Share

◇保育所完備 94

Author: 設樂理沙
last update Last Updated: 2025-04-25 11:25:39

94

 社員が残業で迎えが遅くなる時は夜間保育もあるのだとか。

 すごい、社内に保育所完備だなんて。

 結婚して子供ができてからも働き易い職場、最高~!

 あんなことがあるまで勤めた前の職場は大企業ではありなから

保育所はなかった。

 今度おじいちゃんに提案しとかなきゃだわ。

 保育所の存在を知ってから花は俄然小さな子たちに興味が沸き、

親しくなりたての遠野や小暮を伴って時々食事を終えた後、子供たちの顔を

見に行くようになった。

 しかし、小説のことでプロットだのキャラ設定だのといろいろ考えること

の多い遠野とデザインのアイディアを捻り出すことにエネルギーを注ぎたい

小暮たち二人は食事が終わると机に向かうことが多くなり、頻繁に子供たち

の顔を見に訪れるのは花だけになってしまった。

 それで知らず知らず保育士たちとも親しい関係になり、子供たちにも

懐かれるようになっていった。

            ◇ ◇ ◇ ◇

 自分たちはこの先決して恋愛感情を持たず恋愛関係には決してならない、

という互いの強い志に基づき、ビジネスライクに接し仕事に邁進して

いこう、ぶっちゃけそのような内容を相馬と花は業務の合間に真摯に

というか大真面目に話あった。

 ただしそれは、本人たち限定の話であってそんなブースでの2人の

話し合いを横目に周囲はふたりのお熱い語らいとして捉えていた。

 着任してひと月にも満たないにも係わらず、今まで相馬付きになった

誰よりも最短で二人きりでブースに入ったのだから致し方のないことでは

ある。

 どうやら前任者たちは相馬に振られて辞めたのではなかったか、という

疑念を周囲の夫々《それぞれ》が胸に持っているため、あらあら、掛居花は

いつまで仕事が続くのだろうか? と心配している者もいた。

 しかしながらそんな周囲の心配をよそに、話し合いをしてすっきりした

相馬と花は元気よく日々仕事に邁進するのだった。

 お互い異性として結婚相手にはならないことを確認し合っているため、

そのことで相手に対する探り合いなどせずともよい関係だから、肩ひじ

張らず フラットな関係で付き合えるというなんとも居心地の良い状況に

互いが至極満足していた。

 そんな2人の距離が急速に縮まっていったのは言わずもがなと

いうものである。
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Related chapters

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇あなどれない1才児 95

    95 相馬は日々案件があり多忙を極めているのだが、花自体はようよう諸々の事務作業が一段落ついたところでもあり、久しぶりに定時で帰ることができそうで心は少しウキウキランラン。 花は声を掛けた相馬から『お疲れぇ~』と返され、所属している部署フロアーを出てエレベーターへと向かう。 自社ビルの1階に降り立ち出入り口に向かうも、昼食時には立ち寄れなかったチビっ子の顔でも見てから帰ろうと保育所に向かった。 チビっ子たちは3人わちゃわちゃしながら親を待っていた。 その側で疲れ気味な芦田が無表情な佇まいでぼーっと座っている。 そして、花を視界に入れるとほっとしたような困ったような複雑な表情を醸し出した。「芦田さん、どうかされました?」「昼間はぜんぜん大丈夫だったのに、夜間保育に入ってから体調がすぐれなくて……」「辛そうですね。私仕事終わりなので少し子供たちみてましょうか? その間少し横になられてたらどうでしょう」「ありがとう、そう言っていただけると助かるわぁ~。厚かましいですけどすみません、ちょっと横にならせてもらいますね。 あと1時間もするとまみちゃんとななちゃんのママたちのお迎えがあるのでもし起きられなければ子供たちの引き渡しお願いしてもいいかしら」「分かりました。大丈夫ですよ。 ただ子供たちをママたちにお渡しするだけで他に申し渡しておく伝言などは特にないのでしょうか?」「今回はないわね」「はい、OKです。ささっ、横になっててください」「助かります。じゃぁ宜しくお願いします」 3才4才のお喋りな子供たちと積み木をして待っているとほどなくしてまみちゃんとななちゃんのママたちが迎えに来て、私は彼女たちを見送った。 残ったのは1才児のかわゆい凛ちゃんだった。 え~っと、この子のママはもう1時間後になるんだ。「凛ちゃん何して遊ぼうか……」 凛ちゃんが私の膝の上にちょこんと座った。 私はお腹に腕を回して膝を上下に揺らして振動を繰り返し、凛ちゃんをあやした。 遊び相手もみんな居なくなって寂しいよねー。「絵本読む? 読むんだったら絵本を花ちゃんに持ってきて~」 私がそう言うと、膝から立ち上がり……なんと、絵本を持って来たよ。 あなどれんな1才児。 ……感動した。 また私の膝にちょこんと腰かけた凛ちゃんを前に

    Last Updated : 2025-04-25
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇凛ちゃんパパは相原氏 96

    96  身体がびくともしないところを見るに爆睡している模様。 良かった、グッと少しの間だけでも芯から寝ると回復も 早まるというもの。 さっ、凛ちゃんと絵本を楽しみながら凛ちゃんママを待つことに しようっと。  仕事と家庭の両立をこなす凛ちゃんママはすごいな、なんて思いながら 待つこと小一時間。  しかぁ~し、凛ちゃんママがお迎えに来ることはなかった。 20時を少し過ぎて、男性社員が凛ちゃんを迎えに来た。  てっきりママさんが来るものと思っていた私は少し混乱した。 私は凛ちゃんのパパの顔を知らない。  万が一、保護者を語る偽者だった場合大変な事態になると考えた私は すぐには凛ちゃんを渡さなかった。  凛ちゃんをすぐに抱きかかえ 「あの、少しお待ちいただけますか」 と一言告げ、芦田さんの元へと向かった。  凛ちゃんが何やら『あーぁ、ばぁ~』などと声を出していたが、 とにかく確認しなくちゃならない私はひたすら焦っていた。「すみません芦田さん、凛ちゃんのお迎えはお父さんで間違いない でしょうか?」「ごめんなさい、うっかり伝言するの忘れてたわ。  相原さんの娘さんなのよ。  私が行きましょうね、掛居さんのお蔭でだいぶ身体もシャンとてきた みたい」  芦田さんはそう言うと立ち上がり私から凛ちゃんを受け取って 凛ちゃんの父親の元へ向かった。 芦田さんが父親に渡すと凛ちゃんが嬉しそうに抱かれるのが見えた。 偽者じゃなくて良かったぁ~。 私はその後駆けつけて、背中を見せて歩き出したその男性《ひと》に 「失礼して申し訳ありませんでした」 と声を掛けた。 その男性《ひと》は振り返ることなく左手を上げて横に振って応えた。 私は頭を下げた。「掛居さんは用心深くて関心したわ。保育士合格ぅ~」「いえ、良かったでしょうか?  凛ちゃんパパがお気を悪くされてないといいのですが……」 「掛居さんみたいな若くて可愛い女性《ひと》に娘をちゃんと守って もらえて、きっと気を悪くというのはないと思うわ。 それに今度話す機会があればちゃんと私のフォロー不足の所以だと 説明しておくので心配しないでね」 「はい」

    Last Updated : 2025-04-26
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇その人の名は相原清史郎 97

    97    花は入社したばかりで相馬との遣り取りに神経をほぼ集中して過ごして いるため、凛の父親が広い同じフロアーで仕事をしている相原清史郎だとは 気が付けないでいた。           ◇ ◇ ◇ ◇ 短期間で相馬付きの派遣社員が立て続けに辞めてしまったことで 周囲と同様、野次馬根性を特別持っているわけではない相原清史郎も 次に着任した掛居花と相馬との仕事振りだとか仕事中の彼らの様子について それとなく気になっていた。 ……なので、娘のお迎えに行った時、娘を連れて彼女が目の前に現れた時 は非常に驚いた。 表向き平静を装いつつも心の中で叫んだ第一声が 『ここで? 何してるんだ?』 だった。  凛を受け取ろうとしたら彼女は一瞬逡巡して、奥にいた芦田さんに 何やら訊きに?  確認のためか、足早に目の前を去って行った。  ヌヌっ、もしや、自分は不審者と間違われたのか、参ったなぁ~。 同じフロアーで働いているのに俺の顔は覚えてないらしい。  呆れた。何ということ。 待っていると芦田さんが凛を抱いて連れて来てくれていつものように 『お疲れ様です』 と労いの言葉と共に凛を渡してくれた。 凛を片手に抱いて帰ろうとした俺の背中に彼女の声が届いた。「失礼して申し訳ありませんでした」と。「おぉ、ちゃんと礼儀正しい婦女子ではないか、よきよき!」  俺は彼女に向けて片手を振り、気にするなと意思表示した。 ちょっとかっこつけ過ぎただろうか。

    Last Updated : 2025-04-26
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇凛ちゃんパパを探す 98

    98  週明け私は席に付くと、周囲を見渡した。 始業30分前、人はまだまばらなだけに凛ちゃんのパパらしき人物は 見つけられない。 15分前に珍しく寝ぐせをつけた相馬さん登場~、待ってたよ~。「おはようございます」 「おはよう~。週明け早々、元気だね掛居さん」「はぁ、まぁ、それだけが取り柄なものでぇ~って、待ってたんですよ~」「ナニナニ、僕をでしょうか?」「ええ、ええ、相馬さまをです」「ンで? 何でしょう」「あのぉ~、相原さんって男性社員の方、もしかしてこの同じフロアーに いたりしますか?」 「うん? いるよー。  えっとね、ここから数えて5つほど島を越えたところにいますよ~。 まだ知らなかったんだ、びっくりですわ」「まだまだ知らない人だらけですよ、たぶん。  相馬さんとの仕事に集中するだけで今は精一杯ですもんっ」「あっ、そうだよね、ごめん、嫌な言い方して。 それだけ僕の仕事に集中してくれてるってことで、有難いことです。  謝謝……謝謝。 相原さんのことで何かあった?」 「話せばちょっと長くなりそうなのでお昼休みに説明するね」「わかった。じゃあ、さっそく本日の業務に入りますか」「OKです。それではこの書類から整理してまとめていきますね」「助かるよ、その間僕は外回りできるので。  後少ししたら、クライアントのところまで出向く予定だから」「……ということは、1日がかりで帰社は17時頃になりますね」  相馬さんとの1日の予定のすり合わせをして週明けから、また新しい 1週間が訪れようとしていた。 始業時間になって再度私は遠目に見える島を見渡してみた。 いたーっ、凛ちゃんパパ。  ほんとにいたよ。 今日も残業で凛ちゃんは遅くまで待ちぼうけかな。 小さいのに可哀そうだな。  ……ってそんなこと考えるなんて頑張ってる親御さんに申し訳ない、 よね。 でもお父さんだと母親よりも残業が多いというイメージは払拭できない ので、やっぱり凛ちゃんが可哀そうだ。  そう思いつつ、そんな気持ちでいたのもつかの間、仕事に忙殺されて 昼休み直前になると、私はランチのことばかり考えていた。

    Last Updated : 2025-04-27
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇天敵現る 99

    99 仕事も順調に多忙を極める中、相方という言い方は不遜かもしれないけど仕事上のパートナーにも恵まれ仕事そのもの以外のところで悩まされることなく働けて、仕事大好きな私は充足感に包まれていた。 そんな状況の中でのこと。 ちょうど週末に夜間保育を頼まれた日から2週間目の週末のことになる。 小一時間ほど残業をこなして仕事を終え、1階に降りて来てビルの出入り口に向かう途中で声を掛けられた。「掛居さぁ~ん、ちょっとお話させてもらってもいいかしら……」 誰かと思えば芦田さんだ。「はい、いいですよ」 私たちは場所を移して保育所内で話をした。 話の内容は、私自身の仕事が残業などなく早めに切り上げられる日があればその時に夜間保育のラスト1時間でもいいから保育の仕事を手伝ってもらえないだろうかというものだった。  芦田さんは最近ホルモンのバランスが崩れるといわれる更年期障害に悩まされており、特に夕方になると身体が辛くなるとのこと。芦田さんが万が一倒れでもして夜間保育ができなくなると子供を預けることができなくて困る人たちがいるわけで、とても断ることなどできなかった。 小さなチビっ子たちはどの子も可愛いくて、私は戸惑いながらも『週一でよければ』と返事をした。 更年期と戦いながら働き続ける人を少しでも助けることができればいいなぁと思った。 週一の、それも2時間の夜間保育だけじゃ大した助けにもならないと思うのに芦田さんは喜んでくれた。 ほんとは今の自分の状況だと週三くらいは可能かもしれない。 とは言え、最初から頑張り過ぎて続かなくなるっていうのは非常にまずい悪手になると思うのでまずは週一からと決めた。 相馬さんにも相談をしてこの先の仕事を微調整しつつ将来的には週三くらいにできればと考えている。

    Last Updated : 2025-04-27
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇夜間保育に携わることに 100

    100     まぁ、相馬さんとの仕事も時期によって波があるからねぇ~。 そんな訳で、私は8月の最後の金曜日と翌9月の末日までに併せて6回、 夜間保育に係わった。19時までにお迎えに来られた人たちに対しては芦田さんにそのまま 休憩してもらい私が対応、最終の20時に来られる人たちにはどのみち 起きて帰り支度をしなければならないので芦田さんが対応するという形に なった。 凛ちゃんは6回とも最終まで残っていた。 ……なので相原さんがお迎えに来た時はいつも私は一歩下がって 芦田さんの後ろから芦田さんと一緒に『お疲れ様です』と声掛けして 相原親子を見送った。  ……そのため彼と直に遣り取りすることは一度もなかった。          ◇ ◇ ◇ ◇ そして10月に入ると相馬さんとも相談しながら夜間保育の仕事を 週2でするようになった。  私が助っ人に入る日、芦田さんは大抵奥の部屋で横になっている。  ……なので必然的に子供たちの先生は私になる。 先生ぶって子供たちの子守をするのは楽しかった。 まさか、普通の会社員が保育園の先生の真似事ができるなんて、 ナァ~イス! 手間のかかるオムツ替えや食事は夜間保育の始まる前に他の保育士さん たちが済ませておいてくれるから、ストレスも全くない。 私は子供たちが怪我をしたり勝手に誤って部屋の外に出て行かないよう 見守りしているだけでよかった。  可愛いチビっ子の可愛い顔をたっぷりと堪能し、時には膝に乗って くれたり、抱っこできたり、普通ならできない幼児との触れ合いは ほんとに心が癒される。

    Last Updated : 2025-04-28
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇怯む 101

    101    夜間保育の手伝いを始めてから2か月めに入った頃、通常業務中に 給湯室に行こうとブース横の通路を歩いていると外回りから帰って 来たのか相原さんとすれ違う恰好になった。  私は軽く会釈をして給湯室に向かおうとしたのだけれど、相原さんに 呼び止められた。『なんだろう……』 「君さ、時々遅くに保育所にいるよね、なんで?  保育士の資格持ってるの?」 いきなり予想外の人物から無防備な状況で矢継ぎ早に質問され、 一瞬私は怯《ひる》んだ。 あまりのことで完全に私の脳はショートしたようだった。 口の中はカラカラ、いつもの明晰な思考回路は何としても作動してくれず、 立て板に水の如し……とまではいかずとも、なんとかして体裁の整う返事を したいと思うのにどうにもならないのだ。 『しようがない……』 「申し訳ありませんが上手く説明できないので芦田さんに訊いて いただけますか。スミマセン」 そう私が返事をすると相原さんが何故か困った表情をした。 そんな彼をその場に残し、私は給湯室に向かった。 私は誰もいない個室スペースに入るとドッと疲れを感じた。『やだ、なんかあの人やりづらい~』           ◇ ◇ ◇ ◇  親しみを込めたつもりで気軽に声を掛けたのにスルーされた形になり、 気落ちする相原だった。『自分は何か気に障るようなことを言ってしまったのだろうか』と少し ガックリときた。 普段相馬との遣り取りなんかを見た感じと初日に声を掛けてきた感じか ら、もっと話しやすい相手だと思っていたのだがそうでもなかったようだ。          ◇ ◇ ◇ ◇ それほど親しくもない相手に上手く話せそうになく、芦田さんに 訊いて下さいと言ったものの、本当は相原さんにちゃんと説明できれば 良かったのかもしれない。  ……とはいうものの後で冷静になって考えてみると、あながち間違っても なかったかなと思えた。 芦田さんが更年期であることをペラペラ自分がしゃべっていいことでは ないからだ。  相原に上手く説明できなかったことに対してモヤモヤしていたけれど この考えに行き着いたことで、花の胸の中にあったモヤモヤ があっさりと雲散霧消していくのだった。  またこの日を境に花は相原に対して苦手意識を持つように なってし

    Last Updated : 2025-04-28
  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇セクハラ親父 102

    102    『あと1日出勤したら休みだぁ~、あと1日がんばっ、そしたらたっぷり 朝寝して過ごせる休みなのよぉ~』 と仕事帰りにも係わらす身も心も軽やかなまま、花は下へ降りる エレベーターに飛び乗った。  体制を変えて振り向くと、目の前にあとから乗って来た相原が目の前に 飛び込んで来た。 『えっ、えっ、どどっ、どうしよう』 私が押すはずだったボタンを彼が押した。 「掛居さん、何か俺のこと避けてない?」『するどい、避けてますぅ~、なんて言えないよね。  ……じゃなくって避けてたとして何が悪いの。  どんな不都合があるっていうのだ。 元々仕事だって被ってないし、凛ちゃんのことがなければ 接点などなかったのだからそんなふうに絡まれる筋合いなどないはず』 「私に絡む……の、やめてください」『それに相原さん何故にボタンから手を放さず、しかも何か威圧的な 体制になってるぅ~。 近い、近過ぎる。 箱の中で逃げ場がない場所で詰問されるのは精神的にキツイ』「君こそただ訊いただけなのに絡むとかって、なんかすごく 大事にしてない?  そういうのが男を落とす君の手管なのかな?」 「何を……もうそれっ、セクハラですよ」 花はそう言い放つもすでに涙目になっていた。「私はここへは仕事をしに来てるんです。  男を落とすとか、失礼なこと言わないで!」「あれっ、だけど掛居さん相馬と付き合ってるんでしょ?」 私は彼の言い草を聞いて目が点になってしまった。 何ですと、私は相馬さんとはよろしくやってる癖に相原さんの気を引く ためにわざともったいぶって避けてるんだろ? ってそう言いたいわけ?  マジ、最悪。 何なのだろう、この拗らせセクハラ親父め!  しかも今だエレベーターのボタン押したまま…… 私を閉じ込めたまま……。 とんでもない男だ。

    Last Updated : 2025-04-28

Latest chapter

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇デート 113

    113 相原さんとの初デートは音楽と美味しい食事、そして語らえる相手もいて思っていた以上に楽しい時間を過ごすことができた。 こんなに近距離で長時間、洒落た時間を共有したことがなかったので、朗らかに活き活きと話をする相原さんを見ていて不思議な感覚にとらわれた。 私はこれまで交際していない男性と一緒に食事をするという経験がなく、世の中には恋人ではない異性の同僚と一緒に食事をするという経験のある人ってどのくらいいるのだろう? なんて考えたりした。 もちろん相手のことが好きでデートするっていうのは分かるんだけどね。 まだまだ相原さんのことは知らないことだらけだけど、彼と話すのは楽しい。 彼を恋愛対象として見た場合、凛ちゃんのことはさして気にならない……かな。 だけど凛ちゃんママの関係はかなり気にしちゃうかなぁ~などと、少し後からオーダーしたワインをチビチビ飲みながらほろ酔い気分でそんなことを考えたりして、一生懸命話しかけてくれている相原さんの話を途中からスルーしていた。笑って相槌打ってごまかした。『ごめんなさぁ~い』「明日も仕事だから名残惜しいけどお開きとしますか!」「そうですね。今日は心地よい音楽に触れながら美味しいものをいただいて、ふふっ……相原さんのお話も聞けて楽しかったです」「そりゃあ良かった」 支払いを終え、私たちは店の外へ出た。「今日はご馳走さまでした。 でも休日のサポートは仕事なので次があるかは分かりませんけど、もう今日みたいな気遣いはなしでお願いします」「分かった。 休日サポートのお礼は今回だけにするよ。 さてと、家まで送って行くよ」「えっ、でもすぐなので」「一応、夜道で心配だから送らせてよ」「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」「俺たちってさ、お互いの家が近いみたいだし、月に1~2回、週末に食事しようよ。 俺、子持ちで普段飲みに行ったりできないからさ、可愛そうな奴だと思って誘われてやってくれない?」

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇おデート 112

    112    お礼に、たぶんだが……何かご馳走してくれるらしいけどそれを彼は 『デート』と表現した。   シングルなのか既婚なのかは知らないけれど今でこそ子持ちパパだから デートする特定の相手がいるのかもどうかも分からないけど、独身だった頃 はあの見た目と積極的な性格を見るからになかなかな浮名を流していたので はなかろうか。 初めて社外でプライベートに会うのに『デート』という言葉をサラッと 使ったところを見ての私の感想だ。  私たちの初デート? は相原さんお勧めの駅前のカフェだった。  そこはジャズの生演奏が流れていてむちゃくちゃムーディーで恋人たちに もってこいの雰囲気があり、私には腰を下ろすのが躊躇われるほどだ。 お相手が素敵な男性《ひと》ではあるものの、残念ながら 恋人ではないから。 匠吾と付き合ってた時に巡り合いたかった……こんな素敵な夜を過ごせる お店。 昼間はどんな顔《店の様子》をしているのだろう。 駅前に立地していて自宅からも近いので次は平日の昼に来てみようかしら。 「俺たちラッキーだな」「えっ?」「何度か来たことあるけどジャズがスピーカーから流れていることはあって も生演奏は今日が初めてだからさ。うひょぉ~、やっぱ生はいいねー」「へぇ~、そうなんだ」 そっか、じゃあ平日来てもきっと生演奏はないだろうなー。 私たちはオーナー特製のピザと各々チーズのシンプルパスタと ツナときのこのパスタでボスカイオーラーというのを頼み、ジャズの演奏 を楽しんだ。 「掛居さんって家《うち》どの辺だっけ?」「言うタイミング逃してましたけど実は最寄り駅が相原さんと同じで ここから4~5分のところなの」 「まさか駅近のあの35階建てとか?」 ずばりそうなんだけど、相原さんの言い方を聞いていると『まさかね』 と思いながら訊いているのが分かる。  だって分譲で結構なお値段《価格》なのだ。 とてもその辺のサラリーマンやOLが買えるような物件じゃない。 本当のことを言うか適当な話でお茶を濁すか……どうしよう。「お金持ちの親戚が持っていて借りてるんです」「いいな、お金もちの親戚がいるなんて」 「まぁ……そうですね」

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇相原さんとデート 111

    111     メールアドレスを残して帰ったものの、相原からは次の日の日曜Help要請が入らなかったので体調は上手く快復したのだろう。 今日は出社かな、週明け、そんなふうに相原のことを考えながらエレベーターに乗った。 自分のあとから2~3人乗って、ドアが閉まった。 振り返ると気に掛けていた人《相原》も乗り込んでいた。「あ……」「やぁ、おはよう」「おはようございます」 挨拶を返しつつ私は彼の顔色をチェックした。 うん、スーツマジックもあるのだろうけれど元気そうだよね。 土曜はジャージ姿で服装も本人もヨレヨレだったことを思えば嘘のように元の爽やか系ナイスガイになっている。『凛ちゃんのためにも元気でいてくださいね』 心の中でよけいな世話を焼きながら先に降りた彼の背中を見ながら同じフロアー目指して歩いた。 歩調を緩めた彼が少しだけ首を斜め後ろにして私に聞こえるように言った。「土曜はありがと。この通りなんとか復活できたよ」「……みたいですね。安心しました」 私たちの間にそれ以上の会話はなく、各々のデスクへと向かった。 昼休みにスマホを覗くと相原さんからメールが届いていた。「土曜のお礼がしたい。 残業のない日がいいので明日か明後日、いい日を教えて」「ありがとうございます。気にしなくていいのに……。 凛ちゃんのことはどうするんですか?」「デートの予定が決まれば姉に預けるよ」 お姉さんがいるんだ、相原さん。 じゃあこの間はお姉さんの方の都合が付かなかったのね、たぶん。「私はどちらでもいいのでお姉さんの都合のいい日に決めてもらって下さい」「じゃあ明日、俺の家の最寄り駅で19:30の待ち合わせでどう?」「分かりました。OKです」 すごい、私は明日相原さんとデートするらしい。 そんな他人事のような言い方が今の私には相応しいように思えた。

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇ドン引きされるだろうか 110

    110 気が付くと、凛ちゃんの『あーぁー、うーぅー』まだ単語になってない 言葉で目覚めた。 ヤバイっ、つい凜ちゃんの側で眠りこけていたみたい。 私はそっと襖一枚隔てた隣室で寝ているはずの相原さんの様子を窺った。『良かったぁ~、ドンマイ。まだ寝てるよー』 私の失態は知られずに終わった。 私はなるべく音を立てないよう気をつけて凛ちゃんの子守をし、 彼が目覚めるのを待った。  しばらくして起きた気配があったので凛ちゃんを抱っこして近くに行く と、笑えるほど驚いた顔をするので困った。「えっえっ、掛居さんどーして……あっそっか、来てもらってたんだっけ。 寝ぼけてて失礼」 それから彼は外を見て言った。「もう真っ暗になっちゃったな。遅くまで引っ張ってごめん」「まだレトルト粥が2パック残ってるけど明日のこともありますし、 土鍋にお粥を炊いてから帰ろうかと思うので土鍋とお米お借りしていいですか?」「いやまぁ助かるけど、君帰るの遅くなるよ」「ある程度仕掛けて帰るので後は相原さんに火加減とか見といて いただけたらと……どうでしょ?」「わかった、そうする」  私は何だか病気の男親とまだ小さな凛ちゃんが心配でつい相原さんに 『困ったことがあれば連絡下さい』 とメルアドを残して帰った。  帰り際病み上がりの彼は凛ちゃんを抱きかかえ、笑顔で 『ありがと、助かったよ』と見送ってくれた。  私は病人と小さな子供にはめっぽう弱く、帰り道涙が零れた。  こんなお涙頂戴、相原さん本人からしても笑われるのがオチだろう。 たまたま今病気で弱っているだけなのだ。 普段は健康でモーレツに働いている成人男性なのだから泣くほど 可哀想がられていると知ったらドン引きされるだろうな。  そう思うと今度は笑いが零れた。 悲しかったり可笑しかったり、少し疲れはあるものの私の胸の中は 何故か幸せで満ち足りていた。

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇ギャップの激しい人 109

    109「知りませんよー。 適当に話を合わせただけなので」「酷いなー。 俺との付き合いを適当にするなんて。 雑過ぎて泣けてくるぅ」 ゲッ、付き合ってないし、これからも付き合う予定なんてないんだから適当で充分なんですぅ。「別に雑に接しているわけではなく、分別を持って接しているだけですから。 そう悲観しないで下さい」「掛居さん、俺とは分別持たなくていいから」「相原さん、私、今の仕事失いたくないので誰ともトラブル起こしたくないんです。 特に異性関係は。 ……なのでご理解下さい」「わかった。 理解はしたくないけど、取り敢えずマジしんどくなってきたから寝るわ」 私と父親が話をしていたのにいつの間にか私の隣で凛ちゃんが寝ていた。 私はそっと台所に戻ると流しに溢れている食器を片付けることにした。 それが終わると夕食用に具だくさんのコンソメスープを作り、具材は凛ちゃんが食べやすいように細かく切っておいた。 それから林檎ももう一つ剥いてカットし、タッパウェアーに入れた。 スーパーで買って食べる林檎は皮を剥いて切ってそのまま置いておくと色が変色するけれど、家から持参した無農薬・無肥料・無堆肥の自然栽培された林檎は変色せず味もフレッシュなままで美味しい。 凛ちゃんが喜んでくれるかな。 そしてそこのおじさんも……じゃなかった、相原さんも。 苦手だと思ってたけどクールな見た目とのギャップが激しく、子供っぽいキャラについ噴き出しそうになる。 芦田さんに教えてあげたいけど、変に誤解されてもあれだよねー、止めとこ~っと。  ふたりが寝た後、私は自分用に買っておいた菓子パン《クリームパン》と林檎を少し食べてから持参していた缶コーヒーでコーヒーTime. ふっと時間を調べたら15時を回っていた。 さてと、重くなった腰を上げて再度のシンク周りの片づけをしてと……。 洗い物をしながらこの後どうしようか、ということを考えた。 もうここまででいいような気もするけど相原さんから何時頃までいてほしいという点を聞き損ねてしまった。 あ~あ、私としたことが。 しようがないので彼が起きるまでいて、他に何かしてほしいことがあるかどうか聞いてから帰ることにしようと決めた。

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇詮索はやめなきゃ 108

    108  「ね、真面目な話、どうして保育士の仕事してるの?」「ま、簡単に言うと芦田さんにスカウトされたから、かな」「ふ~ん、相馬から苦情来ないの?」「相馬さんにはその都度仕事の進捗状況を聞いて保育のほうに入ってるので大丈夫なんですよ~」「ね、相馬ってどう?」「どうとは?」「仕事振りとか?」「相馬さんとはバッチし上手くいってますよ」「……らしいよね、周りの話を聞いてると」「周りの話って?」「相馬ってさ、甘いマスクの高身長で癒し系だろ、掛居さんの前任者2人は相馬を好きになったけど相手にされず早々に辞めてしまったっていう噂なんだけどさ」「……みたいですね。 私もチラっと聞いたことあります。 でも1人目の女性《ひと》はどうなんだろう。 相馬さんは仕事上での相性が悪くて辞められたのかもって、話してましたけど」「相馬らしい見解だな。あいつは察知能力が低いからね」『……だって。自分はどうなのって突っ込み入れそうになる』  相原さんにお粥と林檎を出し、彼が食べている間に凛ちゃんにはお粥にだし汁と味噌、卵を投下したおじやを、そしてすりおろした林檎を食べさせる。 その後、凛ちゃんの歯磨きを終えると相原さんとは別の部屋で寝かしつけをした。 眠ってしまうまでの凛ちゃんの仕草がかわいくてほっぺをツンツンしてしまった。「あ~あ、俺も添い寝してくれる人がほしいなぁ~」「早く見つかるといいですね~」 ……って凛ちゃんのママはどこ行っちゃったんだろうってちょっと気にはなるけれど、個人情報を詮索するのは良くないものね、忘れよっと。「俺に奥さんがいないってどうしてわかった?」 そんなの知らないし、奥さんがいないなんてひと言も言ってないぃ。 なんなのよ、全く。 人が折角触れないでおいてあげようって話題を、自分から振ってくるなんて頭おかしいんじゃないの。 クールな見た目とのギャップに可笑しくなってくる。

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇病気なあいつ 107

    107 相原さんのお宅は120戸ほどある8階建てのマンションだった。1階のオートロックのドアの前でインターホンを鳴らす。「こんにちは~、掛居です」インターホンを鳴らして声掛けをすると彼から『あぁ、鍵は開けてあるので部屋まで来たら勝手に入ってください』と言われる。           ********「こんにちは~、掛居ですお加減いかがでしょうか」私が挨拶をしながらドアを開けて家の中に入ると、私の訪問を待っていたかと思われる相原さんが奥の部屋から出て来た。「熱が出ちゃってね。 一人ならなんとかなるだろうけど、チビ助の面倒までとなるとちょっとキツくてね。 Help要請してしまったんだけどははっ、掛居さんが来るとは予想外だった。 なんかヘタレてるところ見られたくなかったなぁ~」『へーへー、そうですか。 私も来たくなかったけどもぉ~』と子供っぽく心の中で応戦。「芦田さんじゃなくてスミマセンね。 ま、私が来たからには小舟に乗ったつもりでいて下さいな」「プッ、大船じゃなくて小舟って言ってしまうところが掛居さんらしいよね」 何よぉー、知ったかぶりしちゃってからに。 私のこと知りもしないクセに……って、反撃は良くないわよね。 私の繰り出した寒《さ》っむ~いギャグに付き合ってくれただけなんだから。「ふふっ相原さん……ということで私、凛ちゃん見てるのでゆっくり横になります? それとも何か口に入れときます?」 今は積み木を舐めて『アウアウ』ご満悦な凛ちゃんを横目に彼に訊いてみた。「う~ん、じゃあ買ってきてもらったお粥だけ食べてから寝るわ」「林檎も剝きますね。林檎、嫌いじゃないですよね?」「好きだよン」 わざとなのか病気のせいなのか、鼻にかかったセクシーボイスで私をジトっと見つめ意味深な言い方をする相原さん。「ね、相原さん……」「ン?」「ほんとに熱あるんですかぁー? 仮病だったりしてー」「酷い言われようだなー、参った。 お粥と林檎食べたら大人しくするよ」「そうですね、病人は大人しくしてないとね。 さてと、準備しますね。少しお待ちくださぁ~い」

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇Let's go 106

    106     「そういうことなら相原さんはやっぱり掛居さんにお願いしたいわ。 実は……掛居さんだから話すけど、私はカッコイイ男性《ひと》は緊張しちゃって駄目なのよー。 おばさんが何言ってんだーって笑われそうだけど。 そんなだからこの年になっても未だ独身なんだけどね」「芦田さん、私は笑いません。 私も相手が素敵な男性《ひと》だと同じです。 緊張しますもん」 相手に合わせて?  調子のいいことを言いながら自分自身に問いかけてみる。 私は匠吾だけを見て生きてきたので素敵な男性なんて他の人に対して思ったことがないんだよね~。 多少いたのかもしれないけど、私にとっては普通の男性《ひと》としてしか接してないと思われ、素敵な男性だと緊張するという経験は……なかったわっ。 ただ相原さんの場合は特殊というか、かみ合わなくてあまり接触したくないのよね。 だけど芦田さんの乙女チックな気持ちもよく分かるのでしようがないなぁ~。「ありがと、掛居さん。 私がいい年をしてこんな恥ずかしいこと話したの初めて。 共感してもらえてうれしいっていうか……。 じゃあ、今回の相原さんのお宅訪問の詳細はメールで送らせてもらっていいかしら」「はい、大丈夫です」「メールで説明してある項目以外は本人の意向を聞いてもらってお手伝い進めてもらえばいいです」「はい、分かりました」 電話を切り、メールをチェック。 凛ちゃんのことが気に掛かり、私は大慌てで出掛ける準備をした。 訪問する前に頼まれているモノをどこかで買わなきゃ。 さて、Let’s go.

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇ 付き合ってません 105 

    105「お待たせしました、掛居です」「休日でお休みのところ、ごめんなさいね」「いえ、大丈夫です。自宅訪問の件ですが行けます。 伺う時間とサポート内容、場所、それから滞在時間の目安など教えていただけますか」「有難いわ、助かります。 詳細は後からメールで送るわね。 掛居さんに担当してもらうのは相原さんなの。 場所は……」 私は『相原』という名前を聞いた途端、頭やら耳の機能が停止してしまったようで、芦田さんの話してる言葉が何も入ってこなかった。 いゃあ~、人を差別するというか、この場合自分の好き嫌いで選別してはいけないこととは分かっているものの、先月の彼とのエレベーターでの出来事を思えば、どんな顔をしてサポートに入れるというのだ。「もしもし?」「あの、芦田さん、できれば他の人と……つまり芦田さんが訪問する予定のお宅と替わっていただけないでしょうか」「……」「掛居さんは私が受け持つ人とは面識がないし、というのもあるし、ちょっと恥ずかしいんだけど言っちゃうわね。 私、独身でしょ、だから男性のお宅へ伺ってサポートっていうのは恥ずかしくて」 それを言うなら私も独身、しかも花も恥じらう? まだ20代ですってば。「あ、掛居さんも独身だけど相馬さんとも親しくしているって聞いてるし、男性に耐性あるんじゃないかと思って」 そんなこと誰に聞いたんですかぁ~、保育所勤務なのにぃ~、噂って怖いぃ~。「付き合ってるのよね?」「いえ、付き合ってません」 えっ、私ってばそんなことになってるの、知らなかったー。 相馬さんは知ってるのかしら。「でも親しくしてるのはほんとよね?」「個人的に親しくしてないつもりですが……。 そうですね、彼の仕事を手伝ってるので職場では親しくさせてもらってます」

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status