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第52話

Penulis: またり鈴春
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-29 20:48:09

こういうこと、皇羽さんに聞きたいよ。直接「どういう事ですか?」って聞いてみたい。私に対する皇羽さんの思いを聞いたら、ソワソワした私の心も少しは落ちつく気がするから。

「だけど家にいないんだから、聞きようがないよね」

気になった事を放置するのは性に合わないんだけどな――と。ここで何気なくテーブルに転がる物を見る。

そういえば、この前からずっと転がっている。どこかで見たような。何だっけ?

もしや皇羽さんの物?と、少しワクワクしながら手に取る。目に入ったのは「バイト」という文字。そこでスゴイ速さで記憶が戻って来た。

「これ、私が貰って来たバイトの情報誌だ!」

なにが「気になったことを放置するのは性に合わない」だ。思いっきり放置している物があるじゃん!

クウちゃんにコンサートのチケット代を返さないといけないし、皇羽さんには言わずもがな色々買ってもらってるし、そして玲央さんにも!仮病でウチにいた日にお金を借りている!

私、かなりの人に借金しているヤバい人だよ!

「バ、バイト!バイトしなきゃ!時給の高いバイト~!!」

再びリビングに戻り、ペンを片手にハイスピードで情報誌をめくる。自分に合いそうな求人を見つけ、片っ端から丸をしていった。

「スマホがあって良かった!スグに電話ができる!」

皇羽さんのことで憂う余裕は一気になくなり、情報誌とスマホを行ったり来たりと大忙し。気になるバイトはいくつかあったけど、夜遅くまでの勤務だったり、保護者の同意が必要だったりと。様々なことが原因で自ずと絞られていった。

「これが最後の一件だ!」

意を決して電話をかける。そのお店の採用方法は「電話で軽い面接をする」だった。つまり電話が繋がった瞬間から選考が始まるってこと!

ガチャと音がして、男の人の声がする。私は頭が真っ白になりながらも、一生懸命受け答えをした。すると……

「明日から?本当ですか、ありがとうございますッ!」

結果は、なんと採用!明日、一応履歴書を持ってお店へ行き、そのまま働くことになった。

「何とかバイトを見つける事が出来たよ~……」

良かった、まずは一安心だ!

スマホをテーブルに置いて、ほぅ~と脱力する。あ、皇羽さんに「バイト決まりました」って報告した方がいいよね?皇羽さんが帰ってきた時に私が家にいなかったら、絶対に心配するし。

「メールで言うのもいいけど、直接いいたいなぁ」

バイ
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