LOGIN007
「バイトを増やして収入を足してくれないか……計画を少しでも早く進めるために」
彼女はしばらく考えてから……変質者を見るような目でこちらを向いた。
「そういう仕事をさせようとしてるんですか?」
「違う、このバカ!バイトだよ、バイト!普通のバイト!……」
「あ……そうですか」
もう……俺を人身売買業者だと思ってるのか……
「俺がそういう人間に見えるか……」
「見えますよ……制服を着て歩き回る大人なんて、アキトさんくらいしかいないですから……」
「……それは確かに……」
まあな……誰が制服を着るんだって話だが……まあいい。
「必要なら何でもやりますよ……ところでどんなバイトですか?」
「俺もそこまで考えてなかった……何か心当たりはあるか?」
「いきなり聞かれてもわかりません……」
「そうだな……」
時間を見ると、もう八時近かった。
「じゃあ……考えてきてくれ……俺の方でお客さんが来ない日があったら、そこを君の分で補えるようにしておくから」
「はい……」
二人で会計を済ませて店を出た。俺と菅原の家は同じ方向なので、一緒に歩いて帰ることにした。
あるアパートの前で彼女を見送った……見たところ、なかなか立派なアパートのようだった。
「ただいま……」
「あ、お兄ちゃん……今日は早いね……」
めったに話しかけてこない妹が声をかけてきたので、俺もどう反応すればいいかわからなかった。
「仕事が片づいたからさ……ちょっと早く帰ってきた」
「そう……夜ご飯、作っておいたよ……忘れずに食べてね」
それだけ言うと、彼女はまたMonitoringの番組に戻っていった……全然疑われなくてよかった。
おまけに俺がクビになったことも知らない……
いや……仕事はあるにはある……ただ以前より収入がはるかに少ない……生活費にもならないくらいだ……
最後の給料と全貯金を合わせれば、半年はどうにかなる……でも深冬の学費が……
入学枠があるとはいえ、妹にも当然お金はかかる。
「あ……兄さん、二日ほど休みを取ろうと思って……母校に顔を出してみようかと」
「うん……」
静かな返事だけが返ってきた……普通の人なら、休みを取るのは印象が良くないと言うだろうが、深冬はそういったことを一切気にしなかった。
台所に入ると、大鍋に包まれたスパイシーカレー(唐辛子多め)があった。俺の好物第二位だ。メモが貼ってあって、『作りすぎちゃった……全部食べてね、お兄ちゃんの好物だから……食べきれなかったら冷蔵庫に入れておいて、明日温め直してあげる……』と書いてあった。
「熱々で食べるのが一番だな……」
できたての熱い料理を食べるのがいつ以来かわからない……三年ぶりくらいじゃないか。普段はレンジで温めたものばかり食べていた。
「うわっ!!辛っ!!……でも止まらない……」
リビングから笑い声が聞こえた……テレビの番組のせいで笑っているのか、俺のせいなのかわからない……でも少しだけ、嬉しい気持ちになった。
少なくとも今この瞬間は、俺たちの距離が少し縮まったような気がした……
翌日……大鍋のカレーを完食した俺は、今度は妹のために朝食を作ることにした。
「……!」
「よ……おはよう……今日は休みだから、俺が作るよ……」
彼女はうなずいて、着替えに行った。
「それにしても……SNSって便利だな……料理の短い動画もあるし……」
俺はいつも友人とはメールか電話かLINEでやり取りしている……動画を見るならYouTubeだけだ……菅原に会ってから、SNSにこんなにたくさんのアプリがあることを初めて知って驚いた……
ここ数日、料理とブラックユーモア系のショート動画をずっと見ていた……俺ってもうおじさんみたいだな……今の若い子たちについていけなくなってきている。
まあ、俺たちの頃はまだストラップをじゃらじゃらぶら下げた折りたたみ携帯が流行っていたし……あの名作アニメから派生したサイトみたいな掲示板もあったしな……
昨夜はFacebookで見た「夫のためにお弁当を作ります」という動画を見て、やってみたくなった。
「なかなかいい見た目じゃないか……」
卵焼き、ウインナー、鶏の唐揚げ……猫の形のおにぎり、それからお茶……
朝食の方は、焼き魚ご飯、納豆の卵黄のせ、豆腐とわかめの味噌汁。
「ほう……初めて作ったにしては……美味しそうだな……」
冷蔵庫の残り物がほとんどだが……それでも十分美味しそうに見えた。
深冬は何も言わずに食卓に来て、手を合わせて食べ始めた。
「……いただきます……」
それを言ったのは俺だけだった。
「あ……お弁当も作ったから……忘れずに持っていってね……」
彼女はちらりとお弁当に目をやってから、うなずいた。
「…………」
次に何を言えばいいかわからなかった……言葉が出てこなくて、舌の感覚まで消えてしまったような気がした。
料理がどんな味なのかもわからなかった……しばらく舌が感覚を失ってしまっていたから。
彼女はさっさと食べ終わり、自分で食器を片づけてお弁当を持って出て行った……
出ていく前に、一言くらい言ってくれないかと密かに期待していた。
「ちょっと塩辛かったよ……」
「え……?」
そのまま家を出て行った。
「まあ……何か言ってくれただけいいか」
食器を洗って家を出た……妹はもうとっくに姿を消していた。
歩いていると、菅原と鉢合わせした。
「よ……」
「あら……おはようございます」
いつもと変わらない気さくな挨拶だった。
深冬とは正反対だ。
「バイトのこと、考えてきたか?」
「うん……友達に聞いたら、秋葉原のメイドカフェで働いてる先輩がいるって教えてくれて……」
メイドカフェ!この子がメイド服を着てるところ、ちょっと見てみたい……ご主人様とか呼ばせて……なんて。
「遠いな……接客の経験はあるか?」
「ないですよ……でも、お客さんを楽しませる仕事をすれば、ファンとのやり取りも上手くなる練習になるかなと思って」
「なるほど……」
一石二鳥だな。
「モデルのことはいったん後回しにして……今はとにかくお金の方に集中しよう……」
「そうですね……ところで何かアドバイスはありますか?一応、人に相談に乗る仕事をしてる人なんですから」
俺はGoogleじゃないんだぞ、このバカ。
「変な人には気をつけることだよ……特に従業員とお客さんの距離感をわきまえて……馴れ馴れしくしすぎると、必ず絡んでくる人が出てくる。君みたいに可愛いならなおさら」
「気をつけます……ところで今日はどこに行くんですか?」
「機材を見にショッピングモールへ……それから午後は君の学校にも寄ろうかと……」
「え……アキトさんって、うちの学校の卒業生なんですか?」
この制服が母校の制服だと気づいていなかったらしい。
「そうだよ……八年ぶりだな……どのくらい変わってるか気になって……」
それに……昔の記憶を少し呼び戻せるかもしれない。
014「えっと……コスプレ、すごくいいですね……」 突然、お客さんの前に割り込んできた男がいた。見た目は普通の高校生くらいだったが……「あの……少し待ってもらえますか……今、お客さんの対応中なので」「はい……」 そいつは列の後ろへ戻った。まあ……よくいる非常識なタイプだろう。「悠太……列を整理してくれないか……終わったら俺とアキラちゃんの横に来てくれ」「はい……」 やれやれ……こういう変な人間にはイベントで何度か遭遇してきたが、また会うたびに何をしてきたのかと思ってしまう。 その男の番が来た。「えっと……何冊買いますか?」「その……買わないんですけど……コスプレがすごく好きで……写真を撮っていいですか?」「ああ……いいですよ!」 写真を撮った。まあ、ちゃんと列に並んでくれたから文句はない。「入場料って高いですよね……千円もするし」「それはそうでしょう……東京の真ん中ですし……このクラスのイベントともなれば」「そうですか……」そしてまた列に戻っていった。「あの……僕、お金がないんで……本、ちょっと高くないですか?」「そりゃ制作費がかかってるんで……四百冊ですし……」「でも他のところは安いですよ……表紙の見た目からしても、二百円で売れると思うんですが」 何を言ってるんだこいつ……「お前、自分で売ったことあるか?」「ないですけど……でも好きな作家さんに聞いたら、その値段で売ってたって」「じゃあ、いくらなら買う?言ってみろ……値引きするから」「やっぱり高いんで……タダでもらえないですか?」 は……この中二病め……「できない……他の人は買ってるんだから……タダにしたら全員タダにしないといけなくなる」「じゃあいらないです……」 そしていなくなった。しかしすぐに戻ってきた。「値引きしてもらえますか?」「……350円にするよ」「いらないです……タダでもらえますか?……入場料が無料なら買ったんですけど……コミケが千円取るのが悪いんです。今は一円も持ってないんで」 本気で聞きたい……こいつは他の人みたいに普通に買うという選択肢がないのか?「じゃあ先に持っていって後で振り込んでもらえますか?」「それはできない……そんなことをしたら全員にそうしないといけなくなる……ダメダメ」「わかりました……次の方どうぞ……」
013 着替えが済んだ俺たちは、それぞれのブースへ向かった。悠太たちはちょうど売り台の準備を終えたところだった。「すごい……まるで別人みたいだな」「本当に……生地の縫製も綺麗だし……さすがアキラちゃんだな」 着替え終わった女の子たちがブースに集まって話していた。すでに何人かのコスプレイヤーがコスエリアへ向かい始め、作家さんたちも台の準備を始めていた。俺はヒナコちゃんコスの菅原とペアで琴雪くんをコスし、まゆりは『フェイト サムライレムナント』の由井正雪に扮していた。「三人とも和風テーマだな」 悠太が俺たちの写真を撮りながら言った。「難しいかと思ったけど、着るのは思ったより簡単だったな」「ところで……そのピアス、つけたままなんですか」 ハルくんが指摘した。たしかにキャラクターはピアスをしていないが……ピアスが多いので外すのが面倒くさい。「このままでいいよ……外すのが大変なんだから」「あの、みなさん……そろそろ始まりますよ……」 アキラちゃんが台を整えながら言った。それを聞いた菅原とまゆりはそれぞれ離れていった。「写真を撮りに行かないんですか?」「二人に台を任せっぱなしにするわけにはいかないだろ……どちらか二人についていてやれ」「えっと……じゃあハルくん……二人の付き添いに行こう……」「いいよ……写真も撮ってきてあげるよ」「頼む……」 本当に仲が良い……これが青春の友情というものか。 俺も持ってきた本を台に並べた。アキラちゃんも同じように並べていた。「ところで……お前ってBL系が好きなのか?」「えっと……はい……その……好きなんです……」 女装するのが好きな子だから、それとなくはわかっていたが。 俺は二人にしか聞こえないよう、小声で話しかけた。「お前……男が好きなんだな……」 彼はうつむいたまま顔を真っ赤にした。かわいい。しばらくして、小さくうなずいた。「そうか……いいじゃないか」「え?……」「正直に言うと……お前はかっこいいと思うよ……女装してるのも、同性が好きだからなんだろ……俺が学生だった頃は、あまりオープンにしてる人はいなかったからな」「……はい……」「まあ……とにかく、今日は一緒に頑張ろうか」「はい!!」 そして会場が始まった。男女を問わず来場者が途切れることなく押し寄せてくる。まるで人の波だ。
012 日曜日の朝七時。菅原のアパート前に集合し、荷物を車に積み込んでコミケへ出発の準備を整えた。「…………」「…………」 集まった全員が固まっていた。「どうしたんだ……早く乗れよ……」「あの……アキトさん、先に乗ってくださいよ……運転手なんですから……」「……わかった……」 みんな俺と同じことを考えていたわけだ……当然か……こんな高級車、普通の人間が気軽に乗れるわけがない。「あの……この車って、合法的に輸入されたものですよね?」 まゆりちゃんが青ざめた顔で聞いてきた。「だから言っただろ……ビジネスをしてる友人のものだって……」 ヤクザのトップの車だとは流石に言えない…… まゆりが一番後ろの席に乗り込んだ。「えっと……じゃあ僕も後ろに行きます……」 アキラちゃんが二番目に乗り込んだ。「悠太とハルは後ろに乗れ……」「「うっ……」」 この二人も相当なもので……表情を見れば帰りたくて仕方ないのが丸わかりだった。 菅原は助手席に座った……まるで本物の家族でドライブに行くみたいだ。そうして車を出した。「静かだな……」「高級車ってこんなもんですよ……ところで……」 乗り込んだとき、妙な気がした。「何ですか?」「アキラちゃん……さっき自分のことを『僕』って言ってたか?」「はい……あの……何かおかしいですか?」 あれ……待ってくれ……女性が「僕」という一人称を使うことは珍しくないが。「え……アキトさん、知らないんですか?……アキラちゃんって、男の子なんですよ……」「「「はあ!!!」」」 まさか……あのアキラちゃんが男の子?……あんなに可愛いのに……しかも女装まで……「ちょっと待って……二人も知らなかったのか!?」 悠太とハルの方を振り向いた。「女の子の格好してるんだから、わかるわけないじゃないですか……」「俺も同じ気持ちです……」 本当に……でもこんなに可愛い男の子が甘えてきたりしたら…… 待て!俺には菅原がいるぞ!「まあ……その通りですけど……僕は男です……」「「「うっ!!」」」 彼が……いや、彼は言いながら上目遣いで甘えるような表情をした……ものすごく可愛い!今すぐ抱きしめたいくらいだ! 悠太とハルも恐らく同じことを考えているだろう。「あ!この車、映画も観られるモニターがある!シートも柔らか
011「よ……バルちゃん」 [あれ……誰かと思えば、お前か] 水曜日の朝、お客さんのところへ行く前に……学生時代の別の親友に電話をかけた。彼は少し変わったところがある……でも、性格が変わっているわけじゃない。「お前はまた番号変えてるし……やっと繋がったと思ったら、西尾に頭下げて番号聞き出さないといけないんだから……」 [しょうがないだろ……俺の社会的立場上、同じ番号をずっと使うわけにはいかないんだよ] そう……この友人、久志昴は、関東一帯に影響力を持つ久志組のトップだ。これほどの勢力を誇るのは、他の組がすべて消えてしまったからでもある。先ほど名前の出た西尾は、今は恋人のキヨミちゃんと二人で私立探偵をやっている後輩だ。なかなかかっこいいコンビだと思う。「更屋敷のお嬢さんもそうだよ……まあいい……ところで車いっぱい持ってるだろ?……一台貸してくれないか……子どもたちをコミケに連れていこうと思って……」 [まあ、いいけど……お前、免許持ってるよな?……もし警察に止められて車の出所を調べられたら、生かしておけないからな……] 静かに人を脅すこの喋り方……まったく変わってないな。「とっくに取ってるよ……心配しなくていい……それで、貸してくれるよな?……」 [ファミリーカーならあるけど……夕方に取りに来ればいいよ……]「ああ……あと、忘れてた……十七日に、星野の結婚のお祝いを兼ねた集まりを家でやろうと思ってるんだ。できれば来てくれないか……」 [そうか……もう結婚式も近いな……旧友にもずいぶん会ってないし……あ、この!……リタ!……パパ、電話してるんだぞ!]「え……」 [あ!アキトおじさん!!……うちに来るの!?]「おお!リタちゃん……久しぶりだな……声を聞く限り、ずいぶん大きくなったみたいだな……ママは元気にしてるか?」 [うん!ママ、最近ずっとよくなってるよ……最近はみんなでピクニックにも行ったんだよ!!]「いいなあ……おじさんも行きたかったなあ……」 少し電話を奪い合うような音がして…… [ごめんな……最近、毎日おじさんに会いたいって言ってるんだよ……]「ああ……わかるよ、子どもってそういうもんだから……じゃあ夕方に行くよ……いろいろお願いすることもあるし……」 [うん……夕方にな……こら!……リタ……] [またねー!!!
010「アキトさん!おはようございます!」 お客さんのところへ向かう途中、菅原に声をかけられた。今日は日曜日なので私服姿だった。先日のセーラー服とはまるで違って、今日は黒と赤のゴシックロリータを完全装備で着こなしていた。 ずっと気になっていたので聞いてみた。「コスプレもするのか?」「はい!一緒にいた女の子二人、覚えてますか?……中学からコスプレ仲間なんですよ……毎年コミケのイベントにも行ってます」「そうか……その衣装、結構高そうだな」「いいえ……全部自分たちで作ってるんです」 そう言って毎年撮った写真を見せてくれた。「へえ……縫製がすごく丁寧だな……高いお店の服みたいだ」「だって一年かけて作るんですもん……コミケにしか行かないし……大抵はTwitterとInstagramに投稿するだけで、気軽に着てるコスが多いですよ」 あ……TikTokにも上げてるとか何とか。コスプレの話になると嬉しそうに話す。「コミケか……もう十年以上行ってないな……」「アキトさんも行ったことあるんですか?」「まあ……君と同じくらいの歳のとき、友人の同人誌販売を手伝ったことがあって……懐かしいな……コスプレもしたっけ」「同人誌?……どのキャラクターのですか?」「池也 x 折原[イザシズ]のやつ……知ってるか?」「古すぎますよ……もう絶版じゃないですか」「ちょっと!まだ古くないって!!」「コスプレはどのキャラクターだったんですか?」「カゲロウプロジェクトの晴人な……有名なボカロ曲で……赤いジャージ着るだけでコスできるんだよ……」「すみません……知らないです……」 ちょっと待て……本当に!?……今の子は「カゲロウデイズ」を知らないのか!?……世の中、本当に変わったんだな……ずいぶん変わってしまった……「まあいいか……」 思わず目に涙が浮かんだ……俺もついに本物のおじさんになってしまったか……まあ、エヴァの主題歌は聴いてるって言ってたから……そこまで時代遅れでもないはず……でも絶対「俺妹」は知らないだろうな…… あの頃のコスプレ・同人誌市場は、あの作品のおかげでとんでもない盛り上がりだったんだが……まあ、もう十年以上前の話か。「あ……来週イベントがあるんですよ、アキトさんも来てみてはどうですか?……友達のアキラちゃんが夏五[悟 x 傑]の同人誌を
009 チン! 自分で作った人生相談サイトの通知音が鳴った。相談ボックスに書き込みが入ったときの音だ……些細な悩みならメッセージで返信して無料にする……でも対面が必要な問題なら直接会って、その分料金をもらう……今回もそのパターンだ。「幼なじみに告白しようとしてるんですが……自分って他の人みたいにイケメンじゃないので、アドバイスをもらえたら……」 すぐに会う約束を取り付けた……こういう悩みは些細なことといえばそうだが……自分がイケメンじゃないと言っている……こういうケースは対面でしか話せないと俺は判断している。「どこの冴えない男の子かな……」 考えてみると、悩みを抱えた人から一件一万円もらうやり方は……なんとなく自分が詐欺師みたいに思えてくる……「まあいい……金が入ればそれでいい……」 でも……これまで通り、ちゃんと自分の仕事はやり遂げよう。 いつものジリンカフェへ向かった……いつの間にか常連になっていたらしく、女性スタッフが俺の顔を覚えてくれていた。「今日も誰かと待ち合わせですか?」「ええ……仕事で……」 顔を覚えてくれて声をかけてくれるようになったわけだが……お客と店員はお客と店員と決まっているのに、もう大半のスタッフが話しかけてくれるようになっていた。 少なくとも、東京の人間が全員よそよそしいわけじゃないとわかった……この大きな街にも、気さくに人に話しかけてくれる人はちゃんといる…… 俺も菅原も……そしてここのスタッフたちも……みんなそういうタイプだ。 いつもの席に座ってミルク入りアイスココアを注文した……しばらくすると、お客がやってきた。 男の子が二人……一人は菅原の友人で、女の子と話すのが苦手だった悠太。もう一人は同じく菅原の友人グループにいる、体格のよい男の子だった。「あれ……悠太に……えっと……ハルくんだっけ。最近、女の子とは話せるようになった?」「はい……」「はい……菅原さんと少し話せるようになってから、他の女の子の友達とも話せるようになってきました」 ハルくんは見た目通りぽっちゃりとした体型で、スキンヘッドにしていた。俺より少し背が高い……でも見たところ、性格は悪くなさそうだ。「えっと……相談ボックスに書いたとおりなんですが……アドバイスをもらえたらと思って……」 俺はハルくんをじっと見てから、残酷な本音