LOGIN️脱獄するには幻のドールアイを略奪せよ ! ️不遇な生活を送っていた一ノ瀬 涼。他人の感情が視認出来る体質と辛い家庭環境に悩んでいた。そんな涼は放課後に、屋上公園へ行くルーティンがあった。 ️ある日翡翠と名乗る男が現れ、涼は『既に自死して、その一日をループしていた』事を知る。 翡翠により助け出された涼が連れて来られたのは霊界にある犯罪者の霊を監禁する為の通称『城』と呼ばれる監獄だった。 ️その『城』では人形の体が与えられる。 翡翠と懇意になった涼は脱獄の為に『幻のドールアイ』が必要だと知らされるが、失われた片眼を盗んだ囚人は同房の紅 京だった。 ️脱獄を試みる中で、涼は翡翠と京のどちらに付くか悩み苦しんでいく。
View More「絶対内緒にしろよ ?
この『城』から出る方法があるんだ」 「へぇ。面白そうじゃん」 「元々、ここの管理人は生きた人間だったらしい 」 「ふーん……。俺たちみたいな……『人形』じゃないのか ? 」 「そう。それでさ。管理人は網膜スキャンセンサーを『城』全体のパスキーにしてたんだよ。そいつの瞳が無いと、部下も好きに移動できないシステムだったって。 ある日、囚人の一人に目玉を無理矢理奪われた」 「え…… ? でも……そんなの、使えないよな ? 」 「普通はそう。その囚人は仲間に依頼して、管理人の目玉を、俺たちみたいな人形の眼に加工したんだってさ」 「剥製みたいな物なのか ? 可能とは思えない。 でもその瞳があれば、この『城』から抜け出せるのか ? 」 「多分ね。そのドールアイには特殊な術がかかってるらしい。 でも問題もあってさ。その瞳を手に入れた囚人が、別な囚人に隙をつかれて、片目を盗られちゃったとかなんとか」 「じゃあ、今そいつは……ここから抜け出していないのか…… ? 」 「だな。両眼が揃わないと出れないし、片方を盗んだのが誰か……分からないままなんだってさ。 牢の鍵はアナログの鍵に変わったけれど、この城自体から抜け出す最後の砦が、たった一つ生きてる城門の網膜スキャンシステム。 どうしても初代管理人のドールアイが欲しいわけ」 「待って。って事は……初代管理人から目玉を強奪した『人形』と、そいつからこっそり片目を盗んだ『人形』の二人は…………まだ俺たちの中にいるのか ? 」 「そういう事になる。 どうだ ? 脱獄に興味あるか ? 」「はは……やっぱり気になる ? よね。京は ライターを貰ったんだっけ ? 」「あぁ。まぁね。お互いプライバシーは大事だよな。悪ぃ。じゃあ別の質問にしようかな。 俺がお前の手に触った時、変な感じがした。なんか全部どうでもいいっていうか、無関心……とは違うな……。強いていえば……気分爽快 ? スッキリしたな。 あ、勘違いすんなよ。俺の好みは清純系の美少女だから」「勘違いはしてないよ。 えっと、それには確かに俺のせいだけど。順を追って話すと……」 涼は脳内をフル回転させる。「俺、昔から……変な力があってさ」「……霊界で言うのも悪ぃけど、スピリチュアルとか神様とかマジで興味ねェんだけど」「俺も好きで持ってる力じゃないし、スピリチュアルでも無いよ。 とにかく、相手の気分を好転させることが出来たんだ」「それって、ノイローゼが消えるとか ? 」「そこまで重大な人と関わったことないからなぁ。俺が出会った連中はロクな大人じゃ無かったし」「それは俺も一緒だな」 京はしょうもなさそうに笑う。 涼も気にせず続けた。「最初は母親の連れて来た男と、手を繋いで歩いたんだ。それが凄くストレス解消になったって、リピーターになった。単なる変態かと思ってたけど、他にも色々。 それで気付いたんだ。 俺、人のストレスとか悩みを吸い取れるみたい。『核』に欲しいものを聞かれた時、この能力なら、盗まれる心配ないから安心だなって。 高価な武器を持ったところで使えないしさ」「ふーん。ストレスと悩みねぇ。 もぅ一回触ってもいい ? 」「いいよ。でも、『核』の奴、予想より強いアップデートしてきたせいで、すげぇ酔うんだ」「ここでゲロ吐かれても&h
中庭に出るには、まず一階の闘技場があった場所まで階段を降りる。 グレーチングの冷たい材質に京の履いた黒いブーツの靴底がガツガツと音を立てる。そして誰もがこの慣れた狭い世界の中で、この足音が誰の物か判別が付いている。 しかし、ついつい振り返って見てしまうのは後ろにちょこちょこついて行く涼の姿だ。 ふわふわした銀色の髪に、顔付きより幼く見える体付き。ここに来る者のほとんどは成人で、京と涼は互いに最年少クラスの幼年だ。 それも一人は凶暴。一人は翡翠が目に掛けている、となれば自然と興味の対象になる。「散歩かい ? 袋をやろうか ? 花瓶が割れちゃいかんだろ ?」 それでもこういう者はいる。「要らねぇよ ! 」 京が呆れたように老人を睨む。「涼、こういうの簡単に受け取るなよ ? じゃあ袋くださいなんて、今の話に乗ったら「代わりにそのナイフを寄越せ」とか言われるかんな ? 」「おじいちゃん……」「し、しねぇよ〜」「いや、頻繁にやってんだろアンタ。とにかく、物の貸し借りとかマジで。俺、最初しか言わねぇかんな。 その後で起きたトラブルでお前がどうなっても知らねぇから」 そう言いつつ、京は涼がここへ来た時から世話を焼き続けている。そんな京の後ろ姿を追いながら、涼は平常心を装いながら内心ドキドキしていた。 京の体に纏わり付く金色にも似た輝かしい色。『楽』の感情。 房の中で涼の体に触れ、京は既に何かを感じ取っている。それからだ。この感情が吹き出すように大きく肥大して、中庭に誘われたのだから恐怖しかない。 それでも涼は断ったら不自然と自身に言い聞かせ、行く他の選択肢がない。 闘技場まで降りると、周辺にある商売房の中心に短い廊下があった。 どう見ても先にあるのはエントランスルーム。その奥には大きな扉が見える。 出口だ。「なんか欲しいもんある ? 」 商売房を親指でクイッと指しながら京は涼に尋ねた。「それだけど、ここは金ってないんだ
翡翠の後に付いていこうとした涼の足が縺れ、体が宙に浮く。「痛たたた……。え ? 」 その体をしっかりと翡翠が受け止めていた。「随分副作用があるようだな。それとも俺の感情は毒でもあるというのか ? 」 涼を抱えあげる眼差しは穏やかさまである。初めて会った時、恐ろしい程に冷酷な印象は消えていた。獅子の牙が折れたとはまさにこの事か。 触れられている事で更に涼は翡翠の感情を吸わされる。これは涼の意思に関係なく起こる現象だった。「ダメだ……。触らない方がいい……」「気にするな。好都合だ」 翡翠の微笑みを目の前にして、涼は深く微睡みの中に落ちていく。 □ 涼を抱えて囚人塔へ戻ってきた翡翠の姿を見て、皆が一斉に頭は下げるも驚きを隠せなかった。「怪我でもしたんか ? 」「んな訳ねぇだろ」「翡翠様と面談中に居眠りこいたんか ? 」「そんな馬鹿な事ねぇだろ。大事な一生物の道具を選ぶって時によぉ」「じゃあ、あれだ。睡眠導入剤とか、ヤク中か ? 」「ここじゃそんな物、認められないの知ってるだろ ? 」 ザワつく塔の異変。 涼を抱えた翡翠が房の前に来て、ようやく京は鏡の中に写る自分から格子の外を見る。「失礼。同居人が昏睡してしまってね」 寝込んでいる涼をそっとベッドに降ろす。「……」 昏睡とはおかしなものだ、と京の眉が跳ね上がる。 そもそも起きるまで部屋に寝かせておけばいいものを、わざわざこれ見よがしに連れてくるのも不自然だと早々に京は見抜く。「では、あとはよろしく頼む」「こいつ、何したの ? 」「なかなか興味深い囚人だ。時折また、話を聞くかもしれん」 そう言い出ていこうとする翡翠の背に京は態とらしい溜息をつく。「翡翠さん。囚人の一人を特別扱いするなんてアンタらしく
「何それ。お前の……スペアか ? 」 翡翠はすぐにその箱をしまい込む。「初代管理人は人間だった。俺の遠い親族の尼僧だ」「人間が霊界にこんな場所を建てたってのか ? 」「勿論、他の僧侶もいたらしいが全て人間だ。その時、この『城』の全てのキーは、その尼僧の網膜スキャンとパスワードの打ち込みだけ。年配のせいか、全てを同じキーで賄っていたそうだ。 その頃、俺がここに来た。身内の情なんて無かったな。この『城』は裁かれる場所だから。当時の俺は酷くそいつを恨んだよ。 そして、脱獄に賭け、その尼僧の目を抉って剥製にした」「え !? じゃあ、ここに来て一日経たずに管理人の親族を……」「……当時の俺にとってはなんでもないことだったからな」 なんでもない、とは。 目を抉る事か。 それとも身内を殺める事なのか。 どちらにせよ、翡翠の罪状も重いものなのだと察した。「目玉は囚人の剥製職人に依頼し加工した。後にイチャモンを付けて、俺は『ドールアイ』に関わった者全てをファイトで葬った。他の管理人達も囚人のドールも全て。そして今の俺がある。 だが、ある日呆気なく、この『ドールアイ』の片目は盗まれてしまった」「それで……」 翡翠の絶望と哀しみ、後悔の色。 これは『ドールアイ』を失くし、ここにいるしかなくなった囚人としての末路に悲観した結果だった。「『ドールアイ』は両眼が揃わないと意味が無いんだ」 その言葉に涼の眉が寄る。「え ? じゃあ、盗んだやつはなんの為に盗ったんだ ? 」「さあな。 涼。そいつを見つけて欲しい。『幻のドールアイ』……これが揃えばここから出れる。 お前は感情を読める。長く生活すれば恐らく犯人が視えてくるだろう」「脱獄……出来るなら……