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別れ道④

Penulis: プリン伯爵
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-02 17:00:12

五木さんとの共同研究は想像より早く進んだ。

物資の手配も驚くほど早く完成まで後少しというところまでおよそ一ヶ月という短い期間で作り上げた。

大型のリングがほぼ完成している姿を見ると、あの時あの瞬間を思い出す。

僕がジッとリングを見つめていると五木さんが背後から声を掛けてくる。

「どうしたんだい?」

「いえ……なんだか夢見心地のような感じでして」

「夢見心地?まあそうだね、実現まで後少しだからね。それより最近家に帰っていないだろう?ご家族が心配するんじゃないかい?」

五木さんは勘違いしていたがわざわざ本当の事を話す必要もない。

頷いた後そういえば姉さんに連絡するの忘れてたなとポケットから携帯端末を取り出す。

「あ、めっちゃ不在着信きてる……」

「ほら、言っただろう?今日は帰りなさい。研究に根を詰めるのは身体によくないよ」

五木さんに促され僕は帰宅することにした。

実のところこの一ヶ月、家に帰ったのは三度ほど、

あまりに僕が不在にしているせいで姉さんがブチギレてそうだ。

ビクつきながらソッと玄関の扉を開く。

もう時刻は夜中の十二時を回っていた。

足音を立てないようゆっくりリビングに足を踏み入れると、腕を組んで仁王立ちの姉さんと目が合った。

「うおぁぁぁ!?」

真っ暗なリビングでそんな事をされたら誰だってびっくりする。

飛び退いたせいで尻餅をつき、鈍痛が僕を刺激した。

「うぐぐ……いってぇ……」

「彼方!なんでこんな遅いの!?」

目が釣り上がっていてブチギレのご様子。

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  • もしもあの日に戻れたのなら   別れ道④

    五木さんとの共同研究は想像より早く進んだ。物資の手配も驚くほど早く完成まで後少しというところまでおよそ一ヶ月という短い期間で作り上げた。大型のリングがほぼ完成している姿を見ると、あの時あの瞬間を思い出す。僕がジッとリングを見つめていると五木さんが背後から声を掛けてくる。「どうしたんだい?」「いえ……なんだか夢見心地のような感じでして」「夢見心地?まあそうだね、実現まで後少しだからね。それより最近家に帰っていないだろう?ご家族が心配するんじゃないかい?」五木さんは勘違いしていたがわざわざ本当の事を話す必要もない。頷いた後そういえば姉さんに連絡するの忘れてたなとポケットから携帯端末を取り出す。「あ、めっちゃ不在着信きてる……」「ほら、言っただろう?今日は帰りなさい。研究に根を詰めるのは身体によくないよ」五木さんに促され僕は帰宅することにした。実のところこの一ヶ月、家に帰ったのは三度ほど、あまりに僕が不在にしているせいで姉さんがブチギレてそうだ。ビクつきながらソッと玄関の扉を開く。もう時刻は夜中の十二時を回っていた。足音を立てないようゆっくりリビングに足を踏み入れると、腕を組んで仁王立ちの姉さんと目が合った。「うおぁぁぁ!?」真っ暗なリビングでそんな事をされたら誰だってびっくりする。飛び退いたせいで尻餅をつき、鈍痛が僕を刺激した。「うぐぐ……いってぇ……」「彼方!なんでこんな遅いの!?」目が釣り上がっていてブチギレのご様子。

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