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第6話

Penulis: キュートキャット
その瞬間、彼は突然オルゴールを地面に叩きつけた。

「じゃあさ――自分で拾い集めてみろよ?」

一瞬で、世界がスローモーションになった気がした。

必死に飛びついて救おうとしたのに、間に合わない。

オルゴールは床にぶつかり、無数のガラスの破片へと砕け散るのを、ただ見ていることしかできなかった。

床一面に散らばる破片。

中の歯車だけが壊れずに残り、空しく音楽を奏で続けている。

頭が真っ白になり、ゆっくりと顔を上げる。

血のにじむような目で、腹を抱えて笑っている男を睨みつけた。

彼はまだ笑っている。歯茎が見えるほどに。

頭に血が上り、私は拳を振り上げて殴りつけた。

......

会社を出ると、すぐに彩羽の新しい投稿が目に入る。

夕焼けの中で、固く絡められた2人の手。

さっき彼女が投げ捨てたはずのサファイアのブレスレットが、再びその手首に戻っていた。

【あなたの心が私と同じなら、この想いはきっと裏切られない】

腫れ上がった頬にそっと触れ、自嘲気味に笑う。

楓人は今、望み通りになったのだろう。

家に帰る頃にはもう遅く、私は一日何も食べていなかった。

自分でカップ麺を作り、食べ始める。

半分ほど食べたところで、楓人が帰ってきた。

体からはかすかに酒の匂いがする。

彼は酒に弱い。

私はいつも心配して、飲みの席にも出さないようにしていた。

一度、代わりに酒を飲まされ、何本も一気にあおらされて、そのまま病院に運ばれたこともある。

彼の体を、自分より大切に思っていたのに、彼は彩羽のためなら、平気で自分を痛めつける。

昔ならきっと、どこで飲んできたのかと気遣い、胃にやさしい飲み物を用意していただろう。

でも今は、顔も上げず、黙って麺をすすり続ける。

彼は靴を脱ぎ捨て、鼻をひくつかせて眉をひそめた。

「どうして俺が帰ってくるのを待ってくれないんだ。言っただろ、こんなジャンクなもの家で食うなって」

楓人はインスタント麺の匂いを嫌う。安っぽくて不快だと。

今になって思う――嫌だったのは、あの頃の苦しい日々そのものだったのだ。

彼が近づいてくる。

「今日のこと、ちゃんと説明させてくれ」

酒でふらつく足取りを見て、理由もなく嫌悪感がこみ上げる。

彼は私のスーツケースの上に置いていたバッグにぶつかり、中に入れていた渡航書類が床に散らばった。

パスポートを拾い上げ、彼は一瞬表情を変え、すぐに笑う。

「まさか、拗ねて海外にでも行くつもりか?」

何でもないように、それをバッグへ戻す。

「ずいぶん嫉妬深いな。彩羽の家出まで真似するなんて」

勝手に納得したように、さらに続ける。

「秘書が明燈のドレス包むか聞いたとき、『いらない』って言っただろ?あれ、俺に怒ってるって伝えたかったんだろ。

怒ってるなら直接言えよ。なんでそんなことを言うんだ。ドレスを見せてやれば、あの子も喜ぶだろうに」

もし彼がほんの少しでもスーツケースを押してみれば、中身が詰まっていると気づくはずだった。

けれど、その手間すら惜しんだ。

彼の心は、もう完全に彩羽のところにある。

失望しきって、もう気持ちもほとんど残っていない。

「彩羽のところに行けばいいよ。明燈のことはいいから」

楓人は一瞬固まり、それを午後の「オルゴール」の件だと勘違いした。

「午後のことはごめん、俺がやりすぎた。でもあれは彩羽を引き戻すためだ。

それに、あんなものより一年かけて準備した計画のほうが大事に決まってる。

明燈の方は、君がうまくごまかしてくれ。代わりのものを買ってやるから」

――ごまかす?

もうごまかす必要なんてない。

明燈は死んだ。

私は、その命も守れず、形見一つ守れなかった。

彩羽と仲直りできて機嫌がいいのか、彼は私の肩に手を置き、穏やかに言う。

「今日はちょっと演技に入りすぎて、きつく当たった。悪かった。

でも一年かけた計画を、こんなところで終わらせるわけにはいかない。

彩羽はもう戻ってきた。ただし、しばらくは警戒するだろう。二人は、もう少しだけ待ってくれ。せいぜい一ヶ月だ、いいタイミングで叩き落としてやる。

急いでるのは分かるけど、俺なら――」

2日が、一ヶ月に変わる。

結局、手放したくないだけだ。

どうして、そんな言い訳を並べるのか。

「もういいよ」

私は彼の言葉を遮り、最後の一口をすすり終え、ティッシュで口を拭いた。

「別れましょう」

その一言で、胸の重さがすっと消えた。

楓人の手が、私の肩の上で止まる。

私はその手を払いのけ、立ち上がってゴミをまとめる。

酔いも手伝い、彼の機嫌は一気に冷えた。

「ちょっと彩羽をなだめに行っただけで、別れるって?

それとも、三ヶ月分の前借りを断ったことか?妹だって別に大したことなかったんだろ、あの程度の金で死ぬわけじゃないのに、何を怒ってる?」

妹のことを口にされた瞬間、胸が締めつけられ、目が赤くなる。

けれど涙は、あの日すべて流し尽くしていた。

「そうよ、その三ヶ月分の給料のせい。

あの女には何億円もする家を平気で買えるのに、私に60万円出すの、そんなに難しかった?」

『金』という言葉に、彼の目が嘲りに歪む。

ゴミ箱を蹴り飛ばした。

「いつもそれだ!だから計画をやめたいのか。

やっぱりか。結局は虚栄心だな。彩羽の言う通り、お前もただの金目当ての女だ」

彼が孤児で、貧しい環境で育ったことは知っている。

金に執着があるのも理解していた。

だから私は、付き合ってからほとんどお金の話をしなかった。

その配慮が、いつか感謝や愛情に変わると信じていた。

うまくいっていた頃の彼は確かに寛大で、三ヶ月分の給料を使って、あのブレスレットを買ってくれた。

なのに今は――

妹の命を救うための金すら、出してもらえなかった。

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