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第4話 読み書き算盤で韓信を驚かすアンヌ 2

last update Last Updated: 2025-11-21 12:34:11

······

 

 アンヌは朝餉の料理を膳(ぜん)に乗せて離れに戻った。襖を開けると韓信はもう起きていて、竹製の算盤で計算をしていて、木簡に何やら書き物をしている。

 

「韓信様、朝のご飯の支度ができたっちゃ」と膳を差し出して韓信様の前に置いた。あれ? 韓信様の前やと、つい長崎の訛りが出てしまうと。なんでやろ?作者も長崎弁の翻訳が面倒と言っているので、頑張って標準語で話そう!……つい、長崎弁が出るかもしれないけど……

 

「ほほぉ、うまそうだな」

「はい、米粥(巴蜀の主食)に蒸し豚と野菜の『蒸豬肉配蔬』、川魚の煮込みの『岷江魚煮』、デザートに桃の漬物の『桃漬』でございます」

ロンが作ったのか?」

「はい、私の手作りです」

「ありがたくいただく」

 

 韓信はムシャムシャと食べだした。アンヌは、算盤や書き物って何をしているのか気になって韓信に聞いた。

 

「韓信様、算盤で何をなさっとったとですか?」

「ああ、今回の視察で、この近辺四十ヶ村の人口動態を調査したので、それの統計をとっていたんだ。人口数と男女の性別比人口とか、年齢層とか……ってお前にはわからないか」

「拝見してもよかですか?」

「ああ、いいぞ。ロンは算盤や木簡が珍しいのか?」とアンヌの方に算盤、木簡、筆、硯を押しやった。

 

 木簡には几帳面な小篆の字で、村の名前と十代毎の男女の人口が書かれていた。へぇ~、この時代の辺境の蜀の村の人口って何人なんだろう?とアンヌは興味を持った。算盤で四十ヶ村の総人口を計算して木簡の隅に書き込んだ。

 

「韓信様、四十ヶ村の総人口は8,654名で、男女比は男4,223名、女4,431名って普通じゃろか?男女比がほぼ同じというのは、この近辺で戦乱が起こっとらんけん、男が徴兵されとらんということじゃろかね?このデータで、年齢ごとの死亡者数とかも調査して、十年くらいのデータがあれば、平均余命表とかできちゃいますけどねえ」と食事中の韓信に尋ねた。

 

 韓信はむせて胸をどんどん叩いて茶を飲んだ。「ロンは文字が読めるのか?書けるのか?算盤を使って計算ができるのか?」

「ええ、村の長に習いましたばい」と、まさか高校の授業で数学の時間に統計を習ったとはいえないでしょ?と思ってこう答えた。

「総人口は8,654名……合ってる……男4,223名、女4,431名……合ってる……」と自分で算盤を弾いて韓信は唸った。「ロン、じゃあ、この十歳ごと村々の人口の合計を計算してみろ」

「はい、ゼロから十才未満で……男962名、女991名……十才以上二十才未満で……男450名、女481名……これは十才未満の死亡率がかなり高いね。赤ん坊で十才まで生き残る確率は50%前後じゃけん、乳幼児の内に半分死んじゃうばい」と独り言を呟いた。

 

「おい、そんな計算と予測なんて、朝廷の 司徒(民政・戸籍管理の部署)の人間でも容易くできないぞ!ロン、お前には驚く」と韓信が仰け反った。

「あ、韓信様!私、もう今晩お呼びいただけんじゃなかと思いまして、詩を書いてきたばい。自作じゃありませんが、十九古詩の『西北有高樓』が今の私の気持ちを現すのにちょうどよかじゃろかと……」と台所でさっき書いた漢詩を韓信に見せた。

「漢詩だと!ロン、お前、漢詩がわかるのか!」とまたまた仰け反る韓信。

 

「おお、なるほど。西北有高樓 上與浮雲齊、交疏結綺窗 阿閣三重階……お前の小篆は美しく読みやすいな……ん?ロン、この張安女ヂャン アンヌとは?誰だ?」

「私がさきほど思いついた私の新しい名前じゃばい。両親がつけてくれた名はロンですが、韓信様には私を安女アンヌ、アンヌと呼んでいただきたいと思いまして……変じゃろ?アハハ……」

 

ロンじゃなく、お前はアンヌと俺に呼ばれたいのか?」

「はい、よろしければ……」

「わ、わかった!アンヌ、お前、この村で想い人とかいるか?」

「おりませんばい。第一、私が知っとる男は、韓信様、あなた様だけでございますよ。昨晩をお忘れですか?」

 

「う~ん、そうか。この村に未練はないか?」

「未練?つまり、想い人とかいれば未練が、ってことですか?ありませんばい!村から村へ嫁入りに行く娘も多いでしょ?どこの村でも生きてさえいれが問題なしじゃばい!」

「よし!わかった!俺はあと三日ここに逗留して、成都に戻るが、アンヌ、お前も俺についてこい。村の長とお前の両親に断って、俺はアンヌを成都に連れて行く。アンヌ、どうだ?」

「えええ!私を韓信様の後宮に入れてくださるのですか?韓信様の正室の秦の皇女様の侍女にでもさせていただけるのですか!うれしいばい!」

「アンヌはバカかね?俺に妻なんかいない。正室の秦の皇女様ってなんだ?俺はそんな高貴な生まれでもない」

「でも、漢の大将軍なのですから、その内、高貴なお姫様を奥様に迎えるじゃろ?」

 

「おいおい、秦の都の咸陽(かんよう)で秦朝の皇女なんてのも見て、助けてやったこともあるが、あんなもったいぶった女なんかゴメンだ。俺は身悶えしてアンアンすすり泣くアンヌが良いんだ。毎晩、すすり泣く様子をみたいんだよ」

「はぁ?私、こんな僻村の農家の娘ですよ!」

「僻村の農家の娘だろうが、なんだろうが、読み書きができて、算盤術が司徒(民政・戸籍管理の部署)の人間以上にできるなんざ、秦の皇女様はできないよ。お前は盛大に俺の腕の中でアンアンするんだ、もう一生離さないぜ。劉邦殿や蕭何殿がなんと言おうと、アンヌは俺の妻だ」

 

「う、嬉しい!嬉しいばい!嬉しい!韓信様、泣いてもよかですか?今晩も褥に呼んでいただけますか?」

「だから、毎晩、アンヌを抱きたいって言ってるだろう」

「ア~ン、アンアン、アアア~ン……」アンヌは古代世界で頼れる男が自分にできたことの嬉しさに号泣した。

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