THE SECRET OF CRAZY CEO

THE SECRET OF CRAZY CEO

last updateLast Updated : 2023-11-21
By:  ClaudyaJungOngoing
Language: English
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Synopsis

Carista Vanesha found herself trapped in a dangerous obsession with a deranged CEO named Elgar Gabriel. The man demanded that she settle her debt with her own body. Simultaneously, Elgar also used Carista as a pawn of desire, luring her with the promise of paying for Carista's sick mother's medical treatment. Carista was initially swayed, but in the end, she chose to leave after discovering her mother's inexplicable and sudden death. Carista didn't get to see her mother one last time, but the final clues indicated that Elgar intentionally killed her mother. Carista intended to seek revenge for her parents against Elgar, and she was determined to do whatever it took, even though she eventually became pregnant with his child.

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Chapter 1

PART 1

御影樹(みかげ いつき)は、私が明るい色の服を着るのを嫌がった。

派手な色は安っぽい。自分まで安く見られる。

そう言われていたから、結婚して六年。

私のクローゼットには、黒と白とグレーの服しかなかった。

一度だけ、違う色を着たことがある。

樹が新鋭画家賞を受賞した日だった。

私は、初めて彼に会った日に着ていた小花柄のワンピースを選び、オーダーメイドの小さなケーキを手に、お祝いに向かった。

「脱げ。じゃなきゃ、俺の車には乗せない」

その場にいた人たちが、一斉に私を見た。

笑っていた顔が、今にも崩れそうになる。ケーキの袋の持ち手が、手のひらに食い込んで痛かった。

「樹、帰ってから話そう?」

けれど彼は、何も言わずに車を出した。

その日は、ひどい雨だった。

樹は一度も振り返らなかった。知らない街に、雨の中、私を置いていった。

……

そして、カラフル・マラソンの取材に行った日。

私は、一組のカップルに声をかけた。

二人が顔を上げる。

樹と、彼の幼なじみの森美詩(もり みう)だった。

美詩は楽しそうに話しながら、小花柄のワンピースの裾を揺らしていた。

まるで蝶みたいに、樹のそばで軽やかに笑っている。

私は目を伏せた。

黒ずくめの自分が、視界に入る。

なるほど、安っぽかったのは、色じゃなかった。

私だった。

「あれ、紗和じゃん!」

美詩は笑いながら、樹の腕に絡めた手にさらに力を込めた。

「紗和、悪いのは樹だよ。今回の優勝賞品、私へのプレゼントにするって言い出してさ。私が甘やかしすぎたから、こんなことになっちゃった」

今回のマラソンは、カップル向けのイベントだった。

優勝賞品は、二人だけの刻印を入れられるプラチナリング。

私は、樹の手元に目を落とした。

いつもどおり、そこには何もない。指輪の痕すら残っていなかった。

一方で、私の指には、結婚指輪がぽつんとはまっている。

六年ものあいだ、ほとんど体の一部みたいになっていたはずのそれが、今は妙に指に当たった。

胸の奥に湧いた違和感を飲み込み、私はなだめるように笑った。

「今回はカップル取材なので、こちらは――」

美詩が歓声を上げ、樹の腕を揺らした。

「私、出たい!」

樹は眉をひそめた。

それでも最後には、彼女を甘やかすように笑う。

「仕方ないな。少しだけ付き合ってやる」

私も、どうにか笑顔を作った。

付き合っていた頃から、カラフル・マラソンのゴールでキスをしたカップルは一生幸せになれる、という話を聞いていた。

でも樹は、人混みが好きじゃないと言った。

私のことを、子どもっぽすぎるとも言った。

だから私は、物分かりのいいふりをして、その話をしなくなった。

六年かけて、自分をモノトーンに染めながら。彼は芸術家だから。人に合わせないのも、彼らしさなのだと。そう、自分に言い聞かせていた。

今になって、ようやく分かった。

彼が折れるのは、いつだって美詩のためだけだったのだ。

「御影紗和(みかげ さわ)、始めてくれ」

また、その呼び方。

姓も名もつけて呼ばれるたび、私たちは同じベッドで眠っているだけの他人なのだと思い知らされる。

何度もこなしてきた相性クイズだった。けれど今回だけは、質問を重ねるほど、顔から血の気が引いていった。

どうして彼が毎年、私がアレルギーを起こす白いバラを誕生日に贈ってきたのか。

どうして家にまるで合わないピンクのバス用品一式を、置いたままにしていたのか。

どうして寝るときのアイマスクが、妙なキャラクター柄だったのか。

私は深く息を吸い、震えそうになる声を押さえ込んだ。

「おめでとうございます。お二人の相性度は100%です」

一刻も早く、取材を終わらせたかった。

けれど、美詩に引き止められる。

「紗和、カップル取材なのに、お決まりの祝福コメントとかないの?」

私は一瞬、固まった。

思わず樹を見る。

彼は顔をそむけ、私の視線から逃げた。

私は目に滲んだものを瞬きで押し戻し、一言ずつ、私の夫とその幼なじみを祝福した。

「どうぞ、末永くお幸せに」

取材は終わった。

樹はそのときになって、ようやくまずいと思ったらしい。

「紗和、美詩はそういう性格なんだ。気にするな」

なのに、私は少し笑いたくなった。

樹は昔から、言葉の少ない人だった。結婚式の誓いの言葉さえ省いた。

雷が怖くて彼の腕の中で震えていたときも、浅く息をするだけで、「怖がるな」の一言すらくれなかった。

その彼が、私に向けて言った一番長い言葉が、幼なじみをかばうためのものだなんて。

「やだ、紗和って本当にプロ意識ないんだね」

我に返ると、美詩が露骨に嫌そうな目で私を見ていた。

「こんなにださい黒いスーツで取材に来るだけでもどうかと思うのに、マラソンにもついて走らないなんて。そんなので、いい記事なんか書けるの?」

私が反応するより早く、彼女は突然、私を突き飛ばした。

ハイヒールでは踏ん張れず、私はコースの内側に倒れ込んだ。

全身にカラーパウダーを浴び、足首もひねってしまう。

地面に倒れたまま、痛みに息をのむ。

舞い上がった粉で、さらに咳き込んだ。

カメラマンに助け起こされた頃には、美詩はもう樹を引っ張って、遠くへ走っていた。

「早く走って!優勝できなくなっちゃう!」

風に乗って、樹の甘い声が届く。

「まったく、いたずらっ子だな」

カメラマンが水を差し出し、大丈夫かと尋ねてくれた。

私は痛みで滲んだ涙をさりげなく拭い、カメラに向かって笑った。

「大丈夫です。私が足を滑らせただけです」

スマホが震えた。

樹からのメッセージだった。

【きれいにしてから戻ってこい】

目の奥が熱くなる。

私は【わかった】と返した。

一日分の取材を終える頃には、私はすっかりみすぼらしい姿になっていた。

ハイヒールを手に提げ、ドリンクショップの前を通りかかる。

【二杯目半額】

ふと、前にもそれを買ったことを思い出した。

褒めてほしくて差し出したのに、最後には樹に中身をトイレへ流された。

私は口元をかすかに歪め、角を曲がった。

そこで、樹と美詩が同じドリンクを手にしているのが見えた。

期待に満ちた美詩の視線を受けて、樹は笑いながら、彼女の鼻先を軽くつつく。

「けっこううまい」

その光景を見て、私は妙にすとんと腑に落ちた。

これが普通なのだ、と。

私は静かに視線を外し、その場を離れた。

ホテルでシャワーを浴びてから家に戻り、樹のアトリエの扉を叩いた。

「薬、塗ってくれない?」

中からは、筆がキャンバスを走る音がした。

返事はない。

私はため息をつき、自分で薬を塗った。

夜になっても、樹はアトリエにこもったままだった。

私は布団の中で体を縮め、魂まで砕かれそうな雷鳴を聞いていた。

ふいに、隣が沈む。

誰かが布団越しに私を抱き寄せた。

樹は何も言わなかった。

ただ、私の背中を軽く叩くだけだった。

私は布団から顔を出した。風のように軽いキスが、額をかすめる。

「お前の会社の取材、受けることにした」

私の目がぱっと明るくなった。

けれど、まだ何も言わないうちに、彼は続けた。

「今日、美詩がしたことがネットに出たら、いろいろ言われる。

美詩は子どもっぽいところがある。お前が大人の対応をしてくれ。

取材のマスター映像を持ち帰ってこい」

珍しく長い言葉。珍しく優しい態度。

結局、それも美詩のためだった。

私は自嘲するように口元を引き、なぜかまた足首が痛み出した気がした。

「記事の本数が足りなかったら、私、クビになるかもしれない」

樹の目は静かだった。

彼は手を伸ばし、私の耳にかかった髪をそっと整える。

「だから、お前の会社の取材を受けると言ってる」

私は樹を見つめた。

その目も、見慣れてしまえばどうということはないのだと、ふと思った。

私は承諾した。

樹の新作を取材できれば、昇進は難しくない。

取材当日、私は現場へ急いだ。

だがそこには、同じ会社のライバル、藤沢瑛里(ふじさわ えり)もいた。

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