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第2話

Penulis: キュートキャット
地下駐車場を出てすぐ、私は買い手を見つけた。

相手は若い男で、どこか憐れむような目で私を見つめていた。

こんなに大切に手入れされているブレスレットをなぜ安値で売るのか、どうしてここまでやつれているのか――そんな疑問がその視線に滲んでいる。

「ブレスレット、すごくいい状態ですね。本当に売るんですか?」

「ええ......」

口を開いた瞬間、自分の声がひどくかすれているのに気づいた。

彼は確かめると、嬉しそうにすぐ代金を振り込んできた。

取引を終えると、同年代くらいの女性がバイクで迎えに来る。

彼は駆け寄り、少し離れていてもはっきり聞こえるほど弾んだ声で言った。

「ねえ、これ見てよ」

――いいな。

きっとあの子たちは、私たちみたいにはならない。

ようやくお金が手に入った。

これで明燈を火葬できる。

明燈の遺骨を抱えて家に帰り着いた頃には、すっかり夜になっていた。

楓人は帰っていない。

その代わり、珍しく連絡をよこしていた。

彩羽は足が痛くて動けないから、病院で付き添うしかない、と。

彼がこうして報告してきたのは、何ヶ月ぶりだろう。

私は初めて、嫉妬もせず、埋め合わせを求めもせず、そのメッセージに返事をしなかった。

もう感情なんて残っていないのに、わざわざ彼に取り繕わせる必要もない。

私は仕事用のソフトを開き、辞職願を送信した。

承認はいつまでも下りない。

彩羽の世話で忙しいのだろう。

スマホを置いて、そのまま放っておく。

残された2日間はあまりに短い。

先に荷物をまとめて、明日会社に行って後始末をするつもりだ。

彼がくれた服――最初は数百円の露店の服から、やがて数千、数万もするブランドのシャツまで――すべて捨てた。

服の値段は時間とともにどんどん上がっていった。

私たちの暮らしも豊かになった。

でも、気持ちは......安物を着ていた頃のほうが、ずっとまっすぐだった。

箱の底には、彼に宛てて書いた百通のラブレター。

曖昧な関係の頃から、同棲に至るまで――

一文字一文字、まっすぐな想いが詰まっている。

それでも今、炎に照らされた紙は震えながら燃えていくばかりで、もう私を温めてはくれない。

クローゼットは少しずつ空になり、7年の年月の痕跡も、ゆっくりと消えていった。

愛していた頃のかけがえのない思い出も、別れるときにはただの余計なゴミに過ぎない。

私にとってそれがそうなら、楓人にとっての私はきっと同じなのだろう。

恋人だった頃のものをすべて片付けてみると、残った荷物は驚くほど少なかった。

スーツケース一つで十分収まる。

7年の時間が、20インチのスーツケースに収まってしまう。

来たときも、去るときも、同じ。

愛したはずなのに、何も残らない。

たぶん私が返事をしなかったからだろう、楓人からまたメッセージが届いた。

【ちゃんと家で待ってろよ。明日、サプライズがある。絶対気に入るから】

私はスマホの電源を切り、そのままベッドに倒れ込んだ。

夢の中で、明燈の血の気のない顔と、彩羽を見る楓人の甘い表情が何度も交錯し、神経を引き裂く。

翌朝、まだ眠りの中にいると、楓人の秘書がドアを叩いた。

部屋の中に積まれたスーツケースを見て、彼は一瞬言葉を失う。

「......衛藤さん、ご旅行ですか?」

少し頭が痛い。

「......ええ」

それ以上は聞いてこなかった。

「さようでございますか......済木社長がお呼びです」

行きたくはなかったが、後ろにいたボディーガードに半ば強引に連れて行かれる。

着いた先は、ウェディングドレス専門店だった。

楓人は洗練されたスーツを着て、ライトの下に立っている。

目には、優しく甘い笑みが満ちていた。

こんな光景を、私は何度も夢に見てきた。

ただ一つ、違っていたのは――

それを現実で見るのが、彼が別の女のために私を傷つけたあとだったということ。

彼は私を試着室へ引き入れ、真っ白なウェディングドレスを取り出すと、自ら着せてくれた。

さらにしゃがみ込み、長く引きずる裾を丁寧に整える。

その頭頂のつむじを見つめながら、私はぼんやりと思う。

――私たち、いつからこんなふうに触れ合わなくなったんだろう。

計画のためと称し、彼は私と距離を置いた。

「自分まで騙さないと、他人は騙せない」と言って。

裾を整え終えると、彼は私の腕を取って立たせ、満足そうにドレス姿を眺める。

ふと、動きが止まった。

「ブレスレットは?」

私が答える前に、軽く笑う。

「また箱にしまったのか?相変わらず大事にするな。

言っただろ?今度はサファイア付きのを買ってやるって。結婚式のときに新しいのに替えよう。きれいな姿で式を挙げような」

――覚えていたんだ、その言葉。

でもそのサファイアのブレスレットは、もう彩羽の手首にある。

高価なものが欲しいわけじゃない。

ただ、自分にした約束を別の女に渡されたら、嬉しいはずがない。

ブレスレットだけじゃない。

彼の心も、きっともう――

複雑な気持ちのまま黙っていると、楓人は何も気づかず、相変わらず嬉しそうに言う。

「やっぱり俺の嫁には、こういうドレスが似合うな。華やかで上品だ。

結婚式のプランももう頼んである。君が好きな海辺の式だし、明燈が好きなバラのアーチも用意させたよ。あの子にフラワーガールをやってもらおう?」

明燈の名前を聞いた瞬間、胸が締めつけられ、思わず手が震えた。

それを「効果があった」とでも思ったのか、彼はさらに楽しげに続ける。

「そうだ、明燈いま入院してるんだろ?ドレス選び、手伝ってやってくれよ」

彼が合図すると、スタッフがずらりと並べた子ども用のドレスが運ばれてきた。

パフスリーブ、レース、真珠やビジューで飾られたもの――

どれも、この年頃の女の子が好きそうなデザインだ。

ライトに照らされ、どれも壊れやすい夢みたいにきらめいている。

すべて明燈のサイズ。

でも明燈は、もう二度とこんな可愛いドレスを着ることはない。

楓人は、パールの飾りがついたピンクと白のワンピースを手に取った。

「これはどうかな。明燈が着たら、きっとお姫様みたいだ」

そう言いながら、私の手を引いて裾の生地に触れさせる。

「小さい子の好みはよく分からないけど、この素材はいいな。柔らかくて通気性もいいし、子ども向きだ」

何度も明燈の名前を呼びながら、永遠に訪れない未来を語り続ける。

吐き気がこみ上げ、思わず立ち上がって彼の手を振り払った。

楓人は一瞬呆け、それから不機嫌そうに眉をひそめる。

「まだ昨日のことで怒ってるのか?」

私は拳を握りしめた。

明燈が死ぬ前、泣きながら私に聞いた言葉がよみがえる。

「お姉ちゃん、どうしてお義兄ちゃんはまだ来てくれないの?」

あの頃、楓人は明燈を宝物のように可愛がり、病状を気にかけ、夜通し寝かしつけの話をしても疲れを見せなかった。

彼と結婚することは、かつての私の夢だった。

でも......もう二度と叶わない。

「楓人、結婚式は――」

その言葉を聞いた途端、彼は表情を和らげ、甘く笑いながら私の唇に指を当てる。

「もうすぐだ。明日は彩羽の誕生日だ。みんなの前で、あいつを解雇して会社から追い出す。名義の不動産や車も、全部訴えて取り戻すから。贅沢に慣れきってるからな、あいつ、五つ星じゃないと食事もしない。

それら全部失って、誰からも踏みつけられるようになったときはどんな顔になるのか見ものだな」

その瞬間、試着室のカーテンが勢いよく引き開けられた。

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