ただ翼がおかしかっただけ。

私はグラスのワインを一気に煽り、吹っ切れたように言った。

「もうどうでもいいの。だって、翼とはもう離婚したから。

あとは、裁判の判決書を役所へ届出するだけだし。彼の機嫌を伺う義務なんて、もうないのよ」

私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、梓は夢じゃないかと自分の頬を思いっきりつねった。そして、痛みに顔を歪めながら、勢いよく私に抱きついてきた。

「よかった、凛菜!やっと目が覚めたのね!

正直、前からあの男にはムカついてたのよ!凛菜が彼の魔の手から逃れられたお祝いだもん、今日は私がおごるから!ほら、乾杯!

これで、やっと自由だ!」

梓とグラスを合わせた、まさにその瞬間。個室の入り口から、氷のように冷たい声が聞こえた。

「誰の魔の手から逃れるんだって?」

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第30話

    スマホの写真を見た瞬間、翼ははっと息を飲んだ。「な……なんで君が佳奈ちゃんの写真を!?」次の瞬間、翼は言い間違えたことに気づいたのか、慌てて弁解を始めた。「凛菜、聞いてくれ、説明させて。君が考えているようなことじゃないんだ。佳奈ちゃんは、子供の頃の心残りみたいなもので、もうとっくに終わったことなんだ。今は、本当に君だけを愛してる」でも、翼の薄っぺらい言い訳を聞きながらも、私はただ彼を見つめて、静かに問いかけた。「じゃあ、誓える?私と付き合い始めた時から一度も、その人の替え玉として見ていなかったって」翼は口を開いたけど、一言も発することができなかった。私は冷たい笑みを浮かべながら、首を横に振った。「翼、自分の悲劇に酔うのはやめて。私たちの関係は、最初から間違いだったの。それに、私は誰かの替え玉にも、誰かの付属品にもなりたくないの。それと……これ以上つきまとうなら、警察を呼ぶから」そう言って、私は翼の手にある指輪には目もくれず、振り返らずにその場を去った。翼は、その場にひざまずき、指輪を見つめながら声を上げて泣いていた。彼は分かっていた。これが最後の別れで、もう二度と私に指輪をはめて、よりを戻すチャンスはないのだと。……その後、翼は私の世界から完全に姿を消した。そして私も少しずつ彼のことを忘れ、過去を乗り越えて、自分の仕事に集中していった。それから3年も経たないうちに、私はリバティニア市で知らない人はいないほどの敏腕弁護士になった。そしてイーサンのサポートもあって、自分の事務所を立ち上げた。開業の日にはたくさんの知り合いがお祝いに駆けつけてくれた。依頼したいというクライアントの予約は、来年まで埋まっている。そんな中で、私は梓から、翼の近況を聞くことになった。今の翼は、弁護士資格を剥奪されて、もうすぐ刑務所に入ることになるらしい。例の黒崎グループの契約違反のせいで、翼は多額の借金を背負ったみたい。その返済のために、彼は危険な橋を渡ることにした。弁護士としての職業倫理もプライドも完全に捨てて、悪徳企業の片棒を担ぐことで、違法すれすれのグレーな利益を得ていたそうだ。でも、皮肉なことに、日和に告発されて、警察に全部バレてしまった。まさに関係者全員が一網打尽にされたってわけ。それも

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第29話

    ちょうどその頃。私は事務所の仕事を終えて、家に帰るところだった。ここ1ヶ月、翼に邪魔されなくなってから、仕事は絶好調。担当した訴訟にも、立て続けに勝つことができた。今夜は美味しいものでも食べて、がんばった自分を労おう。そう思って食材を買って、家に帰る途中だった。でもその時、後ろから聞き覚えのある声がした。「凛菜……」振り向かなくても、分かった。翼の声だ。でも私は振り向かなかったし、足を止めることもしなかった。もう翼とは関わりたくない。ただ、平穏に自分の人生を歩みたいだけだ。私が足早に立ち去ろうとすると、翼は追いかけてきて、私の目の前に立ちはだかった。「凛菜、まだ俺のこと、怒ってるんだろ?俺が悪かった、本当にすまない。日和の妊娠は嘘だったし、親から暴力を振るわれているというのも全部嘘だった。それに、事務所で君を陥れようとしていた件も、すべて調べ上げたんだ。証拠を全部そろえて、日和を警察に突き出したんだ、凛菜。もう一度俺を信じて、一緒に帰ってきてくれないか?今度は絶対に悲しい思いはさせないって約束する。これからは、君だけに尽くすから!」目の前の翼は、以前のような威圧的な態度はなく、むしろ目を真っ赤に腫らしていた。まるで、悪いことをした子供みたいだ。でも、私の心は少しも動かなかった。今さら謝られても、古傷をえぐられるだけで、何の意味もない。それに、私の幸せは誰かに頼る必要なんてない。我に返った私は、落ち着いた表情で翼を見つめた。「だから何?もし杉本さんの妊娠が本当で、その両親も本当に彼女を殴るような人たちだったら?それでもあなたは杉本さんを追い出して、警察に突き出すなんてことができたの?」翼は、すぐに黙り込んでしまった。その反応を見て、私は冷たく笑うと、その場を立ち去ろうとした。でも次の瞬間、翼は突然私の目の前でひざまずき、ポケットから指輪を取り出した。「凛菜、俺はたくさんの過ちを犯した。君を深く傷つけたことも、認める。でも、本気で愛してるんだ。俺が生涯で愛する人は、君だけだ。もう一度やり直してくれるなら、なんだってする。この命を差し出したっていい!」翼の口ぶりは真剣で、いかにも愛情深そうな様子だった。でも、彼がそうすればするほど、私は気持ち悪くなるだけだった。

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第28話

    叩きつけられた書類で、日和の頬はじんじんと痛んだ。でも、そんなことにかまっている場合じゃない。彼女の目は、その中の一枚の検査報告書に釘付けになっていた。それは、自分の血液検査の結果だった。そこにははっきりと、妊娠していないと書かれていた。その瞬間、日和はすべてがバレてしまったのだと悟った。「翼さん……違うの、聞いて!」次の瞬間、日和はどさりとその場にひざまずいた。そして、翼の足に必死にしがみつき、声にならないほど泣いた。「わざとじゃないの……ただ、あなたのことが好きすぎただけなの!あなたを失うのが怖くて、あなたが高橋先生のそばから離れないんじゃないかって不安で。だから、こんなバカなことを!高橋先生に嫉妬してたの!7年もあなたの隣にいられた彼女が羨ましかった!ただ、あなたを彼女から奪いたかっただけなのよ!お願い、今回だけは許して!私たちの今までのことを考えて……」「今までのこと、だって?」翼は、とんでもない冗談を聞いたかのように鼻で笑った。そして、日和を蹴り飛ばすと、汚いものでもついたかのようにズボンの裾を払った。「君みたいな女が、好きだなんて口にするな。君の言う好きっていうのは、嘘で人を陥れることか?俺を馬鹿みたいに騙すことか?」翼はしゃがみ込み、日和の顎をぐっと掴んだ。その目には殺意に満ちていた。「日和、俺が人生で一番後悔してることはなんだか分かるか?君みたいなクズのために、一番大事なものを失ってしまったことだよ。最初は、君を事務所から追い出して、この江川市から消えさせればいいと思ってた。だが、気が変わった」そう言うと、翼は立ち上がり、スマホを取り出した。そして、みんなの前で警察に通報した。「もしもし、警察ですか?事件です。公文書偽造、業務上横領、そして詐欺。被害額は相当なものです。証拠はすべて揃っています。犯人は今、西区のカラオケにいます」その言葉を聞いて、日和はぐにゃりと床に崩れ落ちた。顔は真っ青で、泣くことさえ忘れていた。翼が本気なのは、痛いほど分かった。トップクラスの弁護士である翼なら、自分を一生刑務所から出られないようにする方法なんて、いくらでもあるのだから。周りにいた仲間たちは、翼が入ってきた瞬間から、とっくに部屋の隅に固まっていた。巻き添えを食うの

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第27話

    翼はマウスを握りしめ、信じがたいという表情を浮かべた。凛菜が、こんなにも辛い思いをしていたなんて。それにひきかえ、自分は何をしたんだ?凛菜が一番自分を信じてほしかった時に、自分は何度も加害者の側に立った。そうやって、他人と一緒に妻の心をナイフで突き刺していたんだ。「本当に、死んで当然の男だ」翼は力一杯、自分の頬を殴りつけた。だが、頬の痛みなど、胸の痛みの百分の一にも満たなかった。次の瞬間、探偵から日和の現在地情報が送られてきて、それを見た翼の目に、冷たい光が宿った。一人の弁護士として。そして、凛菜の夫としても、彼女のために、この手で落とし前をつけさせてやる。……同じ頃、個室の888号室では。日和は、体のラインがくっきり出るキャミワンピを着ていた。指には細いタバコ、手にはウィスキーグラス。悪友たちと顔を真っ赤にして飲んでいて、妊娠しているとは到底思えない姿だった。「日和、マジですごいじゃないか?あの渡辺先生、マジでお前の思い通りなんだ?」仲間の一人である金髪の男が、驚いたように言った。「当たり前でしょ!」日和は煙を吐き出すと、得意げにグラスを揺らした。「弁護士とか言っても、本当はバカよ。彼の元妻が出て行った時、どんなにみじめな姿だったか、あなたたちも知らないでしょ!ブスのくせに、私と張り合おうだなんて、笑えるわよね!」周りにいた仲間たちが、どっと笑った。「でもさ、もし渡辺先生にバレたらどうすんの?妊娠って、嘘なんだろ?」「平気よ」日和は、くだらないといった風に口を曲げて言った。「あのバカ、今や私の言いなりなんだから。あと2ヶ月もすれば、適当なところでわざと転んでやるわ。それを事務所の誰かのせいにして、高橋先生がその人にやらせたってことにすればいいのよ。そうなれば、堂々と流産できるだけじゃない。翼さんに私をもっと可哀想だと思わせられるし、罪悪感を植え付けられるわ!そしたら、彼の妻の座は、私の……」日和が言い終わる前に、次の瞬間、個室の重いドアが蹴り開けられた。「誰よ騒がしい!こっちが飲んでるのが見えないわけ?」日和はイラついた様子で立ち上がった。しかし次の瞬間、目に映ったのは、ドアの前に立つ翼の姿だった。彼は黒いコートを羽織り、その目には冷たい怒り

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第26話

    日和は妊娠していなかった?医師の言葉を聞いて、翼は頭が真っ白になった。「まあまあ、先生。そこをなんとかお願いしますよ!」診察室では、日和がまだしつこく食い下がっていた。その口ぶりは、悪びれる様子もなく軽々しい。「なにも悪いことをするわけじゃないんです。ただ、彼氏と結婚したいだけなんですよ。彼の元妻はもういなくなったし、あと数ヶ月彼を騙し通して、うっかり流産しちゃったって言えばいいだけです。誰にもバレませんって!お願いしますってば。私のこれからの人生がかかってるんですから!」翼は、ぐっと拳を握りしめた。これが、真実だったのか?クズ男に捨てられた未婚の妊婦なんて話も、親に勘当されるなんて境遇も、全部嘘っぱちだった。最初から最後まで、すべてが芝居だったのだ。日和が、凛菜を追い出してその座に収まるために、周到に仕組んだ真っ赤な嘘だった。それなのに、トップクラスの弁護士である自分が……まるで馬鹿みたいに、こんな女の手のひらの上で転がされていたとは。存在しない子供のために、7年も連れ添った妻を捨てた。嘘ばかりつくこの女のために、自らの手で家庭を壊してしまったのだ。それもついこの間、この嘘のせいで、凛菜を遠い異国の地へと追いやってしまったばかりだというのに。翼は病院の廊下にもたれかかり、声もなく笑った。しかし笑っているうちに、涙がこぼれ落ちてきた。それは骨の髄まで凍りつくような後悔と、自らの愚かさに対する激しい憎しみだった。だが、翼は診察室に乗り込んで日和の嘘を暴いたりせず、静かに病院を後にしてある番号に電話をかけた。以前、裁判で世話になった私立探偵だ。仕事が早く、これまでにも何度も助けられていた。「一人、調べてほしい人がいます。名前は杉本日和です。子供の頃からの全ての経歴を。学歴、職歴、交友関係、それに……うちの事務所でやってきたこと全部です。お金はいくらかかってもいいので、今夜中に結果を教えてください」そう言うと、翼は電話を切った。その目からはかつての優しさは消え失せ、冷たい光だけが宿っていた。……3時間後。分厚い調査報告書が、メールに届いた。翼は急いで事務所に戻り、報告書に目を通し始めた。しかし、一行読むごとに、体中の震えが止まらなくなっていった。日和

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第25話

    事務所に戻った翼は、自分をごまかすため、またがむしゃらに残業するようになった。しかし今回は、凛菜のサポートがない。そのため、どの案件もひどく手こずるようになった。細かいところの確認から、書類の誤字脱字の修正まで、すべて自分でやらなければならなかった。これまで簡単に出せていたはずの成果が、今では何倍もの労力をかけないと出せなくなっていた。深夜11時。事務所はしんと静まり返っていて、翼のオフィスの明かりだけが煌々と灯っていた。すると突然、激しい動悸に襲われた。冷や汗が流れ、息をするのも苦しい。がむしゃらに仕事をして一度患った病気が、後遺症として残っていた。「凛菜、薬を取ってくれ……」翼は胸を押さえ、青白い顔でそばに手を伸ばした。以前は残業中に胸が苦しくなると、いつも凛菜がすぐに気づいてくれた。そして薬を口元まで運んでくれ、温かい手のひらで胸をさすってくれたものだった。でも今回は、死んだような静けさが返ってくるだけだった。翼はがらんとしたオフィスを見つめ、苦々しい笑みを浮かべた。また忘れていた。凛菜はもう自分のそばにはいないのだと。凛菜は今頃、リバティニア市の大きな家でアフタヌーンティーでも飲みながら、自分から解放された自由な生活を楽しんでいるのだろう。翼は痛む体に鞭を打ち、そばの棚から薬瓶を探した。でも、どれも空っぽだった。予備の薬は全部、以前凛菜が定期的に補充してくれていたものだった。凛菜がいなくなって、そういう細やかな気遣いもなくなった。「本当に自業自得だな」翼は自分を嘲るようにつぶやくと、ふらつきながらオフィスを飛び出し、病院へと向かった。すぐに翼は救急外来で診てもらい、新しく薬を処方してもらった。薬を飲むと、胸を締め付けられるような痛みは少し和らいだ。病院のロビーの隅に一人で座っていると、これまでにないほどの寂しさが込み上げてきた。以前、病気になった時は、いつも凛菜がそばにいてくれた。水を飲ませてくれ、リンゴをむいてくれ、愚痴を聞いてくれた。今、聞こえるのは自分の重苦しい鼓動だけだ。その時、近くの診察室から言い争うような声が聞こえてきた。「先生、お願いです、助けてください!お金ならいくらでも払いますから!妊娠証明書さえ発行していただければ、お礼はい

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第21話

    一瞬、辺りは不気味なほど静かになった。翼の手は、行き場をなくしたように宙で止まった。言いようのない寂しさが胸に広がっていく。いつもならこの時間、凛菜が絶妙な温度のブラックコーヒーと、要点をまとめた資料を差し出してくれるはずだった。それなのに今、隣は空っぽで、何もなかった。凛菜のデスクにも、うっすらと埃が積もっている。それはまるで、自分の鈍さを無言で嘲笑っているかのようだった。振り返ればいつもそこにいた凛菜が、もうとっくにいないのだと、改めて突きつけられた。バンッ!翼は苛立ちに任せて、手にしていたペンをデスクに叩きつけた。飛び散ったインクが書類を汚すのも構わず、彼は呟いた

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第20話

    翼にとって好きという気持ちなんて、圧倒的な利益の前では、かき消されるみたい。しばらくして、ガサガサと何かを探す音が聞こえ、翼が例の契約書を見つけ出したようだ。その直後、電話の向こうから彼の驚いたような声が聞こえてきた。「なんだこれ……本当にこんな条項が……」なにせ黒崎グループの社長を敵に回したうえ、60億円もの賠償金を請求されたのだから。翼の事務所がいくら有名でも、とうてい払える額ではなかった。その瞬間、翼の態度は百八十度変わった。彼の声は、これ以上ないほどみじめったらしいものだった。「凛菜……凛菜!俺が悪かった!本当にすまない!すぐに君への妨害はやめる!い

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第17話

    その瞬間、事務所のみんなから、割れんばかりの拍手が送られた。私はその場で立ち尽くし、あまりの歓迎ぶりに、少し戸惑ってしまった。翼のもとでは、7年間死に物狂いで働いてきた。数えきれないほどの裁判に勝ったのに、役職は何もなし。一番下のパートナーの地位さえも、7年間ずっと鼻先にぶら下げられたまま、結局約束は果たされなかった。私がパートナーの件を切り出すと、翼はいつもこう言っていた。「凛菜、君はまだ経験が足りないよ。あと2年がんばってくれ。事務所がもう少し大きくなったら、パートナーにするから」それなのにここでは、イーサンは私の実績をまだ見ていないのに、私がずっと夢見てきたものをすべ

  • 7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた   第18話

    私の言葉に、相手はうなずき、そして諦めたようにため息をついた。「高橋先生、渡辺先生はこの業界じゃ、かなりの大物ですよ。お二人の間に何か誤解があるのなら、早めに解決した方がいいです。彼の力をもってすれば、高橋先生が今後、仕事を受けられなくするなんて簡単でしょうから」そう言うと、相手は足早に去っていき、裁判所の前には私一人が取り残された。私は、思わず拳を強く握りしめた。あの時の翼の言葉は、単なる捨て台詞じゃなかったんだ。本気で、お金もコネも使って、私のキャリアを潰してでも、自分のもとに連れ戻すつもりなんだ。翼はイーサンの事務所を直接攻撃することはできない。でも、金に物を言わせて

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status