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第8話

Auteur: 水無月冴
会うたびに、まず俺の名を呼び、それから改まって自分の名前を名乗る。

知っている。彼女の名前は、初めて会った時からなぜか脳裏に刻まれていた。

彼女は俺の手を引いて、あちこち連れ回し、景色を見せて回った。俺が絵を描くのが好きだと知ると、その風景を全部描くようねだった。

彼女は言った。もしこの世界が嫌になったら、自分が描いた風景を見て。それか、私のことを思い出して、と。

彼女はこう続けた。

「私があなたの、この世界を愛する理由になりたい」と。

でも俺は、この世界を愛してはいなかった。むしろ深く嫌悪していた。

けれど、雪乃のことは嫌いじゃなかった。

人を好きになるとはどういう感覚なのか、分からなかった。ただあの日、彼女に連れられて山に登り、雪景色の中で舞う彼女の黒髪を目にした時、思考よりも先に言葉が口をついて出た。

「結婚しよう、雪乃」

この世界は好きじゃない。でも、彼女を通して見えるこの世界なら、悪くないと思った。

結婚後、息子が生まれた。遊星が生まれた日、彼女は長い間泣いていた。

子供に執着は持てなかった。むしろ、彼女の注意が突然小さな侵入者に向けられたことが、なん
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    会うたびに、まず俺の名を呼び、それから改まって自分の名前を名乗る。知っている。彼女の名前は、初めて会った時からなぜか脳裏に刻まれていた。彼女は俺の手を引いて、あちこち連れ回し、景色を見せて回った。俺が絵を描くのが好きだと知ると、その風景を全部描くようねだった。彼女は言った。もしこの世界が嫌になったら、自分が描いた風景を見て。それか、私のことを思い出して、と。彼女はこう続けた。「私があなたの、この世界を愛する理由になりたい」と。でも俺は、この世界を愛してはいなかった。むしろ深く嫌悪していた。けれど、雪乃のことは嫌いじゃなかった。人を好きになるとはどういう感覚なのか、分からなかった。ただあの日、彼女に連れられて山に登り、雪景色の中で舞う彼女の黒髪を目にした時、思考よりも先に言葉が口をついて出た。「結婚しよう、雪乃」この世界は好きじゃない。でも、彼女を通して見えるこの世界なら、悪くないと思った。結婚後、息子が生まれた。遊星が生まれた日、彼女は長い間泣いていた。子供に執着は持てなかった。むしろ、彼女の注意が突然小さな侵入者に向けられたことが、なんとなく気に入らなかった。俺は再び絵に全ての注意を注ぎ、心を閉ざし、雪乃への態度は、次第に冷淡さを極めていった。けれど彼女は決して怒らず、ますます献身的に俺を受け入れてくれた。愛という感情を初めて意識したのは、彼女からだった。その後、美亜と出会った。確かに彼女は、俺に多くのインスピレーションを与えてくれた。だから、一緒にいることを嫌だとは思わなかった。彼女が俺に近づくことも、遊星に近づくことも、止めなかった。彼女の目的などどうでもよかった。俺のそばに雪乃がいれば、それで十分だったから。けれど次第に、雪乃が沈黙していくことに気づいた。かつての俺のように。遊星と美亜を連れて再び出かけた後、その感覚はますます強くなった。でも彼女は俺を愛している。そう確信していた。雪乃は俺から離れるはずがないと、高を括っていた。美亜を先に助けた時も、そう思っていた。だから後に雪乃の遺体を見ても、信じられなかった。あの瞬間、ようやく理解したのだ。雪乃が抱えていた全ての悲しみ、孤独、苦しみを。そして、愛の意味を。悟ってしまった。雪乃を殺したのは、他ならぬこの俺だっ

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