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第16話

Auteur: 三日月
星羅の言葉が喉に詰まった。

「白石さん、聞いていますか?」

「ええ、聞いてるわ」

彼女は深く息を吸い、尋ねた。

「離婚手続き……和臣は来るの?」

「綾辻社長はいらっしゃいません。私が全権を委任されています」

「彼に来るように伝えて。話があるの」

福永弁護士は困ったように笑った。

「白石さん、私を困らせないでください。社長がどれほどあなたに会いたくないか、私よりご存じでしょう」

もちろん、分かっている。

ただ……

「じゃあ、彼に伝言をお願いできる?私……妊娠したの」

「えっ!?」

「妊娠したと言ったの。彼に会いたいわ」

福永弁護士は一瞬ためらった。その声には微かな同情が滲んでいた。彼は小さくため息をつき、言った。

「白石さん、社長はいらっしゃいませんよ。結城さんが流産し、福子さんの死でショックを受けておられるので、気晴らしのために彼女を連れて海外へ行かれました。今頃はもう機上の人です」

「……どれくらいの期間?いつ戻るの?」

「結城さんが世界一周をしたいとおっしゃったそうで、短くはないでしょう。少なくとも一年。長引けば……分かりません」

「……」

「出発前に委任状を預かりました。離婚手続きはすべて私が代行します。会社の件も信頼できる人間に任せたそうです。結城さんに付き添うことに専念したいと。それが社長にとって、人生で最も重要なことだとおっしゃっていました」

「……」

「白石さん?大丈夫ですか?」

星羅は目を閉じた。自分がまるで生ける屍になったように感じる。心痛はやがて麻痺へと変わり、和臣はいつも、彼女の心の最後の防壁を粉々に砕いていく。

彼女は深く息を吸った。

「分かったわ」

「では、今から市役所の前でお待ちしています」

「私は行かないわ」

「白石さん、これは社長から託された任務なんです。どうか困らせないでください……」

「安心して。あなたの顔を潰したりしないわ」

星羅は自分の頬に触れ、ふふっと笑った。

「離婚も死別も、結果は同じでしょう?どちらにせよ、彼は沙耶と結婚できる。言ったはずよ、彼が望むものは、すべてあげると」

電波が悪かったのか、福永弁護士は聞き取れなかったようだ。

「白石さん、今なんと?」

「なんでもないわ。少し疲れたから、切るわね」

傍らで会話の一部始終を聞いていた女性警察官は、複雑な
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