ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うこ

ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うこ

last update最後更新 : 2026-10-22
作者:  ซากุ剛剛更新
語言: Japanese
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故事簡介

コメディ

一人称

ラブコメ

オタク

高校生

後輩

年の差

俺は青山アキト、25歳。会社をクビになり、かつてのエリート街道から転落して酒に溺れる日々を送っていた。そんなある帰り道、 VTuberのオーディションに落ちて落ち込んでいた「地雷系」ファッションの女子高生(8歳年下)と出会う。俺は彼女の夢を叶える手助けをすることにした。

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第 1 章

1: 少女の願いと、50万円。プロローグ

 001

 正直に言えば、これまでの人生で、未来の自分の時間について考えることに膨大な時間を費やしてきた。

 どのくらいかと言えば、二十五年という人生の中で、少年時代も青春時代も十歳のところで止まったままになっているほどだ。

 もうすぐ三十路に差し掛かろうとしているのに、将来について迷っている若者たちのプレッシャーを、一部の親御さんたちよりもずっとよく理解できる。

 まあ、似たようなことを経験してきたからだろう。

 大人である自分たちの考えが間違っていると言いたいわけじゃない。自分たちの世代には自分たちの世代の考え方があるし、新しい世代には新しい世代の考え方がある。

 俺はどちらの味方もしないタイプだ。ただ、選べるなら勝ち組の側につく。

 青山アキトという人間がどんな人間かと聞かれても、うまく答えられない。しかし、

 俺は自分がどんな人間で、どんな考えを持っているか、知っている。

 そして、周りの人間にどうやって嘘をつくかも。

 002

「今日はなんでそんなしょんぼりしてんの」

 体に悪いアルコールを注いでいるバーテンダーがそう言った。

 今の俺は六本木のあるバーのカウンターで、犬みたいにぼんやり座り込んでいる。

 次々と数を減らしていく歓楽街の中で、今俺が利用しているミッドナイト・ポリゴンは、日本の経済状況に真っ向から逆らうかのように開店してまだ数ヶ月しか経っていない店だ。しかし店内の雰囲気とここの飲み物は客を惹きつける魅力に溢れており、俺のように決まったものが好きな人間も例外ではない。

 社会人になって二年が過ぎた俺にとって、仕事のストレスとプレッシャーは少しずつ積み重なっていき、気づけばいつも酒で終わっていた。

 知り合いの中で、ほとんどの友人はとっくに出世している。大企業の役員になった奴もいれば、お坊っちゃん学校の校長になった奴もいるし、海外で働いている奴もいる。いつまでもパッとしない会社員でいるのは俺くらいだ。

 変わりたいと思ったことは何度もある。しかしそのたびに、「お前には無理だ」という現実に顔面を叩かれてきた。

 諦めているわけじゃない。ただ、こうのんびりだらだらした生き方も悪くないかと思うことがある。朝起きて、飯を食って、タクシーで会社に行って、夕方に帰る。たまに会社で寝ることもある。毎日そんな繰り返しだ。

 そのうち俺も少しずつ大人になっていった。そして、一日中コンピューターにデータを打ち込みながら会議ばかりこなして、月給たった十万円しかもらえないことが、おじさんおばさんの言う「明るい未来のある良い生活」とはほど遠いものだと骨身に沁みてわかった。しかも、まったく楽しくない。

 十万円が多く聞こえる人もいるかもしれないが、必要以上の規則で縛りつけてくる会社に軽いノイローゼになるほど追い詰められながらこなす仕事としては、正直もう限界だ。続けたい奴だけ続ければいい。俺はもうごめんだ。

 しかし実際のところ、退職の手続きはできないままでいる。それは妹のせいだ。今ちょうど高校三年生として勉強に打ち込んでいる妹のことを思うと、踏み切れない。

 俺より八歳年下のその妹は、深冬という名前だ。物静かで、あまり人と話さない。たいていは大事なことだけを口にする。

 もう一つ気がかりなのも、やはり家族のことだ。俺と妹は二人暮らしで、俺が働いて妹の学費を一円残らず出している。しかし妹が中学に上がってから、性格がまるで別人のように変わってしまった。

 かつての明るくて活発な子が、引きこもりがちで人と話さない子になってしまった。おまけに、俺たちが本当の兄妹かどうかさえわかっていない。

 そう、十年来の付き合いでありながら、お互いが本当の兄妹かどうかを知らないのだ。俺が十六歳、妹が八歳のとき、おそらく母親であろう女性が、かわいらしい顔をした女の子を連れてきた。ちょうどおじさんとおばさんを亡くしたばかりだった俺に、その子を紹介したのだ。

 そのとき彼女は妹にこう言った。「この人がいつも話してた、あなたのお兄ちゃんよ」。そして俺に荷物を預けて、「ちょっと仕事に行ってくるから、この子を一日だけ預かっててね」と言い残して出ていった。

 あの「一日」は、もう十年が過ぎた。彼女が娘か息子(?)のところへ戻ってくる気配は、今もまったくない。当時まだただの子供だった俺は、その妹を引き取って育て、今では立派な若い女性になっている。

 大人になってからやっとわかった。なぜあのとき母親が妹を俺に預けにきたのか。おじさんとおばさんが亡くなった後、子供のいなかった二人の遺産はすべて俺のものになっていた。家も、保険金も、土地も。そして青山の血筋の者たちはお互いに関わり合わないという取り決めがあったため、孫にあたる俺がその遺産を受け取ることになったのだ。

 ただ、これはあくまで俺の推測に過ぎない。鵜呑みにしすぎないでほしい。現実はそこまで残酷じゃないかもしれないから。

「今日はクビになったんだよ。最悪」

 俺は冴えない顔でそう言った。相手は店主でもあり俺の友人でもあるバーテンダー、康彦だ。同い年の友人の中では、俺を除けば社会的地位が一番低い部類に入る奴だ。もっとも「低い」といっても、商業地区で酒場を開いて一日の売り上げが五十万近くにはなるだろうが。

「次の仕事はどうするの」

 相手はまるで俺の話を聞きたくないかのように淡々と聞いてきた。

「わかんない。こんなクビのされ方じゃ履歴書も使えないし」

 日本でクビになるのは非常に恥ずかしいことだ。経歴に傷がつけば、家でゴロゴロするしかなくなる。

「フリーランスの仕事なら、お前にだってできるじゃないか。前に更屋敷のお嬢さんのところで働いてたじゃないか?」

「双葉のお嬢さんに頼り続けるのは嫌なんだよ。自分で何かやってみたい」

 俺は人付き合いが広くて、気軽にどこにでも溶け込めるタイプだ。ある日、お坊っちゃん・お嬢さん学校に通っていた中学時代に、一人のお嬢さんと知り合った。更屋敷双葉という名前で、きちんとした雰囲気の愛らしい少女だった。彼女にとって、見返りを求めず自然に近づいてきた普通の人間としての初めての友人は、間違いなく俺だと断言できる。

 仲が深まるにつれて、彼女はしょっちゅう俺に手伝いを頼むようになった。そのたびにいつも報酬をくれた。最初は何度もそれは友情とは違うと伝えたが、最終的には仕事と割り切って素直にお金を受け取るようにした。

「自分で何かって、あのパッとしない会社員のことか。たいしたもんだな」

 康彦が皮肉っぽく言った。

「お前、バーテンダーになれたのになんでそんな口が悪いんだ」

「だってお前が、丁寧な言葉使われると鳥肌立つって言ったんじゃないか」

 ……それは確かに言った。

「それより、仕事を紹介してくれたりしないか?」

「何、俺の手下になりたいの?」

「それで食っていけるならいいぞ」

 康彦はわずかに驚いた顔をしてから言った。

「お前みたいなレベルの人間が、こんな雇われ仕事に就くべきじゃないと思うけど」

 俺が口を開く間もなく、相手は続けた。

「お前はさ……才能もあるし、人付き合いもうまいし、賢いし、物わかりも早いし……」

「ちょっと待て、何の話……」

「だから……みじめな顔すんなよ。本当のことを聞くけどさ、毎日腰を曲げて背中を固めて仕事するのが良いと思ってるの? お前、昔、VTuberの会社の社長になるって言ってなかったっけ?」

「よく中学のときの夢みたいなこと、まだ覚えてるな」

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1: 少女の願いと、50万円。プロローグ
   001 正直に言えば、これまでの人生で、未来の自分の時間について考えることに膨大な時間を費やしてきた。 どのくらいかと言えば、二十五年という人生の中で、少年時代も青春時代も十歳のところで止まったままになっているほどだ。 もうすぐ三十路に差し掛かろうとしているのに、将来について迷っている若者たちのプレッシャーを、一部の親御さんたちよりもずっとよく理解できる。 まあ、似たようなことを経験してきたからだろう。 大人である自分たちの考えが間違っていると言いたいわけじゃない。自分たちの世代には自分たちの世代の考え方があるし、新しい世代には新しい世代の考え方がある。 俺はどちらの味方もしないタイプだ。ただ、選べるなら勝ち組の側につく。 青山アキトという人間がどんな人間かと聞かれても、うまく答えられない。しかし、 俺は自分がどんな人間で、どんな考えを持っているか、知っている。 そして、周りの人間にどうやって嘘をつくかも。  002「今日はなんでそんなしょんぼりしてんの」 体に悪いアルコールを注いでいるバーテンダーがそう言った。 今の俺は六本木のあるバーのカウンターで、犬みたいにぼんやり座り込んでいる。 次々と数を減らしていく歓楽街の中で、今俺が利用しているミッドナイト・ポリゴンは、日本の経済状況に真っ向から逆らうかのように開店してまだ数ヶ月しか経っていない店だ。しかし店内の雰囲気とここの飲み物は客を惹きつける魅力に溢れており、俺のように決まったものが好きな人間も例外ではない。 社会人になって二年が過ぎた俺にとって、仕事のストレスとプレッシャーは少しずつ積み重なっていき、気づけばいつも酒で終わっていた。 知り合いの中で、ほとんどの友人はとっくに出世している。大企業の役員になった奴もいれば、お坊っちゃん学校の校長になった奴もいるし、海外で働いている奴もいる。いつまでもパッとしない会社員でいるのは俺くらいだ。 変わりたいと思ったことは何度もある。しかしそのたびに、「お前には無理だ」という現実に顔面を叩かれてきた。 諦めているわけじゃない。ただ、こうのんびりだらだらした生き方も悪くないかと思うことがある。朝起きて、飯を食って、タクシーで会社に行って、夕方に帰る。たまに会社で寝ることもある。毎日そんな繰り返しだ。 そのうち俺も少しずつ大人にな
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2: 少女の願いと、50万円。2
  VTuberとは、アニメーションモデルをカメラの前に立たせ、実在の人物がナレーションを担当するインフルエンサーのことです。VTuberは大きく2種類に分けられます。1つ目は、所属事務所を持つVTuberです。所属事務所は、モーションキャプチャカメラやコンピューター機器など、様々な面でサポートを提供し、規模の大きな事務所では宿泊施設を提供する場合もあります。しかし、多くの場合、非常に厳しい規則が設けられています。  2つ目は、独立系VTuberです。独立系VTuberは、コンテンツや発言内容に関して完全な自由度を持ち、所属事務所を持つVTuberほど費用はかかりません。 俺は自然と大声で笑い出した。「でも当時のお前は本当に目を輝かせてたよ。VTuberの話になるたびに、止まらなくなってたじゃないか」 康彦は美しい所作でグラスにアルコールを注ぎながら言った。「……夢だから話せるんだよ」 この世界には、夢は決して叶わないという現実が存在する。人の一生が、束の間の思いつきに沿って進み続けることはありえない。 夢を追いかけられない人を、何度も見てきた。それはこの世界では当たり前のことだ。 しかし、「夢を叶えたのに、思い描いた通りにはいかなかった」という人間よりは、まだましだと思う。 ……転ばぬ先の杖とはよく言ったもので、俺はずっとこう思っている。何の望みも、夢も、欲しいものさえも持たない人間は、それはそれで素晴らしいことだと。「どうなるかわからないこと」に十数年もの時間を費やさずに済むから、幸せに生きていけるのだ。 とはいえ、今の俺には絶対に手放すことのできない大切な責任がある。唯一残った家族である妹の面倒を見ること。彼女が卒業するまで学費を出し続けること。俺みたいに苦労しなくて済む、ちゃんとした仕事に就けるようにしてやること。「そういえば、星野が来月結婚するって知ってた?」 聞き覚えのある、もう忘れかけていた名前が浮かんだ。「本当に?……相手は誰なの?」 その美しい名前の持ち主は、俺の中学時代の元カノだったから。「知らないけど……大学のときに知り合ったらしいよ。相手は輸入車の営業マンで、星野は天文学の研究者をしてるって」 すごいな……今の俺と比べたら、足元にも及ばない。「俺とは大違いだな」 俺はそう言いながら酒をひと口飲んだ。
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3: 少女の願いと、50万円。エピローグ
  004「はい、どうぞ」俺は運転手に金を渡した。「ありがとうございます」 俺の住む住宅街は、静かというよりも、時には怖いくらいに静まり返っている。特に夜は。 昔はここにも何軒か家が建ち並んでいたが、今はアパートやマンションに変わってしまって、一軒家として残っているのは俺の家だけだ。 幸いなことにこの家は買い取り済みなので、固定資産税と水道光熱費とガス代さえ払えばいい。その費用はおじさんとおばさんが残してくれた遺産から出している。学生だった頃は市役所の人間が費用の管理をしてくれていたので、大した問題もなかった。「はあ……」 正直に言えば、これまでの俺の人生はそれなりにめちゃくちゃだったと思う。いや、普通の若者の域を超えていたくらいかもしれない。 しかし大人になって、コネや名家の威光に頼らず自分一人で生きていくようになってから、俺は自分でも嫌になるほど、つまらない人間になっていた。 住宅街へ歩いて入っていくと、しばらく進んだところにベンチの横に自動販売機が立っていた。有名ブランドの赤い缶の炭酸飲料を買って、少し休んでいこうかと思ったのだが、「!?」 雨が降り出した。まるで俺をどこか悲しいミュージックビデオの主人公に仕立て上げようとでもしているかのように。慌てて近くの店先の雨宿りできる場所へ走り込んだ。 雨はどんどん強くなっていく。俺はただ炭酸を飲みながら雨を眺め、ぼんやりと考えにふけった。「星野が知らない誰かと結婚するのか……」 もちろん、中学時代というのは今付き合っている相手と別れて、すぐに別の誰かと付き合えるくらいの年頃だと、今の俺はよくわかっている。 それでも、「あなたのことが好きじゃなくなった」という理由で振られたことが、少しだけ今も胸に刺さっている。 まあ、いい。他人のことは後回しにしよう。今は自分の仕事に集中しないといけない。この時期は特に物入りだし。「お嬢さんに連絡してみるか」 そして俺は少し自分が情けなくなった。コネに頼らず仕事を見つけたいなどと思っておきながら、それは目の前のチャンスを自ら捨てているのと同じじゃないか。 ただ、あのお嬢さんは何らかの事情で携帯の番号をしょっちゅう変えるので、直接会いに行くしかない。 そして俺はふと、こうして生きていればいつかいい女性と出会えるだろうなどと考えてしまった……しか
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4: 業務について話し合うための会議を予定する
 005 目も当てられない状態で目が覚めた……正直に言うと、昨夜何を言ったのかほとんど覚えていない。「はあ………」 目をこすりながら起き上がると、メールが届いていた。『放課後、ジリンカフェで会いましょう……』 送り主は……菅原……サメ……「誰だっけ……」 昨夜、女の子に会ったような気はぼんやりとするのだが……このメッセージを送ってきた子と同じ人物かどうかも定かじゃない。「放課後って……今何時だ……」 時計を見ると、もう午後だった。「……そんなに酔ってたのか、俺」 階下に降りると、食卓の上にラップをかけた朝食が置いてあった。 妹のメモには「遅起きしないでくださいね、お兄ちゃん……全部食べてね……せっかく作ったんだから」と書いてあった。 彼女はいつもこうしてメモを残す……俺とはあまり話さないから。「………はあ……」 朝食をレンジで温めて食べ、それからシャワーを浴びた。 俺は高校時代の制服に着替えた。 長袖シャツに紺色のニットベスト、黒いスラックス。黒いブルーライトカットメガネを額に乗せ、右耳だけピアスをつけた。 この格好をする理由は単純だ……もう一度10代に戻りたいだけ。高校時代に制服を着ていたのも俺だけだったが。「ちょっと出てきます……」 菅原という女の子にどこの学校か聞いてみると、宮嶋私立女子高等学校と返ってきた。「あれ……じゃあこの子、俺の後輩じゃないか……」 俺と妹も同じ学校に通っていた。同じ学校の子に会うとは思わなかった…… 俺が通っていたのは普通の私立校で、ある程度裕福な家の子しか通えない学校だった。そこそこ整った環境のお嬢様学校だったが、どうやら共学から女子校に変わったらしい。さらに宮嶋私立芸能学校の分校もあり、学内アイドルグループのコンテストも開催されていた。 俺がそこに入れたのは青山という苗字のおかげだった……かつて商家として栄えた由緒ある家柄で、俺と妹は二人とも中学からここの入学枠をもらっていた。「校門の前で待つのがいいか」 校門の前に立ってタバコに火をつけた。しばらく吸っていると、何かが「やめろ」と告げているような気がした。 しかし俺は気にしなかった……そのまま吸い続けた。 やがて下校のチャイムが鳴り……生徒たちが次々と出てきた。何人かが俺を、まるで変質者でも見るような目で見ていた。「ここ
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5:オンラインコンサルティング業務
  006「これで完了……」 マウスをクリックすると、人生相談サイトが画面に表示された。専用のプログラムで荒らしたちを弾き出す設定も済んでいる。「あとは待つだけだな……」 実のところ、これまでにも何人か相談に乗ったことはある……とはいえ、そう頻繁でもないが。 昨日、菅原との打ち合わせから帰ってきた後、新たに応募した会社すべてから不採用メールが届いた……本当に気が狂いそうだ。 俺はそれらの不採用通知を眺めながら考えた。「今ここでビルから飛び降りたら、楽になれるかな……」 でも、やはり同じだ……俺にはできない。 一人だったらよかったのに……そうしたら余計な生活の重荷を背負わずに済むのに。「待て!何を考えてるんだ!あれは俺たちの妹だぞ!……自分で生きていけるようになるまで、ちゃんと面倒を見ないといけないだろ……」「でも考えてみれば……どうせ大学に入ったら一人暮らしをするんだろうし……」 それでも生活費は俺が出すことになるんだが……「……………これまでの人生、ろくなことしかなかった……生きてていいことなんて、一つもないのか」 両親が誰かも知らない……育ててくれたおじさんもおばさんも死んでしまった……面倒を見てくれる親戚も誰もいなくて、ずっと一人でやってきた…… あげく……誰かが妹を押しつけていなくなった……学校に通いながら働きながら……自分と妹の学費を必死に稼いできた。「なんで今まで死のうとしなかったんだろう……」 でも、そうしたら妹には頼れる家族が誰もいなくなる…… 考えれば考えるほど気が滅入る……もういい、どうにでもなれ。そんなことを考えていたとき、相談の申し込みが一件入った……確認してみると、荒らしではなさそうだ。「えっと……こんにちは。僕、女子校に通ってる男子生徒なんですけど……女の子と話すのが苦手で……相談に来ました……」 それだけか……うーん……返事してみよう。「了解……直接会えないか?……対面の方が、いろいろと話しやすいと思うんだけど……」 送信した。コーヒーを足しに行こうとしたら、もう返信が来ていた。「じゃあ……今日の放課後……ジリンカフェで会いましょう」 こいつ、宮嶋の生徒か……世間は狭いな。 また女子校の前で変質者扱いされても困るので、先にカフェで待つことにした。 店内を見回すと……カップルばかりで
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6:兄と妹の間の、次第に縮まっていく距離。
 007「バイトを増やして収入を足してくれないか……計画を少しでも早く進めるために」 彼女はしばらく考えてから……変質者を見るような目でこちらを向いた。「そういう仕事をさせようとしてるんですか?」「違う、このバカ!バイトだよ、バイト!普通のバイト!……」「あ……そうですか」 もう……俺を人身売買業者だと思ってるのか……「俺がそういう人間に見えるか……」「見えますよ……制服を着て歩き回る大人なんて、アキトさんくらいしかいないですから……」「……それは確かに……」 まあな……誰が制服を着るんだって話だが……まあいい。「必要なら何でもやりますよ……ところでどんなバイトですか?」「俺もそこまで考えてなかった……何か心当たりはあるか?」「いきなり聞かれてもわかりません……」「そうだな……」 時間を見ると、もう八時近かった。「じゃあ……考えてきてくれ……俺の方でお客さんが来ない日があったら、そこを君の分で補えるようにしておくから」「はい……」 二人で会計を済ませて店を出た。俺と菅原の家は同じ方向なので、一緒に歩いて帰ることにした。 あるアパートの前で彼女を見送った……見たところ、なかなか立派なアパートのようだった。「ただいま……」「あ、お兄ちゃん……今日は早いね……」 めったに話しかけてこない妹が声をかけてきたので、俺もどう反応すればいいかわからなかった。「仕事が片づいたからさ……ちょっと早く帰ってきた」「そう……夜ご飯、作っておいたよ……忘れずに食べてね」 それだけ言うと、彼女はまたMonitoringの番組に戻っていった……全然疑われなくてよかった。 おまけに俺がクビになったことも知らない…… いや……仕事はあるにはある……ただ以前より収入がはるかに少ない……生活費にもならないくらいだ…… 最後の給料と全貯金を合わせれば、半年はどうにかなる……でも深冬の学費が…… 入学枠があるとはいえ、妹にも当然お金はかかる。「あ……兄さん、二日ほど休みを取ろうと思って……母校に顔を出してみようかと」「うん……」 静かな返事だけが返ってきた……普通の人なら、休みを取るのは印象が良くないと言うだろうが、深冬はそういったことを一切気にしなかった。 台所に入ると、大鍋に包まれたスパイシーカレー(唐辛子多め)があった。俺の好物第二
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7: メイドカフェ!
 008「よ……ナオちゃん」「お前!……どうやって入ったんだ!?」 校内に入ってすぐ声をかけたのは、中学時代の女友達、月ノ森ナオだった。切れ長の目が特徴的な女性で、今はこの学校の教師として働いている。廊下で書類を抱えて歩いているところに出くわしたので、俺が手伝ってやることにした。「現校長があの雅臣だとは思わなかったよ……」 入校の際は、学生時代にこっそり失敬しておいた卒業生用の来客腕章を使った……まだ色が変わってなくてよかった。 ちなみに雅臣というのも中学時代の友人だ……ただ目つきが怪しくて少々スケベな性格で、規則破りが好きな、グループのトラブルメーカーと言っても過言ではなかった。「それにしても……突然どうしたんだよ……せめて事前に連絡くらいしろよ」 言い終わるなり、思い切り尻を蹴られた。「痛っ!相変わらず蹴りが重いな……ちょっとサプライズのつもりだっただけだよ……」「サプライズ?」「みんなを俺の家に集めようと思ってさ……星野の結婚のお祝いも兼ねて……」「あ!そうだった……二十日ね……忘れるところだった……他のみんなにはもう伝えたのか?」 あの名前を聞くたびに、少し胸が痛む。「まだだよ……ナオちゃんが最初だ……」「うーん……いつにするの?……」「みんなの休みに合わせた方がいいかな……平日に設定して誰も来なかったら寂しいし……」「それもそうだな……もうみんな働いてるから、昔みたいに気軽に空いてるわけじゃないしな」「……」 歩いている途中、女子生徒が何人かナオちゃんに挨拶してきた。俺を見た一人が、すぐに指を差した。「あ!先生……この前話した怪しい人です……菅原さんを連れていった人……」 殺し屋のようなオーラがこちらに向けられた。「お前、うちの生徒に手を出したのか?」「何言ってんだよ!あの日は俺のお客さんを待ってただけだって!」「お客さん?」「仕事を変えたんだよ……今はネットで人生相談の仕事をしてる……菅原は俺のお客さんだ」 その生徒も理解してくれたようで、ナオちゃんが俺がここの卒業生で、校長と彼女の旧友だと説明してくれた。生徒は頭を下げて謝ってきた。「すみませんでした!怪しい人だと思ってて……まさか先輩だとは思わなかったです……本当に申し訳ありません」「いいよ……そうやって警戒できるのはいいことだよ……通報しよう
last update最後更新 : 2026-10-22
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8:どうして幼馴染は、私を愛してくれないんだろう……?
 009 チン! 自分で作った人生相談サイトの通知音が鳴った。相談ボックスに書き込みが入ったときの音だ……些細な悩みならメッセージで返信して無料にする……でも対面が必要な問題なら直接会って、その分料金をもらう……今回もそのパターンだ。「幼なじみに告白しようとしてるんですが……自分って他の人みたいにイケメンじゃないので、アドバイスをもらえたら……」 すぐに会う約束を取り付けた……こういう悩みは些細なことといえばそうだが……自分がイケメンじゃないと言っている……こういうケースは対面でしか話せないと俺は判断している。「どこの冴えない男の子かな……」 考えてみると、悩みを抱えた人から一件一万円もらうやり方は……なんとなく自分が詐欺師みたいに思えてくる……「まあいい……金が入ればそれでいい……」 でも……これまで通り、ちゃんと自分の仕事はやり遂げよう。 いつものジリンカフェへ向かった……いつの間にか常連になっていたらしく、女性スタッフが俺の顔を覚えてくれていた。「今日も誰かと待ち合わせですか?」「ええ……仕事で……」 顔を覚えてくれて声をかけてくれるようになったわけだが……お客と店員はお客と店員と決まっているのに、もう大半のスタッフが話しかけてくれるようになっていた。 少なくとも、東京の人間が全員よそよそしいわけじゃないとわかった……この大きな街にも、気さくに人に話しかけてくれる人はちゃんといる…… 俺も菅原も……そしてここのスタッフたちも……みんなそういうタイプだ。 いつもの席に座ってミルク入りアイスココアを注文した……しばらくすると、お客がやってきた。 男の子が二人……一人は菅原の友人で、女の子と話すのが苦手だった悠太。もう一人は同じく菅原の友人グループにいる、体格のよい男の子だった。「あれ……悠太に……えっと……ハルくんだっけ。最近、女の子とは話せるようになった?」「はい……」「はい……菅原さんと少し話せるようになってから、他の女の子の友達とも話せるようになってきました」 ハルくんは見た目通りぽっちゃりとした体型で、スキンヘッドにしていた。俺より少し背が高い……でも見たところ、性格は悪くなさそうだ。「えっと……相談ボックスに書いたとおりなんですが……アドバイスをもらえたらと思って……」 俺はハルくんをじっと見てから、残酷な本音
last update最後更新 : 2026-10-22
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9:コミケで収益を上げる際の課題
 010「アキトさん!おはようございます!」 お客さんのところへ向かう途中、菅原に声をかけられた。今日は日曜日なので私服姿だった。先日のセーラー服とはまるで違って、今日は黒と赤のゴシックロリータを完全装備で着こなしていた。 ずっと気になっていたので聞いてみた。「コスプレもするのか?」「はい!一緒にいた女の子二人、覚えてますか?……中学からコスプレ仲間なんですよ……毎年コミケのイベントにも行ってます」「そうか……その衣装、結構高そうだな」「いいえ……全部自分たちで作ってるんです」 そう言って毎年撮った写真を見せてくれた。「へえ……縫製がすごく丁寧だな……高いお店の服みたいだ」「だって一年かけて作るんですもん……コミケにしか行かないし……大抵はTwitterとInstagramに投稿するだけで、気軽に着てるコスが多いですよ」 あ……TikTokにも上げてるとか何とか。コスプレの話になると嬉しそうに話す。「コミケか……もう十年以上行ってないな……」「アキトさんも行ったことあるんですか?」「まあ……君と同じくらいの歳のとき、友人の同人誌販売を手伝ったことがあって……懐かしいな……コスプレもしたっけ」「同人誌?……どのキャラクターのですか?」「池也 x 折原[イザシズ]のやつ……知ってるか?」「古すぎますよ……もう絶版じゃないですか」「ちょっと!まだ古くないって!!」「コスプレはどのキャラクターだったんですか?」「カゲロウプロジェクトの晴人な……有名なボカロ曲で……赤いジャージ着るだけでコスできるんだよ……」「すみません……知らないです……」 ちょっと待て……本当に!?……今の子は「カゲロウデイズ」を知らないのか!?……世の中、本当に変わったんだな……ずいぶん変わってしまった……「まあいいか……」 思わず目に涙が浮かんだ……俺もついに本物のおじさんになってしまったか……まあ、エヴァの主題歌は聴いてるって言ってたから……そこまで時代遅れでもないはず……でも絶対「俺妹」は知らないだろうな…… あの頃のコスプレ・同人誌市場は、あの作品のおかげでとんでもない盛り上がりだったんだが……まあ、もう十年以上前の話か。「あ……来週イベントがあるんですよ、アキトさんも来てみてはどうですか?……友達のアキラちゃんが夏五[悟 x 傑]の同人誌を
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10: 昔の友人に会いに行きます……
 011「よ……バルちゃん」 [あれ……誰かと思えば、お前か] 水曜日の朝、お客さんのところへ行く前に……学生時代の別の親友に電話をかけた。彼は少し変わったところがある……でも、性格が変わっているわけじゃない。「お前はまた番号変えてるし……やっと繋がったと思ったら、西尾に頭下げて番号聞き出さないといけないんだから……」 [しょうがないだろ……俺の社会的立場上、同じ番号をずっと使うわけにはいかないんだよ] そう……この友人、久志昴は、関東一帯に影響力を持つ久志組のトップだ。これほどの勢力を誇るのは、他の組がすべて消えてしまったからでもある。先ほど名前の出た西尾は、今は恋人のキヨミちゃんと二人で私立探偵をやっている後輩だ。なかなかかっこいいコンビだと思う。「更屋敷のお嬢さんもそうだよ……まあいい……ところで車いっぱい持ってるだろ?……一台貸してくれないか……子どもたちをコミケに連れていこうと思って……」 [まあ、いいけど……お前、免許持ってるよな?……もし警察に止められて車の出所を調べられたら、生かしておけないからな……] 静かに人を脅すこの喋り方……まったく変わってないな。「とっくに取ってるよ……心配しなくていい……それで、貸してくれるよな?……」 [ファミリーカーならあるけど……夕方に取りに来ればいいよ……]「ああ……あと、忘れてた……十七日に、星野の結婚のお祝いを兼ねた集まりを家でやろうと思ってるんだ。できれば来てくれないか……」 [そうか……もう結婚式も近いな……旧友にもずいぶん会ってないし……あ、この!……リタ!……パパ、電話してるんだぞ!]「え……」 [あ!アキトおじさん!!……うちに来るの!?]「おお!リタちゃん……久しぶりだな……声を聞く限り、ずいぶん大きくなったみたいだな……ママは元気にしてるか?」 [うん!ママ、最近ずっとよくなってるよ……最近はみんなでピクニックにも行ったんだよ!!]「いいなあ……おじさんも行きたかったなあ……」 少し電話を奪い合うような音がして…… [ごめんな……最近、毎日おじさんに会いたいって言ってるんだよ……]「ああ……わかるよ、子どもってそういうもんだから……じゃあ夕方に行くよ……いろいろお願いすることもあるし……」 [うん……夕方にな……こら!……リタ……] [またねー!!!
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