LOGIN元彼への未練を打ち切り年収条件ありのプレミアム合コンで男探しをする凛。そんな時に出会った蓮見律は大手商社の創業者の家系に育ち次期社長候補。見た目・スペック・将来性ともに理想通り!出会ってすぐにプロポーズされ有頂天。しかし、次の一言で笑顔は瞬く間に消え去った。「勘違いしないでください。結婚と言っても契約結婚です」「……え?」 元彼の契約結婚を疑っていた私がまさかの契約結婚!? 一度は断るも仕事と家を失いそうになり、律の条件を受けることに。冷酷な律との生活に耐えかねた凛は、契約期間内に溺愛させると心に誓う。果たしてスパダリと幸せな愛のある結婚生活は送れるのか? 誰が契約結婚だって?【番外編】悪女・凜が主人公
View More「前田さん、私と結婚してくれませんか?」
ミシュラン認定フレンチ店の個室で突然のプロポーズされた。
「……結婚、ですか?なんだか夢みたいで信じられない。ふふ、うふふ」
口元を手で隠していたが、自然と笑みが零れてくる。
だって、相手は将来有望な財閥の御曹司!おまけに顔もいい!私の理想とするスパダリ(※スーパーダーリン)そのものだ。
しかし、次に彼の口から出た言葉でその笑みは一瞬にしてピタリと止んだ。彼・蓮見律は、表情を一切崩さずに冷めた口調で言う。
「あの勘違いしないでください。結婚といっても契約結婚です」
(元カレの啓介が結婚すると聞いて、契約結婚を疑った。愛を奪う側だった私が、まさか契約結婚を突きつけられる側になるなんて思ってもいなかった。)
――――遡ること一週間前
私・前田凛は、この日参加男性は年収条件ありのプレミアム合コンに参加し、他の男性と談笑をしていた。
しかし、会場の隅にいた男性が突然、すごい剣幕でこちらに近付いて、会話を割って声を掛けてきた。それが、蓮見 律(はすみりつ)との出逢いだった。
身長は180㎝くらいのスラッとした長身で、クールな切れ長の瞳に高い鼻、薄い唇の透明感があり、顔もタイプだ。
(カッコいい!細身のスーツも似合っていて素敵!こんな人がこの場にいるなんて…!)
「こんばんは。今、いいですか?」
私の隣にいた男性は会話を邪魔されて怪訝そうな顔をしていたが、私の視線が捉えるのは律だけだった。
「ええ、大丈夫です。」
受け取った名刺には、大手企業の蓮見グループの専務と書かれている。
「蓮見さんは、お若いのに専務なのですね。苗字が同じですが親族なんですか?」
「ええ、蓮見は曾祖父が作った会社です。」
私は、一気に蓮見への興味が湧いた。心の中で久しぶりに狩猟本能が目を覚ます。
「まあ、素敵。将来を期待されているんですね」
「あなたはどんなお仕事を?」
「私は、T製薬会社で受付をしています。」
「そうか、あなたのような見た目なら綺麗ですし目も引くな」
蓮見は、冷静に分析するようにゆっくりと視線を走らせて私の頭から足先まで眺めている。品定めされているかようで変な緊張感が生まれ立ち尽くしていた。
その後も、社内外の役員以上のクラスと関わる機会があるか、どんなことをするのかと尋ねられたので、時には秘書の代わりとして代行することも伝えると、蓮見は指を顎にあてて俯きながら何か考え事をするような仕草をしていた。
こうして合コンが終わるまで、ずっと一緒に二人きりで話をしていたが、連絡先を交換すると名刺にかかれている番号と同じ仕事用の番号を伝えられ脈ナシかとショックを受けた。
しかし、連絡をすると返事はその日中に返ってきて、食事も候補を何日か教えて欲しいと積極的に誘ってきて本心がよく分からない。
そして今、初めていった食事でこうしてプロポーズを受けている――――
「契約、結婚ですか……?私が?律さんと?」
「ええ、厳密には期間限定の契約結婚です」
「契約結婚、期間限定……?なぜ、契約結婚を?」
「蓮見グループは曾祖父が作った会社で、次期社長は蓮見家の中から決めます。最近は、家系図のポジションよりも実績と経歴重視です。そしてその経歴には【結婚】も含まれる。親会社のポストを狙うなら結婚はマストです。」
「……つまり出世のためには、結婚が必要」
「そういうことです。そして上層部が求める社交性と見た目を持ち合わせている女性を探していました。君ならその条件も大丈夫でしょう。」
「理由はわかりましたが、何故、期間限定なのですか?」
「社長に就任さえしてしまえば、プライベートが原因で役職を降格されることはない。だから決める時に結婚さえしていればいい。祖父が七十歳になる三年後が勝負だ。それまでに有利に進めていく。」
「三年間の期間限定妻、ということですか。」
「ああ。もちろん君の意見を尊重する。結婚している間は不自由な生活はさせないし、離婚後も君の生活が困ることがないよう一括で慰謝料を支払うよ。」
(啓介が仕事のために結婚したのではないかって疑ったけれど、まさか本当にこんな話があるなんて。啓介の契約結婚を疑った理由がそのまま私のところに返ってきたというの?)
「……せっかくですがお断りします。」
「なんだって?何が不満なんだ」
「あなたは条件でしか、私を見ていない。好条件を出せば黙って頷くと思っているかもしれないけれど、私はそんな女じゃありません。」
今まで散々自分が条件で男性を選んでいたが、男性に品定めされるのは嫌だった。
「そうですか、では少し猶予を与えましょう。受ける気になったら連絡してください」
断ったのに一歩も引かない蓮見の強引さに圧倒されながらも、その日はそのまま店を後にした。蓮見は、驚きと悔しさを滲ませた顔で私を見送っていた。
これ以上、律に泣き顔を見せたくなくて、外へ出るために手を振り払おうとすると、律は必死で抵抗して離そうとしない。もう一方の手首も掴まれると、そのままソファに押し倒された。「違う、違うんだ、凛……。信用とかそういうのではないんだ」律の声が震えている。瞳を潤ませていた律は、ソファと私の顔のわずかな隙間に顔をうずめると、私に覆い被さるような体制のまま、しばらく黙ったままでいた。私と律の頬がくっついている。律の目元から生温かい雫が私の頬を湿らす。(知りたいのは、泣きたいのは、私の方なのに……。でも、律にそんな顔されたら責められないよ。)声を震わせる律も、目を潤ませ涙目になる姿も、私の胸を強く締め付けている。律に手首を掴まれたまま、私が律の頬を撫でると、律は手首を握っていた力を徐々に弱めていった。完全に私の手首を離すと、私は片方で律の背中をさすり、もう片方で律の頭を撫でた。今まで男性に慰めてもらう側だった私が、律の弱弱しい姿を見て、初めて心から慰めたいと思った。律の悲しんでいる顔を見ると、自分のことのように胸が苦しく、切なくなった。律が落ち着くまで、私は背中をポンポンと叩いて頭を優しく撫で続けた。律が身を委ねるように私に体重を預けている。「もう少しこのままでいさせてくれないか。そうしたらちゃんと話すから&hellip
帰りの車内では終始無言だった。形だけの契約結婚だったはずが、抱き合って、キスをして、最近は一緒のベッドでも寝るようになった。今も後部座席に隣同士で座っていて、手を繋ごうとすれば繋げる距離にいる。きっと律に出会う前の独身時代の私だったら、彼氏や気になる人とこのシチュエーションでいたら、迷うことなく私から手を握っていただろう。驚いてこちらを見る彼に、照れたように微笑んで「手を繋ぎたくなっちゃった」とか言って甘えていたはずだ。だけど、今はそんな気になれなかった。時折、横目で律を見ると、窓からぼんやりと景色を眺めていて、何を考えているか分からなかった。「ねえ、私に隠していることない?私が知らないことがあるんじゃないの?」部屋に入ってすぐに問い詰めると、律は眉をピクリと動かし黙っている。その反応が、苛立ちなのか、動揺なのかは読み取れない。無表情のまま、視線を私に、じっと向けて無言を貫いていた。しばらくの沈黙が続いて、耐えきれなくなった私は苛立ちと共に吐き出すように律に行った。「そう、何も話すつもりはないわけ?私は、律の口から聞きたかったけど、律がそういう態度なら他の人に聞くわ。隼人さんがいつでも電話してきてって言ってくれたし」私が隼人さんの名前を出すと、律は思った通りに不快感を露わにしている。
「律さんの奥様ですよね?」「はい、ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ございません。律の妻の凛です。よろしくお願い致します」声を掛けられて円華さんに挨拶をすると、彼女はふくみをこめた冷笑をこちらに向けてきた。その視線は、私を値踏みし見下しているようだった。「不躾だけど、あなた、何が目当てで律さんと結婚したの?」「え。何が目当て、ですか?」突然の質問に私は言葉に詰まってしまった。「だってそうでしょう。律さんと結婚しても将来は難しいじゃない。それとも顔?」不躾にもほどがあると円華への苛立ちを感じながらも、気にしていないふりをして冷静を装って笑顔で答えた。「難しい、とはどういうことでしょう。私はそう思っていませんが」「あら、やだ。あなた律さんのこと何も知らないのね。でも、だから結婚したのか。知らぬが仏って言葉もあるし、これからも気にせず過ごせばいいわ」円華はそう言って、目的を果たした満足感のある冷たい笑みを残して懇親会場に戻って行った。席を立ってから私と話す以外のことは何もしていない。私にこの話をするために、わざわざ席を立ったのだと確信した。
「凜ちゃん、久しぶりね」「香澄さんー、お久しぶりです」幹部だけの会議が終わり懇親会場へ向かうと、律と香澄さんが話をしていたが、律より先に香澄さんが気づいてくれて声を掛けてくれた。「今日も素敵なドレスね。可愛くて凜ちゃんの雰囲気にぴったり。ね、律?」「あ、ああ」律の素っ気ない態度を横目に、私は今日の参加者たちを見渡した。(あの青いネクタイの人が圭吾さんね。この中で一番年上だから、自分がトップの地位につきたいと隼人さんをライバル視していると聞いたわ。そしてその手前にいるパンツスーツの女性が円華さん。彼女は、律のお父さんの妹の子どもだったわね。妹さんは性別を理由にいいポストをもらえなかったから躍起になっていると聞いたわ。彼女には要注意と言っていたし気を付けないと……)小森さんの情報をもとに、その後も顔と名前を一致させていく。受付の仕事をしていたこともあって顔と名前を覚えるのは得意だった。席次は事前に決まっており、上座に圭吾さんと隼人さん、香澄さんと続いている。私たちは一番隅に案内された。(なんで一番隅なの?この前の集合写真でも香澄さんは中央だったけれど律は一番隅だった。写真嫌いだからだと思っていたけれども、もしかしてあの時も場所が指定されていたの
権力争いが長期戦だということに驚いていると、小森さんが冷静に口を開いた。「はい。そして大きな会社であればあるほど売上も出しやすく、会社への貢献度も高いため評価には有利です。そのために今の時期からみな必死になっているんです」(あれ?律はこの三年が勝負って言っていたけど、小森さんの説明と違うな。親会社の役員人事を決める時に離婚歴があったら不利にはならないの?)「そう……今の時点で有利な人はいるの?」「現時点では、隼人様が一番ですね。親族からの評価も厚く、すでに実績も上げていらっしゃいます。香澄様も候補にはなっていますが、代々続く蓮見家の代表に女性を選ぶことはまだ考えにくいです」小森さんは、断言するように力強く隼人さんの名前を口にした。「隼人さんが……?隼人さんは独身だけれど順位が高いの?」「ええ。隼人様は結婚されていませんが、それが何か関係でも?」「え?いえ、なんでもないわ」小森さんが不思議そうな顔をして聞き返してきたので慌てて濁したが、私の頭の中は疑問でいっぱいだった。(律は、結婚が後継者争いに有利だと言って私に結婚を申し
幹部会当日、律専属の運転手にマンションまで迎えに来てもらい会場まで足を運んだ。会議後の懇親会としてホテル内に入っている飲食店を貸し切っているそうだ。ホテルのエントランスでは、秘書の小森さんが私の到着を待ってくれていた。「奥様、今日はありがとうございます」「小森さん、入口まで来てくださってありがとうございます」「いえ、とんでもない。実は、先に奥様とお話をしたいことがありまして。少しお時間よろしいですか?」「はい、大丈夫です……」小森さんに言われてラウンジの一番隅の席に座る。小森さんが壁側の席に座り、全体を見渡してから、声を抑えて話し始めた。「今日の内容は専務からお聞きになっていますか?」「ええ、少しだけ。来月、会長が参加される役員会の前に事前の顔合わせだと……」「はい、大体その通りです。ですが、もう少し補足させてください。専務はたまに言葉不足と言いますか、説明が簡潔すぎて相手にしっかりと伝わっていないこともありまして……お力のあるかたなのに、もったいないと思っていまして」律の言葉不足と言うのは大
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