LOGIN声には出さなかったけど、そんな考えが頭を過った。凌さんは三十二歳。格好良くて仕事もできるんだから、料理を教わりたくなるような……ううん、作ってあげたくなるような素敵な女性が周りにいてもおかしくない。お兄ちゃんが高校生時代、彼の隣には可愛い女の子が常にいたことを私はぼんやりと思い出す。
――けれど、すぐに首を振ってその想像を打ち消した。お兄ちゃんの彼女に対して、私が妬きもちを焼くなんてお門違いだ。 「作れた方が色々と便利だろ? 特にお前に作ってあげられるしな」 凌さんはにっこりと笑うと、私の髪を大きな手でくしゃくしゃっと掻き乱した。 「お兄ちゃんに、料理ならっちゃおうかな」 なんて笑って、凌さんの大きな手を受け入れる。髪を撫でる掌の熱さが、なんだか心地良かった。 「そうだ。お前にあげたいものがあるんだ」 思い出したかのようにそう言って、一度隣の部屋に戻った凌さんは、すぐに何か大きなものを抱えて戻ってきた。 「はい、これ。引っ越し祝い」 差し出されたのは、私の両手でも抱えきれないほど大きな、淡いベージュ色のクマのぬいぐるみだった。ふわふわの毛並みで、抱きつくと新築の匂いに混じって、凌さんのつけている清潔な香水が微かにした。 「わあ、可愛い……! ありがとう、お兄ちゃん!」 思わず顔を埋めて喜ぶ私を見て、凌さんは満足そうに目を細める。 「暫くは一人で寂しいだろうから、一緒に寝たらいい」 「うん、そうする! じゃあ、ベッドの横に特等席を作らなきゃね」 私が無邪気に笑いながら、ぬいぐるみを抱えてベッドの方へ向かうと、背後から凌さんに呼び止められた。 「寝る時も、起きた時も、常にそいつがお前を見守ってるからな」 眼鏡をかけ直して、クマのぬいぐるみの顔を覗き込んだ。つぶらな瞳に見つめられ、なぜか少しだけ胸が高鳴るのを感じていた。 凌さんが「お前を見守ってる」と言ってくれているように感じて。 「……大切にするね、お兄ちゃん」 「ああ。大切にしろよ」 優しいお兄ちゃんがくれた、大き過ぎるぬいぐるみ。 私は、もう一度、ぬいぐるみを愛おしく抱き締めたのだった。※ ※ ※
大学の講義初日。私は昨日までの自分を脱ぎ捨てるように、鏡の前で入念に準備を整えた。 高校まではずっと眼鏡に三つ編みだったけれど、今日からはコンタクトレンズと、研究を重ねたナチュラルメイク。 劇的な変化ではないかもしれないけれど、私にとっては精一杯の武装だった。 (……変じゃないかな。お兄ちゃん、笑わないかな) 隣に住む自慢の幼馴染、凌さんの顔を思い浮かべる。 褒めてもらえたらいいな、なんて考えてしまって、胸がそわそわした。 意を決して玄関の扉を開けると、ちょうど隣の部屋からも、カチリと鍵を閉める音が聞こえた。 「あ……お兄ちゃん、おはよう」 スーツのシワひとつない、凛とした立ち姿の凌さんがこちらを振り向く。 すると彼は、私を一目見た瞬間に足を引き止めた。いつもは冷静な瞳が、今は信じられないものを見たかのように大きく見開かれている。 「えっ。やっぱり変かな? 私……」 急に恥ずかしくなって俯きかけると、凌さんの少し掠れた声が降ってきた。 「いや……すまん。あまりに可愛すぎて、驚いてただけだ」 「っ……!」 心臓が跳ねた。 予想もしなかった直球の言葉に、顔が一気に熱くなる。私は自分の頬を隠すように、逃げ腰で言い返した。 「もう、褒めても何も出ないんだからねっ」 「本音だよ」 凌さんは困ったように、でも愛おしそうに目を細めて笑った。 それから、私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。 (お兄ちゃんは、誰にでもこういうことが言える人だ。きっと、綺麗な彼女だっているはずなのに) 私を喜ばせるようなことを言わないで。そんなの、期待しちゃうじゃない。 「送っていこうか?」 その言葉に、胸の奥が甘く揺れる。仕事が忙しいはずなのに、私を甘やかそうとしてくれるお兄ちゃんの優しさが嬉しい。 でも、いつまでも甘えてばかりじゃいられない。 「ううん、大丈夫。これから先、四年も満員電車に乗り続けるんだもん。早く慣れなきゃ」 「そうか……。だが、無理はするなよ」 凌さんは少しだけ心配そうに眉を寄せた。その眼差しは、温かくて保護欲に満ちたものだ。 「もし、何かあったら……痴漢に遭ったりでもしたら、すぐに俺に連絡するんだぞ。いいな」 「っ、痴漢なんて……。大丈夫だよ、私みたいな田舎者にそんなことする人、いないよー」 照れ隠しで冗談めかして笑う私に、凌さんは笑い返さなかった。 それどころか、ぐい、と顔を近付けて、真剣な――厳しい表情で私を見つめた。 「いや、お前は魅力的だ」 「……っ!」 あまりに真剣な声。あまりに真っ直ぐな言葉。 顔の熱が更に上がり、心臓が耳元で煩いくらいに鳴り響く。 「もう……お兄ちゃん、大げさだよ」 恥ずかしさを誤魔化そうとして、いつもの癖で右手の指が動く。 ずり落ちてくる眼鏡のブリッジを押し上げようとしたけれど、指先が触れたのは、自分の冷たい肌だけだった。 (……あ、そうだった。今日はコンタクトなんだった) 空振りした指が宙を泳ぎ、さらに気まずさが募る。 そんな私の戸惑いを見透かしたように、凌さんはふっと表情を和らげた。 「お前が思うよりずっと、今の姿は男の目を引く。……気をつけろよ」 「う、うん。気を付けるよ」 私は凌さんに手を振って、浮き立つ心をごまかすように駅へと急いだ。 けれど、この時の私はまだ知らなかった。 お兄ちゃんの言葉に一喜一憂していたこの数十分後。初めて受ける講義で、たまたま隣に座った※ ※ ※
大学生活が始まって一ヶ月。私の隣には、今、健くんがいる。
講義の空き時間に学食で一緒にランチを食べたり、どちらからともなく手を繋いでキャンパスを歩いたり。健くんは、私が少しだけ頑張ったメイクの変化にいち早く気付いて、「今日も可愛いね」と照れずに言ってくれる。 「ねえ、今度の週末……私の家で勉強しない?」お兄ちゃんはためらいもなく通話ボタンを押し、スピーカー状態にしてベッドに放り出した。 『もしもし!? 大丈夫!? どこ消えちゃったの、具合悪いの!?』 受話器から聞こえる、健くんの心配そうな声。 優しい。本当に優しい声。 ――でも、その優しさを、私は最初から求めていなかったんだ。お兄ちゃんが健くんに似てたんじゃない。健くんが、お兄ちゃんの底なしの優しさに、ほんの少し似ていただけ。私の本物は、お兄ちゃんだけ。 「ほら。健に正直に伝えないと、可哀想だろ?」 お兄ちゃんが背後から、私の腰を強引に掴んで激しく突きまくった。 「た、たけるくぅんっ……あ、ぁあっ♡」 『え!? どうしたの!? お腹痛いの!?』 「だいじょーぶ、ふあ♡なんでも、ないのぉ♡」 お兄ちゃんは、電話の向こうの健くんに聞こえよがしに、私の最奥を容赦なく突きまくった。 もう、喘ぐことしかできない。脳の芯までお兄ちゃんの硬さと熱さでドロドロに溶かされて、何も考えられない。 「おにいちゃ、きもちいっ♡きもちいっ♡♡」 『え……? 誰、誰といるの……?』 「健のより、いいか?」 お兄ちゃんの低い声がスピーカーに拾われる。 「ぜんぜん、ちがう……っ♡」 「どこがだ?」 「かたしゃも……おおきしゃもっ♡にゃがさもぉ……っ♡おにいちゃ、すき♡すきぃっ♡ずっと嘘ついててごめんねぇっ」 「――許してやる」 お兄ちゃんの低く満足げな声とともに、最奥にこの日一番の熱い衝撃がドクドクとぶちまけられた。 「ひ、あぁあああーーっっ♡♡♡」 私は受話器の向こうの恋人の存在すら忘れて、お兄ちゃんの極上の狂気の中で、正気を失って絶頂した。 気付いた時には、電話はとっくに切れていた。それがいつ切れたのか、健くんがどんな絶望の声を上げたのか、もう私にはどうでもよかった。 ※ ※ ※ あの日から、私はもう大学には行っていない。 何回か、エントランスのインターフォンが鳴ったような気もするけれど、今の私にはそんなことはどうでもよかった。それよりも、ようやく気持ちが通じ合ったお兄ちゃんと一緒にいることの方が、ずっと大事だった。 ベッドの上。大きなクマのぬいぐるみが、私のお腹の下に敷かれている。 お尻を高く持ち上げさせられるための、淫らな台座。 その体勢の
認めてしまえば、驚くほど簡単で、気持ちがすっと楽になった。 「おにいちゃ、おにいちゃっ……きもちい、気持ちいいよぉ♡」 お兄ちゃんは一度、私の最奥に熱い精液をぶちまけて身を引き、自身を抜いた。 私は達した余韻で立っていられなくなり、その場に座り込んだ。 大きな手が私の頭を優しく撫でてくる。 顔を上げると、お兄ちゃんが私を熱のこもった目で見下ろしていた。 「これが、欲しかったんだろ?」 「うん♡うん、お兄ちゃん……っ♡素直になれなくて、ごめんなしゃい……♡」 「もっと味わっていいんだぞ」 お兄ちゃんは萎えたそれを私の口元に差し出した。 優しい声音だった。 私の頭を撫でながら、髪をくしゃくしゃと掻き乱す、いつもの動作。 私は迷わず、お兄ちゃんのそれを口に頬張った。 私は舌を伸ばし、それを熱く、いやらしく舐めとる。さっき私がイッて溢れ出た私の愛液と、お兄ちゃんの精液が混ざり合った、濃厚な味。……お兄ちゃんの味がする。 私は、お兄ちゃんのそれを一生懸命に舐めながら、視線を上に向けた。 「お兄ちゃん……わたしのこと、妹と思ったことないって、ほんとう……?」 「ずっと、そんなことで悩んで素直になれなかったのか?」 「うん……っ。おにいちゃん、いつからわたしのことすき?」 「お前が……六歳の頃から……。俺はおかしいと思った。子供を変な目で見る大人だと。でも、お前以外を見てもなんともなかった。それに、お前が成長していってもその思いは消えなかった。俺はお前をずっと愛してた」 きゅう♡と子宮が啼いた。 今度は、認めることにした。私の子宮はお兄ちゃんを求めて切なく啼いてる。 「俺が告白しようとした矢先に、他の男に……」 お兄ちゃんの瞳がどろりと嫉妬の炎で揺らぐ。私は怖いと思わなかった。ただ、た、だ……。 「わたしたち、さいしょからりょうおもいだったんだね♡♡」 私は立ち上がって、入口ドアに両手をついてお尻を高く上げた。お兄ちゃんの硬いそれが入りやすいように。 「ちっちゃいころから、ずっと……ずっとお兄ちゃんのこと、好っ!」 言い終える前に、私はお兄ちゃんの屈強な腕で軽々と持ち上げられ、背後から突き上げられた。 お兄ちゃんに背後から抱きすくめられ、私の両太腿をがっちりと腕で抱え込まれる。私の爪先は宙に
――私は、自分にそう言い聞かせた。 きゅう、と子宮が切なく啼く。 「私は、ないてない……」 声に出して否定する。 心は否定しているはずなのに、私の肺は凌さんの香りを思いっきり吸い込んだ。 私の手は――クマの手を掴んだ。 私はクマのふわふわした手を引き寄せて、自分の両脚の間に挟み込んだ。 クマの手が、スウェット越しに私の股間の中心――いちばん敏感な場所のあたりにピタリとハマる。 「……ぁ」 ただ挟んでいるだけ。 なのに、ふわふわした柔らかさと、そこから漂う凌さんの匂いが、私の躰をじじじっ、と熱くさせていく。 ――気付いたら、私はスウェットをショーツごと脱いでいた。 無意識のうちに、そのクマの手を割目に押し付けて、腰を前後に動かし始めていた。 (わたしは、こんなことっ、こんなことしたくないのに……っ) 心は拒絶しているのに、躰は、あの大人の大きな手を求めていた――狂おしいほどに。 クマの手を挟み込んだまま、お尻をきゅっと上へと持ち上げる。 ふわふわした触感の手が、私の割目に入り込んで、秘部をぐりぐりと、規則正しく押し潰していく。 (やだっ。私、何してるの……っ!) やめようと思うのに、凌さんの匂いが脳に浸透して、脳を蕩けさせ、腰の動きは止まらない。 クマのぬいぐるみのガラスの目と視線が合う。まるで、レンズのように、私の卑しい姿を見下ろしているような錯覚に陥った。 私は、その羞恥を掻き消すように、クマの顔に自分の顔を押し付け、凌さんの匂いをこれでもかと吸い込みながら、更に激しくクマの手に秘部を擦りつけた。 クマのふわふわ部分が濡れたクリトリスを、引っ張る痛さが堪らなく気持ちいい。 ふわふわ部分が、秘部に食い込んでいく。挿入されている気分になっていく。 私の脳は、快感しか考えられないように堕ちていく。 でも、でも、これでもまだ。 私は、お兄ちゃんでこうなっているとは認めていない。 「あ、ぁぁっ♡ふっ、んぁ♡」 私は、クマの顔を涙と涎で汚しながら、クマの手が与える快感に身を委ね続けた。 ※ ※ ※ 休日。私は健くんとショッピングモールでデートをしていた。 「これ、君に似合いそう!」 「本当? 嬉しい、健くん大好きだよ♡」 私は自分の腕を健くんの腕に
「どうしてここにっ」 「お前の後をつけてた」 「……部屋番号まで」 「フロントに顧客がいる」 凌さんはそう言って、強引に私を部屋の奥へと押し込んで、そのままベッドへと押し倒した。 その勢いで、バスローブの前は簡単にはだけて、私の胸が暗い蛍光灯の下に晒された。 バスローブの襟元を閉めようとしたけど、私の両手は凌さんから簡単に捕らえられる。 抵抗する私の力なんて、もろともされていなかった。 「いや、やめて! お兄ちゃんに触られたくない、触らないでっ……!」 「時間がない。大人しくしろ」 冷たい瞳で私を見下ろす凌さん。健くんのために綺麗に洗ったばかりの体が、またしてもお兄ちゃんの手で汚されていく。 感じてなんていない。違う。私が好きなのは、優しくて大好きな健くんで――。 「ひ、あぁっ……!?」 何の前触れもなく、凌さんの巨大な質量が、私の秘部へと一気に突き立てられた。 拒絶でカラカラに乾いていたはずなのに、凌さんの熱を受け入れた途端、私の躰は驚くほどドロドロに濡れそぼって彼を迎え入れてしまった。なんで、どうして私の躰なのに、言うことを聞かないの……!? ドス、ドス、とベッドを軋ませる激しい律動。 激痛に近い衝撃のなかで、凌さんのペニスは、私のいちばん感じてしまう良いところだけを、寸分の狂いもなく正確に抉り潰してくる。 「あ”っ、んぁ♡うそ、らめっ、らめぇっ……!」 目の前がチカチカと明滅する。違う、ダメ、こんな乱暴な、酷いエッチで、私がイッちゃうなんて絶対にダメなのに――。 ――ガララ。 その時、浴室のドアが開く音が、やけに鮮明に室内に響き渡った。健くんがシャワーを終えて出てくる。 その気配を察した瞬間、凌さんは躊躇なく、私の中から自身をずるっと引き抜いた。 そして、何事もなかったかのような手つきで素早く服を整えると、音もなく部屋を出て行ってしまった。 パタン、と出入口のドアが閉まったのと、ほぼ同時だった。 「お待たせー! いやあ、いいお湯だった……」 健くんが寝室へと戻ってくる。 私は心臓が口から飛び出しそうなほどの恐怖のなか、はだけた前を隠すように、彼に背を向けた状態で必死にバスローブを整えた。 「う、うん! 健くん、おかえり……っ」 声の震えを誤魔化しながら、ベッドの上で
「ど、どうして……っ? どうしてなの、おにいちゃっ……!」 「静かにしろ。大声を出すと、健に全てバレるぞ」 耳元で凌さんが囁く。 凌さんは背後から私のロングスカートの裾を乱暴に捲り上げると、あの電車の時と全く同じように、私の脚の間に、前を寛げた自身の生身を割り込ませてきた。下着一枚を隔てて、熱量が肌に突き当たる。 「気のせいか? 随分と、最初から濡れているな?」 「濡れて、なっ……!」 さっきまでベッドの上で凌さんの匂いを嗅いでオナニーをしていたなんて、絶対に認められない。 「やめて、お願いだから、やめてっ……!」 「お前の好きなように、動いてやるよ」 恋人に囁くような優しい言い方。けれど、与えられる圧は少しも優しくない。 薄いショーツを隔てて、割目を熱い塊がゴリゴリと激しく擦れる。クリトリスに、凌さんの亀頭が擦りつけられ、快感が脳を焼き切りそうになった。その時――。 「――あ、ごめん! ちょっとトイレ貸してー!」 すぐ近くの寝室から、健くんの無邪気な声が響いた。 「っ!?」 全身の血の気が引く。心臓が爆発しそうなほどの恐怖のなか、凌さんに押し潰されながら、必死に声を振り絞った。 「う、うん、どうぞ……っ!」 平静を装う私の声。 凌さんはまだ膣には挿れていないというのに、健くんがすぐそこにいる恐怖と背徳感の中で、電車の揺れのように激しく腰をピストンさせてくる。擦り付けられるだけの摩擦なのに、あまりの快感に、まるで本当に奥まで入れられているような錯覚に陥っていく。 「ん、あ、あぅ……っ!」 狂ってしまいそうな声が出そうになった瞬間、凌さんの骨ばった大きな手が、後ろから私の口を塞いできた。 「ぐっ、むぅ……っ!?」 声を奪われたまま、背後の壁――ううん、凌さんの屈強な肉体に縫い止められ、ただただ擦り付けられる衝撃に身を委ねる。 健くんがすぐ隣のトイレに入ったその瞬間、凌さんの躰が獣のように強張った。 凌さんの剥き出しの熱がドクドクと脈打ち、限界を迎える。 凌さんは私のロングスカートの裾を捲り上げたまま、空いた手で私のショーツのクロッチを後ろからぐいっと指で引っ張った。 ゴムが伸びて、私の秘部とショーツの間に、ぽっかりと隙間が作られる。 凌さんはその隙間を狙うようにして、
※ ※ ※ あの夜から、凌さんとは一度も顔を合わせていない。 凌さんが忙しいのか、それとも私が避けられているのか……それすら分からないまま、私はただ自室のベッドの上で呆然と日々を過ごしていた。 気付けば、私はベッドの上で凌さんからプレゼントされたあの大きなクマのぬいぐるみを抱き締め、そのフカフカの毛並みに顔を埋めていた。 鼻先を掠めるのは、あの清潔で上品な、大好きな香水の香り。 ドクン、と下腹部が切なく疼く。 ――無意識だった。私の手が、自分の胸へと伸びていた。 「んぁ……っ」 服の上から自分の胸を揉みながら、小さな喘ぎ声が漏れる。指先で乳首をパチンと弾きながら、たまらなくなって太もも同士をぎゅっと擦り合わせた。指の腹で、硬くなった先端をぐりぐりと押し潰す。 「違う――っ」 ハッと息を呑んで、自分の口から出た言葉に戦慄した。何も違わない。何を言っているの、私。 やめよう、こんなことしちゃダメだ。そう思うのに、私の意思とは関係なく右手は吸い寄せられるように股間へと伸びていく。 ショーツの下に熱い手を忍ばせ、クリトリスを人差し指で円を描くように弄って、爪先で弾く。いつも通りの、自分がしてきたはずの触り方。でも、頭の隅で「何かが違う」と拒絶する私がいる。 凌さんの香水を、ぬいぐるみの毛並みから深く、深く吸い込んだ。その瞬間、私の意思とは裏腹に、お尻が無意識のうちにキュッと上へと持ち上がってしまう。 クマのぬいぐるみにお顔を強く押し付けたまま、腰を浮かせる。 (違う、私は、こんなことしたくない……っ!) でも、この体勢は、これじゃあまるで――重い何かを、待っているみたいじゃない。 『そんなふうに思っていたのは、お前だけだ』 凌さんの言葉が頭の中に浮かんだ。 あの言葉の意味を、私は分かり兼ねている。 『――俺は、お前を一度も妹だと思ったことはない』 じゃあ、お兄ちゃんは今まで私をどう思っていたの? 私の膣を埋めた凶暴な狂気。 『男』の顔をして、瞳に映った独占欲――私がほしいって言ってるみたいだった。 (そんなはずないっ) お兄ちゃんが私に欲情する理由なんてない。 ただ、私に彼氏ができたことが気に喰わなかっただけで……。 (そんな理由で、私を襲うなんて最低)