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8話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2025-10-14 09:32:10

「田村さんへの贈り物は、何を?」

車に乗って、しばし。

車内で会話が弾む事もなく、お互い無言でいると御影さんから話しかけられた。

「虎おじさまは、オールドヴィンテージワインがお好きなので、良さそうな物を選び、贈ろうかと思っています」

「そうか……。ワインなら、良い店を知っている。そこに向かっていいか?」

「も、勿論です…!」

よろしくお願いします、と私が言うと御影さんは小さく頷いてくれて運転手に行き先を伝えてくれる。

百貨店に行こうと思っていたけれど、御影さんが一緒に買いに行って下さって良かった。

虎おじさまに素敵なプレゼントが贈れる。

私が頬を綻ばせている姿を、御影さんが横目でじっと見つめていた事など知らなかった。

御影さんと一緒に、都内のビンテージワイン専門店でワインを購入し、そのまま近くのレストランで昼食を摂る。

話す事は専ら今日のパーティーについてで、所謂世間話というものは一切しなかった。

時々、私が御影さんにパーティー以外の私生活の事を話そうとしても、その気配を察知した御影さんがそれとなく躱し、話題は自然にパーティーについてに戻ってしまう。

それでも、そんな中でも御影さんは食事を急かす事なく、私のペースに合わせ、ゆっくり食事をとってくれた。

優しい所は、昔から変わっていない。

変わってしまったのは、御影さんの私に対する態度だけ。

その理由を尋ねたかったけれど、難しそうで私は諦めてこのあとの予定をそつなくこなす事に集中した。

昼食が終わり、私は美容院へ。

そして、その後ドレスを購入しにお店に向かった。

美容院へも、御影さんは付き合ってくれて店内で雑誌を読みながら待っていてくれた。

退屈させてしまうから、と私は断ったけれど御影さんは店内まで一緒に来てくれて、その気遣いに泣きそうになってしまう。

美容院の店員達が御影さんを見て、色めき立ち、ざわざわと噂をしているのが良く分かる。

店員さんにも「素敵な彼ですね」と言われて、私は曖昧に笑って応えるしかできなかった。

美容院が終わり、ドレスを購入しにお店へ。

御影さんもそこでパーティー用のスーツを購入するらしく、2人でデザインを話し合いながら何着か試着をした。

御影さんも、真剣にスーツと私が着るドレスを選んでくれて、勘違いしそうになってしまう。

御影さんが真剣なのは、私と参加するパーティーが大事な「仕事」だから。

そう自分に言い聞かせておかないと、御影さんが真剣な事に私を想ってくれているから、と勘違いしそうになってしまう。

「君は、肌が白いから明るい色が似合う。ドレスは今着ている物にしよう。俺も、合うスーツに着替えて来る」

「分かりました」

御影さんは私にそう告げると、そのままスーツを手に個室に消えて行った。

程なくして戻ってきた御影さんが、そのままお店を出ようとするのを見て、私は慌てて彼を追いかける。

「み、御影さん……!お会計が終わっていません……!」

「会計は君がドレスを着ている間に済ませてある。もうすぐ開始時間だ。行こう」

「──!す、すみませんありがとうございます」

まさか、会計が済んでいるとは思わず、私は御影さんに向かってお礼を伝える。

すると、店を出た所の階段を降りた御影さんは、私に向かって手を差し出してくれた。

「気にしないでくれ。……段差がある。歩き辛いだろうから、手を」

「ありがとう、ございます……」

差し出された手に、そっと自分の手を重ねる。

御影さんの手は、温かくて、私は何だか無性に泣きたくなってしまった。

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