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第639話

Auteur: ラクオン
電話を切り、竜也はくるりと向き直って書斎へと戻った。バルコニーのガラス戸を閉めながら視線を上げると、いつの間にか部屋に入ってきた梨花の姿が目に入った。

とはいえ、彼にとってそれはそれほど驚くことではない。

家族総出で国宝のようにうやうやしく扱われている梨花は、孝宏からお茶出しの役目をやっとのことで譲ってもらったのだ。湯呑みをデスクの上にことりと置くと、彼女は不思議そうに口を開いた。

「何かあったの?心にやましいところがないって、どういうこと?」

部屋に入ってきたばかりの彼女には、何の話をしているのかちんぷんかんぷんだ。

それでも、竜也の口調が険しかったことだけははっきりと分かった。

それどころか、かすかな怒りすら滲ませていたのだ。

竜也は彼女を見つめ、胸の内に渦巻いていた苛立ちがふっと和らぐのを感じたが、それ以上に彼女を愛おしく、そして痛ましく思う気持ちが強くなった。

彼は数歩近づき、彼女の頭を優しく撫でた。

「何もないよ。お前が心配することなんて何一つない」

これ以上、彼女に何一つ辛い思いなどさせるつもりはない。

三浦家の人たちが一体どう考えていようと、もうどう
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