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お茶は急いでも冷めません

Autor: Amy
last update Fecha de publicación: 2026-09-23 08:40:34

9月23日、午前9時40分。

5連休の最終日。

朝から茶道体験に来ていた。

自分でも少し意外。

もっと寝ているつもりだった。

でも昨日の夜、

「せっかくの休みだし」

と思って予約した。

こういうときの私は、翌朝の自分に少し厳しい。

教室には私と、もう1人女性客。

先生は60代くらいの女性。

薄いグレーの着物。

動きが静かで、見ているだけで落ち着く。

「作法は気にしすぎなくて大丈夫ですよ」

最初にそう言われた。

助かった。

と思った5分後。

私はお菓子を取る順番を間違えた。

「あ」

隣の女性が小さく言う。

私も気づく。

「やっちゃった」

先生が普通に言った。

「大丈夫ですよ」

「戻したほうがいい?」

「もう取ったんだから食べましょう」

あっさり。

緊張が少し抜けた。

季節の和菓子は、薄いオレンジ色。

秋の夕焼けをイメージしているらしい。

「きれい」

隣の女性が言う。

「食べるのもったいないですね」

私が言うと、

先生が微笑んだ。

「でも食べるために作ってありますから」

そうだった。

一口。

甘い。

そのあと、お茶。

茶碗を回す向きが分からなくなる。

右?

左?

私が止まっていると、

先生が言う。

「どちらでも命に関わりません」

隣の女性が吹き出した。

私も笑う。

「先生、そんな感じでいいんですか?」

「体験ですから」

「もっと厳しいと思ってました」

「厳しくしたら、お茶の味分からなくなるでしょう?」

確かに。

茶碗を持つ。

温かい。

一口。

少し苦い。

そのあと和菓子の甘さが戻ってくる。

おいしい。

「普段、お茶ゆっくり飲みます?」

先生が聞く。

2人とも少し考える。

隣の女性が、

「ほぼ立ったままコーヒー飲んでます」

と言った。

私は、

「スマホ見ながら」

先生が頷く。

「今日は見ないで飲んでみましょうか」

スマホはバッグの中。

時計も見ない。

ただお茶を飲む。

外から少し鳥の声。

お湯の音。

畳の匂い。

こんなに静かな朝、久しぶりかもしれない。

2杯目。

今度は少しだけ手順が分かる。

でも、まだぎこちない。

茶碗を置く位置を少し間違える。

今度は自分で気づいた。

直そうとすると、先生が首を振る。

「そのままでいいですよ」

「でも違いますよね?」

「違います。でも今日は覚えるために来たんじゃなく、飲みに来たと思えばいいです」

隣の女性が小さく頷く。

「その言葉、好きです」

私も。

何かを体験すると、つい「上手にやらなきゃ」と思ってしまう。

でも今日は、ただ甘いお菓子を食べて、苦いお茶を飲むだけでもいいらしい。

5連休最後の朝には、そのくらいがちょうどいい。

「先生、これ合ってます?」

「だいたい」

「だいたいでいい?」

「お茶は逃げないから」

先生は笑う。

「急いでも冷めるだけです」

隣の女性が言う。

「逆に、冷めても飲めますよね」

先生が一瞬止まって、

「それもそうね」

3人で笑った。

体験が終わる前、先生が小さな急須から普通の煎茶も淹れてくれた。

「最後は気楽に」

今度は作法なし。

湯呑みを両手で持つ。

隣の女性が言う。

「最初からこれでもよかったかも」

先生が笑う。

「それ言ったら教室にならないでしょう」

3人で笑った。

体験が終わる。

立ち上がる。

足が少ししびれていた。

「痛い」

隣の女性も同じ。

2人でよろよろ歩く。

先生が、

「最後が一番初心者らしい」

と笑った。

外へ出る。

連休最終日。

明日のことが少し頭に浮かびかける。

でも、

まだ午前中。

今日はまだ終わっていない。

午後までゆっくりしてもいい。

さっきのお茶みたいに、

急いだからって明日が早く来るわけじゃない。

****

明日のことは、まだ今考えなくていいよ。今日のお茶が冷めるくらいまで待とう。

連休最後の1日、ゆっくり味わってね。

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