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やり直した私は、迷わず角膜を手放した
やり直した私は、迷わず角膜を手放した
Auteur: 水瀬こはる

第1話

Auteur: 水瀬こはる
「みなさん、浜凪市の学校へようこそ。私は地元ですので、歓迎の気持ちを込めて、明日みなさんをショッピングモールに連れて行きたいと思います。お土産はもちろん全部私がおごります。みなさんへの初めてのプレゼントということで」

高梨茉莉(たかなし まり)の聞き覚えのある声がした瞬間、私は全身を震わせた。

その瞬間、理解した。

私、柳沢璃子(やなぎさわ りこ)は、やり直したのだ。

クラスメイトたちはその言葉を聞くと、たちまち色めき立った。

「わあ、高梨さんって、本当に美人で優しいお嬢様って感じですね」

「高梨さん、うちのクラスって人数多いですよ。かなりお金かかるんじゃないですか?」

茉莉はにこりと微笑んだ。

「大丈夫です。せっかく浜凪に来てくださったのですから、地元民としてちゃんと歓迎したくて」

そのとき、誰かが私のほうを見た。

「そういえば、柳沢さんもこの辺りのご出身ですよね?名簿で拝見したのですが」

私はうなずいた。

「はい。みなさん、浜凪市へようこそ」

すると茉莉がふいに手を伸ばし、私の腕をつかんだ。

「璃子さん、私の車だけでは全員乗れません。あなた、最近免許を取ったばかりですよね?車を少しお借りしてもよろしいですか?」

その瞬間、私は凍りついた。

前世でも、茉莉は同じ口実で私の車を持ち出した。

そして市街地で暴走し、赤信号を何度も無視した末、横断歩道を渡っていた妊婦と高齢の男性をはねた。

それでも3人のクラスメイトは、逃げた運転手は私だったと口をそろえた。

警察が私を逮捕しに来たとき、私は必死に訴えた。

「車を運転していたのは茉莉さんです」と。

けれど茉莉は泣きながら、私の恋人・藤原航(ふじわら わたる)の胸に飛び込んだ。

「璃子さん、私のことが嫌いだからって、罪をなすりつけるのはひどいです」

航は私の頬を平手で打ち、車に取りつけてあったドライブレコーダーの映像を突きつけた。

映像の中で、猛スピードで走り、人をはねた運転手は、私そのものだった。

私が弁明する間もなく、映像を見て激昂した被害者の遺族に、私は18回も刺されて死んだ。

前世の苦しみを思い出しただけで、全身が抑えようもなく震えた。

まだ反応できずにいると、突然、私のバッグが誰かに奪われた。

航がバッグの中を勝手に漁り、車のキーを取り出して茉莉に渡した。

「茉莉、遠慮せず運転していいよ」

その言葉を聞いた瞬間、私ははっと我に返り、バッグとキーを奪い返した。

「ごめんなさい。明日は車を使う用事があるので、ほかの方に借りてください」

私がそう言うと、航はすぐに不機嫌な顔になった。

「璃子、お前に何の用事があるんだよ。どうせわざと貸したくないだけだろ」

私は冷ややかに彼を見返した。

「ええ、貸したくありません。それが何か?」

すると茉莉は、ひどく傷ついたような顔をした。

「璃子さん、私、どうしてそんなに嫌われているのか分かりません。でも私はただ、明日みんなにプレゼントを買ってあげたくて、車を少し借りたいだけなんです。どうしてそこまで私を困らせるんですか?」

思わず笑いそうになった。

自分のものを貸すのを断っただけで、彼女への嫌がらせになるらしい。

それを見かねたクラスメイトたちが、次々に口を開いた。

「柳沢さん、同じクラスの仲間なのに、ちょっと冷たすぎませんか?」

「茉莉さんは車を少し借りたいだけでしょう?どうしてそんな傷つけるようなことを言うんですか。そもそも茉莉さん、あなたに何かしたわけじゃないですよね」

航は私を強く突き飛ばした。

「璃子、お前さ、そのわがままで高飛車なお嬢様気質、少しは直せないのか?入学初日から茉莉をいじめるなんて」

私は床に倒れ、後頭部を机の角にぶつけた。

鋭い痛みに、思わず息をのむ。

以前の私なら、航の言葉に丸め込まれて、自分が悪かったのではないかと反省し始めていたかもしれない。

けれど今の私にあるのは、彼らへの憎しみだけだった。

とくに航だけは、八つ裂きにしても足りないほど憎かった。

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