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第10話

Author: 三日月
和臣が来たのは、ちょうど七時だった。一分も早くなく、時間ぴったりに家に入ってきた。

「来たのね」

星羅は化粧台の前に座っていた。三時間かけて、やっと顔色の悪さを隠し、少し血色良く見せることができたのだ。

和臣の顔には、嵐のような険悪さが滲んでいる。

「星羅。お前は、万死に値する」

星羅の心がチクリと痛んだ。

「……何?」

「沙耶の腹の子がなくなった」

星羅は一瞬呆気にとられたが、すぐに理解した。

「今日私が彼女を叩いたから、流産したと思ってるのね?」

「違うとでも?」

和臣は聞き返した。

「何かあるなら俺にぶつければいい。なぜ沙耶を傷つける?あいつは誰も傷つけたことなんてないのに!」

星羅は首を振った。

「和臣、あなたは女というものが分かってないわ」

「分かる必要はない」

「いいえ、必要よ」

星羅は立ち上がり、振り返った。

「女にとって、一番大事なのは子供なの。全力で守ろうとするわ。少しの危険にも晒さない。自分の命と引き換えにしてでも」

和臣は冷たく言い放つ。

「母親になったこともないお前に、そんなことを言う資格があるのか?」

星羅の眼差しは確信に満ちていた。

「私以上に資格のある人間はいないわ!特に沙耶についてはね。もし彼女が妊娠に気づいていたなら、あんな手を尽くしてわざわざここに来たりしない。私を激怒させるようなことを言って、自分に手を出させたりするはずがない!」

和臣は突然激昂し、星羅の首を鷲掴みにして指に力を込めた。

「星羅、もし沙耶に何かあったら、必ず道連れにしてやる」

呼吸が苦しくなる。窒息の苦しみが襲ってくる。それでも、星羅は笑っていた。

「そう?」

「俺は本気だ」

「そうか」

星羅は、首に食い込む彼の手を指差した。

「分かったわ。もう離してくれない?」

和臣は手を緩めず、死神のような目で彼女を睨みつけた。

「一体、何が望みだ?」

星羅は口角を上げた。

「言っても信じないでしょうけど……私が欲しいのは、最初から最後まであなただけよ」

和臣は彼女をベッドに放り投げた。凄まじい力に、星羅はまた激しく咳き込む。

耳元に響くのは、氷のように冷酷な彼の声だけだ。

「戯言を」

喉の奥から、ねっとりとした血の味が込み上げてくる。彼女は必死にそれを飲み込み、何事もなかったかのように立ち上がると
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