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お兄ちゃんに上書きされて~彼氏がいるのに、嫉妬に狂った幼馴染に囲われて逃げられない~
お兄ちゃんに上書きされて~彼氏がいるのに、嫉妬に狂った幼馴染に囲われて逃げられない~
Author: 美木 猫助

001話

last update publish date: 2026-10-04 16:49:36

 ※ ※ ※ ※ ※

 大学入学と同時に始まった、新しい生活。

 両親が「女の子の一人暮らしは危ないから」と用意してくれたのは、凌りょうさんのマンションの隣室だった。

 凌さんは、お母さんの友人の息子さんだ。

 十二歳年上で、私は幼い頃から実の兄みたいに慕っていた。

 凌さんには私の部屋の合鍵を渡していた。それほど安心しきっていた。

 それなのに、今、私は――……。

「あ゙っ゙、ゔぁあっ、らめっ、らめっ、うぁ、あぅっ」

 激しく揺れる視界の中で、私は必死に目の前の現実を拒もうとしていた。けれど、私の腰を掴んで離さない凌さんの大きな手は、容赦というものを知らない。

 真新しい家具の木の香りが漂っていた清潔な1ⅬⅮKは、今や凌さんの放つ抗いがたい雄の香りに支配され、酷く淫らに濁りきっていた。

「……っ、や゙、やめ゙でっ、おにいちゃっ」

 泣きながら縋る私の言葉など、今の凌さんには届かない。

 三十二歳の男の顔をした彼は、冷ややかな、けれど独占欲に満ちた瞳で私を見下ろしている。

「お兄ちゃん? ……そんなふうに思っていたのは、お前だけだ」

 低く響く声とともに、凌さんの膝に跨らされた私の最奥へ、逃げ場のない衝撃が突き立てられた。

「ひ、あぁっ!! ぁ、あ……ッ!!」

 完全に膣(なか)を埋め尽くす、暴力的なまでの質量。

「――俺は、お前を一度も妹だと思ったことはない」

 ※ ※ ※

 ――大学入学前。

 新しい家電、ベッド、ソファー、ピンクの花柄のカーテン。

 思いっきり息を吸い込むと、新築の匂い。

 このマンションの五階の奥が今日から私のお城。

 引っ越し業者が立ち去り、段ボールが山積みになった広めのリビングで私は両手を上げて、ぐ~っと背伸びをした。

 早朝に実家から新住居まで遠距離を車に座りっぱなしだったから、体がバキバキする。

(って、運転したのは私じゃないんだけどね)

 不意に、ガチャリと鍵が開く音がした。

 振り返った先、玄関に立っていたのは凌さんだった。

 ラフなシャツとズボンという寛いだ格好。けれど、その薄い生地越しでも、日頃から鍛えられていることが分かる厚い胸板や、逞しい肩のラインが浮き出ている。

 三十二歳。学生時代に司法試験を合格し、二十七歳という若さで自らの法律事務所を立ち上げた彼は、一度決めたことは絶対にやり遂げるという苛烈なまでの意志を秘めている人だ。

「疲れてないか?」

 重低音で落ち着いた声――耳の奥を擽るような。

「私は大丈夫だよ!」

 擽る感触を消し去るように、私は凌さんの元に駆け寄った。

「お兄ちゃん、運転ありがとう! でもせっかくお休みなのに、ごめんね……」

 私は肩を落とした。

 仕事で忙しい彼の時間を奪ってしまった。大学入学を機に一人暮らしを始める一人娘の引っ越しが心配で堪らない両親は、お隣さんが凌さん、だけでは足りずに引っ越しまで一緒にいてくれるように頼んだのだ。

(お兄ちゃんが遠くに引っ越しちゃって、滅多に会えなくなって……そりゃ、久し振りに長い時間車の中で一緒に過ごせて嬉しかったけど……)

 嬉しかった気持ちは、両親の過保護ぶりを思い出した瞬間、急に申し訳なさへ変わってしまった。

 申し訳なさに小さくなった私を見て、凌さんはふっと口角を上げた。

 一歩、彼が踏み込むだけで、新築の匂いしかしなかった部屋の空気が、ふわりと香水の匂いと、彼自身の体温に塗り替えられる。

「お前のためなら、どこまでも運転するさ」

 凌さんの大きな手が、私の頭に置かれた。

 しゅん、と落ち込んだ私の髪を、くしゃくしゃっと掻き乱す手つきはどこまでも優しい。

 この手に守られている限り、私は世界で一番安全なんだ――そんな錯覚をしてしまうほどに。

「腹減ったな。飯食いにいこう」

 私を見下ろしたまま、にっ、と笑った凌さんの笑顔は、大人の男になっても昔と変わってはいなかった。

「うん!」

 私は、彼の差し出した大きな掌に、疑いもせず自分の手を重ねたのだった。

 ※

 近くの定食屋で遅めの昼食を済ませると、凌さんは私の部屋まで荷解きの手伝いに戻ってくれた。

 シャツの袖を捲り上げ、逞しい腕で彼は嫌な顔一つせず、重い段ボールを次々と片付けていく。

 私一人では到底終わらなかった作業を、凌さんはほぼ一人で終わらせてくれた。

「これでよし。あとはお前が明日から、ここで一人でどう過ごすかだな」

 そう言って、凌さんはキッチンの蛇口をひねって、手を洗う。その慣れた動作は、まるでもう自分の家であるように自然だった。

 私は眼鏡の位置を指先で直し、凌さんの隣で彼を眺めた。

「本当にありがとう、お兄ちゃん。助かっちゃった」

「いいさ。……ただ、これからは外食ばかりじゃなくて、ちゃんと自炊もするんだぞ。お前、すぐに無理をして体調を崩すからな」

「うん、頑張るけど……」

 私が自信なさげに笑うと、凌さんはふと思いついたように、私の部屋の合鍵がついたキーホルダーを指先で弄んだ。

「折角隣に住んでるんだ、仕事の合間に時間が取れたら、夕飯を作りに入ってやってもいい。これを持っていれば、お前が帰宅する前に準備もできるしな」

「えっ、それは悪いよ! お兄ちゃん、お仕事ですごく忙しいのに……」

 恐縮して首を振る私に、凌さんは瞳を僅かに細め、穏やかな声音のまま言った。

 なのに、なぜか「駄目」とは言えない空気だった。

「悪いことなんてないさ。お前に作ることで、俺もちゃんとした食事をとる理由ができる。一人だと、どうしても不摂生になりがちだからな。……お前の健康管理は、俺にとってもメリットがあるんだよ」

「……お兄ちゃんがそう言うなら。じゃあ、甘えちゃおうかな」

 私が無邪気に頷くと、凌さんの唇が満足げに弧を描いた。

「ああ、遠慮しなくていい。俺が食べさせたいんだ。……お前の体を、ちゃんとしたもので満たしてやりたいからな」

 凌さんの優しさが照れくさくて、私は眼鏡のブリッジを上げるふりをして目を逸らした。

 ふと、私は気になったことを口にする。

「お兄ちゃん、いつの間に料理が得意になったの? 昔はそんな素振りなかったのに」

(もしかして、彼女さんとかがきっかけだったりするのかな)

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