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7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた
7年間支えた弁護士夫に捨てられ、目が覚めた
Autor: アカリ

第1話

Autor: アカリ
法律事務所で999件連続で勝訴した。それを受けて、長年結婚の事実を隠していた弁護士の夫・渡辺翼(わたなべ つばさ)が、ようやく私・高橋凛菜(たかはし りんな)との結婚式を挙げることに同意してくれた。

けれど、日が暮れても翼は現れなかった。代わりに私が見たものは、彼がパラリーガルの杉本日和(すぎもと ひより)と結婚式でキスをしている、インスタの投稿だった。

【さっき同僚に『売れ残り』ってバカにされたけど、弁護士の彼が助けに来てくれた。これから、昼は彼の優秀な部下、夜は彼の愛する妻になるわ】

写真の日和のひとと翼の薬指にはめられた結婚指輪が、やけに目に焼きついた。

きっと誰もが、私が怒りで我を忘れると思っただろう。でも私はあっさり笑って、こうコメントをつけた。

【次は赤ちゃんだね!ご祝儀、たっぷり包んであげる!】

すると次の瞬間、一日中電源を切っていた翼のほうから、電話がかかってきた。

「日和は妊娠したのに、相手のクズ男に捨てられたんだ。彼女の両親はすごく保守的な人たちだから、このことがバレたら、きっと勘当されてしまう。お腹の子とどうやって生きていけっていうんだ。同じ弁護士なのに、君には少しも同情心がないのか?

今すぐあのコメントを消して、日和に直接謝罪するんだ。彼女が何の問題もなく無事に子供を産めたら、君との結婚式はちゃんとやり直すから」

でも、私は手にした離婚訴訟の書類を見つめながら、ただ冷ややかに笑った。

「もう必要ないわ。あなたは、私たちの離婚裁判の準備でもしていればいい」

私が言い終わると、電話の向こうで翼はしばらく黙っていた。でも、次に聞こえてきた声には、明らかに苛立ちが混じっていた。

「凛菜、少しは冷静になれないのか?

言ったはずだ。日和との式はただの形式的なものだって。それに、後で君との結婚式もちゃんとやり直すって約束しただろう。どうして少しも我慢できないんだ?もうちょっと待つことくらい、できないのか?

まさか君は、日和が未婚で妊娠した上に男に捨てられたなんてことを、俺に世間に公表させたいわけじゃないだろう?彼女が周りから白い目で見られて、両親に勘当されて、お腹の子と二人で路頭に迷うのを、黙って見ていろとでも言うのか?」

電話の向こうから聞こえる、あまりにも自分勝手な翼の言い分に、裁判所の前に立っていた私は、思わず嘲るように笑った。

私と翼は、7年も前に入籍を済ませていた。だけど、結婚式は挙げていないし、誰にも夫婦だと明かしていなかった。

あの頃、翼は全財産をつぎ込んで自分の法律事務所を立ち上げたばかりだった。ちゃんとした結婚式も新婚旅行も、私にあげることはできなかった。彼がくれたのは、いつか幸せにするっていう、口約束だけだった。

私たちはまるで悪いことでもしているかのように、お互いの両親にも内緒で、こっそりと入籍した。

この7年間、私は翼が仕事で成功して、1日でも早く結婚式を挙げてくれる日をずっと待ち焦がれていた。

そして翼は、本当に仕事だけに打ち込んだ。依頼人はどんどん増えて、彼の名も世間に知られるようになっていった。

私もとっくに結婚式の会場を選んで、ドレスだって決めていたのに……

翼の一言さえあれば、私たちはいつでも式を挙げられる状態だった。

だけど、私が結婚式の話を持ち出すたびに、翼はいつももっともらしい言い訳を並べたてた。「事務所の経営が軌道に乗るまで」とか、「新人が一人前になるまで」って。もう少しだけ待ってくれと、何度も、何度も……

そうして私は、7年間も待ち続けた。

そんな日々が続いていた中、先週私は寝食を忘れて資料をまとめあげ、事務所に999件目の勝訴をもたらした。

これで翼も言い訳ができなくなったのか、ついに私へのご褒美として、結婚式を挙げることを承諾してくれた。

それからの1週間、私は毎日睡眠時間を4時間以下に削って、結婚式の段取りを一つ一つ自分で決めた。式の前の晩は、嬉しくて一睡もできなかったほどだ。

でも式の当日、日が暮れて招待客が帰り始める時間になっても、翼は現れなかった。会場にいるみんなの、私を見る目がだんだん哀れみの色を帯びていくのを感じるだけだった。

もしあの日、偶然日和のインスタ投稿を見ていなければ、私は今でも何も知らないままだっただろう。

それなのに、翼は私が我慢できないのが悪いとでも言いたげな口ぶりだった。

要するに、翼は私と結婚式を挙げたくない。私が自分の妻だと、誰にも知られたくない。ただそれだけのことだった。

はっと我に返った。もう今までみたいに、おとなしく翼の言うことを聞くのはやめよう。そして、私は冷たく笑って、こう言い返した。

「ええ、結婚式なんてただの形式よ。でも、どうしてかしらね?杉本さんが少し泣いただけであなたは慌てて駆けつけるのに、7年も待った私のためには、たった1日すら時間を作ってくれなかったの?それどころか言い訳すら考えず、スマホの電源を切って丸一日も音信不通になるなんて。

もうお互いに取り繕う必要もないなら、この結婚を続ける意味なんてある?」

私の言葉に、電話の向こうの翼は押し黙った。私がここまで彼のメンツを潰し、7年間うわべだけで保ってきたこの関係を、自ら壊しに来るとは思わなかったのだろう。

しばらくして、翼はいかにも困ったという風に、長いため息をついた。

「なあ凛菜、すぐに離婚なんて言葉を口にするのはやめてくれ。俺は今、事務所の仕事で手一杯なんだ。それに日和のご両親の対応もある。その上、君に何度も同じ説明をするのは、正直しんどい。

君だってこの事務所の人間だ。日和のような新人たちを育てるために、うちがどれだけ時間と金と労力をかけてきたか、知っているだろう。

俺は事務所を大きくして、君と、これから生まれてくる俺たちの子供に、もっといい暮らしをさせてやりたいんだ。それが、そんなに悪いことか?」

また始まった。

いつもの、長々しいお説教。もっともらしい綺麗事のオンパレード。

この7年間、翼はずっとこうだった。自分が絶対に正しくて、すべては私のため。「君を愛しているから」って言葉を盾にして、何度も私に我慢を強いてきた。

でも、彼がどれだけ弁解しても、日和が無能であるという事実は覆せない。

翼が選び抜いたパラリーガルのはずなのに、日和の実務能力はゼロに等しかった。法律の基礎知識すらおぼつかず、相談に来た依頼人を怒らせることもしばしばだった。

他の新人だったら、依頼人を怒らせるなんてとんでもない。提出書類に句読点一つでも間違いがあったり、法的な表現があいまいだったりしただけで、すぐに辞めさせられてしまう。

なのに、日和に限っては、どんなミスを犯そうと翼は決して罰しなかった。それどころか、いつも穏やかな口調で、怒ったことすらない。「まだ大学を卒業したばかりで、仕事のペースに慣れていないんだ」なんて、もっともらしい理由をつけて。

でも、翼が忘れているのか、日和は入社してもう2年目になる。とっくに新人なんかじゃない。

翼の日和に対する特別扱いは、もはやただの上司と部下の域をはるかに超えていた。

だから、日和が翼との結婚式をインスタに投稿しても、周りは誰も驚かなかった。それどころか、コメント欄は【やっぱりお似合いだと思ってた!ついにゴールインか!】なんていう祝福の声で溢れかえっていた。

そのことを思い出し、私は冷たい声で言った。

「あなたの言う通りね。間違っているのは、あなたじゃなくて、私よ」

電話の向こうで、翼はまた私が彼の言い分を受け入れたと思ったのだろう。安堵したような声で言った。

「そうだよ、それでいいんだ、凛菜。自分の過ちを認めてくれて、俺も安心した。あとは……」

しかし、その言葉を最後まで聞かずに、私は冷たく言い放った。

「翼。私が犯した、一番取り返しのつかない過ちが何か分かる?

7年前、家族の反対を押し切って、あなたとこっそり結婚したことよ。

それから、離婚の調停はもう申し立ててあるわ。近いうちに法廷で会うことになるわね」

そう言って、私は翼に何も言わせず、電話を切った。

すぐに、裁判所からの呼出状のデータを翼に送ろうとした。だけど、いくら待ってもスマホの画面に既読はつかなかった。

彼にブロックされたが、意外にも驚かなかった。

この7年間、私が言うことを聞かないと分かると、翼はいつもこうやって私との連絡を絶った。家の鍵の暗証番号を変え、私の銀行口座を凍結させることさえあった。そして、私が自分から折れて頭を下げるまで、そうやって精神的に追い詰めるのだ。

でも、もう、こんなくだらないお芝居に付き合う気はなかった。これ以上、一緒にいるつもりもなかった。

はっとして、スマホの画面を消そうとした瞬間、事務所のクライアントグループチャットで、日和が私宛にメッセージを送ってきた。

その次の瞬間、それまで静かだったチャットに、無数の通知が一気に表示された。
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