私は二十四歳で処刑された。冷たい石畳の上に膝をつく。首には重い枷。広場には大勢の民衆。空はどこまでも青く、今日が私の処刑日だということが信じられなかった。ルピナス・カーディナル。侯爵家の長女。第一王子ローゼンの婚約者。そして――国家反逆罪の罪人。反逆などしていない。私はこの国のために勉強した。王妃候補として歴史を学び。外交を学び。政治を学び。夜更けまで本を読み続けた。すべては未来の王となるローゼン殿下を支えるためだった。それなのに。私の視線の先にいる彼は、一度もこちらを見ようとしない。隣には美しい女性が立っていた。隣国の王女、マーガレット。彼女は私を見ると、勝ち誇ったように微笑んだ。その笑顔だけで十分だった。ああ。全部、この女だったのね。「罪人ルピナス・カーディナル」処刑人が宣告を読み上げる。私は静かに目を閉じた。せめて最後に。一度だけ。彼の声が聞きたかった。「殿下……」かすれた声で呼ぶ。ローゼンはゆっくりと私を見た。その青い瞳に、かつての優しさはなかった。「ルピナス」彼は冷たく言った。「俺の言うことを聞かない女など必要ない」――ああ。そう。私は貴方のために生きてきたのに。貴方は一度も私を見ていなかったのね。胸の奥で何かが音を立てて壊れた。そして。ギロチンの刃が落ちる。ストン。不思議なくらい痛みはなかった。身体から体温が抜けていく。手が冷たい。足も冷たい。眠い。ああ。これで終わりか。私は目を閉じた。「ルピナス様!」聞き慣れた声がした。「お薬をお持ちしました!」……え?私はゆっくり目を開けた。見慣れた天井。見慣れた部屋。見慣れたカーテン。そこは処刑場ではなく、私の自室だった。私は勢いよく身体を起こす。「えっ?」首がある。手もある。生きている。慌てて鏡を見る。そこに映っていたのは二十四歳の私ではなかった。まだ幼さの残る、二十三歳の私。「まさか……」コンコン。扉がノックされる。メイドが顔を出した。「ルピナス様。お客様がお見えです」お客様。その言葉を聞いた瞬間。私は思い出した。今日。この日。忘れるはずがない。風邪を引いて寝込んでいた私の見舞いに、ローゼン殿下が来た日だ。そして――。私が彼を好きになった日。「
Last Updated : 2026-05-31 Read more