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game - ED. PSYCHO - we 3

last update Huling Na-update: 2025-09-25 17:00:00

 残された蛍と結々花は無言のまま。

 ポンっと音が鳴り、エレベーターの扉が開く。

 最上階ルームはエレベーターから直接、一歩踏み出すとワンフロアを贅沢に使ったゲストルームだ。霊園だとは思えない温かみがありながら、どこか近代的な造り。

 結々花はガラス屋根を見上げながら、つい先日この場で行われたショーに関して呟く。

「まさか先日、この天井に人がぶら下がってたとは……今日のお客様は知る由もないわね……」

「だってダリの最後の晩餐は、いるじゃん。上に。半裸の人」

「んー。絵ってあんまり興味無いし、ダリが最後の晩餐描いてたのも知らなかったわ。

 あの日、ケイ君がぶら下げ始めた時、観覧者から凄い歓声が上がったわよね」

「……客の声なんてオフになってるから聴いてないよ」

「美果ちゃんはどうして、ダリの最後の晩餐をここのモチーフにしたのかしら ? だって一応、最初は海玄寺の宗派を受け入れる方針だったじゃない ? 仏門に関する絵じゃないんだ〜って思ったわ」

「そう言えば美果は ? 」

「来てるわよ。聞いてみよっか」

 結々花は半分暇を持て余し、意味無く美果にコールする。数分後、倉庫から美果が飛んできた。

「ごめんごめん。つい夢中になっちゃってて」

「卒業制作上手くいってる ? 」

「すっごい便利 ! まさか秘書室という名のアトリエが貰えるなんて ! 」

 美果は結局、涼川葬儀屋へ就職となった。結々花がマンション墓地やスポンサー等との橋渡しなど、重明とあまり関わらない日陰の部分に暗躍するのと違い、美果ははっきり葬儀屋で外へ発信できる人材として存在する予定だ。

 このマンション霊園の概ねのデザインもそうだが、位牌や仏壇、ペット用のメモリアルグッズなどを手掛けることで、合法的にこの場にアトリエを持てているのだ。

「ただ絵を描いてただけなのに、今は小さい仏壇や神棚を考えて、小物作って、内装をデザインして、宗教も勉強して……人生分からないわ

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