Masukスラムの路地で、ひもじい思いをしていた一人の少年。 「あれぇ? 俺、転生してるじゃん」 殴られた衝撃で前世の記憶を思い出した少年。 異世界転生だと浮かれていたが、現在の状況は良くなかった。 「王道に従って冒険者からの立身出世を目指すか…。それとも…」 そして何を思ったか、少年は裏社会から異世界でのし上がって行く事を決意する。 「マフィアとかギャングのボスってカッコいいよね!」 これは異世界に転生した少年が唯一無二の能力を授かり、仲間と共に裏社会から異世界を支配していくお話。 ※この作品はカクヨム様、アルファポリス様にも投稿しています。
Lihat lebih banyak☆★☆★☆★ 「旦那様。冒険者が失敗したようです」 「ちっ。下民が。人一人攫う事も出来んのか」 街で一番大きな建物。 領主の屋敷にて、執事からの報告に苛立ちを隠せない20代後半の青年、領主のベルリン・ペテス辺境伯がいた。 「食堂で戦闘があったようで、エルフは逃走。目撃証言からスラム街に逃げ込んだものと思われます」 「面倒な所に」 スラム街と聞いて思わず顔を顰めるベルリン。 自領ながらもスラム街は扱いの面倒な場所だった。いくつもの闇組織や暗殺組織が幅を利かせており、領主の命令も平気で無視をする。 領主を父から受け継いだ後、一度鎮圧に動いた事があるが両者共にかなりの死傷者を出した。 一時的に組織の動きは静かになったものの、いつの間にか後釜が躍進してきて、以前より勢力が増してるくらいだ。 今では、放っておけばスラム内で縄張り争いをしている為、静観して一種の治外法権地域になっている。 「追っ手を放ちますか?」 「スラム街で事を起こすなら、それなりの組織に話を通さねばならない。くそっ。下民の分際で領主に逆らいおって!」 ベルリンは生粋の貴族至上主義。平民と貴族では種族すら違うと考えている。 平民は貴族の為に税を運んでくる虫のように考えて、普段からもしっかり差別している。 だからこそ、平民のせいで自分の思い通りにいかない現状に苛立ちが募っていた。 「いっその事闇組織に依頼を出しますか? 調べたところ様々な組織はありますが、お金さえ払えばなんでもする組織もあります」 「冒険者に頼んだ事ですら屈辱だというのに、つぎは闇組織だと!?」 「では、エルフは諦めるという事でよろしいですか?」 「くっ…!」 執事の言葉に苦悶の表情を浮かべるベルリン。 ベルリンは、貴族至上主義で平民を差別しているというのに、視察で商会に出向いていた帰りに見かけたエルフの冒険者に心を奪われてしまったのだ。 平民を差別してるくせに平民に懸想する。 話を聞いた先代から仕えている執事はほとほと呆れていた。 (全く。旦那様は言ってる事が滅茶苦茶すぎる。先代様がご存命の頃は大人しかったというのに。領主を継いだ途端傲慢になってしまって。普段から平民を差別しているのだから、諦めて放っておけばいいものを) 「くそっ! 爺! お前の言っていた組織に依頼を出せ! 金は出す
「ラノベかよ」 「? らのべ?」 カタリーナにあそこで倒れてた訳を聞いたんだけど、その内容はラノベでよくある展開そっくりだった。まぁ、想像してた厄介事よりはマシな雰囲気で良かったな。 「そいつらは今どうしてるの?」 「分かりません。こちらも必死だったので、もしかしたら勢いあまって殺してしまった可能性もあります」 カタリーナはエルフの国を追放されてからとにかく遠くへ行こうと、約一年かけてスパンダ帝国にやってきたらしい。 因みにここはスパンダ帝国のペテス辺境伯領らしい。初めて知りましたね、はい。辺境伯って結構上の爵位じゃなかったっけ? しみったれた街だと思ってたけど、もしかして結構広いのかね? で、この辺境伯領は魔物が多いという事で、皇帝から辺境伯に防衛を任されてる街らしく、魔物が豊富に存在して、冒険者の仕事が多いらしい。 その割には全然見かけないなと思ったけど、俺はほとんどスラムから出てませんでしたね。 「って、あの時夜に外に出なくて良かったな。死ぬ所だったかもしれん」 「外に出ようとされてたんですか? 出なくて正解ですよ。ましてや夜なんて。ここは魔力溜まりが多いので魔物の質は高く、量も多いみたいです」 ふぇー。門が閉まってて助かったー。なんならここ最近は少し遠回りして外壁に穴がないか探してたからね。スライムとネズミばかりの生活に飽きてきてたからさ。空いてなくて良かったぜ。 カタリーナはこの辺境伯領にやって来てから、すぐに冒険者になってソロで活動してたらしい。 エルフで美人という事で一悶着あったそうだけど、この領には他にも少数だけどエルフがいる。 わざわざ国を出る変わり者エルフは、カタリーナに興味を向けるでもなく、挨拶程度の関わりしかない模様。追放されたとか言わなきゃ分からんだろうしね。 しかし、思った以上に魔物が強くてソロでの活動に限界を感じていた頃に、一組のパーティーからお誘いを受ける。 カタリーナは丁度良かったので、このパーティーに臨時加入。昨日が初日だったらしい。 「で、冒険から帰ってきた夕食の席でクスリを盛られてあわや奴隷行きの危機だったと」 「危ないところでした」 カタリーナは強力な睡眠薬を、自分の足に短剣を刺す事で対抗して、食堂で戦闘になったらしい。修羅かよ。 意識が朦朧とし
「おはようございます」 「うっ」 二度目の睡眠から目が覚めてもやっぱり、例のエルフは存在した。 夢であってくれなかったらしい。 「ご安心を。命の恩人に手を出す事はしません」 「そ、そうですか。……ん?」 なんかおかしいな。うん。おかしいよ。 まず、なんでここにいるのか。そして、なんで俺が助けた事がバレてるのか。 「では、最初からご説明させて頂きます」 エルフの人、カタリーナさんは俺が戸惑ってるのが見て取れたんだろう。ぼろ家の地べたに座ってたけど、居住いをすっと正して丁寧な言葉で説明してくれる。 今は亡きマザー? エルフが傲慢で他種族を見下してるってのは、本当なのかい? こんなクソガキに滅茶苦茶下手に出てくるけど。 俺が命の恩人だからってのもあるんだろうか。 「まず自己紹介から。私の名前はカタリーナ。見ての通りエルフです。歳は101歳。100年経ってからエルフの国を追い出されました」 「追い出された?」 鑑定で見た通りだな。あ、いや、それよりも。 「あ、俺の名前はレイモンドです」 こっちも名前ぐらい言っとかないと。礼儀としてね。エルフがいつ癇癪起こすか分からんし。俺は未だに丁寧エルフを信用してませんよ。 まぁ、逃げ場はないし、逃げれるとも思わないけどさ。 「追い出された理由はまた後で。まずは、レイモンド様。助けて頂きありがとうございました。正直死ぬだろうなと思っていましたが、まさか生き延びれるとは思っていませんでしたよ」 「いや、光魔法使っただけだし」 その後は放置だからね。なんか微妙に居た堪れない気持ちになる。 「それで私が何故ここにいるか、何故レイモンド様の居場所が分かったかですが」 それね。気になってたよ。匂いとかだろうか? 一応地下水道から出たら毎回浄化はしてるんだけど。その前にカタリーナさんは気を失ってたはずだよね? 俺が分かるはずないと思うんだけどな。 「実は私は生まれた時から精霊が見えるんです。この世界の至る所に精霊はいますが、本当に見える人は今まで私以外には知りません」 む? それは言っていい秘密なのかね? なんか爆弾発言されてるような? 厄介事の気配をひしひしと感じるぞ? 「エルフ? って精霊が見えるのが当たり前なんじゃないの? イメージ的にだけど」 「精霊信仰しているのでそん
「俺の下水道マスターの称号も近いな」 今日も今日とて朝から下水道探索。 毎日通ってるから、構造も結構理解してきた。 一応、角に短剣で壁を削りA-1とか印はつけている。 「スライムとネズミじゃレベルが上がらんな。倒しても倒しても減らないのはありがたいけど」 能力値も相変わらず変化無し。 まっ、毎日おんなじ事をして成長するかって言われたらしないよね。いや、レベルはそのうち上がるだろうし、能力値も上がるんだろうけど。 もっとハードな経験も必要なんじゃなかろうかと最近思ってます。 ゲームじゃ、序盤にひたすら狩りをしてレベル上げして後半楽をするみたいなのがよくあるけど。 ここは現実ですし。お寿司。 「あ、寿司食いてぇ。今のままじゃ夢のまた夢だろうけど」 米があるのか酢があるのか。それすらも知らないし。てか、まず文字が読めん。 言葉はレイモンド君の記憶のお陰で、なんとかなってるっぽいけど。 文字は少ししか分からない。誰か教えてくれる人を探さないと。 「ビーム」 指先から光魔法で光線みたいなのを出す。 最近はこれにハマっている。なんたって、魔法スピードが速い。ネズミを確実に仕留められる。魔力量は規模に比べたらそれなりだけど、ネズミ相手にはこれが一番だ。 スライムには極小のダークボールで仕留めてるけど。魔力節約。大事だと思います。 「ん? 血?」 最近ようやく慣れたネズミの解体をしていると、少し離れた所に血痕があった。 薄暗くて見にくいけど、どうやら這って動いたように痕が続いている。 「長い事地下水道探索してるけど、こんな事は初めてだな」 ネズミとかじゃなくて、明らかに人っぽい痕跡。 ここは匂いが酷すぎるのか、スラムの奴らですら近寄らない。って事はですよ。 「厄介事ですかねぇ」 こういうのは関わらないが正解。現に、今でも子供達には関わらないようにしてるんだ。 大人には偶に会うけど。お互い不干渉。こっちも今は関わりたくないから助かっている。 でも俺は何故か自然に足を動かしていた。 後から思えばこの選択は大正解だと思うが、現状は悪手でしかない。 「好奇心か? やめろよな。そんなの今は求めてないんだってのに」 ヒソヒソと独り言を呟きながらも歩みは止めない。そして終着点で待っていたのは、横たわっていて今にも死にそうな大人の