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流産した私より教え子を選ぶ夫、さようなら

流産した私より教え子を選ぶ夫、さようなら

By:  ころころおなかCompleted
Language: Japanese
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諏訪美優(すわ みゆ)が諏訪琉生(すわ るい)と結婚した年、琉生は市内の時代広場の大型ビジョンを貸し切り、3日間ずっと二人の馴れ初めを綴ったシルエット映像を流し続けた。その時集まった999万ものお祝いのコメントが、美優にとっての「絶対に揺るがない愛の証」となったのだ。 しかし、その愛の証は、結婚5年目にして静かに崩れ去った。 この時美優はふらつく体を引きずり、産婦人科から帰宅した。そしてピアノのトロフィーが並ぶ壁を空虚な瞳で見つめながら、健診結果の用紙を握りしめたままの手をまだ下ろせずにいると、琉生から着信があった。 「ここんとこ、ピアノの練習で忙しいんだ。健診には一緒に行けないから、とりあえず家でゆっくり休んでいてくれ」 電話に出ると、琉生の穏やかな声が聞こえてきた。返事をする間もなく、通話はすぐに切れた。 しかし昨日、琉生の予定を確認していた。本来なら、練習など入っていないはずの時間だ。 美優がすぐにかけ直すと、相手の電源は切られていた。琉生にここまで拒絶され、生活に踏み込まれたくないのだと察し、彼女の胸はひどく痛んだ。 自分はただ、二人の子供が流産してしまったことを伝えたかっただけなのに。 美優は深く息を吸い込み、健診結果の用紙を写真に撮って琉生に送った。その後、アドレス帳からある番号を探し出して電話をかけた。 「離婚の手続きをお願い。もう、琉生とは別れるから。 子供は……もう亡くなったの。私にはもう、何も思い残すものはないから」

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Chapter 1

第1話

諏訪美優(すわ みゆ)が諏訪琉生(すわ るい)と結婚した年、琉生は市内の時代広場の大型ビジョンを貸し切り、3日間ずっと二人の馴れ初めを綴ったシルエット映像を流し続けた。その時集まった999万ものお祝いのコメントが、美優にとっての「絶対に揺るがない愛の証」となったのだ。

しかし、その愛の証は、結婚5年目にして静かに崩れ去った。

この時美優はふらつく体を引きずり、産婦人科から帰宅した。そしてピアノのトロフィーが並ぶ壁を空虚な瞳で見つめながら、健診結果の用紙を握りしめたままの手をまだ下ろせずにいると、琉生から着信があった。

「ここんとこ、ピアノの練習で忙しいんだ。健診には一緒に行けないから、とりあえず家でゆっくり休んでいてくれ」

美優が応答ボタンを押すと、穏やかな琉生の声が耳に届いたが、彼女が何かを聞き返すよりも先に、電話は切れた。

昨日確認したばかりだ。琉生にトレーニングの予定はなく、時間は空いているはずなのに。

美優がすぐにかけ直すと、相手の電源は切られていた。琉生にここまで拒絶され、生活に踏み込まれたくないのだと察し、彼女の胸はひどく痛んだ。

自分はただ、二人の子供が流産してしまったことを伝えたかっただけなのに。

美優は深く息を吸い込み、健診結果の用紙を写真に撮って琉生に送った。その後、アドレス帳からある番号を探し出して電話をかけた。

「離婚の手続きをお願い。もう、琉生とは別れるから。

子供は……もう亡くなったの。私にはもう、何も思い残すものはないから」

美優は健診結果の用紙から目をそらし、声を詰まらせて言った。「この結婚を続ける理由が、もうなくなったの」

すると電話の相手、美優の長年の友、内田洋子(うちだ ようこ)が悲痛な声で訴えた。

「美優、あなたは長年こんなにも琉生さんのために尽くしてきたのに。友達とも離れ離れになってこんな遠い街まで嫁いで、結婚してからも彼の生活ばかりを気にかけてきた。それに、琉生さんの持病を治すために安全性の高い薬を探すのだって一苦労したんだから。

あなたがこうして、みんなが羨むキャリアを捨ててまで、自分から専業主婦になってあげて、毎日食事や家事を全部背負って……それは見ていて私が、誰よりもよく知ってるわ!」と洋子はなんとも悔しくて堪らない様子だった。

そして洋子はさらに切なげに続けた。「あなたは琉生さんのためにここまで尽くしてきたわけだし。結婚した時だって、愛する人と結婚するから役所に駆け込むほどだったのに……あんなに幸せそうに愛し合ったあなたたちが、どうしてこうなってしまったの?」

一方、洋子の涙声を聞きながら、美優は胸に鋭い痛みを覚えた。喉が塞がったように苦しく、呼吸さえままならなくなった。

美優はしゃくり上げ、部屋を埋め尽くすトロフィーに目を落とした。結婚生活の5年が脳裏をよぎり、琉生との出来事が次々に蘇る。

琉生は若き天才ピアニストだ。30歳を待たずに大御所の名を冠し、整った顔立ちと上品な気品で、多くの少女を夢中にさせた。美優もその一人で、初めて見た瞬間から、琉生と人生を共にすると決めていた。

プロポーズの際、琉生は演奏ホールを貸し切り、美優のためだけに演奏してくれた。そのロマンティックなメロディに心奪われ、美優は未来への憧れでいっぱいだった。

そして入籍直前、琉生は美優に尋ねた。「本当にいいんだな?僕と家庭を築く覚悟は?」

その時、美優は恥じらって頷き、琉生を促した。「早くしないと、窓口が閉まっちゃう」

だが、結婚3日後、琉生はコンサートを優先して美優の両親への挨拶に来なかった。「芸術を第一に考え、聴衆を裏切るわけにはいかないから」と言い訳をして。

その日から、美優の我慢が始まった。琉生のために言い訳をし、親戚から何か言われても笑って流し、理想の妻であり続けようと努めていた。

あの時は、彼女は琉生をただ、仕事熱心な人なのだと思っていたのだ。

だが次第に記念日、お正月の挨拶、しまいには美優の祖母の臨終まで、全て「仕事」を理由に琉生は欠席するようになった。ついに美優は気づいたのだ、男が仕事にのめり込みすぎるのも、考えものだと。

祖母を看取った後、美優は外で何度も琉生のスマホを鳴らした。しかし冷たい呼び出し音が鳴り響くだけで、結局彼が電話に出ることは一度もなかった。

美優は諦めきれず何度もかけた。家族が一人、また一人と帰る中、繋がるはずのない電話をひたすらかけ続けた。だが結局、最後には電源オフのアナウンスが響くだけだった。

その瞬間、美優は「愛情」という毒薬を盛られたように、全身が凍えた。

後日、ようやく帰宅した琉生は美優の問い詰めに呆れ顔で言った。「僕の時間は貴重なんだ。無駄なことに使いたくない。演奏に集中させてくれ」

その言葉は、美優の心に雷のように打ち付けられた。喉まで出かかった怒りや悲しみは、胸の中に詰まり吐き出すことさえできなかった。

ふと、琉生にとってピアノがすべてで、それ以外は何も目に入らないのだということに、美優は気づいた。

冷戦状態が続いた後、妊娠というニュースで二人の状況は一時期だけ変わった。

あの一時だけは、琉生が変わったのかと思えた。彼もまた、家庭のために時間を作ろうとしているようだった。

しかし1週間もしないうちに琉生はまた以前に戻り、大喧嘩の末に家を出てしまった。そして、子供は流れてしまった。

母親の伊藤恵(いとう めぐみ)には離婚を勧められた。しかし美優は、結婚した年に琉生が街中の大型ビジョンを貸し切ってまで示してくれた、あの情熱的な愛の証がどうしても忘れられず、心を開ききれなかったのだ。流産はたまたま体が弱かったせいだと、恵に説明して頑なに拒んだのだ。

そして琉生が振り返ってくれるのを、美優はただ待ち続けていた。

こうして待っているうちに、長い5年の月日が流れた。

琉生の評判はうなぎ登りで、賞を取り、個人のスタジオまで構えた。テレビで彼は芸術論を語りながらも、家庭については「素人の妻」がいると言って話を流していた。おそらく琉生にとって、それは自らの価値を下げる話題だと思っただろう。

だって、琉生の世界では、ピアノこそがかけがえのないものなのだから。

そのために琉生は、情愛も家族さえも切り捨てることができる。

洋子の言葉を聞きながら、美優は気を取り直して言った。「いいの、全部自分が選んだ道だもの。もう十分よ。愛し尽くして、燃え尽きたの。

子供もいなくなったし、もう琉生に関係することもなくなったわ。洋子、離婚手続きを手伝って。私がいてもいなくても、彼の人生は何一つ変わらないのだから。私なんて、最初からその程度の存在だったのよ」

そう言うと、美優の目から雫がこぼれ落ち、健診結果の用紙にポツリと跡を残した。

これが、二人の間で授かった2人目の子だ。しかしわずか2ヶ月で、またしても流産してしまった。

洋子は数秒間沈黙してから、溜息をついて答えた。「わかったわ。すぐに準備を進めるから」

通話が終わると、美優はソファに倒れ込み、声を殺して泣き続けた。そして次第に泣き声は大きくなっていき、彼女は喉が枯れ果てるまで泣き続け、ようやく力の抜けた体を支えながら起き上がった。

視線の先には、準備していた机の角のガードと、整理もされなかった赤ちゃん用品が散乱していた。

全て、愛する琉生との子供を迎えるために、自分で準備したものだった。

妊娠を告げた時の琉生を思い出す。冷ややかな目線で、トレーニングを邪魔するなという態度だった。

子供は二人で育てるもののはずなのに、悲しんでいるのは自分だけだった。

多分子供もこんな愛のない場所になど、生まれたくなかったのだろう。

そう思って美優は胸の痛みを抑え、そっと健診結果の用紙を片付けた。

そして、スマホに届いたメールの通知音が、がらんとしたリビングに響き渡った。

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橘ありす
橘ありす
妻よりも優先する教え子に気持ちがあるのかどうかより、妊婦(流産したのを知らない頃だから)の妻がよろけたのに手を差し伸べもせずに転げ落ちるのを淡々と見てるだけの夫が怖い、しかもそれを全く悪いと思ってないのがヤバすぎる。妻に対して冷たすぎてそりゃ別れて正解としか思えないよ。そして妻に色々仕掛ける教え子クズ女も頭おかしい、クズ男は一応反省したけどクズ女は反省はしてなさそうだもんなぁ…まぁ、処理されたからいいけど。
2026-06-08 01:44:00
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ノンスケ
ノンスケ
愛してもいない後輩をそれだけ可愛がり、妻を信じようとしなかったクズ夫、捨てられて当然では?いくら天才ピアニストでも、情緒までは上質ではなかったんだね。
2026-06-05 20:42:29
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KuKP
KuKP
人として未完成なクズ天才ピアニスト=サンが蔑ろにし続けた妻が出て行った後になってから愛()に目覚めて連れ戻そうと足掻いてた 当然だが無料家政婦兼社交担当は戻らず。残念! 結婚すべきじゃないクズだったんだねえ… クズ女はピアニストなのに主人公を陥れるために自ら手を怪我してたけど、本当に自分を天才の芸術的感性を理解できるアーティストだと思ってたのかなあ? …陥れようとしてる時点で精神鍛錬なってないしお察しだろうか…
2026-06-06 06:22:33
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松坂 美枝
松坂 美枝
そこまで落ち込むならもっと大事にしとけば良かったのに 結婚してる時は大して気にも止めず帰宅もしなかったし音楽に造詣のない妻を表にも出さなかったのに今更なんなの…
2026-06-05 10:11:44
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第1話
諏訪美優(すわ みゆ)が諏訪琉生(すわ るい)と結婚した年、琉生は市内の時代広場の大型ビジョンを貸し切り、3日間ずっと二人の馴れ初めを綴ったシルエット映像を流し続けた。その時集まった999万ものお祝いのコメントが、美優にとっての「絶対に揺るがない愛の証」となったのだ。しかし、その愛の証は、結婚5年目にして静かに崩れ去った。この時美優はふらつく体を引きずり、産婦人科から帰宅した。そしてピアノのトロフィーが並ぶ壁を空虚な瞳で見つめながら、健診結果の用紙を握りしめたままの手をまだ下ろせずにいると、琉生から着信があった。「ここんとこ、ピアノの練習で忙しいんだ。健診には一緒に行けないから、とりあえず家でゆっくり休んでいてくれ」美優が応答ボタンを押すと、穏やかな琉生の声が耳に届いたが、彼女が何かを聞き返すよりも先に、電話は切れた。昨日確認したばかりだ。琉生にトレーニングの予定はなく、時間は空いているはずなのに。美優がすぐにかけ直すと、相手の電源は切られていた。琉生にここまで拒絶され、生活に踏み込まれたくないのだと察し、彼女の胸はひどく痛んだ。自分はただ、二人の子供が流産してしまったことを伝えたかっただけなのに。美優は深く息を吸い込み、健診結果の用紙を写真に撮って琉生に送った。その後、アドレス帳からある番号を探し出して電話をかけた。「離婚の手続きをお願い。もう、琉生とは別れるから。子供は……もう亡くなったの。私にはもう、何も思い残すものはないから」美優は健診結果の用紙から目をそらし、声を詰まらせて言った。「この結婚を続ける理由が、もうなくなったの」すると電話の相手、美優の長年の友、内田洋子(うちだ ようこ)が悲痛な声で訴えた。「美優、あなたは長年こんなにも琉生さんのために尽くしてきたのに。友達とも離れ離れになってこんな遠い街まで嫁いで、結婚してからも彼の生活ばかりを気にかけてきた。それに、琉生さんの持病を治すために安全性の高い薬を探すのだって一苦労したんだから。あなたがこうして、みんなが羨むキャリアを捨ててまで、自分から専業主婦になってあげて、毎日食事や家事を全部背負って……それは見ていて私が、誰よりもよく知ってるわ!」と洋子はなんとも悔しくて堪らない様子だった。そして洋子はさらに切なげに続けた。「あなたは琉生さんのため
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第2話
【この度弊社の採用試験に合格されましたことをお知らせさせて頂きます。お仕事をご一緒にできることを心よりお待ちしております……】それは、声優オーディションに合格したという通知だった。通知を見た美優は、胸を詰まらせ、ただ呆然と立ち尽くしていた。琉生との結婚以来、声優業からは遠ざかっていた。彼が「こういうのは趣味なら構わないが、本業にするのはやはり主婦としてあるまじき行為だ」と言っていたからだ。だから、今回は彼女が5年ぶりの再挑戦で勝ち取った合格だった。しかも、業界でも名の通った声優事務所からのオファーだ。乾いていた瞳から再び涙があふれ出した。それは、自分自身をようやく認められたという確かな実感が伴っていた。琉生に否定され続けてきた夢が、別の形でその価値を証明されたようだ。ここからが再出発だ。5年前の自分を取り戻し、今度こそ夢を叶える。そう思って美優は涙を拭い、こみ上げる悔しさを抑え込みながら、すぐさま必要な書類をカバンに詰め込んだ。そして入社に必要な書類を揃えると、郵送した。書類を郵便局の職員に手渡すと、美優は深く息を吸い込んだ。もう少しで自由になれるの。そう思うと張り詰めていた気持ちも、少しずつほどけていくように思えた。それから、帰宅すると、リビングでピアノを弾く琉生の姿があった。美優は驚きのあまり、目を見開いた。だって、彼は普段、この時間には決して家にいないからだ。一方、一曲弾き終えた琉生は、美優の姿を見ると、病院の検診から帰ってきたとでも思ったのか、「そんなとこ突っ立ってないで、座って休みなよ」と淡々と言い放った。一方美優はその思いがけない優しい言葉に驚いた。しかし、琉生は美優が動かないのを見て、自ら近づいて肩を支えようとしてきた。彼女が彼の行動に困惑していると、その後の言葉で全てが明らかになった。やはり、この優しさには別の目的があったのだ。「凪がまたコンクールで優勝してさ。師匠として、祝うパーティーを開くべきだと思うんだ。傲慢にさせてはならないが、これまでの努力も讃えてやらないとな」琉生は美優を座らせると、矢継ぎ早に語り出した。美優はきょとんとした。琉生があまりにも嬉しそうに話すものだから、彼女はすぐに反応できなかったのだ。だが、琉生は美優の不快感には気づかず、さらに続けた。「凪はこ
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第3話
病室の中。看護師が美優の診察に来た。伝言を預かっていると言う。「ご主人からで、『急用ができた』と。あと、小突起の骨にヒビが入っています。1週間は絶対安静だそうです」美優は包帯の巻かれた腕や、あちこちにできた痣を見つめ、傍らに置かれた紙切れを手に取った。【ゆっくり休め。治療費は払っておいた。もう、凪のお祝いにも出席しなくていいから】その筆跡も琉生らしい冷たさを醸し出していた。美優はその紙切れをクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げ捨てた。そして、スマホのロックを解除すると、通知がいくつも入っていた。洋子からの面白動画の共有だった。美優は動画を一つずつチェックし、少し返信してからスマホを閉じようとした。すると、凪が更新したばかりのインスタが目に留まった。その更新の通知が、今の美優にはやけに眩しく見えた。琉生と同じテイストのアイコンを見て、美優は何かに操られるように、思わずタップしてしまった。凪は9枚の写真を投稿していた。どれも琉生の影がちらつき、中央の集合写真には琉生と楽しそうに寄り添う、熱愛中のカップルのような姿があった。そして意味深なコメントが添えられ、投稿から3分も経たないうちにコメント欄は盛り上がっていた。【人生の節目に、いつもそばにいてくれてありがとう】美優は画面越しに指が少し震えたが、数秒迷ってから「いいね」を押し、ページを閉じた。かつてなら激しい嫉妬に身を焦がしていただろう。だが、今の胸に感じる突き刺さる痛みは耐えられないほどではなくなった。おそらく、もうどうでもいいのだろう。再びそんな写真を見ても、かつてほど傷つかない自分に安堵した。思い出せば、初めて凪があざとい写真をアップしたとき、自分は琉生のスタジオに殴り込みに行った。説明を求めただけで凪に笑われ、琉生には嫌われ、スタジオへの入室権すら剥奪されたのだ。だけど、今の自分には、昔のようにヤキモチを焼くことはなくなったから、この手のやり口は、もう通じないのだ。その時、新しい転職先からメッセージが入った。1年間Z国に派遣される仕事の話で、給料は2倍、手当も出るもので、オファーを受ける興味はあるかと問われていた。美優は少し迷ったが、返信欄に【参加します】と打ち込んだ。琉生との思い出に溢れるこの街で暮らすより、新しい場所でゼロから始める方がず
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第4話
「ああっ……美優さん!いくら私を馬鹿にして、身の程知らずって毛嫌いしてても、そこまで嫌がらせをすることはないじゃない?ピアノが大変なことになったでしょ!」凪は弱々しく美優を指さして訴えると、涙をボロボロとこぼした。そう言って、凪がわざとらしく崩れ落ちると、琉生は慌てて駆け寄り、彼女を支え起こした。「あなたが投げたんでしょ?何でも私のせいにするのはやめて」と美優は凪の演技などに付き合うつもりはなく、冷たく言い放った。ところが、琉生は凪を抱き起こすなり、見たこともないほど険しい表情で美優を睨んだ。「君が凪の手を叩きつけたから、瓶が飛んだのをこの目で見たんだ。自分のやったことを凪になすりつけるなんて、美優、いい加減にしろ!人の気持ちを考えろ!凪は苦労してここまでやってきたんだ。君のような、ただ親のすねをかじって生きてきただけの人間とは違うんだ。彼女は健気に頑張ってきたんだ。謝れ、すぐに謝れ!」琉生の言葉は、ボロボロになっていた美優の心にナイフのように突き刺さった。胸が裂けそうな痛みに襲われ、息も絶え絶えだった。目の前の見知らぬ人のような琉生を見つめながら、美優は理解した。自分はずっと、琉生にとってお金だけをせびるお荷物でしかなかったのだと。それで、濡れ衣を着せられるのはあんまりだ。自分は凪の手なんて叩きつけていなかったんだから。声を震わせながら、美優は必死に否定した。「私のせいじゃない。謝らないわ。リビングの防犯カメラを見ればわかるはず――」しかし、彼女に最後まで言わせぬよう、琉生が遮った。「君の言うことなんて信じられない。自分の目で見たことを信じる。君がやったんだ、もう黙れ」だけど、彼はさっき背後にいたのだから、実際の手元は見ていなかったはずだ。それでも彼は美優が自分と凪の関係に嫉妬して、逆上していると決めつけた。だって、か弱く優しいはずの凪が美優に濡れ衣を着せるなんて姑息な真似をするわけがないのだから、悪いのはきっと美優に違いないのだ。そう思った琉生の眼差しは、いっそう冷淡なものになっていた。「やったなら、新しいピアノを弁償して凪に謝れ」そう言われ、美優は言葉を失った。そして、琉生が凪の足をくじいたんじゃないかと気遣って、薬を探しにいく後ろ姿をただ茫然と見ていた。そして、1階から琉生の姿が見えなくなる
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第5話
それとともに、美優はテーブルの角に腰を強く打ち付けられ、あまりの鋭い痛みに、冷や汗が噴き出た。顔面蒼白になった美優を見て琉生は一瞬たじろいだが、すぐに凪の泣き声に気を取られた。凪が手のひらから血を流しているのを見ると、さっき抱いたはずの後悔などどこへやら、消えてなくなっていた。琉生は激怒し、怒鳴りつけた。「美優!いつになったら分別のつく大人になるんだ!ピアニストの命である手を傷つけるなんて、君は嫉妬で人の未来を奪おうとするほど、心が鬼なのか!凪はこれまで見てきた中で最も才能がある子なんだ。未来ある彼女の人生を、君の薄汚い嫉妬心で台無しにする気なのか?これじゃ、彼女の命を絶とうとするのと変わらないんだぞ!」琉生は美優に弁解の隙も与えず罵り続けると、そのまま彼女の前で凪を抱きかかえて部屋を出て行った。去っていく二人を呆然と見送った美優は、自分の手を見て息をのんだ。そこには、凪の血がこびりついていた。ふと近くの監視カメラに視線をやり、自嘲気味に微笑んだ。結局、琉生は自分を嫉妬深い女としか思っていないのだ。洗面所へ向かおうとした美優だったが、哲平に行く手を阻まれた。「奥様、旦那様からのご指示です。今日の行いに対する罪滅ぼしとして、庭で跪いて反省するようにとのことです」美優はきっぱりと言い放った。「やっていないことに反省なんてしないわ」そう言って哲平を追い抜き、階段を上ろうとした。しかしすぐに使用人たちが現れ、力ずくで引きずり戻されると、彼女は庭の地面に跪かされた。美優は必死に立ち上がろうとし、叫んだ。「放して!私は何もしていない!なぜ私が凪のために膝をつかなきゃいけないの!」だが哲平が合図すると、使用人たちは美優の両腕を背後からしっかりと押さえつけ、身動きひとつできないようにした。「奥様、私どもは旦那様に従うだけです。指示があるまで立ってはなりませぬ」哲平は冷たくそう言うと、離れた場所から見張った。そして美優が抵抗するほど腕にかかる力は増し、骨が折れそうな激痛で冷や汗が止まらなくなった。やがて抵抗する気力さえ消え失せ、泥のように崩れ落ちた美優は、激痛に耐えながら荒い息をついた。抵抗をやめた美優は、ただ静かに跪き、瞳からは一切の感情が消えていた。どのくらい時間が経っただろうか。哲平が台所で生姜スープを
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第6話
美優はもう一度琉生の手に目を落とし、短く切り捨てた。「さっきよ」「何か用?さっき何か見たのか?」美優の冷ややかな視線に気づいた琉生は、無意識に手を隠しながら尋ねた。「何を見たって言いたいの?」美優は言い返した。言葉に詰まった琉生は、眉間にしわを寄せた。「なんでもない。君は妊娠中だろう?凪のケアを代わりにしてあげて、罪滅ぼしをしているだけだ。あまり深く考えるな」妊娠中という言葉を耳にして、美優の胸に刺さった。琉生の言葉を反芻する。妊娠中、だと?続いて美優は鼻で笑った。自分が送った健診結果のメッセージを見ていないのだろうか?今は凪をかばうために、子供のことまで言い訳に使うなんて。「だってそうだろ?誰のせいでこうなったと思ってるんだ。君が凪の手を負傷させたんじゃないか。僕はただ君の代わりに罪を償っているだけだ」自分の言葉にあざ笑いを見せる美優を見て、琉生は苛立った様子で、凪の怪我のことを持ち出した。今回のことは全部美優のせいだ。じゃなかったら、凪がこんな災難に遭うはずがなかった。懸命に痛みをこらえようとする凪の健気な姿を思い出し、琉生はたまらなく心を痛めた。琉生のいかにも辛そうな表情を見た美優は、嘲笑いながら言い返した。「それならプロの介護士を頼めばいい。あなた自身がずっと付きっきりになる必要はないでしょ?」「そうはいかない。凪は他人を嫌うし、第一、他人の介護よりも自分がやった方が丁寧に決まっている。凪の手を絶対に元通りに回復させないと」琉生は即座に言い返した。美優は言葉を続けた。「専門の介護士を呼ぼう。そうすれば凪の手もきっと回復するはずよ。あなたは自分の手を何よりも大切にしてきたじゃない。付きっきりの介護なんて手が一番荒れるし、演奏に差し支えてもいいの?」美優の指摘に言葉を失った琉生は、戸惑いの表情を浮かべた。しばらくして彼は言い切った。「僕が直接ケアするのが最適なんだ。罪滅ぼしにもなるし、騒ぎを最小限に抑えられる。君のやったことは本来傷害罪になるから、法的に見れば警察に突き出されるレベルなんだぞ。僕は君のためにやっているんだ。それで凪は君の罪を問わないと約束してくれた。この話はここまでだ」そこまで言って、彼はさらに続けた。「それに、2週間後には公演がある。そんなくだらないことで出演に穴を開けたくない。ゲ
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第7話
一方、美優は病室に戻ると、深呼吸をして気持ちを整えた。薬箱から錠剤を取り出し、水で飲み込んだ。ちょうどその時、転職先からメールが届いた。来週の月曜日からZ国へ派遣されることが正式に決まったらしい。返信を済ませてから美優はまた洋子に連絡したが、一向に既読がつかなかった。美優も特に急ぎではなかったから、気に留めるのをやめ、看護師に膝のガーゼを替えてもらってから食堂へ向かった。病院の食事は栄養バランスが良く、味付けもさっぱりしていて、久しぶりに食欲が湧いてきた。どんぶりいっぱいの肉を食べ終えたところで、近くに座っていた看護師たちの話し声が聞こえてきた。「諏訪さんが武田さんにべた惚れなのよ。毎日の食事も献立指定してるし、つきっきりで世話をしてて。生理用品まで自分で買いに行ってるからね」「ほんと、新婚夫婦よりもアツアツだよね。まあ、諏訪さん既婚者なんだけど……」近くで聞いていた美優は、思わず持っていた箸を止めた。あの琉生が、そんな献身的なことをするなんて。この瞬間、美優は改めて、自分の診察のたびに「医者に診てもらえ」としか言わなかった琉生が、凪には随分と手厚いんだと思い知らされたのだった。食後の満腹感は少々不快だったが、ここ数日の飢えを思えば、これ以上ない充足感だった。食堂を出て裏庭を散歩しようとした時、曲がり角で琉生と凪の姿が見えた。美優はすぐさま踵を返し、足早に病室へ戻っていった。それから3日間、美優は静かに療養を続け、膝の腫れも引いたので退院することにした。出発間近になって、準備がまだ整っていなかったので、彼女は自宅に戻ると、すぐに自分の部屋へ荷造りをしに行った。そして日用品をまとめていく中で、琉生から贈られた宝石類はクローゼットに残した。部屋に飾っていた写真もすべて片付けた。その時、琉生から突然の着信があった。「デスクの上に書類がある。それをスタジオまで届けてくれ」「無理」美優は即答した。すると、電話越しに琉生が急ぎの口調で言った。「大切な書類なんだ。他の人だと安心できないから」そのひどく疲れ切った声に、美優はつい魔が差して引き受けてしまった。そしてスタジオに急ぎ、琉生のアシスタントに渡せばそれで終わりだと思っていた。ところが、インターホンを押すと中から凪が現れた。二人はガラス越しに見つめ
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第8話
琉生は凪の元へ駆け寄ると、どこか怪我をしていないかと心配そうに声をかけた。一方凪が床の灰を指さして、声を詰まらせながら訴えた。「美優さんがまた私のことをバカにして……育ちが悪いとか言ってきたの。でも、いくら何でも、楽譜を燃やすなんてひどすぎるわ。これは何ヶ月もかけて書き上げた大切な作品なのよ!」涙で濡れた顔でそう語る凪の白い頬には、赤く晴れ上がった平手打ちの跡があった。それを見た琉生の胸は痛んだ。「彼らみんな見てたわ。彼女が自分で楽譜を燃やして。私は何もしていない」美優は周囲を取り囲む人々を指さした。この人たちの立ち位置なら、自分がやっていないことくらいハッキリと見えたはずだから。これだけ人がいるのだから、見ていた人がいないなんていうはずはないのだと、美優は思った。しかし、周囲の人々は声を揃えて偽証した。「彼女が凪さんの譜面を燃やしたのは間違いありません。はっきりと見ましたから!」そう聞くと、琉生は一瞬にして不機嫌になった。「美優、本当に分からず屋だな!おい、すぐにこいつを物置にぶち込め。自分の間違いを認めるまで出すな!」こうして美優はそのまま物置へ押し込められた。一方、物置の中から美優の叫び声が響く中、凪はまた切なげに言った。「美優さんが書類を届けに来てくれた。迷わないよう案内してあげようと思ったら、この壁を見て突然激昂して。平手打ちまでされた。この壁は後輩たちへの激励のためにあるものだって説明したのに、信じてもらえなくて。あげくの果てに、大事な楽譜まで燃やされてしまって」そう言うと、凪の目からは大きな涙の雫が零れ落ちた。琉生が壁を一瞥した。それは生徒たちを激励するための飾りで、まさか美優がこれを見て癇癪を起こすほど器が小さいとは思わなかった。その瞬間彼は、美優に書類を届けさせたことを悔やんだ。「この件はしっかり対処するから安心しろ。美優もわざとやったわけじゃないんだ。僕が厳しく言っておく。楽譜の件は、こっちが作り直すのを手伝ってやる」それを聞いて、凪は手のひらを密かに握りしめた。心の中ではこの程度じゃ不満だったが、表情は素直で、控えめな女のふりを続けた。それから、琉生が用事でオフィスを離れた隙に、凪はそっと物置の扉を押した。震えながらうずくまる美優の姿を見て、凪は鼻で笑った。「お嬢様育ちの甘ちゃんね
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第9話
空港のラウンジで、美優は新しい同僚たちと談笑していた。ふと空港内のスクリーンに目をやると、琉生のピアノ公演のプロモーション映像が流れていた。その映像を見た瞬間、周囲の視線が一斉に画面へ集まった。皆、羨望の眼差しを向けているのだった。「諏訪さんの奥さん、毎日朝起きてあの顔が見られるなんて本当に幸せですよね」同僚の一人がそうからかう。「イケメンで才能もあるなんて、羨ましすぎて嫉妬しちゃいますよ」それを聞いて、美優も皆の視線を追い、画面に映る琉生の顔を見つめた。流れるようなフェイスラインと高い鼻筋。完璧な造形美に、思わず呆然と見惚れてしまう。もし昔の自分なら、間違いなく世界で一番幸せな女だと感じていただろう。毎朝目覚めると階下からは琉生のピアノの音が聞こえ、指先からこぼれ落ちる美しい音色と共に一日が始まる。耳に届く至福の旋律と共に素敵な一日が始まるのだから。しかし、時が経つにつれ分かった。琉生のピアノに対する熱愛は異常で、家庭など彼の眼中になく、家にも滅多に帰ってこないのだ。多分自分がこれまで、意地を張って無理やり帰宅させていなければ、結婚したその日から彼は家に寄り付かなかっただろう。それで美優は時に、あの日の琉生のプロポーズの真剣さや、自分への膨大な愛情のメッセージは全て偽りだったのではないかと疑ってしまうこともあった。結局自分は、彼にとって、両親を納得させるために選んだ結婚の道具に過ぎないのではないか?それでも、琉生が外出先でプレゼントを買って帰ってくるたびに、彼女はそんな不安も断ち切ろうと努めてきた。しかし、その「幻の幸せ」に翻弄され続ける日々は、彼女を精神的に追い詰めていった。そう思って美優が黙り込んでいると、同僚たちに意見を促された。そこで美優は淡々と言った。「才能はあるけれど……夫としては、選ぶべき相手じゃないかもしれませんね」すると、ある同僚が驚き、食ってかかってきた。「何言ってるんですか?ルックスも家柄も品格も最高でしょう?国際的なピアノコンクールでいくつも賞をとって、部屋中を飾り付けるほどのトロフィーがあるなんて凄すぎです。夫として完璧じゃないですか?それを良くないと思うなんて、ただ自分に縁がなかったからじゃないですか?」その瞬間、場の空気が一気に凍り付いた。美優の隣の同僚が慌ててフォローに入っ
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第10話
店に入ると、大きなフラミンゴの飾りが2つもあった。琉生は思わず眉をひそめたが、隣にいる凪のむしろ楽しげな様子を見て、彼も硬い表情のまま個室へと足を踏み入れた。「琉生さん、ここの料理はおいしいのよ。後でたくさん食べてね」凪は料理が運ばれてくると、箸を取り、琉生の小皿に料理を取り分けた。それから何枚か写真を撮り、店内のロゴとテーブルのフラミンゴを写し込んだものを、インスタに投稿した。そして、「いいね」と羨むコメントが増えていくのを眺めながら、凪は得意げにワインを注ぎ、琉生に目を向けた。「琉生さん、美優さんのことが好きなの?」すると、琉生は一瞬きょとんとして、黙り込んだ。それを見て凪は続けた。「美優さんみたいに平凡で、ピアノも分からない女性と一緒にいるなんて、退屈でしかたなかったでしょ?」それを聞いて、琉生は一瞬困惑した表情を浮かべたが、それでも言葉は返さなかった。「あの人は琉生さんに全く釣り合わないわ。あなたのような優秀な人には、私のように魂が通じ合うパートナーが必要なのよ。ピアノについて夢を語り合える存在ね。ただ家事をするだけの家政婦みたいな奥さんじゃなくて」そう言われ、琉生は顔を曇らせたが、それでも唇を固く結んだまま反論しなかった。一方、凪は彼の様子を窺いながら、脈があると感じたからか、さらに体を琉生に寄せた。「あの人はピアノのことは何一つ分からないわ。あなたの情熱も、追求する芸術も理解できてない。嫉妬ばかりして、あなたに恥をかかせる存在なんだから。琉生さん、あんな女と別れたほうがいいわよ」すると、琉生は突然立ち上がり、冷ややかな口調で制した。「やめてくれ!美優は君が軽々しく評価していい相手じゃない。これは僕たち二人の問題だ。君には関係ない!」そう言って、琉生は立ち去ろうとしたが、凪に引き止められ、その細く柔らかな手が掌に触れると、彼は体を強張らせた。「本当はあの人のこと、好きじゃないんでしょ?じゃなきゃ、この何年もパーティに連れて行かない理由がないわ。いつも『忙しいから』って嘘をついて、人前に出るときは私のほうを同行させてたじゃない?自分の妻だってこと、口にするのも嫌だったんでしょ?そんなの、愛してるなんて思えないわ!」そう言って凪は琉生に背後から抱きつくと、声を潜めて続けた。「美優さんとは別れて。こ
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