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14話

Auteur: 籘裏美馬
last update Date de publication: 2025-10-17 07:41:07

「断りもなく、女性の体に触れるなど…無礼極まりない」

「く、くそっ、誰だね君は!」

私の頭上、すぐ近くから聞こえてきた男性の低い声。

しっとりと濡れ、低く安心感のあるバリトンボイスに、私の強ばっていた体からふっと力が抜けた。

ちらりと頭上を見上げても、そこには男性の喉仏しか見えなく、私を助けてくれた人の身長がとても高い事に驚いた。

もしかしたら、御影さんよりも背が高いかもしれない──。

私がそんな事を考えていると、男性は相戸さんの腕を掴んだまま、ぐっと力を込めて相戸さんを私から引き剥がした。

「あなたの行動は、パーティーに参加している皆さんの目にしっかりと映っていますよ。…それに、ほら」

「──っ」

男性の言葉に、相戸さんの顔色が明らかに悪くなる。

だけど、相戸さんの様子などお構いなく、男性はちらりとフロアのある方向に視線だけを向けて低く呟いた。

「このパーティーの主催である、田村さんにもしっかりとあなたの行動は見られている。…しばらく大人しくされていた方がいいかもしれませんよ」

「──ひぃっ」

男性が相戸さんにそう言うなり、相戸
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  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   428話

    「怪我をしているのに、苓さんにやらせてしまってごめんなさい」 「気にしないでください。それに、怪我だってそこまで酷くはないですから。背中さえ気を付けていれば大丈夫です」 苓さんが優しく微笑み、そう言ってくれる。 きっと私がさっきの話で落ち込んでいるのは苓さんにお見通しなのだろう。 苓さんから気遣うような感情が感じられる。 怪我をして、大変な目に遭ったのは苓さんなのに、苓さんに気遣わしてしまったら駄目だ。 週明け、誰が情報を流しているのか。 本当にそんな人はいるのか。 それを私がしっかりと調べないと。 私は、そう心に決めた。 夜。 食事も終わり、後はお風呂に入って眠るだけ。 今は苓さんとソファに並んでテレビを見ていたけど、そろそろお風呂に入った方がいいだろう。 私はちらり、と時計を見た後、苓さんに顔を向けた。 「苓さん、お風呂に入っちゃいましょう」 「──そうですね、もうこんな時間か」 分かりました、とソファから立ち上がる苓さんに続いて、私も立ち上がる。 すると、苓さんが私が立ち上がった事に不思議そうな顔をした。 「どうしたんですか、茉莉花?」 「苓さん、怪我をしているからお風呂入るのが大変ですよね?私も一緒に入ります」 「──え?」 まさか私がそんな事を言うとは思わなかったのだろう。 苓さんは呆気に取られたようにぽかん、と口を開けたまま固まってしまっている。 私は気にせず、お風呂道具を用意し始めた。 「ま、待って、待ってください茉莉花……!」 「──え?」 私がテキパキと準備をしていると、それまで固まっていた苓さんが、慌てて私を引き止める。 びっくりして振り向くと、苓さんの顔は真っ赤に染まっていた。 「じ、自分1人で大丈夫です……!1人で洗えますから、茉莉花は気にしないでください……!」 「そんな事出来ません……!背中を切っているんですよ?1人で入ったら、どこが傷口か分からないし、濡れちゃうかもしれないじゃないですか。私も一緒に入って、手伝います!」 「だ、だけど……っ」 「ほら、行きましょう苓さん……!」 私は戸惑う苓さんの手を掴み、部屋にあるお風呂へ向かった。 普段は、部屋にあるお風呂じゃなくて、家の中にあるお風呂を使う。 そっちの方が広々としていて、のびのびとお風呂に入れるから。 だけど

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   427話

    「ただいま戻りました……」 「お邪魔します」 私と苓さんが帰宅すると、お母様がパタパタと足音を立てて出迎えてくれた。 「お帰りなさい、2人とも。馨熾さんは今日明日と出張だから帰らないわ。今日は大変だったわね、2人とも。ご飯は食べた?」 「いえ、まだです……。だけどごめんなさいお母様、食欲が無くて……今日は早めに休みますね」 「──あっ、茉莉花」 私はお母様に軽く頭を下げると、そのまま廊下を進み自分の部屋に向かった。 お母様と苓さんがまだ少し話しているのが後ろから聞こえた。 だけど、私はもしかしたら自分の会社に情報を流している人がいるかもしれない、と言う事を考えていたせいで後ろの2人を気遣う事が出来ず、そのまま部屋に戻った。 自分の部屋に入り、力なくソファに座る。 着替えもしてしまいたかったけど、その気力がなくって。 もし、本当に会社の人が涼子に情報を流していたら。 私が気付けず、呑気に過ごしていたせいで苓さんが2回も危険な目に遭ったのだとしたら。 「私は、自分自身が許せないわ……っ!」 私がのほほんとしていたせいで。 しなくていい怪我をしたかもしれないのだ。 「私のせいで……っ」 ぐっ、と背を丸め自分の顔を両手で覆う。 情けなくてしょうがない。 そうしていると、私の部屋の扉がコンコン、とノックされた。 「──茉莉花、入りますよ?」 「苓さん……?」 部屋にやって来たのは苓さんで。 私はソファから立ち上がり、扉を開けに行く。 すると、苓さんは食事が乗ったトレーを持って立っていて。 食事から温かな湯気が立ち上っている。 きっと、お母様が私と苓さんがいつ帰ってきてもいいように準備してくれていたのだろう。 「茉莉花のお母さんが用意してくれていました。今日はずっと俺についていてくれて、お腹が減ったでしょう?お母さんのご飯を食べましょう」 「苓さん……。ありがとうございます、食べます」 私が食べる、と返事をすると苓さんはほっとしたように微笑んだ。 苓さんからトレーを受け取り、一緒に部屋に入る。 「茉莉花、冷蔵庫を開けても?」 「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」 私の部屋には小型冷蔵庫がある。 苓さんは私の部屋で過ごす事が多くなったから、冷蔵庫には私が好きな飲み物と、苓さんが好きな飲み物が常に常備され

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   426話

    苓さんの言う通り、谷島さんからのメールには涼子が女性スタッフに接触していた事。 そして、女性スタッフを唆し、苓さんを狙う事を指示されたと書かれていた。 「……プレオープン前のあのお店の情報を、涼子が知っている……?」 「ええ、そうなんです。……以前茉莉花から聞いた時も、違和感を覚えていて。……俺が以前、怪我をして搬送された時。その時も、茉莉花に速水 涼子から連絡が入ったんですよね?」 「そ、そうです……!それも、苓さんが搬送されてまだそんなに時間が経っていないのに……」 あの時の事はしっかりと覚えている。 苓さんの頭から、血が流れる光景。 私を庇ったせいで、苓さんが大怪我を負った、と自分自身を責めたから。 そして、そんな私に追い打ちをかけるように涼子からメッセージが届いたのだ。 あの時、きっと涼子は私の近くに居た。 私が絶望に打ちひしがれているのを見て、とどめを刺すようにメッセージを送ったのだろう。 それは、容易に想像が出来た。 「……俺や、茉莉花──いや、茉莉花の行動が筒抜けになり過ぎていませんか……?」 苓さんの言葉に、私ははっとする。 確かに、言われてみればそうだ。 どうして涼子は私の行動を把握しているの? 今回の、和風庭園カフェのプレオープンだって、どうしてその日付まで知っているの……? 「和風庭園カフェの事は……記念パーティーが開催されているし、ネットニュースにもなっているから、知っていてもおかしくは無い。……だけど、どうして茉莉花と俺が視察する日を知っているのか……そこがおかしいんです」 苓さんの言葉に、私も頷く。 「苓さんの言う通りです」 考えたくないけど──。 もしかしたら──。 私が考えていた事を、苓さんがはっきりと言葉にした。 「小鳥遊建設か、藤堂グループか……。どちらかに内通者──情報を、速水 涼子に流している人間がいる。俺は、そう思います」 「──っ」 疑いたくなかった。 だけど、私のスケジュールを把握していると言う事は。 そう言う事、だ。 私はぎゅっと目を閉じ、悔しさに唇を噛み締めた。 「……来週、出社したら……社内を1度確認、します……」 「ええ、そうしてください。俺も、小鳥遊建設で1度社内システムを確認します」 まさか、社内に内通者がいるなんて。 そうじゃないと願いたい

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   425話

    「苓さん、お待たせしました。家に帰りましょう」 「──え?」 私が戻るなり伝えた言葉に、苓さんはきょとんと目を丸くした。 苓さんもこの後、警察署に行くものとばかり思っていたのだろう。 だから私は今さっき電話で話した事を苓さんに説明する事にした。 「何だか、今日は来なくても大丈夫ですって。詳しい事は後日聞きますって言ってました。苓さんは藤堂で寝泊まりしますって伝えたら、警察の方が後日家に来るそうです」 「──茉莉花の家で過ごしていいんですか?本当に?」 私の言葉に、苓さんの表情がぱっと明るく変わる。 「ええ、もちろん。……もし苓さんが良ければ、これからもずっと暮らしませんか?」 苓さんから聞いた、小鳥遊のご両親の話──。 きっと、幼少期からずっと辛い思いをしていたのだろう。 長男も、次男も成功して──スペア扱いだった苓さんへ、苓さんの両親は愛情をたっぷり注いでくれたのだろうか。 いえ、きっとそれは無い。 苓さんの話や、態度から両親に愛されていたような雰囲気は感じなかった。 むしろ、その逆で。 ずっと寂しい思いをしていたのかもしれない。 それなら──。 藤堂の家は。 私のお父様やお母様は、少し過干渉だとは思うけど。 両親は娘の私の欲目を抜かしても、しっかり個人を見てくれる人だし、愛情深い人達だと思う。 それに、苓さんの事が大好きな私もいるから。 苓さんとは、何れ近い内に一緒になるのだ。 それなら、少し同居が早くなってもいいんじゃないだろうか。 一緒にいれば、怪我をした苓さんの生活のお手伝いだって出来る。 私の考えを苓さんに伝えると、苓さんは嬉しそうに頷いてくれた。 「ありがとうございます。藤堂の家に、お世話になります」 「分かりました。では、お父様に伝えておきますね」 私はお父様に一報を入れ、苓さんと一緒に病院を後にした。 車に乗り込み、走り出してから少し。 スマホを確認していた苓さんが私に声をかけてくれた。 「──茉莉花、谷島から連絡が……!」 「えっ、谷島さんから?……捜査に進展があったんですか?」 私の言葉に、苓さんは持っていたスマホを私に見えるように見せてくれた。 「今回の事件、どうやら速水 涼子が関わっていたみたいです」 「──えっ!?」 「あの女性スタッフ、速水 涼子からの依頼を受けて

  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   424話

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  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   423話

    ◇ 「縫合の必要はなさそうですね。傷口の洗浄も終わりました。化膿する恐れもなさそうなので、帰宅いただいて大丈夫ですよ」 あれから。 病院に搬送された苓さんを、お医者さんが診てくれた。 幸いな事に、手術するような大きな切り傷じゃなくて。 傷口を診て、処置をしてくれたお医者さんがそう言ってくれて私と苓さんはほっと安堵の息を吐き出した。 「良かった、帰宅出来るんですね……!」 「ええ、ですが今夜熱が出る可能性があります。解熱剤と抗生物質を処方しておきますので、熱が出たら必ず飲んでくださいね」 「分かりました」 「あの、先生……!お風呂とかは、入らない方がいいですか?」 私は、先生に質問をする。 すると先生は私に体の向きを変えて、答えてくれた。 「お風呂も入って大丈夫ですよ。ですが、傷口を濡らさないよう、奥様が入浴のお手伝いをしてあげてください」 「──分かりました」 「日常生活を送る分には支障はありません。ただ、工事現場で動く、とか走る、などの体を激しく動かすような行動は暫く避けてくださいね」 「はい、分かりました」 「では、処方箋を出しておきます」 「ありがとうございました」 先生の話を聞き終えた私達は、病室を出るために椅子から立ち上がる。 すると、苓さんが僅かに体を強ばらせ、顔を顰めた。 縫合するほどの傷ではないとは言え、切っているのだ。痛くないはずが無い。 「苓さん、手を……。私に掴まってください」 「俺が体重をかけたら、茉莉花が潰れてしまいます」 「それくらい大丈夫です!しっかり支えますから」 そんな事を話しながら私と苓さんは診察室を出た。 苓さんを待合室の椅子まで支え、座ってもらうと私は思い出す。 そうだった、警察に連絡をしないと……! 「苓さん、私ちょっとだけ離れて電話をしてきますね。警察の方に連絡をしないと……!」 「だけど、1人じゃあ──」 「大丈夫です、──ああ、ほら!護衛の方も少し離れた場所で控えてくれていますから!」 私が視線を向けた先に、苓さんが手配してくれていた護衛の姿を見つける。 救急車で搬送された時、護衛もしっかり後を追ってくれていたのだろう。 護衛の姿を確認した苓さんは安心したのだろう。 渋々ではあるけど、頷いてくれた。 「──分かりました。だけど、俺の目の届く所にいて

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    「苓さんっ!」 私を揶揄うようにくすくすと笑う声がスマホ越しに聞こえる。 低くて、甘い苓さんの落ち着いた声に、私は素直に頷いた。 「そうなんです。早く苓さんの声が聞きたくって」 苓さんが息を飲んだのが分かる。 私が、苓さんに想いを伝える事を躊躇わなくなってから。 私が苓さんに素直に気持ちを伝えると、こうして苓さんが照れて黙ってしまう事が増えた。 その様子が、何だかとても可愛らしく思えてしまって。 大人の男性に可愛い、なんて言っ

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  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   166話

    私は、急いで自分の鞄からスマホを取り出し、苓さんの名前を呼び出す。 電話をかけようとして、そこでタップしようとしていた指が止まった。 まだ、私が家に戻ってからそんなに時間が経って無い。 苓さんは運転中かもしれない──。 電話がかかってきたから、と運転中の苓さんの邪魔をして、もし苓さんに何かあったら嫌。 「……今度、直接お会いした時に苓さんに話してみよう」 それに、お父様にお母様の病室や名前の変更についても聞かなくちゃ。 お母様のお見舞いにも不便だし、部屋番号と、変更した名前を聞かないと。 「ひとまず……速水家の記載がないかだけ、確認しよう……」 私はテーブルの上に自分のス

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  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   172話

    その刺激に、私の体がびくん、と跳ねる。 え、と思った瞬間、恐らくキスマークを付けた場所を、苓さんの舌がゆっくりとなぞった。 「──ひゃっ」 「あー……茉莉花さんの甘い声……頭の中が蕩けそうです……」 「やっ、駄目ですっ、苓さん……っ!」 何度も何度も、私の剥き出しの背中に苓さんの舌が這う感触がして、ぞくぞくするのが止まらない。 びくびくと小刻みに震えていると、苓さんがすっと腰を伸ばし、くるりと私を振り向かせた。 きっと、私の顔は真っ赤になっているだろう。 視界も滲んでいて、苓さんの顔がぼやけている。 「苓さ──」 「すみません、茉莉花さん。我慢できないです」 「──ぇ

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    ◇ 「──痛っ」 「茉莉花さん、大丈夫ですか!?」 料亭の、一室。 私たちは予約していた部屋に案内されていた。 そこで席に着くなり、私の足元に跪いた苓さんが靴を脱がせてくれたのだけど、その時に伝わった振動が捻った足首に響き、私は小さく声を上げてしまった。 私が痛みを訴えた瞬間、苓さんが慌てたように声を上げ、申し訳ないと何度も謝罪をする。 「大丈夫です、苓さん。我慢できずごめんなさい」 「我慢なんて出来るはずないですよ……こんなに赤く腫れてる……。藤堂社長、やっぱり茉莉花さんを夜間病院に連れて行きませんか?」 苓さんは傍らに立つお父様にぱっと顔を向けて提案する。 お父様も

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