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第2話

Auteur: ここのつラテ
「まだ怒っていらっしゃると思ってたので、来てくださらないんじゃないかと心配してたんです。

うちの家族のことは責めないでくださいね。みんな私のことが心配で、少し行き違いがあっただけなんです。

せっかく来てくださったんですし、今日はみんなをご紹介しますね。顔を合わせて話せば、きっと誤解も解けますから」

真由は当然のように私の腕を取り、笑顔のまま皆の前へ連れていった。

「みんな、ちょっといい?中川先生が来てくださったの」

その瞬間、皆の視線が一斉に私へ集まった。

晃たち三人の笑顔は、私に気づいた途端に凍りついた。

「この子は親友の朋美。中川先生と同じ病院の精神科に勤めてるから、院内で顔を合わせたことくらいありますよね?」

朋美は何度か視線を泳がせたあと、ぎこちなく口を開いた。

「中川先生、こんにちは……」

よそよそしいほど丁寧な口調は、まるで私と初対面であるかのようだった。

真由は朋美のぎこちなさに気づかないまま、今度は颯太を紹介した。

「こっちは大学時代からの親友、颯太。この前、中川先生を訴えたとき、代理人をしてたのが颯太なんです。私からもきつく言っておいたので、今回は許してあげてくださいね」

颯太は気まずそうに目を伏せた。

「姉ちゃん……」

その声はあまりにも小さく、周囲のざわめきにかき消され、真由には届かなかった。

最後に、真由は私を晃の前へ連れていき、そのまま甘えるように彼の胸に寄り添った。

「それから、この人が私の夫で――」

私は笑みを崩さないまま、彼女の言葉を遮った。

「北村晃。この店のオーナーですよね」

真由は目を見開いたまま、晃と私の顔を見比べた。

「どうして知ってるんですか?お二人、前からお知り合いだったんですか?」

私は小さく笑い、口を挟むなと言いたげな晃の視線を受け止めて、ゆっくり口を開いた。

「だって、晃は私の恋人ですから。私たち、7年付き合ってるんです。つい最近まで、結婚式の準備もしてました。

この店だって、もともとは晃が私に買ってくれたものなんです。そんなことも聞いてないんですか?」

あの頃、私は何気なく「毎日ここに座って海を眺められたらいいのに」と口にした。

すると翌日、晃は26歳の誕生日祝いに、この店を買ってくれた。

半年前、晃から会社が資金難に陥っていると聞かされ、立て直しの足しにするため、この店を手放すことに同意した。

けれど今思えば、それも晃の嘘だった。

「中川先生、何を言ってるんですか?」

真由は目に涙を浮かべ、晃を振り返った。

「私と晃は1年前に入籍したんです。それなのに、晃が先生の恋人って、どういうことなんですか?」

晃はさっと顔色を変えた。

「真由、話を聞いてくれ……」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が一気に冷えた。

裏切られたのは私なのに、晃が必死に取り繕おうとしている相手は真由だった。

思わず乾いた笑いが漏れた。もう黙っていられず、私は知っていることを一つずつ口にした。

「晃の腰に傷跡があるの、知ってますか?4年前、病院で患者の家族が暴れたとき、私をかばって負った傷です。

それから、晃がいつも身につけてるお守りも、私が神社で授かってきたものです……

晃の婚約者は私です。あなたは、ただの浮気相手ですよ」

「瑞希、もういい加減にしろ!」

真由の目に涙がにじんだ途端、晃が声を荒らげた。私を見る目は、ひどく冷たかった。朋美と颯太も、責めるような目を向けていた。

「私、何か間違ったこと言った?いい加減、自分たちが何をしたか認めたら?」

晃は泣きながら震える真由を抱き寄せ、低い声で言った。

「瑞希、真由は何も知らなかったんだ。言いたいことがあるなら俺に言え。真由を責めるのはやめろ」

朋美も一歩前に出て、きつい口調で言い放った。

「瑞希、いい加減分かりなよ。晃さんが選んだのは真由なの。瑞希のことなんて、とっくに愛してないんだよ」

颯太も意を決したように口を開いた。

「姉ちゃん、ここまで分かったなら、もう身を引いてよ。真由は命懸けで晃さんの子を産んだんだ。今日ここでどれだけ騒いでも、もうどうにもならないよ」

次々と浴びせられる言葉に、目の奥が熱くなった。今にも涙がこぼれそうだった。

「だからって、みんなで私を陥れて仕事から外したうえに、右手まで折るような目に遭わせた。それで許されると思ってるの?」

悔しさと怒りが、胸の奥から一気に込み上げた。

私は真由をにらみ、それからその場にいる全員を見回した。

「彼女が晃の浮気相手だって、みんな知ってたんでしょ。それなのに、私にはずっと黙ってた。違う?」

私が言い終わるのも待たず、朋美は手にしていたグラスの水を、私の頭から浴びせた。

冷たい水が髪を濡らし、頬を伝って滴り落ちた。胸の奥まで冷え切っていくようだった。

朋美は私をにらみつけ、吐き捨てるように言った。

「瑞希、いい加減目を覚ましなよ。捨てられたのはあんたのほう。真由じゃないんだよ」

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