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第4話

مؤلف: 団子ちゃん
かれんはその場に立っていられないふりをして、ふらりと研人の胸元に身を委ねた。

目にはうっすらと涙を浮かべ、喉を詰まらせながら、か細い声でつぶやく。

「研人さん……みゆきちゃんを責めないで、悪いのは私なの。こんな格好で水を取りに出てきた私がいけなかったの」

「こんな時間だし、みゆきちゃんはもう寝てると思って、上着を羽織らずに部屋を出ちゃったの。まさかドアを開けた途端、みゆきちゃんにばったり会っちゃって……

彼女、私の体にある痕を見て、いきなり罵り出したの。こんなはしたない私が、研人さんの相手にふさわしくないって」

その語り口は巧妙だった。

少ない言葉で、みゆきを深夜に養父の部屋の前に潜み、養父の婚約者に嫉妬して暴力をふるう変態に仕立て上げた。

「そんなの嘘だよ、私そんなこと言ってない」

みゆきは目尻を赤くしながら反論した。

「彼女が私の両親を侮辱したの……母さんが狂っているって!」

小学生の頃、みゆきは母親が理由でいじめに遭っていた。

クラスメイトに囲まれて「狂った女が産んだ娘」と罵られ、ゴミを投げつけられた。

あの時、庇ってくれたのは研人だった。

だから、研人なら自分の気持ちを理解してくれるとみゆきは信じていた。あの時のいじめはみゆきにとって、今でも棘のように心に刺さっているから。

「……え?みゆきちゃん、何を言ってるの?」かれんがきょとんとした顔で言った。

「あなたのご両親がどうなさったの?あなたが小さい頃に亡くなられたって聞いたけど、それ以上のことは私、何も知らないよ?」

研人はそんなかれんを優しく慰め、肩を抱くようにしながらそっと囁いたあと、みゆきのほうへ鋭い視線を向けた。

「みゆき、かれんに罪を着せるために、こんなことまで言うとは思わなかった」

その声には、失望が濃く滲んでいた。

「俺は一度だって、お前の過去をかれんに話したことはない」

「そんなことくらい、調べたら出てくるよ!ネットで少し検索すれば……」

「黙れ!」研人の怒声がみゆきの言葉を遮った。

「誰も彼もお前みたいにうがった見方で人を疑うわけじゃない。いい加減言いがかりをやめろ!」

その言葉に、みゆきの心は凍りついた。

うがった見方で人を疑う?言いがかり?自分はそんなふうに思われていたのか?

もう、どんな言葉を重ねても意味がないとみゆきが悟った。

「今すぐかれんに謝れ」研人は冷ややかに命じた。

みゆきは唇を噛みしめ、うつむいたまま黙り込んだ。

だって謝る理由なんてひとつもない。謝るべきは、かれんなのだから。

「俺が甘やかしすぎたな」研人の声は冷えきっていた。

「今回ばかりは許さない。今日から、お前は部屋から一歩も出るな。自分の行動を反省しろ。謝る気になったら、外に出してやる」

みゆきは、ずっと研人に甘やかされてきた。

けれど今日、彼は他の女を庇った。

みゆきは部屋に閉じ込められ、ベッドの上で膝を抱え、体を丸める。

それでも、どうしようもなく寒かった。

そんなとき、スマホが小さく震えた。冷凍研究所の責任者からのメッセージだった。

【小林さん、健康診断の結果が出ました。当研究チームの検討により、冷凍に最適な日程は来月7日から21日までとなります。ご希望の日を選び、お知らせください】

来月は12月だ。

みゆきの心臓が、またきゅっと締めつけられた。

来月……

彼女は暗い部屋の中で、長いこと動かなかった。

やがて、指を震わせながら、日付を打ち込む。

【12月12日】

12月12日はみゆきの誕生日。

そして、研人とかれんの結婚式の日。

研人はもう自分の顔なんて見たくないだろうし、行ってもただ迷惑だと思い、みゆきは結婚式の出席をやめようと思った。

その日は、誰の邪魔もせず、一人で旅立とう。
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