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第24話 ローゼン、初めて後悔を知る

مؤلف: 天咲琴乃
last update تاريخ النشر: 2026-06-18 22:09:48

ローゼンは執務室で一人、机の引き出しを開いた。

中には一枚のクッキーが入っている。

ルピナスから貰ったものだった。

少し歪な形。

少し焦げている。

お世辞にも上手とは言えない。

それでも。

ローゼンは捨てられなかった。

「殿下」

側近が書類を持って入ってくる。

「何を見ておられるのですか」

ローゼンは少し考えた後、クッキーを見せた。

側近は固まった。

「まだ食べていなかったのですか」

「ああ」

「なぜです」

ローゼンは答えられなかった。

なぜだろう。

ただ。

食べてしまったらなくなる気がした。

そんなことを思う自分に少し驚く。

昔の自分なら考えもしなかった。

「変ですね」

ぽつりと呟く。

側近は首を傾げた。

「何がですか」

「以前の俺なら」

ローゼンはクッキーを見る。

「こんなもの、見向きもしなかった」

その言葉に。

側近は何も言えなかった。

昔のローゼンは王子だった。

誰もが褒める。

誰もが慕う。

誰もが近寄ってくる。

だから。

誰かが自分のために何かをしてくれることを、当たり前だと思っていた。

だが今は違う。

ルピナスは近寄ってこない。

追いかけても逃げる。

話しかけても警戒され
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    ルピナスは燃えていた。非常に。とても。ものすごく。燃えていた。理由は一つ。フジへのお返しである。「ダリア!」「なんですの」「お菓子を作るわ!」ダリアは固まった。嫌な予感しかしなかった。「作ったことありますの?」「ないわ!」即答だった。ダリアは頭を抱えた。マーガレットも頭を抱えた。終わった。始まる前から終わった。その日の放課後。カーディナル侯爵家。厨房。ルピナスは腕まくりをしていた。戦闘態勢だった。「お嬢様」料理長が震えた声を出す。「なんでしょう」「包丁の持ち方が逆です」「え?」開始三分だった。先が思いやられる。一時間後。厨房は戦場だった。小麦粉が飛ぶ。卵が飛ぶ。砂糖が飛ぶ。なぜかルピナスも飛んだ。「お嬢様!!」メイド達の悲鳴が響く。料理長は泣きそうだった。二時間後。何かが完成した。ルピナスは満足そうだった。「できたわ!」料理長は見た。丸かった。たぶん。きっと。おそらく。焼き菓子だった。「お嬢様」「なに?」「これは何ですか」ルピナスは胸を張った。「クッキーよ!」料理長は黙った。クッキーだったらしい。翌日。学院。中庭。ルピナスは大きな箱を抱えていた。ダリアが嫌そうな顔をする。マーガレットも嫌そうな顔をする。フジだけが平然としていた。「フジ!」「なんだ」「できた!」箱を差し出す。フジは受け取る。開ける。沈黙。ダリアも見る。沈黙。マーガレットも見る。沈黙。ローゼンも覗く。沈黙。誰も感想を言えなかった。クッキーだった。たぶん。おそらく。きっと。クッキーだった。「どう?」ルピナスが聞く。フジは一枚手に取った。食べる。全員が見守る。判決の時間だった。フジは咀嚼した。数秒。十秒。二十秒。そして。「硬いな」と言った。ルピナスが固まった。ダリアが吹き出した。マーガレットも耐えられなかった。ローゼンまで吹き出した。フジだけが真顔だった。「味は悪くない」「本当?」「ああ」「本当に?」「ああ」「良かった!」ルピナスは満面の笑みになった。フジも少しだけ笑った。その時だった。ローゼンが小さく呟く。「羨ましいな」誰も聞いていないと思っていた。しかし。ルピナスは聞いていた。

  • CARDINAL(カーディナル) ― 裏切られた前世を返上し、今生は私が主役 ―   第22話 フジ、無意識に宣戦布告する

    フジは何も考えていなかった。本当に。全く。一ミリも。考えていなかった。だから問題だった。昼休み。中庭。いつもの場所。ルピナス。ダリア。マーガレット。フジ。そしてローゼン。最近では五人でいるのが当たり前になっていた。「ルピナス」フジが呼ぶ。「なに?」「これ」小さな箱を差し出した。ルピナスは受け取る。開ける。固まる。「え?」ダリアも覗く。「え?」マーガレットも覗く。「え?」ローゼンも覗く。「え?」箱の中には。花の形をした焼き菓子が並んでいた。しかも。一つだけ。紫色の砂糖細工で飾られている。ルピナスは瞬きをした。「綺麗」「そうか」フジは頷く。「ルピナスの花だ」沈黙。ダリアが固まる。マーガレットが固まる。ローゼンが固まる。当のフジだけが平然としていた。「フジ様」ダリアが聞く。「なんだ」「今なんと?」「ルピナスの花だ」「その前ですわ」「綺麗か?」「違いますわ」ダリアは頭を抱えた。重症だった。こちらも。かなり。重症だった。ルピナスは嬉しそうだった。「ありがとう!」「どういたしまして」笑顔。自然な笑顔。そして。ローゼンの心に何かが刺さった。グサッ。かなり深く。「なぜだ……」本日一回目。マーガレットは思った。これは駄目だ。完全に駄目だ。フジ本人に自覚がない。それが一番危険だった。その時。ルピナスが言った。「フジ」「なんだ」「私もお返し作る!」フジは少し驚いた。「お返し?」「そう!」「気にしなくていい」「するの!」即答だった。フジは少し考えた。そして。「楽しみにしている」と答えた。ローゼンの心に。さらに何かが刺さった。グサッ。二本目だった。「殿下」マーガレットが小声で言う。「なんだ」「頑張ってくださいまし」「そうか」同情されていた。ついに。完全に。同情されていた。その時だった。ルピナスが突然立ち上がる。全員が見る。ルピナスは満面の笑みだった。「よし!」「なんですの?」ダリアが聞く。ルピナスは高らかに宣言した。「フジへのお返し大作戦よ!」フジは少し笑った。ローゼンは少し泣きそうだった。ダリアとマーガレットは思った。もう付き合えばいいのではないだろうか。ただし

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